俺の欲望が恐れを知らない 作:ぺぺぺん
学校生活終わっちゃう
みんなは二重人格というものを知っているだろうか。
人に一つの魂があり、一つの人格があり、一つの記憶がある。
が、そんな中で生まれる前からか、それとも事故による怪我か、何かしらの理由があって、一つの魂と一つの記憶に、二つの人格が宿るときがある。
それが『二重人格』。
別名『解離性同一性障害』だ。
記憶が二つ宿ったりすることもあるが、それは些細なことであり、大事なのは二重人格というものが存在していることだ。
……さて。
ここまで言えば何を言いたいかぐらい、間抜けにだってわかるだろう。
俺は二重人格者である。
『二重人格って言うには、主導権ほぼお前持ちだけどな』
うるせぇ、いざというとき全部持っていけるクセによぉ。
ともかく俺は二重人格者だ。
『俺があとから生まれた人格で』
俺が元から存在する方、主導権を握っている側だ。
こうやって急に口を挟んだきては色々言ってくる。
こいつが生まれたのは、この世界で起きた『災害の日』と呼ばれる、世界の大半が
あの日、世界は災害に襲われ、本来はこの世界に存在しないはずの怪物や、人間とは似て非なる種族が現れ、そして人間たちには『力』が芽生えた。
後に『
そして──まぁ、なんか色々あって。
別の世界からやって来た種族とは、お互いに生きる道を見つけ出し、怪物たちはなんとか抑え込み、人間の常識として能力は当然のものとなった。
俺も災害を経験した人間として生能が発現。
それはもう凄い力だったんだが、同時に何故か人格が芽生えてしまった。
なんで人格が生えたのか、医者に診てもらっても何もわからなかったが、それ以降、こうやって共存してやって来た。
なんだかんだ仲良くやっちゃいるし、お互いの領分は分かりあっている。
ある
……そう。
その欠点が問題なのだ。
「
『まぁ、アレは確かによくなかったな』
「……初対面の人に、パンツ見せてくれ、は、ただの頭のおかしい人間だって……」
こいつの欠点。
それは欲望が抑えられない、というところだ。
例えば俺が何かをしたい、という欲望を抱くと、こいつの人格が俺を押しのけ表面に出てきて、勝手に叶えてしまう。
俺の理性が効いていない、とでも言うべきか。
ちなみに何でもかんでも欲望なら叶える、というわけではなく。
こいつ曰く、深層心理……つまり無意識下で強く願ったことを叶えてしまうらしい。
故にたちが悪い。
『でもまぁ、あんなパツキンのねーちゃん見たら、パンツの一つぐらい見せてほしくなるだろうさ』
「……俺がマジでそんなことを思ったって?」
『じゃなきゃ表面化しねーっつの』
「そりゃそうだが……見てみろよ、あの顔。バチクソ睨まれてるぞ」
机の上、椅子に座りながら頭を抱え、そのまま脇の下から後ろのほうを覗き見る。
すると少し後ろの方で、パーカーのフードを被った金髪の少女が、こちらのことを強く睨み続けていた。
ここから見てもわかるほどの美少女で、その近づき難い雰囲気から周りには誰もいない。
睨んでいるからなおさら近づき難い。
『ヒュ〜、いいじゃねぇか。気の強い女は嫌いじゃねぇ』
「……なんだそのセリフ。俺が寝てる間にドラマでも観たのか?」
『海外のハードボイルドモノをちょっとな。それよかどうすんだ? 仮にあの嬢ちゃんが周りにお前のしたこと伝えたら、入学早々に学校生活オシマイだぜ』
入学早々。
というのも、俺は高校一年生。
日本の東京にある、ありとあらゆる種族が集う、生能持ちを育成するための学校に来ている。
で、今日は入学三日目、早速やらかしたわけだ。
「わーってるよ、だからどうにかしようと考えてんだろ……はぁ、他人の記憶を消す能力が欲しい」
が、世の中は無常だ。
俺の能力は強力だが、日常生活では基本的に役立たない能力である。
どれだけ願っても俺の望みが叶うことはない。
結局、自分の力でどうにかするしかないのだ。
「取り敢えず、謝ろう、うん。誠実に謝ったら許してくれるさ」
『許してくれなかったら?』
「お前のせいにしてやる」
『信じてくれるかねぇ』
「信じる信じない云々の前の話だろ。やるしかないんだよ」
なんて、ため息をつきながら、謝る言葉を模索して授業を迎えるのだった。