海底遺跡の迷宮。
エリセンでミュウの母、レミアとの再会を果たしたハジメたちは、数日間の休息を経て、再び旅立っていた。
目的地は、海底に沈んだ古代遺跡。その奥には、かつて神に抗った者たちが遺した大迷宮が眠っている。
ハジメを先頭に、ユエ、シア、ティオ、香織、そしてミュウが、遺跡の入り口へと足を踏み入れた。
海底にあるはずの遺跡内部には、不思議なことに水が流れ込んでいない。天井や壁には青白い光を放つ鉱石が埋め込まれ、古代の建築物を淡く照らしていた。
「わぁ……すごいね、パパ!」
ミュウがハジメの手を握りながら、きょろきょろと周囲を見回す。
「足元に気をつけろよ。遺跡ってのは、見た目が立派なほど性格が悪い仕掛けを隠してるもんだ」
「もう、パパったら。せっかく綺麗なのに」
「綺麗な景色の下に落とし穴があったら、景色どころじゃないだろ」
「ふふっ。ハジメらしい」
隣を歩くユエが、微かに笑った。
シアも元気よく頷く。
「そうですよ、ミュウちゃん! ハジメさんが言うんですから、絶対に何かあります!」
「お前が言うと、別の意味で不安になるな……」
「ひどいですっ!」
いつも通りのやり取りに、香織も思わず微笑む。
だが、その穏やかな時間は長く続かなかった。
通路の奥にある巨大な扉を抜けた瞬間、ハジメたちの視界が白く染まった。
「なっ……!」
反射的にハジメがミュウを抱き寄せる。
次の瞬間、彼らの周囲から遺跡の壁も床も消え去った。
代わりに広がったのは、見知らぬ都市の光景だった。
空には煙が立ち上り、石造りの建物は崩れ、逃げ惑う人々の悲鳴が響いている。
そして、ハジメたちの目の前では、一人の男が血に染まった剣を握り締めていた。
『なぜだ……なぜ、停戦の約束を破った!』
男の前には、異なる種族の人々が倒れていた。
人間だけではない。長い耳を持つ者、獣の特徴を備えた者、鱗に覆われた者。種族も立場も異なる者たちが、同じ場所で血を流している。
彼らは、戦争を終わらせるために集まった要人たちだった。
その背後には、華やかに飾られた宴の会場が見えた。
戦争終結を祝うためのパーティー。
長く続いた争いを終わらせ、互いの種族が手を取り合う。その未来を信じて、人々はここに集まったはずだった。
しかし、その場にいた人間側の護衛たちが、一斉に剣を抜いた。
『敵を殺せ! 異種族など生かしておくな!』
『何を言っている!? 我々は和平を結んだはずだ!』
『黙れ、化け物ども!』
護衛たちの目には、正気がなかった。
彼らは仲間の制止を振り切り、和平のために集まった異種族の要人たちへ襲いかかる。
抵抗する間もなく倒れる者。自分の子供を庇って斬られる者。必死に言葉を尽くしても、刃を向けられる者。
宴のために用意された食卓はひっくり返され、祝福のために掲げられた杯は血に沈んだ。
その惨劇を、会場の二階から見下ろしている女がいた。
白い衣装をまとい、穏やかな微笑みを浮かべた美しい女。
だが、その目には人間に対する慈しみなど欠片もなかった。
『素晴らしいわ。ほんの少し心を弄るだけで、あれほど望んでいた平和を、自らの手で壊してくれるのですもの』
女の手の甲には、奇妙な紋様が浮かんでいた。
それは、神の使徒の証。
「……あれが、神の使徒」
ハジメの声が低くなる。
彼はすでに知っていた。神が人々を盤上の駒として扱い、戦争や悲劇を娯楽のように弄んでいることを。
それでも、実際にその光景を見せつけられると、胸の奥に黒いものが広がっていく。
「ひどい……」
香織が口元を押さえた。
「みんな、平和にしたかっただけなのに……」
彼女の声は震えていた。
女は、血に染まった会場を眺めながら、愉快そうに笑い続けていた。
そして、景色が崩れた。
次に現れたのは、どこまでも続く大海原だった。
荒れ狂う波。黒い煙。砲撃によって吹き上がる水柱。
幾隻もの軍艦が、互いに砲門を向けている。
『神の名のもとに、異端者を海の底へ沈めよ!』
『神の意志は我らにある! 偽りの信徒どもを皆殺しにしろ!』
同じ神を信じているはずの者たちが、互いを異端と罵り、殺し合っていた。
船上では兵士たちが剣を交え、砲弾が船体を砕き、海へ投げ出された者たちが助けを求めている。
だが、彼らを救おうとする者はいなかった。
誰もが自分たちこそ神に選ばれた正しい信徒だと信じ込み、相手を滅ぼすことこそが神への忠誠だと疑っていない。
海は赤く染まり、沈んでいく船の上では、最後まで神の名を叫ぶ者たちがいた。
「……同じ神を信じてるのに、どうして……」
シアが顔を歪める。
ティオも、普段の余裕を失っていた。
