再スタートキヴォトス   作:猫と兎の総力戦

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評価と感想ください…あとお気に入り登録してくれた人ありがとね!一人だけだけど嬉しかったよ!




高等部一年時代
ハッピーバースデー、そしてありがとう


 前話の最後の出来事から無事にイルカショーを終え、今は水族館の中にあるレストランで夜ご飯を食べている。途中でヒフミがイルカから落ちた時は焦ったが無事イルカに助けられた。やっぱイルカって頭良いんだな。

 

「少し恥ずかしいです…」

「はいはい、機嫌直して」

 

 ご飯を食べ進めつつヒフミを撫でて慰める。さて、もう18時だし最終段階までもうそろそろか。

 料理も万全、飾り付けも完璧、クラッカー…クラッカー?あ、クラッカー用意するの忘れてた。どうしよ、確かここら辺の店であったはず…だけどクラッカーを隠しながら水族館を回るのは無理だよな…

 取り敢えずハナコとセリナちゃんの腕を引っ張り、ヒフミに隠れて作戦会議をする。

 

「すまん、クラッカー買うの忘れてた」

「え、どうするんですか?計画の最終段階までもうすぐですよ?」

「そこで提案が…」

 

 計画の内容はこう、無事水族館を出たあとに私が忘れ物を取ってくると言って近くのコンビニで買ってくる。これなら大丈夫…恐らく…多分…知らんけど…

 

「確かに、それなら行けるかもしれません」

「ではそれで行きましょうか」

 

 作戦会議が終えたのでヒフミの元に戻り、引き続き水族館を見て回る。さて、実は皆も知らない計画が一つだけある。ここの屋上では鯨の水槽があるのだがネット抽選で当たった人しか入れない特別な場所だ。応募数や開催期間が一年に一週間しか開かれないことから伝説の水槽とも呼ばれている。

 そして!私はなんとその抽選に当たったのだ!しかもチケット一枚で最大4人まで入場できるので丁度皆で入れる!そしてそろそろ開場時間!ということで皆の手を引っ張って連れていく。

 

「古食ちゃん?そっちはチケットがないと…」

「フッフッフ…なんとこの度私、チケットが当選しました!」

 

 ヒフミ達は驚いた様子で私に引っ張られるがまま鯨の水槽がある屋上に連れていかれる。可愛い大好きヒフミらぶりー、さてさてそろそろ屋上だ!扉おーぺん!

 

 

 

ボォォオオ!!!!

 

 

 

 扉を開けた瞬間、とても大きな鯨の鳴き声が聞こえる。とてもとても大きな鳴き声、だけど雑さはなく全てを透き通るような圧が私達にかかる。どんな悪状況も忘れてしまいそうな程に神秘的で全てを弾くような鳴き声。

 そして巨大な水槽に悠々と泳ぐ姿がその神々しさに拍車を掛けている。全てを忘れてしまう程の神々しさ、そして巨大な圧。

 

 そこに居るだけで全てを忘れ呑み込まれそうな程に大きく、偉大に見えた。何とも形容し難い存在感、それが私達を覆っていた。

 

「とても…大きくて凄いですね」

「そう…だな」

 

 暫く皆黙って鯨の遊泳鑑賞をしていると閉場時間が迫っていることに気付き、屋上から戻り出入り口近くのお土産屋の前にある椅子に座る。

 しっかし…鯨の遊泳、凄かったな。形容し難いが本当に神々しくて凄かった。凄かったと言ったら凄かった。

 

「古食先輩…?」

「え゛っ、マリーちゃん?」

 

 古食先輩、と久々の呼び方に驚き振り向けばそこにはまさかのマリーちゃんがいた。マリーちゃん…まさかこんな水槽館で会うとは、思わぬ再会だった為マリーちゃんを撫で回してケモミミをモフッていたらセリナちゃんとヒフミにチョップを食らい正気に戻る。

