魔王城の一角に設けられた訓練場。
そこには、かつてハジメがこの世界で作り上げた決闘用マシーンが並んでいた。
通常の決闘用マシーンは、設定されたデッキと戦術パターンをもとに対戦相手を再現する。だが、ハジメが今回用意したものは、それとは根本から違っていた。
「……よし。これでいい」
機械の制御盤を操作しながら、ハジメが呟く。
周囲にはユエを除いた仲間たちが集まっていた。ユエは神域に囚われている。だからこそ、彼らは彼女を救うための準備を一日たりとも無駄にするわけにはいかなかった。
「ハジメさん、何を作ったんですか?」
シアが興味深そうに機械を覗き込む。
「決闘用マシーンの改造だ。単純に強いデッキと戦うだけじゃ、今回の特訓には足りねぇからな」
「というと?」
「お前たちが使うデッキには、それぞれ本来の持ち主がいる。カードの組み合わせにも、戦術にも、その持ち主が長年培ってきた考え方が染みついている」
ハジメは制御盤を指で叩いた。
「それを理解せず、カードの効果だけを覚えても、本当の意味で使いこなしたことにはならない」
画面に、いくつものデッキデータが表示される。
「そこで、俺が以前いた世界のデュエリストたちのデータをもとに、姿だけじゃなく思考パターンまで再現できるようにした。カードの選択、展開の優先順位、相手の手札や伏せカードを読む判断。そういう部分まで含めた対戦シミュレーターだ」
「つまり……」
雫が画面を見つめる。
「私たちが使っているデッキの、本来の持ち主と戦えるということですか?」
「ああ。ただし、本人を召喚したわけじゃない。あくまで俺が知っている決闘の記録と戦術を再構成した疑似人格だ。本人そのものだと思い込むなよ」
「でも、その人の考え方を再現しているなら、かなり手強そうですね……」
香織が緊張した面持ちで言った。
「当然だ。お前たちのデッキを一番うまく使える奴らを相手にするんだからな」
ハジメは各機械にデッキデータを入力していく。
シアの前には、パワー・ツール・ドラゴンデッキを操る少年。
ティオの前には、レッド・デーモンズ・ドラゴンを中心とするデッキの持ち主。
香織の前には、エンシェント・フェアリー・ドラゴンを使う少女。
雫の前には、ブラックフェザーを操る漆黒のライダー。
そしてハジメ自身の前には、星屑の竜を使う決闘者のデータが表示された。
「お前たちのデッキを、ただの借り物で終わらせるな。三日後、神域で戦うのは本来の持ち主じゃない。お前たち自身だ」
ハジメは振り返り、全員を見渡した。
「自分のデッキが何を得意とし、何を苦手とするのか。どういう状況で真価を発揮するのか。それを身をもって理解しろ」
そして、訓練場の中央を指差した。
「――特訓開始だ」
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「よーし! いっくぞー!」
訓練場に元気な声が響いた。
シアの対戦相手として再現されたのは、龍亜。
小柄な少年は、パワー・ツール・ドラゴンデッキを構え、目を輝かせていた。
『ねえ、君がパワー・ツール・ドラゴンを使うんだって?』
「はい! ハジメさんから受け継いだ、大事なデッキです!」
『じゃあ、どっちがパワー・ツールをうまく使えるか勝負だね!』
龍亜の笑顔に、シアも笑顔で応じる。
「望むところです!」
デュエルが始まった。
先攻は龍亜。
『僕のターン! 《D・モバホン》を召喚!』
モバホンの効果でサイコロを振り、出た目に応じた枚数のカードをデッキの上からめくる。龍亜は結果を利用してモーフトロニックモンスターを展開し、さらに《D・ラジカッセン》を場に送り込んだ。
『モーフトロニックモンスターは、表示形式によって能力が変わるんだ! 攻める時と守る時で、使い方が違うんだよ!』
シアは龍亜の展開を見ながら、眉を寄せた。
パワー・ツール・ドラゴンは装備魔法を扱うシンクロモンスターだ。だが、ただ装備魔法を集めればいいわけではない。
装備するモンスター、攻撃する順番、相手の除去をどうかわすか。
その選択が勝敗を分ける。
「シアのターン! 《D・ラジオン》を召喚します!」
シアはモンスターを並べ、チューナーを含むレベルの合計を確認する。
「チューナーモンスターと、チューナー以外のモンスターをチューニング!」
光が重なり、機械仕掛けの竜が姿を現した。
「シンクロ召喚! 《パワー・ツール・ドラゴン》!」
パワー・ツール・ドラゴンが雄叫びを上げる。
「さらに、装備魔法を探します!」
シアはパワー・ツール・ドラゴンの効果を発動。デッキから装備魔法を三枚選び、相手にそのうち一枚をランダムに選ばせる。
選ばれた装備魔法を手札に加える。
「《団結の力》を発動! パワー・ツール・ドラゴンに装備します!」