「信仰そのものを利用し、憎しみを煽り、殺し合いをさせておるのか……。これでは、神を信じることすら呪いになってしまうではないか」
「神様なんて、いない方がいいのかな……」
ミュウが小さな声で呟いた。
ハジメは彼女の頭に手を置いた。
「ミュウ。神が何を名乗ろうと、そいつがやったことまで正しいことになるわけじゃない」
「……うん」
「誰かを守るために戦うことも、誰かと仲良くなりたいと思うことも、そいつらが勝手に決めることじゃない。お前が何を信じて、誰を大切にするかは、お前自身が決めればいい」
ミュウはハジメの服をぎゅっと握った。
その言葉を聞いた香織は、ゆっくりと顔を上げる。
眼前の光景は、さらに変わっていった。
戦争。虐殺。裏切り。平和を願った人々の希望が、神の気まぐれによって何度も踏みにじられる。
ある国では、飢えた人々が神殿へ救いを求めた。しかし、神の使徒は救済を与えるどころか、国王を操って反乱を誘発させた。
別の土地では、種族の違いを越えて手を取り合った人々が、神の啓示を受けたと称する者たちによって異端と断じられ、処刑された。
また別の時代では、戦火から逃れた子供たちが、神の名を掲げた兵士たちに追い立てられていた。
どの光景にも共通していたのは、人々が自分たちの意思で築こうとした平和が、神の介入によって壊されているという事実だった。
そして、どの悲劇の中にも、神自身の姿はなかった。
ただ遠くから、誰かの人生が壊れていく様子を眺めている。
まるで、それを楽しんでいるかのように。
「……胸糞悪いな」
ハジメが吐き捨てた。
左目を覆う眼帯の奥で、千年眼が鈍く疼く。
神が自分を選んだのか。それとも、単に面白い駒として見つけたのか。
どちらにせよ、ハジメにとってはどうでもよかった。
自分の人生を好き勝手に弄ばれた。その事実だけで、神をぶちのめす理由には十分だった。
「ハジメ……」
ユエが彼の手を握る。
「大丈夫だ。こんなもんを見せられたくらいで、俺の決意は変わらねぇよ」
「うん。知ってる」
ユエは静かに頷いた。
シアも、ティオも、香織も、それぞれの思いを胸に、目の前の光景を見届けた。
やがて、最後の映像が消えた。
彼らが再び遺跡の通路に戻ったとき、全員の表情は重かった。
その先には、一つの扉があった。
扉の表面には、古代文字が刻まれている。
――神の嘘を見た者よ。
――それでもなお、己の意思で未来を選ぶというのなら、最後の試練へ進め。
「……行きましょう」
香織が一歩前へ出た。
いつもの柔らかな笑顔はなかった。
しかし、その瞳には迷いのない光が宿っていた。
「今の光景を見たからこそ、私は逃げたくありません。私にも、戦わせてください」
「香織」
ハジメは彼女を見た。
「この先が何か、分かってんのか?」
「分かりません。でも、誰かが戦わなければならないなら、私だって戦えます」
香織は自分のデュエルディスクを装着した。
「それに、私はずっとハジメくんに守られてばかりでした。今度は私自身の力で、みんなのために道を切り開きたいんです」
ハジメはしばらく彼女を見つめた後、小さく息を吐いた。
「……無茶はするな。勝つために必要なことを考えろ。相手が誰だろうと、それは変わらねぇ」
「はい!」
香織の返事に、ハジメは頷いた。
扉が開く。
その向こうには、円形の決闘場が広がっていた。
床には複雑な魔法陣が刻まれ、中央には巨大な水晶が浮かんでいる。その前に立っていたのは、長い髪を持つ美しい女性だった。
落ち着いた眼差しと、長い年月を生きた者だけが持つ静かな気配。
彼女は香織たちを見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「よくここまで来ましたね。私はメイル・メルジーネ。この迷宮を創り、最後の試練を守る者です」
メイルは一同の顔を順に見た。
「あなた方は、神がもたらした悲劇を目にしたはずです。それでもなお、神に抗う道を選びますか?」
「選びます」
香織は即答した。
「神が何を考えているのか、私には分かりません。でも、誰かの幸せを勝手に壊していい理由なんてない。苦しんでいる人を見て、何もしないままでいるなんて、私は嫌です」
メイルは静かに目を細めた。
「ならば、あなたの意思を見せてください。最後の試練は決闘。あなたが勝てば、この迷宮に遺されたものを授けましょう」
「分かりました」
香織はデュエルディスクを構えた。
「白崎香織、参ります!」
ハジメたちは決闘場の端へと下がる。
ユエは腕を組み、シアは両手を握り締め、ティオは真剣な表情で見守った。
ハジメだけは、香織の背中から目を離さなかった。
彼女が自分の意思で選んだ戦いだ。
ならば、最後まで見届ける。