 

 にしてもマリーちゃん成長したなー…小学生の頃は私の胸元食らいまでしかなかったのに今じゃもう私のオデコくらいまで伸びてる。

 それでいてケモミミも小さかったのに大きくなって私は大歓喜だ。もうモフッて吸いたい、絶対に良い匂いする。

 

 そんな変態じみた…というか変態の思考をしていればまたヒフミにチョップを食らう。流石幼馴染、私の思考は看破しているという訳か。*1

 さて、そろそろ本題に入ろうか。実はヒフミとマリーちゃんも私経由でだがよく一緒に遊んでいてそこそこに仲は良いのだ。

 それにしてもマリーちゃん本当に背が伸びたよな〜、これじゃ来年くらいには追い越されそう。まぁ追い越されてもモフるのはやめないけど。それにマリーちゃん頬もモチモチしてたり、抱き締めると反応も可愛かったりで好き。

 

 ヒフミから嫉妬チョップを食らいつつ、マリーちゃんを膝に乗せて撫で回す。それはそうと…

 

「マリーちゃん、私は悲しいよ」

「…?」

「いつの間にか私を越しちゃって、その物は何なのさ」

「えっと…?古食先輩?」

 

 この際ハッキリ言おう、勘の良いガキや大人もお気づきだろうけど、マリーちゃんの胸が成長している。正直言って普通に悲しい、マリーちゃんも、私と同じ貧仲間だと思ってたのにこれだよこれ。

 罰として撫で回しケモミミモフモフの刑に処す!可愛いなぁ…マリーちゃんはね、妹というか…形容し難い。まぁ単純に私の語彙力が低いだけだろうけど、とにかく守りたくなる。守護らねば…!

 あれ、そう言えばそろそろ20時か…マリーちゃんモフりながら片手間にヒフミを慰めてたらまぁまぁな時間も経ったな。

 セリナちゃんとハナコもお土産選び終わったらしいしマリーちゃんを預け、次は私とヒフミがお土産を選ぶ番になる。実は既に決めていたんだよ、店の外からでも見えるくらいにはデカい鯨のぬいぐるみ、私より少し大きいくらい。お値段は実に1万円、普通にめっちゃ高い。

 

 でも浪漫には抗えない。何故なら浪漫だから(?)ヒフミに呆れられつつも購入してハナコ達の所へ戻る。

 大きな鯨のぬいぐるみにセリナちゃんはヒフミ同様に呆れていてハナコは驚いていた。マリーちゃんは意外にも目をキラキラさせ耳もピクピクさせていた。可愛かったので撫で回してモフっておいた。

 

「そういやそろそろ閉店だったな」

「もうそんな時間ですか…」

 

 そろそろ閉店なので水族館から出て車に乗り込む。あと折角だしでマリーちゃんも誘拐して、半強制的に誕生日パーティ計画に参加させる。無論、マリーちゃんの友達にも断ってから誘拐しているので心配無用だ。

 うーむ…でも水族館だけじゃなんか足りない気がする…そうだ、コンビニに行こう。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 と、いう訳でコンビニのエンジェル24に来ました。ここのコンビニは何気に安いし美味いし、あと近いから私のお気に入りのコンビニだ。あと接客も良い。

 

「ソラちゃんおひさ」

「あっ、古食さん。お久しぶりです」

 

 最近は色々あったと思うし最近はここに来れていなかった。因みにいつ接点があったかというと、私が過剰はストレスとかで引きこもってた時にお隣さんだからとこっそり廃棄弁当を届けてくれていたのだ。

 本当にソラちゃんには感謝しかない、廃棄弁当の件だけでもなく相談にも乗ってくれていたのだ。その事で会う度に恩返ししようと試みているのだが、その度にお気持ちだけで大丈夫です。と言われて中々恩返しができない。

 