シアは装備魔法を使い、攻撃力を強化した。
しかし、龍亜は慌てない。
『攻撃力を上げてきたね! でも、僕のモンスターだって負けないよ!』
龍亜はモーフトロニックの効果を利用して反撃。シアはパワー・ツール・ドラゴンを守るために装備魔法の使い方を工夫するが、龍亜はその隙を突き、シアの展開を崩していく。
「くっ……! 装備魔法を使えば強くなれます。でも、装備魔法を引くことだけに集中していたら……!」
シアは歯を食いしばった。
パワー・ツール・ドラゴンを呼ぶことが目的になっていた。
だが、本来の持ち主は違う。
龍亜はモーフトロニックの多様な効果を使い、攻める時と守る時を切り替えている。状況に応じてモンスターの表示形式を変え、次のターンへつなげる。
シアは、パワー・ツール・ドラゴンのカードを見つめた。
「……そうか。装備魔法は、強くするためだけじゃない」
守るため。
次の攻撃につなげるため。
相手の動きを制限するため。
自分の戦い方を作るための道具なのだ。
「私のターン! パワー・ツール・ドラゴンの効果を使います!」
シアは再び装備魔法を確保し、状況に応じてモンスターを強化する。
無理に一撃で勝とうとはしない。
相手の攻撃を受け止め、必要なカードを残し、次のターンに勝負をかける。
最後には、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃と、残ったモンスターたちの連携によって、龍亜のライフを削り切った。
『やったね! パワー・ツールを、ちゃんと仲間として使えてたよ!』
敗北した龍亜が笑顔で言う。
シアは肩で息をしながら、パワー・ツール・ドラゴンを見上げた。
「……ありがとうございます。私、もっとこの子のことを理解します!」
機械が停止する。
シアはデッキを胸に抱きしめた。
「ハジメさんから受け継いだ力ですから。絶対に、最後まで使いこなしてみせます!」
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次の決闘場に現れたのは、白いコートをまとった男だった。
ジャック・アトラス。
王者の風格を持つ男は、ティオを見下ろすように笑った。
『貴様が、レッド・デーモンズ・ドラゴンを使うという女か』
「いかにも。妾こそ、ハジメからこのデッキを受け継いだ者じゃ」
『ならば見せてみろ。貴様に王者の竜を扱う資格があるかどうかを!』
「言われずとも!」
ティオは堂々と胸を張った。
「妾の魂を、その目に焼きつけるがよい!」
先攻はジャック。
『俺のターン! 《クリムゾン・リゾネーター》を特殊召喚!』
自分のフィールドにモンスターが存在しないことを利用し、クリムゾン・リゾネーターを特殊召喚する。
続いて、レベル4のモンスターを召喚。
『レベル4のモンスターに、レベル2のチューナーをチューニング!』
炎が渦巻き、レベル6のシンクロモンスターが現れる。
『シンクロ召喚! 《レッド・ライジング・ドラゴン》!』
レッド・ライジング・ドラゴンの効果で墓地のリゾネーターを蘇生。さらに条件を整え、ジャックはレッド・デーモンズ・ドラゴンへつながる布陣を作り上げる。
『王者の力を見せてやる! シンクロ召喚! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》!』
赤き竜が咆哮する。
ティオの目が輝いた。
「おお……! やはり、何度見ても素晴らしい竜じゃ!」
『感心している暇があるのか? 王者の竜の力を受けてみろ!』
ジャックは攻撃を仕掛け、ティオのモンスターを一掃する。
レッド・デーモンズ・ドラゴンは守備表示モンスターを破壊する能力を持つ。守備に頼る戦術は、ジャックの前では通用しにくい。
ティオは攻撃を受けながらも、冷静に墓地と手札を確認した。
「なるほど……。ただ高レベルの竜を呼べばよいわけではない。レッド・デーモンズ・ドラゴンを呼ぶまでの流れ、その後の戦術まで考える必要があるのじゃな」
ティオはレッド・デーモンズ・ドラゴンのカードを手に取る。
「ならば、妾も遠慮はせぬ!」
彼女はリゾネーターを中心に展開し、レッド・ライジング・ドラゴンの効果を利用して墓地のチューナーを蘇生。
さらにチューナーとシンクロモンスターを重ね、より高いレベルの竜へとつなげていく。
「シンクロ召喚! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》!」
赤き竜と赤き竜が向かい合った。
しかし、ジャックは笑う。
『それで終わりか? 王者のデッキは、切り札を出して終わるものではない!』