「「デュエル!」」
香織とメイルの声が重なった。
「先攻は私がいただきます!」
香織はカードを引くと、すぐに一枚をデュエルディスクへ差し込んだ。
「私はフィールド魔法《古の森》を発動!」
決闘場の床から光が走り、周囲に巨大な樹木の幻影が立ち並ぶ。
緑の葉が舞い、木々の間を柔らかな風が通り抜けた。
「さらに、手札から《フェアリー・アーチャー》を召喚!」
小さな翼を持つ妖精の戦士が現れ、弓を構える。
「そして、レベル3のチューナーモンスター《エンシェント・フェアリー・ドラゴンの巫女》を召喚!」
白い衣装の巫女が、光の粒子とともにフィールドへ降り立った。
彼女の手には、古代文字が刻まれた杖が握られている。
「私はレベル4の《フェアリー・アーチャー》に、レベル3のチューナー、《エンシェント・フェアリー・ドラゴンの巫女》をチューニング!」
四つの光と三つの光が、空中へと浮かび上がる。
「七つの光よ、古き森の記憶を呼び覚ませ! シンクロ召喚!」
光の輪をくぐり抜け、白銀の竜が姿を現した。
「現れなさい! 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!」
美しい翼を広げた竜が、香織の頭上を旋回する。
その姿には、戦いのためだけに生まれた竜とは異なる、命を守る者の気高さがあった。
「さらに、私はカードを一枚伏せて、ターンエンドです!」
香織は慎重に手を下ろした。
メイルはその盤面を眺め、穏やかに頷く。
「守るための竜……。あなたらしい選択ですね。ですが、優しさだけでは、この試練を越えることはできません」
「あなたのターンです!」
「では、私のターン」
メイルがカードを引く。
「魔法カード《古代海底神殿》を発動します」
森の景色が一変した。
足元から水が湧き上がり、古代の神殿が海底から浮上するように現れる。崩れた柱の間には、青い光を放つ紋章が刻まれていた。
「この神殿が存在する限り、私の水属性モンスターは戦闘では簡単に倒れません。さらに、手札から《海底の巫女》を召喚」
水晶の杖を持つ女性が現れた。
「そして、《深海の守護者》を特殊召喚します。私のフィールドに水属性モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる」
鎧に身を包んだ巨人が、海底神殿の前に立つ。
「《深海の守護者》の効果を発動。墓地の水属性モンスター一体を除外し、相手フィールドのモンスター一体の攻撃力をターン終了時まで半分にします」
守護者が槍を掲げる。
暗い水流が香織のエンシェント・フェアリー・ドラゴンを包み込んだ。
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンの攻撃力は、二千八百から千四百へ!」
「っ……!」
香織は歯を食いしばった。
「これで、戦闘の準備は整いました。《海底の巫女》で、エンシェント・フェアリー・ドラゴンを攻撃!」
巫女の杖から放たれた水の刃が、白銀の竜へ迫る。
「そう簡単にはいきません! 罠カード、《フェアリー・ガード》を発動!」
香織が伏せていたカードを開く。
「自分のドラゴン族モンスターが攻撃対象になったとき、その攻撃を無効にします!」
光の障壁が竜を包み、水の刃を弾き返した。
「攻撃を防ぎましたか。ですが、まだ終わりません。《深海の守護者》で、エンシェント・フェアリー・ドラゴンを攻撃!」
巨人が槍を振り下ろす。
攻撃力を半減させられた竜では、真正面から受け止められない。
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンの効果を発動! このカードが攻撃対象になったとき、手札のカードを一枚墓地へ送り、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を下げます!」
香織は手札のカードを墓地へ送った。
「これで《深海の守護者》の攻撃力は千四百ポイントダウン!」
守護者の槍が竜に届く寸前、白い光が炸裂した。
巨人の身体が後方へ押し戻され、攻撃は相殺される。
「……なるほど。攻撃力を奪われても、竜を守る手段を残していたのですね」
「はい。エンシェント・フェアリー・ドラゴンは、私の大切な仲間ですから!」
香織の返事に、メイルは一瞬だけ目を伏せた。
「仲間、ですか……」
その呟きは、どこか遠い過去を思い出すような響きを帯びていた。
だが、次の瞬間には、再び厳格な試練官の表情へ戻っていた。
「私はカードを一枚伏せ、ターンエンド」
「私のターン!」