「そう言えばソラちゃんってまだ一年生でしょ?学業とか大丈夫なの?」

「そこは大丈夫です、通信制で受けてますから」

 

 そういやソラちゃん昔にそんなこと言ってたな。取り敢えずソラちゃんの頭を撫でたり、オデコを指でくるくるして、大量のお菓子やら飲み物を買って車に戻る。

 皆は夜なのも相まって眠そうなので折角だし、鯨のぬいぐるみを枕にさせて寝かせる。皆良い寝顔だ、鯨のぬいぐるみもお値段相当のモフモフ具合だしさぞかし寝心地も良いだろう。

 

 さて…予定時刻は20時刻、そして現時刻は19時、予定より少し早い。別にこのまま帰っても計画に支障はないが、どこぞの筆者さんが文字数稼ぎしたいらしいので少しばかり寄り道をすることにした。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「ここは変わらねぇな〜」

 

 今私は家から逆方向にある丘に車を停めて、ベンチに座りながらさっきエンジェル24で買った物の中から夜食用に買ったサンドイッチとお茶を取り出し、景色を鑑賞する。

 この丘、キヴォトスがよく観望できるんだ。少し昔の2年前、私が引きこもっていた時に連れ出されたのがここだ。連れ出された日から特別な日はヒフミとここでよくピクニックをしながら、ゆったりと過ごしていた。

 ここで計画の復習でもしておこう。まずヒフミ達と遊んで私の家に泊まらせるように仕向ける、今がココだな。そして私がヒフミを少し外に連れ出してその内に準備をお願いする。うんうん、我ながらかんぺき〜な作戦だ。

 

 実はこれ逆ドッキリでヒフミを連れ出すフリをして、仮装し、裏口から入って驚かすという計画。勿論ヒフミが協力者だ。

 

「古食ちゃん」

「お、ヒフミか」

 

 サンドイッチも食べ終わり文字稼ぎもある程度できたので、帰宅しようかと踵を返せばヒフミが私の目の前にいた。

 

「古食ちゃん、この丘、久しぶりですね」

「そうだな」

 

「古食ちゃんが()()()()()()()()を思い出します」

「そうだな〜」

「そして、古食ちゃんが引きこもって暫く経った時、心配になって様子を見に行きました」

「実に懐かしい」

 

 ビニール袋から◯見だいふくを取り出して開封する。

 

「…本当に、酷い状態でした」

「あの時は荒れに荒れまくってたからな」

 

「ストレスで髪が白くなっていって、腕も包帯で巻かれていて。何より、死のうとしていました」

「まぁ…あの時はストレスの解消法が分からなかったしな」

 

「今でも毛先が薄いですが黒いのは黒髪だった頃の名残ですよね」

「そうだな、全部が白髪にはならなかった」

 

 雪◯だいふくの残り一個をヒフミに渡し、ビニール袋からガ◯ガリ君を取り出す。

 

「あの…真面目な話なんですが」

「知ってるよ、この内容で真面目だと分からない程に私は鈍くない」

 

「ならアイスを食べるのを少し控えて…」

「私はな、もうあの頃の私とケジメをつけたんだ。確かに今でも偶にだが思い出す、そして精神崩壊しそうになる」

「でもな、ヒフミがいる。ヒフミが私の側に居てくれるから平気だし、なんなら自信もつく」

 

「でも、もうすぐで古食ちゃんはSRTに転校なんですよ?」

「そうだな」

 

 ガリガ◯君が当たりの棒だったのでポーチに入れて話を続ける。

 

「だが、この先でもヒフミに依存してばっかじゃ私がダメになる。そしてヒフミも」

「私も…ですか」

 

「正直言って私とヒフミは共依存しかけている。片足どころか両足くらいは」

「だからここで共依存という底なし沼から抜け出さなきゃいけない、これからの私とヒフミの為に」

「さぁヒフミ、清算の時だ。一緒に底なし沼から抜け出そうか」

「…嫌です、私嫌です。古食ちゃんがいなくなるくらいならいっそのこと…」

 