ジャックは次のターン、リゾネーターの効果とシンクロ素材の組み合わせを利用し、さらなる高レベルのシンクロ召喚へとつなげる。
『燃え上がれ! 王者の魂! 《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》!』
レッド・デーモンズ・ドラゴンとチューナー二体を素材として、強大な竜が姿を現した。
ティオの瞳が見開かれる。
「おおっ! これこそ、ハジメが語っておった王者の切り札か!」
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンは墓地のチューナーの数に応じて攻撃力を高め、攻撃を無効にする能力も持つ。
その圧倒的な力の前に、ティオは苦戦を強いられた。
だが、彼女は怯まない。
「王者とは、ただ力を誇示する者ではない……。己の力を信じ、勝利までの道を切り開く者じゃ!」
ティオは自分の手札と墓地を確認し、残されたカードを最大限に活用する。
相手の攻撃を無理に受け止めず、次のターンへつなぐ。
そして、最後の局面で、ティオは再びレッド・デーモンズ・ドラゴンをシンクロ召喚した。
「ハジメから受け継いだ力、そして妾自身の誇り! そのすべてを込めて――行くぞ!」
攻撃が交錯する。
結果は、ティオの敗北だった。
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの圧倒的な力を前に、最後の一手が届かなかったのである。
だが、ティオは悔しそうに歯を食いしばりながらも、ジャックを見上げた。
「……見事じゃ。妾の敗北じゃな」
『敗北を認めるか』
「当然じゃ。負けたものを勝ったとは言わぬ」
ティオは胸を張った。
「だが、次はこうはいかぬ。妾は必ず、己の戦術を磨き上げる。そしていつか、王者の竜と共に、お主を打ち破ってみせようぞ!」
ジャックは満足そうに笑った。
『いいだろう。その言葉、忘れるな。竜の力を受け継ぐならば、敗北を恐れるな。敗北から何を学ぶか、それが次の勝負を決める!』
決闘用マシーンが停止する。
ティオはレッド・デーモンズ・ドラゴンのカードを握りしめた。
「……次は、必ず勝つぞ」
その瞳には、王者への敬意と、次こそ勝利するという強い意志が宿っていた。
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香織の前に現れたのは、柔らかな雰囲気をまとった少女だった。
龍可。
彼女のフィールドには、エンシェント・フェアリー・ドラゴンのカードが置かれている。
『あなたが、そのカードを使っているのね』
「はい。私は白崎香織です。よろしくお願いします!」
『うん。じゃあ、始めよう』
龍可は優しく微笑んだ。
だが、決闘が始まると、その表情は真剣なものへ変わる。
龍可の戦術は、単にエンシェント・フェアリー・ドラゴンを呼ぶだけではない。フィールド魔法を活用し、モンスターの展開を補助しながら、状況を整えていく。
香織もまた、同じ竜を中心にしたデッキを使う。
だが、彼女はまだ自分の身体と新しい戦い方を完全には把握できていなかった。
「私のターン! モンスターを召喚して……」
香織は展開を進めようとする。
しかし、龍可はフィールド魔法を活用し、香織の計算を崩していく。
『エンシェント・フェアリー・ドラゴンは、フィールド魔法と相性がいいの。だけど、フィールド魔法を使うことだけに集中すると、相手の動きが見えなくなるよ』
「……!」
龍可はフィールド魔法を破壊する効果を使い、条件を満たして新たなフィールド魔法を手札に加える。
ただし、この効果はフィールド魔法を破壊した時に相手へダメージを与えるものではなく、破壊したフィールド魔法の数に応じた処理とサーチを行う効果だ。龍可は、その性質を理解した上で、フィールドを組み替えていた。
「フィールドを変えることで、相手の戦術も変わる……。それなら、私も自分の場だけを見るわけにはいかないんですね」
『そう。あなたが守りたいものは何?』
龍可の問いに、香織は一瞬、言葉を失った。
守りたいもの。
仲間たち。
ハジメ。
そして、ユエを取り戻すために戦うみんな。
「……私は、みんなを守りたいです」
『なら、相手を倒すことだけを考えないで。守るために何を残すのか、次に何をできるようにするのか。それを考えてみて』
香織は深く息を吸った。
次のターン、彼女は無理にモンスターを展開しなかった。
フィールド魔法を維持することと、手札を残すことを優先する。
そして、相手の展開を見てから、エンシェント・フェアリー・ドラゴンをシンクロ召喚した。
「シンクロ召喚! 来てください、エンシェント・フェアリー・ドラゴン!」
優しい光がフィールドを包む。