香織はカードを引き、手札を確かめる。
相手のフィールドには、二体のモンスター。さらに、海底神殿の効果がある。
エンシェント・フェアリー・ドラゴンは攻撃力を下げられ、先ほどの攻防で一度は危機に陥った。
正面から攻撃するだけでは、勝ち目は薄い。
香織は深く息を吸った。
ハジメくんだったら、どうするだろう。
いや、違う。
今は、自分で考える。
「私は魔法カード《森の再生》を発動! 墓地の植物族モンスターを手札に戻します!」
香織はカードを回収し、続けて別のカードを手に取った。
「そして、《妖精の導き手》を召喚!」
小さな妖精が、エンシェント・フェアリー・ドラゴンのそばに現れる。
「このモンスターが召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の植物族モンスターを特殊召喚できます。私は《森の守り手》を特殊召喚!」
蔓をまとった戦士が、地面から伸びた根の上に立つ。
「私はレベル4の《森の守り手》に、レベル3のチューナー、《妖精の導き手》をチューニング!」
再び光が重なる。
「森の命よ、古き竜の力を支えよ! シンクロ召喚!」
緑の光の中から、もう一体の竜が姿を現した。
「《ブライト・フェアリー・ドラゴン》!」
白と緑の鱗を持つ竜が、エンシェント・フェアリー・ドラゴンの隣へ舞い降りる。
「このモンスターがシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールドの表側表示の魔法カード一枚を破壊します! 私は《古代海底神殿》を破壊!」
竜の翼から放たれた光が、海底神殿の紋章を貫く。
神殿が崩れ、海底に満ちていた青い光が消えた。
「フィールド魔法が……!」
「これで、あなたのモンスターを守る力は弱まりました!」
香織はエンシェント・フェアリー・ドラゴンへ視線を向ける。
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンの攻撃力は、元に戻ります!」
白銀の竜が大きく翼を広げた。
しかし、メイルは動じない。
「確かに神殿は失われました。ですが、あなたの竜が本来の力を取り戻したところで、私の伏せカードが残っています」
「分かっています。だからこそ、まずは攻撃します!」
「《ブライト・フェアリー・ドラゴン》で、《海底の巫女》を攻撃!」
緑白の竜が、光の奔流を放った。
海底の巫女は抵抗する間もなく、その光に呑み込まれる。
メイルのライフが減少した。
「続いて、エンシェント・フェアリー・ドラゴンで、《深海の守護者》を攻撃!」
竜が翼を羽ばたかせ、巨大な光球を放つ。
「罠カード発動、《深海の反撃》!」
メイルが伏せカードを開いた。
「私のモンスターが攻撃対象になったとき、墓地の水属性モンスター一体を特殊召喚します!」
水の渦から、先ほど破壊された海底の巫女が再び現れた。
「そして、攻撃対象をそのモンスターへ変更します!」
「そんな……!」
エンシェント・フェアリー・ドラゴンの光球が、復活した巫女へと直撃した。
巫女は消滅したが、深海の守護者は無傷のまま残った。
「攻撃を防がれた……!」
「あなたの竜の力は確かに強い。ですが、戦場では力をぶつけるだけでは勝てないのです」
メイルは静かに告げた。
「ターンエンドです!」
香織は唇を噛み締めた。
決して簡単な相手ではない。
自分の切り札を理解したうえで、攻撃を受け流してくる。
だが、ここで諦めるわけにはいかなかった。
目の前にいるのは、かつて神に抗った者の意志を継ぐ存在だ。
そして、自分もまた、神の理不尽に抗うためにここへ来た。
「私のターン」
メイルがカードを引いた。
「私は《海底の巫女》を通常召喚。そして、魔法カード《深淵への誘い》を発動します。自分のフィールドに水属性モンスターが二体以上存在するとき、相手モンスター一体の攻撃力を千ポイント下げる」
水の渦が再びエンシェント・フェアリー・ドラゴンへ絡みつく。
「さらに、《深海の守護者》で《ブライト・フェアリー・ドラゴン》を攻撃!」
巨人の槍が、緑白の竜へ突き刺さった。
竜は光の粒子となって消えた。
「くっ……!」
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンは、私の《海底の巫女》が攻撃します!」
巫女が杖を振る。
今度は、香織の竜を直接狙う攻撃だった。
「罠カード、《フェアリー・リフレクション》!」
香織は二枚目の伏せカードを開く。
「自分のドラゴン族モンスターが攻撃されたとき、戦闘ダメージを無効にし、その攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えます!」