「ダメったらダメ!」

「痛っ…!」

 

 聞かん坊なセリフに少しイラッときたので取り敢えずヒフミの頭にチョップを食らわせる、勿論手加減済みだ。

 

「あのな、ヒフミ。私には断片的だが未来が見える」

「え…?未来が?」

 

「とは言えど最近見えるようになったがな」

「でも、それと何の関係が…」

「見えたんだよ、このままズブズブ共依存…いや、狂依存ルート」

「どんな未来が…?」

 

「■■■■■■して■■■して■■■■で■■■■の後に■■■して■■■■■■■■してた」

「え゛っ」

「どうだ?このハナコでもビビりそうな内容の未来、今でも進みたいか?」

「いや…その…」

 

 私だって流石にこのルートには進みたくない、嫌だよこんな狂依存ルート。とまぁこれが原因で進みたくないのもあるが、進みたくない本当の理由は別にある。

 このルートに進めば確実にキヴォトスは滅ぶ、これは見えた未来の更に先の出来事だ。この神秘の研究をしてる時に発見したんだがな、未来が見えてる最中にとあるコマンド*2を入力すれば更に先の未来まで見えるのだ。

 

 まぁ当然だがこのことはヒフミにバラす予定はない。勿論ヒフミがこのことを知れば大人しく認めてくれるだろう、だが、私はそんな方法は好きじゃない。

 認めさせるなら本気で、だ。それにこんな脅しにも近い方法で認めさてはお互いに不服な状態で別れることになってしまう。そんなのお断りだ、ヒフミのその愛も、真正面からぶつかって踏みにじる、それが私の愛の証明だ。

 

「ヒフミ、私は信じてんだ」

「信じてる…?」

「そう、ヒフミは私が居なくたってこれからも大丈夫だし強くなれる」

「でも…」

 

「それに──」

 

 それに、あと一年、一年で()()()が来る。ヒフミが若干惚れることが確定事項なのが少し、いやめちゃくちゃに不服だがあの人ならどんな問題も解決できる。

 

「─それに、"先生"が来る」

「先、生…?」

「そう、先生だ。あの人なら必ずどんな問題も解決してくれる」

「そう…なんですか?」

 

「そうだ、だが気を付けろ」

「えっと…?」

「先生は女誑しだ、必ずしも引っ掛からないでくれよ」

「わ、分かりまました」

 

 よし、これで心残りもなくなった。焼け石に水程度だがまぁ注意しないよりかはマシだ。

 というか注意でもしておかないと先生に誑かされてないか心配すぎてSRTに行こうにも行けない、マジでヒフミを娶ろうものなら先生だろうがシメに行く。

 

 まぁ全ての問題が片付いた後だけどね。先生が居なきゃ解決できないことも多いし、キヴォトス到来直後にシメたらキヴォトスが終わってしまう、それだけはダメだ。

 さて、ガリ◯リ君も溶ける前に食べ終わらなければ。

 

「あっ、そんな一気に食べてしまったら…」

「ん〜?…アッアッアッアッ頭痛い!キーンてなる!痛いよぉ〜!助けてヒフミ〜!へるぷみー!」

「仕方がないですね…」

 

 ヒフミに冷たい物を頭に当ててもらい、キーンてなるやつが無くなる。頭キーンなる時は頭に冷たい物を当てると痛みが消えるらしい、そんなのあったんだな〜、因みに情報源はセリナちゃんらしい。

 一家に一人セリナちゃんなんてどうです?可愛いですし怪我も治してくれるし最高ですよ。まぁそんなことは置いといてだな、本題に戻らなば。

 

「そうそう、先生の話…は別に良いや」

「良いんですか…」

「私が話したいのは共依存の話、ヒフミはまだ納得してないんでしょ?」

「そうですよ、まだ納得していません」

 