香織はその効果を使い、フィールド魔法を破壊して新たなフィールド魔法を手札に加える。さらに条件を満たし、手札からモンスターを特殊召喚して反撃へつなげた。
龍可の表情が明るくなる。
『そう、それでいいの。カードの効果を覚えるだけじゃなくて、どうしてそのカードがあるのかを考えるの』
香織は、エンシェント・フェアリー・ドラゴンと共に戦い続けた。
最後は僅差の勝利。
決闘が終わると、香織は深く頭を下げた。
「ありがとうございました。私、まだまだ知らないことがたくさんあります。でも、この竜と一緒に、もっと強くなります!」
『うん。きっと大丈夫』
龍可は微笑んだ。
『その竜は、あなたを信じていると思うよ』
香織はカードを胸元に抱きしめた。
「……はい!」
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「へっ、俺のブラックフェザーを使う奴がいるって聞いたが……お前か」
クロウ・ホーガンは、雫のデッキを見て笑った。
「はい。八重樫雫です。よろしくお願いします」
「堅いな。まあいい。ブラックフェザーは、ただ強いモンスターを並べるだけのデッキじゃねえ。仲間をつないで、相手の隙を突くデッキだ。そこを分かってるか?」
「……分かっているつもりです」
「つもり、ね。じゃあ、見せてもらおうか!」
先攻はクロウ。
クロウは手札からブラックフェザーを特殊召喚し、別のモンスターを通常召喚。チューナーを含むレベルの合計を整え、シンクロ召喚へとつなげた。
「《BF-アームズ・ウィング》をシンクロ召喚!」
クロウの展開は速い。
ブラックフェザーの特殊召喚条件を利用して場を整え、必要なシンクロモンスターを呼び出す。
雫も同じように展開するが、クロウは雫の手札とフィールドから、次に何を狙っているかを読み取っていく。
「お前、強いカードを出すことばかり考えてねえか?」
「……!」
「ブラックフェザーは、手札から仲間を呼び出して、展開をつなげるのが強みだ。けど、特殊召喚できるからって、何でも出せばいいわけじゃねえ。次のターンに何ができるかまで考えろ!」
クロウは攻撃を仕掛け、雫のモンスターを次々と突破する。
雫は苦戦しながらも、少しずつ戦術を変えた。
相手の展開を止めるために手札を使い切るのではなく、次のターンに必要なチューナーを残す。
攻撃力の高いモンスターを並べることだけを目的とせず、相手の動きを制限しながら、シンクロ召喚へつなげる。
「私のターン! チューナーと、チューナー以外のモンスターをチューニング!」
黒い翼が舞い上がる。
「シンクロ召喚! 《ブラックフェザー・ドラゴン》!」
ブラックフェザー・ドラゴンが現れた。
雫は、その効果を使うタイミングを慎重に見極める。
相手が効果ダメージを与えようとした時、ブラックフェザー・ドラゴンの効果を使ってダメージを防ぎ、相手の攻撃力を下げるための楔を打ち込む。
「……今です!」
雫は攻撃の順番を変え、クロウの防御を崩していく。
最後は、ブラックフェザー・ドラゴンと仲間たちの連携でクロウのライフを削り切った。
「……勝てた」
「おう。上出来だ」
クロウは笑った。
「最初は、強いカードを出すことに夢中になってた。だが、途中からは違った。ブラックフェザーの仲間をどうつなぐか、相手の動きをどう止めるか、ちゃんと考えていた」
「ありがとうございます」
「礼を言うのはまだ早いぜ。三日後には、もっと厄介な相手が待ってるんだろ?」
雫は頷いた。
「はい。だから、もっと強くなります」
「なら、ブラックフェザーを信じろ。仲間を信じろ。自分の判断を信じろ。勝つために必要なのは、最強のカードだけじゃねえんだ」
雫は、ブラックフェザー・ドラゴンのカードを見つめた。
「……はい。私は、自分の判断で戦います」
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最後の決闘場。
ハジメは、静かにデュエルディスクを装着した。
向かいに立つのは、不動遊星。
紫色のジャケットをまとった青年は、スターダスト・ドラゴンのカードを手にしていた。
『君が、俺のデッキを使っているんだな』
「ああ。まあ、俺の方が使っていた時間は長いかもしれねぇが」
『そうか。それなら、なおさら確かめたい。君がそのカードをどう理解しているのか』
遊星はデュエルディスクを構えた。
『デュエル!』
「デュエル!」
先攻は遊星。
『俺のターン。《ジャンク・シンクロン》を召喚! 効果で墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚する!』
遊星は墓地のモンスターを蘇生し、レベルを調整する。