白い鏡が竜の前に現れ、巫女の攻撃を跳ね返した。
光がメイルを包む。
「……っ!」
メイルのライフが大きく減少した。
香織は拳を握る。
「まだ、終わっていません!」
「ええ。あなたの意思が本物なら、ここからが本当の試練です」
メイルは残るカードを伏せ、ターンを終えた。
決闘は一進一退を続けた。
メイルは水属性モンスターを連携させ、墓地からの再利用や攻撃の妨害によって香織の攻勢を削いでいく。
香織はエンシェント・フェアリー・ドラゴンを軸に、植物族と妖精族の力を組み合わせて対抗した。
ライフが削られるたび、決闘場に響く音が鋭くなる。
それでも、香織は一度もデュエルディスクから目を逸らさなかった。
「私は、《フェアリー・リバイバル》を発動します! 墓地のチューナーを特殊召喚!」
光の中から、エンシェント・フェアリー・ドラゴンの巫女が再び現れる。
「そして、レベル4の《森の守り手》を召喚!」
香織のフィールドに、再びモンスターが並ぶ。
「レベル4の《森の守り手》に、レベル3のチューナーをチューニング!」
七つの光が空中へと昇っていく。
「古き森に宿る命よ。絶望の海を越え、希望の光となれ!」
香織の声が決闘場に響いた。
「シンクロ召喚! 再び現れなさい、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!」
白銀の竜が、光の輪をくぐり抜けて現れる。
その姿を見たメイルの表情が、初めて大きく揺らいだ。
「何度でも……立ち上がるのですね」
「はい!」
香織は迷いなく頷いた。
「私は、守りたい人たちがいるから!」
その言葉に、ハジメは僅かに目を細めた。
香織は昔からそうだった。
自分が傷ついても、誰かが苦しんでいるなら手を差し伸べようとする。
その優しさは、ときに彼女自身を追い詰める。
だが、今の彼女は違った。
ただ誰かに守られるだけではない。
自分の意思で前に立ち、自分の力で戦おうとしている。
「メイルさん。私は、神が人々に何をしたのかを見ました」
香織は竜の背を見上げた。
「平和を願った人たちが、神のせいで殺し合わされる。誰かを信じた人たちが、その信頼を踏みにじられる。そんなことが許されるはずがありません」
「……」
「だから私は、誰かが勝手に決めた運命に従うんじゃなくて、自分で未来を選びたいんです!」
メイルは長い沈黙の後、静かに頷いた。
「その意志こそが、私たちの望んだものなのかもしれませんね」
だが、彼女は決闘を止めなかった。
「それでも、最後まで戦いなさい。あなたの意志が、どれほどのものなのかを示すために」
「はい!」
メイルのターン。
彼女は最後の切り札を手札から取り出した。
「私は、二体の水属性モンスターをリリースします!」
深海の守護者と海底の巫女が光へと変わり、神殿の跡地へ吸い込まれていく。
「深海に眠る古き力よ。すべてを呑み込む潮流となれ! 特殊召喚!」
巨大な影が、海底の闇から浮かび上がった。
それは、古代の海を支配していたかのような巨大な海竜だった。
「《深淵海竜リヴァイアサン》!」
海竜が咆哮する。
その圧倒的な存在感に、決闘場全体が震えた。
「このモンスターが特殊召喚されたとき、相手フィールドのモンスター一体を手札へ戻します!」
海竜の咆哮とともに、激しい水流が香織のフィールドを襲う。
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンが……!」
白銀の竜が水流に呑み込まれ、光となって香織の手札へ戻された。
「さらに、リヴァイアサンで直接攻撃!」
巨大な尾が振り下ろされる。
香織のライフが激減した。
決闘場に沈黙が落ちる。
残るライフは、わずか。
メイルは静かに告げた。
「あなたの竜は戻されました。フィールドにはモンスターがいない。次の攻撃を受ければ、あなたは敗北します」
香織は一度目を閉じた。
怖くないと言えば、嘘になる。
しかし、彼女はもう、誰かの背中に隠れているだけの自分ではなかった。
デュエルディスクに手を置き、顔を上げる。
「私のターンです!」
カードを引く。
そして、香織の表情に決意が宿った。
「私は魔法カード《古の森の息吹》を発動します! 墓地のドラゴン族シンクロモンスター一体をエクストラデッキへ戻し、そのモンスターのシンクロ召喚に使用したチューナーを墓地から特殊召喚します!」
巫女が光の中から現れた。
「さらに、手札から《森の精霊》を召喚!」
小さな精霊が、巫女の隣へと降り立つ。
