「ありふれた遊戯王で世界最強」   作:武藤 桜

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今回はオルクス編最終試練まで書きました。


第七話「最後の試練 神を超える神(前編)」

デュエルで勝利を勝ち取ったハジメは吸血姫と対話していた。

 

「ごめんなさい…。私…、私」

 

「いいんだ。信じてた人に裏切られたら誰だってそうなる。それで、お前の名前は?」

 

「……名前、付けて」

「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

 

 長い間幽閉されていたのならあり得ると聞いてみるハジメだったが、吸血姫はふるふると首を振る。

 

「もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」

「……はぁ、そうは言ってもなぁ」

 

いきなり女の子の名前を考えろと言われても迷うハジメ。

 

女の子は期待するような目でハジメを見ている。ハジメはカリカリと頬を掻くと、少し考える素振りを見せて、仕方ないというように彼女の新しい名前を告げた。

 

「〝ユエ〟なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

「ユエ? ……ユエ……ユエ……」

「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

 

 思いのほかきちんとした理由があることに驚いたのか、女の子がパチパチと瞬きする。そして、相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

こうして、新しい仲間、「ユエ」が加わった。

 

「何か月か前にこのデッキが突然現れたの。私とのデュエルでハジメは分かってるような手つきで進めてた。何で?」

 

「そのデッキもカードも俺が作ったものだからな」

 

「えぇ!?そうなの!?」

 

「長くなるけど俺がどうしてここにいるのか教えよう…」

 

ハジメは語った。自分が転生者であること、転生先で前世で好きだったカードがそもそも存在しないことに嘆きせっせとイラストから少しづつ作っていたこと、ある日この世界にクラスメイト達と共に飛ばされたこと、訓練中にクラスメイトに殺されかけこの奈落の底に落ちたこと。

 

「……ぐす……ハジメ……つらい……私もつらい……」

 

 どうやら、ハジメのために泣いているらしい。ハジメは少し驚くと、表情を苦笑いに変えてユエの頭を撫でる。

 

「気にするな。クラスメイトのことは色々あるけど今はどうでもいい。別に復讐したいとはもう思わない。何とかして家に帰る。今はそれだけだ」

 

「……帰るの?」

「うん? 元の世界にか? そりゃあ帰るさ。帰りたいよ。……色々変わっちまったけど……故郷に……家に帰りたい……」

「……そう」

 

 ユエは沈んだ表情で顔を俯かせる。そして、ポツリと呟いた。

 

「……私にはもう、帰る場所……ない……」

「……」

 

 そんなユエの様子に彼女の頭を撫でていた手を引っ込めると、ハジメは、カリカリと自分の頭を掻いた。

 

 別に、ハジメは鈍感というわけではない。なので、ユエが自分に新たな居場所を見ているということも薄々察していた。新しい名前を求めたのもそういうことだろう。だからこそ、ハジメが元の世界に戻るということは、再び居場所を失うということだとユエは悲しんでいるのだろう。

 

 ハジメは、内心「〝徹頭徹尾自分の望みのために〟と決意したはずなのに、どうにも甘いなぁ」と自分に呆れつつ、再度、ユエの頭を撫でた。

 

「あ~、なんならユエも来るか?」

「え?」

 

 ハジメの言葉に驚愕をあらわにして目を見開くユエ。涙で潤んだ紅い瞳にマジマジと見つめられ、なんとなく落ち着かない気持ちになったハジメは、若干、早口になりながら告げる。

 

「いや、だからさ、俺の故郷にだよ。まぁ、普通の人間しかいない世界だし、戸籍やらなんやら人外には色々窮屈な世界かもしれないけど……今や俺も似たようなもんだしな。どうとでもなると思うし……あくまでユエが望むなら、だけど?」

 

 しばらく呆然としていたユエだが、理解が追いついたのか、おずおずと「いいの?」と遠慮がちに尋ねる。しかし、その瞳には隠しようもない期待の色が宿っていた。

 

 キラキラと輝くユエの瞳に、苦笑いしながらハジメは頷く。すると、今までの無表情が嘘のように、ユエはふわりと花が咲いたように微笑んだ。思わず、見蕩れてしまうハジメ。呆けた自分に気がついて慌てて首を振った。

 

そんなこんなでユエとハジメは協力し合い共に奈落の底をさらに進んでいき、落ちた階層から数えて百層目。完全に何か出てきそうな雰囲気の場所だった。

 

「何が出るか分からない。気を付けろよユエ」

 

「ん!」

 

しばらく進むと魔法陣が出現し、その場に眼鏡をかけた青年が現れた。

 

「僕の名はオスカー・オルクス。この迷宮を作りし者だ」

 

「何!?」

 

「ありえない。この迷宮は私が生まれるよりももっと前にできたもの。その創造主が生きてるはずが…」

 

「僕はこの迷宮の最終試練の為に作り出されたオスカー・オルクスの複製。この迷宮は全ての迷宮を超えたものもの為の迷宮。僕は召喚されると同時に挑戦者のステータスを確認しそれに応じて対応する。どうやら君たちはまだどの迷宮も攻略したないみたいだね」

 

「なるほど。それで、資格が無いから俺達は試練を受けられないってことか?」

 

「いいや。万が一迷宮攻略が足りない場合の措置も考えてある。試練の内容は簡単。僕とライディングデュエルで勝負だ!!」

 

「ライディングデュエルだって!?」

 

「そして、迷宮攻略を一つもしていない君には最初から難易度マックスで相手しよう」

 

「どういうことだ…?」

 

「本来他の迷宮の最終試練でのデュエルで戦うモンスター一体ずつを僕のフィールドに最初から特殊召喚された状態で始める」

 

「何!?」

 

「無論難易度マックスな為先行は君からだ。さぁ、どうする?」

 

「ハジメ!」

 

「大丈夫だ。俺は誰にも負ける気は無い!!!」

 

「いい気がいだね。それじゃぁ、まずは僕のフィールドにこのモンスターを特殊召喚する。来い!!極神王トール!!極神王ロキ!!!」

 

極神王トール ATK3500

 

極神王ロキ ATK3300

 

「マジ…、かよ。星界の三極神」

 

「この世界を支配する存在。創造神エヒト。このカードは神のふざけた遊戯を終わらせるため生み出されたもの…」

 

「どういうことだ…?神のふざけた遊戯だと?」

 

「答えを知りたいなら僕とのデュエルで勝て!!」

 

オスカーが手を掲げると百階層全体が巨大なレース場に変化した。

 

「さぁ、デュエルを始めよう」

 

「あぁ」

 

用意されたDホイールにまたがりデッキをセットした。

 

「「決闘!!!」」

 

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