『レベル2のチューナーと、レベル2のモンスターをチューニング! シンクロ召喚、《フォーミュラ・シンクロン》!』
さらにドロー効果を使い、手札を整える。
遊星は無理に高レベルのモンスターを出そうとはしない。
次のターンに必要なカードを残し、墓地を整え、シンクロ召喚の選択肢を増やしていく。
「……相変わらず、堅実な展開だな」
『カードを使い切ることが、最善とは限らないからな』
遊星は答えた。
『相手のターンに何が起こるか分からない。だからこそ、次の選択肢を残しておく』
ハジメは小さく笑った。
「なら、俺も遠慮なくいくぜ」
ハジメはジャンク・シンクロンを召喚し、墓地のモンスターを蘇生。さらにレベルを調整してシンクロ召喚へつなげる。
「シンクロ召喚! 《ジャンク・ウォリアー》!」
ジャンク・ウォリアーが拳を構えた。
ハジメはその攻撃力を強化し、遊星のモンスターへ攻撃を仕掛ける。
しかし、遊星は伏せカードを使い、ハジメの攻撃を受け流す。
『攻撃を通すことだけを考えていると、こうなる』
「分かってるさ。お前がそういう奴だってことはな」
ハジメは手札を確認した。
遊星の戦術は、単純な力比べでは崩せない。攻撃を防ぎ、墓地を利用し、次のターンへつなげる。相手の選択肢を一つずつ削りながら、最後には切り札へと到達する。
それは、ハジメ自身が何度も使ってきた戦術だった。
だからこそ、遊星の判断が読める。
だが、遊星もハジメの考えを読んでいた。
『君は、俺のデッキを知り尽くしている。だからこそ、俺が何をするか分かっているつもりになっているんじゃないか?』
「……!」
『カードの知識があることと、今この瞬間に最善の選択ができることは違う』
ハジメは、かつて自分がミュウに言った言葉を思い出した。
知っていることと、使いこなせることは違う。
「……なるほどな。こいつは手厳しい」
遊星はシンクロ召喚を重ね、ついにスターダスト・ドラゴンを呼び出した。
『集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 《スターダスト・ドラゴン》!』
星屑の竜が姿を現す。
ハジメの表情が、わずかに和らいだ。
「……やっぱり、こいつはいい竜だ」
『君も、そう思うのか』
「ああ。だから、俺はこいつと一緒に戦ってきた」
ハジメはカードを掲げる。
「俺のターン! チューナーと、チューナー以外のモンスターをチューニング!」
光が重なる。
「シンクロ召喚! 《スターダスト・ドラゴン》!」
二体の星屑の竜が、フィールドで向かい合った。
遊星は笑った。
『なら、ここからが本番だ』
遊星はフォーミュラ・シンクロンとスターダスト・ドラゴンを組み合わせる条件を整え、相手ターンでのシンクロ召喚を狙う。
ハジメもまた、シンクロチューナーを利用してアクセルシンクロへとつなげる。
互いに、相手の伏せカードと墓地の状態を読みながら、慎重にカードを使う。
遊星が切り札を出せば、ハジメもまた新たな竜を呼び出す。
最後の局面。
ハジメはクリアマインドへと意識を集中させた。
「集いし星が、一つとなる時、新たな絆が未来を照らす!」
シンクロチューナーとスターダスト・ドラゴンが光に包まれる。
「アクセルシンクロ召喚! 《シューティング・スター・ドラゴン》!」
星屑の竜が進化する。
遊星もまた、次の一手を用意していた。
だが、ハジメは遊星の戦術を読み、攻撃を無理に通そうとはしなかった。
シューティング・スター・ドラゴンの効果でデッキの上からカードを確認し、チューナーの枚数に応じて攻撃回数を決める。
そして、遊星の反撃に備え、必要なカードを残す。
『……見事だ』
遊星は頷いた。
『君は、俺のデッキを理解している。だが、それ以上に、自分の戦い方を持っている』
「……お前にそう言われると、悪い気はしねぇな」
決闘は最後まで互角に近い攻防を続けた。
最終的にはハジメが僅差で勝利したが、彼は勝ち誇ることなく、遊星へ手を差し出した。
「いい決闘だった」
『ああ。君なら、きっと大丈夫だ』
遊星はその手を握り返す。
『大切なのは、カードを信じることだけじゃない。カードを使う自分自身を信じることだ。君が守りたいものを見失わなければ、どんな困難にも立ち向かえる』
「……ああ。分かってる」
ハジメは、スターダスト・ドラゴンのカードを見つめた。
ユエを取り戻す。
その決意は、もう揺らがなかった。
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残る時間は、二日目の夜から三日目の朝まで。
ハジメは、光輝、鈴、龍太郎、清水を、それぞれのデッキと因縁のあるデュエリストのシミュレーターへ送り込んだ。