「レベル4の《森の精霊》に、レベル3のチューナー、《エンシェント・フェアリー・ドラゴンの巫女》をチューニング!」
再び、七つの光が重なった。
「古き森に宿る命よ! どんな闇の中でも、決して消えない希望の光を示せ!」
香織は、両手を前へと伸ばした。
「シンクロ召喚! 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!」
白銀の竜が、再び姿を現した。
その翼から、柔らかな光が広がっていく。
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンの効果を発動! フィールド魔法を破壊し、ライフを回復する!」
森の光が決闘場を満たす。
香織は回復したライフを確認し、すぐに次のカードを構えた。
「さらに、速攻魔法《フェアリー・ブレス》を発動! このターン、私のドラゴン族モンスターは相手の効果では手札に戻されず、攻撃力が上がります!」
エンシェント・フェアリー・ドラゴンの翼が強く輝いた。
「これで、あなたのリヴァイアサンに立ち向かえます!」
「素晴らしい……。ですが、攻撃力ではまだ私のリヴァイアサンが上です」
「分かっています!」
香織はカードを一枚、デュエルディスクへ差し込んだ。
「装備魔法《フェアリー・ウィング》を発動! エンシェント・フェアリー・ドラゴンの攻撃力を上げます!」
竜の翼が光を増し、海竜の巨体を見据える。
「バトル! エンシェント・フェアリー・ドラゴンで、《深淵海竜リヴァイアサン》を攻撃!」
白銀の竜が飛翔し、全身から光を放った。
海竜もまた、大きく口を開き、黒い水流を吐き出す。
白と黒の力が正面から激突した。
決闘場が揺れ、光が弾ける。
「押し切って、エンシェント・フェアリー・ドラゴン!」
香織の声に応えるように、竜が翼を広げた。
白い光が黒い水流を押し返し、リヴァイアサンの巨体を貫く。
海竜は大きく咆哮し、やがて光の粒子となって消えた。
メイルのライフがゼロになる。
「……私の、敗北です」
決闘場に静寂が戻った。
香織はしばらく立ち尽くしていたが、やがて竜を見上げ、ほっと息を吐いた。
「勝てた……」
エンシェント・フェアリー・ドラゴンが優しく鳴き、香織の頭上を旋回する。
ハジメたちが駆け寄った。
「よくやったな、香織」
ハジメの言葉に、香織はぱっと顔を輝かせた。
「ハジメくん……! 私、勝てたよ!」
「ああ。最後まで自分で考えて、よく食らいついた」
「えへへ……」
香織は嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、ユエも小さく頷く。
「香織、強くなった」
「うん! すごく格好よかったです!」
シアが勢いよく香織へ抱きつく。
「おおっ、シアちゃん!?」
「香織さん、すごいです! 私、途中で何度もハラハラしました!」
「妾も見事な戦いぶりだったと思うぞ。特に最後の攻めは、相手の切り札を真正面から打ち破る、実に気持ちのよい一撃じゃった」
ティオも満足げに笑った。
メイルはそんな彼女たちを見つめ、ゆっくりと微笑んだ。
「あなたは、ただ優しいだけの人ではありませんでしたね。守るために戦い、傷ついても立ち上がる。その強さを、私は認めます」
彼女が手を掲げると、決闘場の中央にあった水晶が輝き始めた。
「迷宮攻略の報酬として、あなたにこれを授けましょう」
水晶の中から、一つの金色の器が浮かび上がった。
側面には古代文字が刻まれ、中央には天秤を思わせる紋様がある。
それは、神の力を封じるために造られた七つの秘宝の一つ。
千年アイテム――千年秤。
「これが……千年アイテム?」
香織が息を呑む。
「はい。人の心と魂、そして選択の重さを見定めるために遺されたものです。決して、誰かを支配するために使ってはなりません」
メイルは千年秤を香織の手に載せた。
「あなたなら、この力を正しく扱えるでしょう」
香織は両手でそれを受け取り、深く頭を下げた。
「ありがとうございます。大切にします」
千年秤が淡い光を放つ。
同時に、遺跡全体を覆っていた魔法陣が順に輝き、通路の奥に出口が開いた。
「これで、私の役目も終わりです」
メイルは穏やかに言った。
「あなた方の道の先に、少しでも多くの希望があることを願っています」
ハジメは彼女を見据えた。
「神をぶっ潰す。そいつが何を企んでようと、もう好き勝手にはさせねぇ」
「……ええ。あなたなら、そう言うと思いました」
メイルは静かに微笑んだ。
こうして、海底遺跡の迷宮攻略は完了した。
神がもたらした悲惨な記憶を見せつけられた彼らは、それでも自分たちの意志を曲げることなく、次の道へ進むことを選んだのだった。