光輝の相手は、E・HEROを使いこなす十代の戦術を再現した疑似人格。
鈴の相手は、オシリスの天空竜を中心とするデッキを操る遊戯の戦術を再現した疑似人格。
龍太郎の相手は、城之内克也。
清水の相手は、インフェルニティを操る鬼柳京介。
どれも、簡単に勝てる相手ではなかった。
光輝――E・HEROと向き合う
『融合召喚! 《E・HERO フレイム・ウィングマン》!』
十代の疑似人格は、E・HEROを次々と融合召喚し、光輝の場を崩していく。
光輝もE・HEROを使って反撃するが、展開の順番を誤り、必要な融合素材を先に使ってしまう。
「くそっ……! ここで融合素材を使うべきじゃなかった!」
十代の疑似人格は、光輝の迷いを見逃さない。
『ヒーローは、切り札を出せば勝てるってわけじゃないぜ! 仲間の力をつなげて、最後まで諦めない。それがヒーローだ!』
光輝は、カードを見つめた。
自分は今まで、強いカードを引けば勝てると思っていた。
勇者だから、自分が正しいと思っていた。
しかし、E・HEROは違う。
仲間を組み合わせ、状況を作り、必要な時に切り札を出す。
光輝は、手札を一枚残した。
その一枚が、次のターンに道を開く。
「……そうか。俺は、自分一人で何とかしようとしていたんだ」
光輝は顔を上げた。
「俺のターン! このカードを使って、もう一度融合召喚へつなげる!」
彼は、十代の戦術を学びながら、自分なりの選択を積み重ねていった。
この決闘で光輝は勝てなかった。
だが、最後のターンまで自分の判断を捨てず、十代の疑似人格に一歩も引かなかった。
『いいじゃないか。最初よりずっと良くなったぜ』
光輝は悔しそうに笑った。
「次は勝つ。借りたデッキでも、俺自身の答えを見つけてみせる」
鈴――神のカードを扱う覚悟
鈴の相手は、オシリスの天空竜を中心にしたデッキを操る遊戯の疑似人格だった。
鈴は、オシリスの攻撃力を維持するために手札を残そうとする。
だが、手札を抱え込みすぎて、必要なモンスターを召喚できない。
「うう……! どこでカードを使えばいいの?」
遊戯の疑似人格は、鈴の迷いを見抜いていた。
『神のカードは強力だ。けれど、神を召喚することだけが勝利じゃない』
オシリスの天空竜が姿を現す。
手札の枚数に応じて攻撃力を得る神のカード。
鈴は、その力を維持することばかり考えていた。
しかし、遊戯の疑似人格は、オシリスを守るために他のカードを使い、相手の動きを封じ、手札を増やす手段も組み込んでいた。
『神のカードを信じるなら、神を支える自分の戦術も信じるんだ』
鈴は、恵理のことを思い出した。
友達だった。
今でも、そう思っている。
だからこそ、彼女を止めたい。
けれど、ただ怒りをぶつけるだけでは意味がない。
「……私は、恵理を止める。でも、あの子を止めるために、自分まで見失いたくない」
鈴は手札を一枚使い、盤面を整えた。
オシリスの攻撃力を維持するだけではなく、相手の切り札を止めるためのカードを残す。
最後は僅差で敗北したものの、鈴は神のカードを召喚するだけの戦術から一歩進んだ。
「ありがとう。オシリスを使う覚悟が、少し分かった気がする」
龍太郎――凡骨の意地
龍太郎の前に現れた城之内の疑似人格は、最初から笑っていた。
『よお! お前が俺のデッキを使ってるって? だったら、運も実力のうちってところを見せてもらおうか!』
「望むところだ!」
龍太郎は、城之内のギャンブルデッキを構える。
だが、ギャンブルカードは結果を確実に支配できない。
時の魔術師のコイントスが裏目に出れば、自分のモンスターを失う危険もある。
龍太郎は何度も失敗した。
それでも、彼は笑う。
「くそっ! また失敗か! でも、まだ終わりじゃねえ!」
城之内の疑似人格は、龍太郎の勝負勘を試すように、あえて危険な選択を重ねてくる。
『お前、怖くねえのか? 失敗すりゃ、自分のモンスターが吹っ飛ぶんだぜ?』
「怖いに決まってるだろ!」
龍太郎は声を張り上げた。
「でも、失敗するのが怖いからって、何もやらなかったら勝てねえ! 俺はハジメにデッキを借りた。だから、最後までやるんだ!」
龍太郎は状況を見極め、時の魔術師を使うタイミングを慎重に選んだ。
コイントスは成功。
相手モンスターを破壊し、その元々の攻撃力の合計に応じたダメージを与える。
龍太郎は、残ったモンスターを使って一気に攻め込んだ。
『やるじゃねえか!』
城之内の疑似人格は、嬉しそうに笑った。
『運任せに見えても、勝負を決めるのは最後まで諦めねえ意地だ! お前は、それを分かってる!』
龍太郎は勝利を収めた。
だが、彼は運だけで勝ったとは思わなかった。
危険を理解し、失敗した時の立て直しを考え、勝負に出る瞬間を選んだからこその勝利だった。
「……俺も、少しはデュエリストらしくなれたかな」
清水――インフェルニティの闇と光
最後は、清水と鬼柳京介。
インフェルニティを使う者同士の決闘だった。
『ハンドレスコンボ……それがインフェルニティの真髄だ』
鬼柳の疑似人格は、手札を使い切ることで真価を発揮するカードを次々と展開する。
清水もまた、インフェルニティの戦術を理解している。
だが、彼は自分の過去を思い出すたび、判断が鈍っていた。
自分はかつて、人を傷つけた。
仲間を失い、罪を背負い、ダークシグナーとして戦った。
だからこそ、今度は間違えたくない。
しかし、間違いを恐れすぎれば、何もできなくなる。
『お前は何を恐れている?』
鬼柳の疑似人格が問いかけた。
『失敗か? それとも、自分がもう一度誰かを傷つけることか?』
「……両方だ」
清水は答えた。
「俺は、もう二度と同じことをしたくない。でも、だからといって、何もできずにいるわけにもいかない」
『なら、決めろ。お前は何のためにデッキを握る?』
清水はインフェルニティ・デス・ドラゴンのカードを見つめた。
「……仲間を守るためだ」
彼は手札を使い切り、墓地のカードを利用してインフェルニティの連続展開を開始した。
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを呼び出し、墓地の効果を利用する。
さらに、インフェルニティ・デス・ドラゴンをシンクロ召喚し、相手のモンスターを破壊して反撃へつなげた。
清水は、危険なカードも使った。
だが、無謀に運へ任せるのではなく、失敗した場合の損失を計算し、次の展開に必要なカードを残した。
結果は引き分け。
最後の攻撃が互いの防御に阻まれ、両者とも決定打を与えられなかった。
『悪くない』
鬼柳の疑似人格は、静かに言った。
『過去は消えねえ。だが、それを背負ったまま何をするかは、お前が決められる』
清水は、深く頭を下げた。
「……ああ。俺は、もう逃げない」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
決戦当日の朝。
訓練場には、疲れ切った顔をしながらも、どこか晴れやかな表情を浮かべた仲間たちが集まっていた。
完璧に使いこなせるようになった、と言い切れる者はいない。
光輝は、まだE・HEROのすべてを理解したわけではない。
鈴も、オシリスの天空竜を自在に操れるほど熟達したわけではない。
龍太郎のギャンブルデッキには、まだ不安定な部分が残っている。
清水も、インフェルニティの展開を状況に応じて選び切るには、経験が足りない。
それでも、彼らはこの三日間で大きく変わっていた。
カードの効果を覚えただけではない。
デッキが何を得意とし、何を苦手とするのか。
自分は何を守りたいのか。
そのために、どんな選択をするのか。
それを考えるようになった。
「……全員、集まったな」
ハジメが声をかける。
「はい!」
光輝が答えた。
「それじゃあ、出発……」
「待て」
ハジメが言葉を遮る。
彼は訓練場の奥に置かれていた四つのカバーを指差した。
「お前らに渡すものがある」
「渡すもの?」
鈴が首を傾げる。
ハジメは最初のカバーを外した。
そこに現れたのは、白と黒を基調としたD・ホイールだった。
鋭いフロントカウルと、左右で異なる色の装甲。光と闇が交差するようなデザインが特徴的だった。
「これは……!」
光輝が目を見開く。
「お前のD・ホイールだ。名前は――クロスライトロード」
「クロスライトロード……?」
「光と闇を切り裂く道、って意味だ」
ハジメは淡々と説明した。
「お前はずっと、正義か悪か、正しいか間違っているか、そういう二択で物事を考えがちだった。だが、現実はそんな単純じゃねぇ。光だけを見ていれば、闇に足を取られる。闇だけを見ていれば、進む道を見失う」
ハジメは光輝の肩を軽く叩いた。
「どっちも見た上で、自分で進む道を決めろ。お前の光と闇を切り裂くための名前だ」
光輝はD・ホイールを見つめた。
かつての自分なら、与えられた役割をそのまま受け入れ、勇者として正しい道を進もうとしただろう。
だが、今は違う。
「……ありがとう、ハジメ。俺はもう、誰かに決められた正しさだけを信じたりしない。自分で考えて、自分で道を選ぶ」
「そうしろ」
ハジメは二つ目のカバーを外した。
今度は、赤と黒を基調とした、荒々しくも力強いD・ホイールが姿を現す。
「龍太郎、お前のだ。名前は――デスティニー・リベリオン」
「デスティニー・リベリオン……! かっけえ!」
龍太郎は目を輝かせた。
「自らの運で運命に反逆する、って意味だ」
「運で、運命に反逆……!」