迷宮から戻ったハジメたちは、エリセンで数日を過ごした。
千年秤を手に入れた香織は、その力について調べながら、ハジメたちの旅に改めて加わる決意を固めていた。
ユエとシアは装備の点検を行い、ティオは新たなデュエルのためにデッキを調整する。
ハジメは次の迷宮への手掛かりを整理し、帰還の方法についても考えを巡らせていた。
そして、その一方で。
「パパ……」
ミュウが、ハジメの服の裾を握っていた。
彼女の母、レミアはすぐそばにいる。
ミュウが本来帰るべき場所も、今はもう目の前にある。
それでも、別れの時が近づいていることを、ミュウは理解していた。
「ミュウも、いっしょに行きたい……」
ハジメは、すぐには答えなかった。
ミュウを守るために戦うことはできる。
しかし、これから先の旅は、今まで以上に危険になる。
神の使徒。魔人族。大迷宮。そして、世界の理そのものを弄ぶ存在。
これまでのように、何があっても自分の腕の中に置いておけるとは限らない。
まして、ミュウはまだ幼い。
彼女を危険な場所へ連れていくことが、本当に正しいのか。
答えは、すでに出ていた。
「ミュウ」
ハジメは膝をつき、彼女と目線を合わせた。
「お前は、ここでお母さんと暮らすんだ」
「……いや」
ミュウの目に涙が浮かぶ。
「パパと、いっしょがいい……」
「分かってる」
ハジメは、ミュウの小さな手を握った。
「俺だって、お前と離れたいわけじゃない」
「じゃあ……!」
「でも、これから先は本当に危険なんだ。お前を連れていけば、俺たちが守り切れないことだってある」
ミュウは唇を震わせた。
ハジメは言葉を続ける。
「お前には、帰る場所がある。お母さんがいて、お前を大切に思ってくれる人たちがいる。そこを捨ててまで、俺たちについてくる必要はない」
「……パパは、ミュウのこと、きらいになったの?」
「なるわけねぇだろ」
ハジメは即座に答えた。
「お前は俺の大切な家族だ。だからこそ、ここにいてほしいんだ」
ミュウの頬を涙が伝った。
「……パパ……」
レミアがそっと娘の肩に手を置いた。
「ミュウ。ハジメさんたちは、これから世界を救うための旅を続けるのです。あなたを危険から遠ざけたいという気持ちも、分かってあげてください」
「でも……でも……」
「寂しいわよね」
レミアはミュウを抱きしめた。
「お母さんも、あなたが寂しいのは分かります。でも、ここに帰ってきてくれたことが、何より嬉しいの」
ミュウは母の胸に顔を埋めた。
ハジメはしばらくその姿を見つめていたが、やがて一つの約束を口にした。
「ミュウ」
彼女が顔を上げる。
「俺たちの旅が終わったら、お前を俺の世界へ連れていく」
「……ほんと?」
「ああ。俺が元の世界に帰る方法を見つけて、みんなと一緒に帰れるようになったら、そのときはお前も連れていく。約束だ」
「……パパの、いた世界?」
「ああ。今まで話してなかったことも、見せてやる。こっちにはないものが山ほどあるぞ」
ハジメは少しだけ笑った。
「ただし、危険な場所には連れていかない。そこは約束してくれ」
ミュウは涙を拭い、小さく頷いた。
「……うん。ミュウ、いい子で待ってる」
「よし」
ハジメはミュウの頭を撫でた。
「その代わり、俺からもプレゼントがある」
彼が取り出したのは、小さな箱だった。
箱を開くと、中にはミュウの身体に合わせた小型のデュエルディスクが収められていた。
白と水色を基調にした、貝殻と波を思わせる柔らかな曲線。腕に装着する部分は軽量化され、幼いミュウでも無理なく使えるように設計されている。
カードを差し込む部分には、小さな魚の模様が刻まれていた。
「これは……?」
「お前専用のデュエルディスクだ」
ハジメはそれを取り出し、ミュウの腕にそっと装着した。
「普通のデュエルディスクは、お前には大きすぎるからな。重さも動作も、子供向けに調整してある。カードを差し込むときも、力を入れなくていい」
ディスクの表面に、小さな光が走る。
「まだ本格的な決闘は難しいかもしれないが、使い方は少しずつ覚えればいい。お前がもっと大きくなったら、一緒にデュエルしよう」
ミュウは、目を丸くしてデュエルディスクを見つめていた。
「ミュウの……?」
「ああ。世界に一つだけの、お前のデュエルディスクだ」
「……パパが、作ってくれたの?」
「俺以外に誰が作るんだよ」
ハジメは照れ隠しのように肩をすくめた。
「大切に使えよ。壊したら直してやるが、無茶な使い方はするな」
ミュウはデュエルディスクを両手で抱きしめた。
「ありがとう……パパ……!」
彼女の目から、再び涙がこぼれた。