「ギャンブルデッキは、運任せに見える。だが、何も考えずにカードを投げるのと、リスクを理解して勝負に出るのは違う。お前は失敗しても立ち上がれる。なら、その意地で運命をひっくり返してみろ」
龍太郎は、拳を強く握った。
「おう! 俺は運が悪くても諦めねえ! 最後まで勝負して、運命に逆らってやる!」
「その意気だ」
三つ目のカバーが外される。
白を基調とした、優美なD・ホイール。
装甲には純白の翼を思わせる意匠が施され、細部には魔術師の杖を思わせる意匠が組み込まれていた。
「鈴、お前のD・ホイールだ。名前は――ホワイト・マジシャン」
「ホワイト・マジシャン……純白の魔術師、ってこと?」
「ああ」
ハジメは頷いた。
「魔術師は、何もないところから奇跡を起こすわけじゃない。手札をそろえ、状況を見極め、必要な瞬間に力を使う。お前がオシリスを使うなら、なおさらだ」
鈴は白い車体をそっと撫でた。
「……私、恵理と向き合うのが怖いの。まだ友達だと思っている自分がいるから。でも、それを理由に、あの子がしたことを許すわけにはいかない」
「なら、自分の答えを見つけろ。恵理をどう思うかは、お前が決めることだ。誰かに決めてもらうことじゃねぇ」
鈴は目を閉じ、そしてゆっくりと頷いた。
「……うん。ありがとう、ハジメ君。私は、私の意志で恵理と向き合う」
最後のカバーが外された。
そこに現れたのは、紫と黒を基調とした、異様な存在感を放つD・ホイールだった。
鋭い装甲と、夜の闇を思わせる曲線。暗い色彩の中には、どこか神秘的な美しさがあった。
「清水。お前のD・ホイールだ」
ハジメは告げた。
「名前は――ブードゥー・シャングリラ。極夜の楽園、って意味だ」
清水は、その名を静かに繰り返した。
「極夜の……楽園」
「お前は、闇の中にいた時間が長い。だが、闇の中にいたからって、そこから出られないわけじゃない。過去は消えない。罪も消えない。だが、これからどこへ向かうかは、お前が決められる」
清水は、目を伏せた。
「……俺は、自分がしたことを忘れない。誰かを傷つけたことも、仲間を失ったことも。だからこそ、これからは誰かを守るために戦いたい」
「なら、進め。お前自身の意志でな」
清水は、D・ホイールへ手を伸ばした。
「……ありがとう、ハジメ。俺はもう、過去に縛られて立ち止まったりしない」
四台のD・ホイールが並ぶ。
それぞれ違う色。
それぞれ違う形。
それぞれ違う想いを象徴する機体。
クロスライトロード。
デスティニー・リベリオン。
ホワイト・マジシャン。
ブードゥー・シャングリラ。
四人は、自分に与えられたD・ホイールを見つめた。
これは単なる乗り物ではない。
決戦へ向かうための道具であり、自分の意志を形にしたものだった。
「……ハジメ」
光輝が顔を上げる。
「俺たちを、ここまで鍛えてくれてありがとう」
「礼は、勝ってから言え」
ハジメはいつものように素っ気なく答えた。
「神域で何が起きるかは分からない。D・ホイールがあれば全部解決するわけでもない。デッキを覚えたからって、勝てる保証もない」
彼は四人を見渡した。
「だが、三日前のお前たちよりは、確実に前へ進んでいる。そこだけは、俺が保証してやる」
龍太郎が笑った。
「よっしゃ! だったら、あとは本番で見せるだけだな!」
「うん。私も、もう迷わない」
鈴が頷く。
清水も、静かに顔を上げた。
「……今度こそ、俺の意志で戦う」
ハジメは、四台のD・ホイールを一瞥した。
「よし。全員、最終確認をしろ。デッキ、デュエルディスク、装備、D・ホイール。忘れ物は許さねぇぞ」
「はい!」
四人の声が重なった。
決戦まで、残された時間はわずか。
だが、彼らはもう、ただ敵の強さに怯えるだけの者たちではなかった。
自分の弱さを知り、失敗から学び、自分の意志で戦うことを選んだデュエリストたちだった。
ハジメは、仲間たちの姿を見渡す。
シアはパワー・ツール・ドラゴンのデッキを抱きしめ、ティオはレッド・デーモンズ・ドラゴンのカードを手にしている。香織はエンシェント・フェアリー・ドラゴンを、雫はブラックフェザー・ドラゴンを、それぞれの決意と共に握りしめていた。
龍太郎はデスティニー・リベリオンのハンドルを握り、鈴はホワイト・マジシャンの車体に触れ、清水はブードゥー・シャングリラを静かに見つめる。
光輝はクロスライトロードの前に立ち、まっすぐに前を見ていた。
ハジメは最後に、自分のスターダストデッキをデュエルディスクへ収めた。
「……行くぞ」
その声に、全員が頷く。
星屑の竜。
赤き竜。
黒き翼。
古の神。
そして、それぞれの魂を宿したカードたち。
すべての準備は整った。
次に彼らが向かうのは、神の領域。
ユエを取り戻し、エヒトを打ち倒し、この世界の未来を守るための、最後の戦場だった。