けれど、今度の涙には、喜びも混じっていた。
「ミュウ、これでパパと、いつでもデュエルできる?」
「ああ。いつか必ずな」
「約束……だよ?」
「約束だ」
ハジメは小指を差し出した。
ミュウは自分の小指を絡める。
二人の指が結ばれた瞬間、ミュウはとうとう我慢できなくなったように、ハジメへ飛びついた。
「パパぁっ!」
「おっと……!」
ハジメは彼女を抱き上げ、しっかりと抱きしめた。
「……ミュウ、いい子で待ってろよ」
「やだ……パパ、いっちゃやだぁ……!」
小さな腕が、ハジメの首に回される。
ハジメは目を閉じ、彼女の背中を優しく撫でた。
「……悪いな。連れていってやれなくて」
「パパは、わるくない……!」
ミュウは首を横に振る。
「ミュウ、パパがだいすき……! シアおねえちゃんも、ユエおねえちゃんも、ティオおねえちゃんも、カオリおねえちゃんも……みんな、だいすき……!」
「……ああ」
「だから……ぜったい、かえってきて……!」
その言葉に、ハジメは一瞬だけ表情を歪めた。
約束することは簡単だ。
だが、この世界では、どれほど強く願っても、すべてが思い通りになるわけではない。
それでも。
ハジメは、ミュウの額に自分の額をそっと寄せた。
「必ず帰ってくる。俺は約束を破らねぇ」
その声には、揺るぎない決意があった。
「だから、お前も元気でいろ。お母さんを困らせるなよ」
「……うん……!」
ミュウは涙を拭きながら、何度も頷いた。
やがて、ハジメは彼女をレミアへと託した。
レミアは娘を抱きしめ、ハジメへ深く頭を下げた。
「ミュウを救ってくださったこと、そして、ここまで連れてきてくださったこと……本当に、ありがとうございました」
「礼はいらねぇよ。俺が勝手にやったことだ」
「それでも、感謝しています。ミュウがあなた方と過ごした時間は、きっとこの子の一生の宝物になるでしょう」
ハジメは何も言わず、静かに頷いた。
ユエが隣へ歩み寄り、ミュウの頭を撫でる。
「ミュウ。今度会うときまで、元気でいて」
「ユエおねえちゃん……」
「約束」
ユエは小指を差し出した。
ミュウは涙を浮かべながら、その指に自分の指を絡める。
シアもしゃがみ込んだ。
「ミュウちゃん、帰ってきたら、いっぱい遊びましょうね! 私、もっともっと強くなってますから!」
「シアおねえちゃん……」
「それに、ウサギのぬいぐるみとか、可愛い服とか、いっぱいお土産を持ってきます!」
「……ほんと?」
「はい! 約束です!」
ティオもミュウの前に膝をついた。
「ミュウ。妾も、お主に恥じぬよう、もっと強くなっておくぞ。次に会うときは、胸を張ってお主を抱き上げられるようにな」
「ティオおねえちゃん……」
ティオは優しく微笑み、ミュウの頬に触れた。
「寂しくなったら、母君に甘えるとよい。無理に我慢する必要はないのじゃ」
香織も、涙をこらえながらミュウを抱きしめた。
「ミュウちゃん、また会おうね。今度は、もっといろんなお話をしよう」
「カオリおねえちゃん……!」
ミュウは一人ずつに抱きつき、何度も別れを惜しんだ。
最後に、もう一度ハジメのもとへ駆け寄る。
「パパ!」
「ん?」
「……だいすき!」
ハジメは、少しだけ困ったように笑った。
「ああ。俺もだ」
彼はミュウの頭を最後にもう一度撫でると、背を向けた。
振り返れば、きっと足が止まる。
だから、歩き出す。
ユエが隣に並び、シアとティオ、香織が続いた。
背後から、ミュウの声が響く。
「パパー! みんなー! ぜったい、またねー!」
ハジメは足を止めず、片手を高く掲げた。
「ああ! またな、ミュウ!」
その声が届いたのか、ミュウは大きく手を振り続けた。
涙で顔を濡らしながら、それでも笑顔を浮かべて。
ハジメたちの姿が遠ざかっていく。
やがて見えなくなっても、ミュウはしばらくその場を動かなかった。
彼女の腕には、小さなデュエルディスクが輝いていた。
それは、離れていても繋がっているという、約束の証だった。
そして、ハジメたちもまた、決して振り返らなかったわけではない。
誰もが胸の奥に、ミュウの泣き顔と笑顔を刻みつけていた。
守りたいものがある。
帰る場所がある。
そして、いつか再び会うと約束した大切な家族がいる。
だからこそ、彼らは前へ進む。
神がどれほど理不尽な運命を押しつけようとも、自分たちの意志で未来を選び取るために。
海底遺跡で得た千年秤を携え、ハジメたち――赤き竜の使徒、5D'sは、次なる大迷宮を目指して歩き始めた。
その旅の先に何が待ち受けているのか。
まだ誰にも分からない。
ただ一つ確かなのは、彼らにはもう、守るべき約束が増えていたということだった。