「だからこの話に決着を…」

「けど──」

 

「─今のやり取りで分かりました、古食ちゃんは強くなったんですね」

「…ヒフミ」

 

「今まで、古食ちゃんはメンタルが弱くて強がってるだけで少し突き放されればすぐに泣く弱い娘だと思ってました」

「え?酷くない?」

「けど、もう違うんですね。古食ちゃんは一人でも大丈夫、今回で痛感しました」

 

「なので、私も突き放します。そして私も必ず強くなります」

「そうか、ありがと…」

 

「でも!絶対に離れません!物理的に離れていても!私達の心はずっと側にあります!」

「それなら、寂しくはないな」

 

 それはそうとさ、私アレやりたいんだよね。ワン◯ースの「二年後!シャ◯ンティ諸島で!」ってやつ。けどまぁ…今は別に良いや、またお別れの日にしよう。

 

「さ、戻ろうか。予定より長居してしまったしな」

「そうですね、戻りましょう」

 

 私とヒフミは車内に戻り、丘から車を出す。さ、誕生日パーティ計画もいよいよ大詰めだ、この日の為に準備した装飾品やらケーキ、あとペロロジラ、因みにペロロジラの存在だけは隠してある。

 

 と、いう訳で無事帰宅〜。ハナコ達を起こし、家の中に戻り荷物やらを置いて準備する。

 さて…と、まずはヒフミを連れ出さないとな。ハナコと事前に決めていたハンドサインを送り計画スタートの合図を出す。

 

「なぁヒフミ、少し外の空気を吸おうか」

「え?まぁ良いですけど…」

 

 ヒフミの同意を得てヒフミの手を取り家から少し離れた公園に向かう。あと夜は寒くなるから道中のコンビニでカイロを二つ買う。

 公園に着いた私達は取り敢えずベンチに座って息をつく。

 

「ヒフミ、覚えてるか?ここ」

「えぇ…小学生の頃によくここで遊びましたよね」

 

 ヒフミはこの場を今でも覚えていてくれていたらしい。良かった良かった、忘れてたら私拗ねて帰ってたもん。

 それにしても本当に懐かしい。昔はヒフミとここで遊んでいた、おままごとの時でペロロ人形が出てきた時に、口が滑って「気持ち悪っ」て言ってヒフミを泣かせてしまったこともまだ昨日の事のように感じる。

 

「私がイジメられてた時もヒフミがここで助けてくれたよな」

「そう言えば…そうでしたね」

 

「ヒフミ、私はな、ヒフミが好きなんだよ」

「それは…まぁ、薄々察してはいました」

「あの日、あの時、私にはヒフミが眩しかった」

 

 そう、眩しかった。何よりも眩しくて、明るくて、楽しそうで、好きな事に堂々としていて直向きに努力していた。

 

「だから、あの頃はヒフミが嫌いだった」

 

 あの楽しそうだった目が、痛みを知らない目が、私を馬鹿にしていると被害妄想を膨らませていた。

 

「でも、ヒフミは私を諦めないで何度も手を差し伸べた」

 

 どんなに悪態を突いても、暴言を吐いても、ヒフミは私を諦めようとせずに、そして私を助けた。

 

「そんな、優しいヒフミが好き。きっとこれからも、嫌いにはならない。なりたくない」

 

 そんなヒフミの為に、今私ができることは少ない。でも、何かはできる。私を忘れないように、私が忘れないように。

 

「だから、これをあげる」

「腕輪…ですか?」

 

 私の左腕から取り外し、ヒフミの手に握らせる。私を、忘れてほしくないから。だからこの腕輪が適任なんだ。

 

「10年前、私の誕生日プレゼントにヒフミが頑張って作ってくれた腕輪だ」

「あの時の…まだ持っていてくれたんですね」

 

 10年前にくれた、ヒフミからのプレゼント。これを手放すのは辛い、いつも心の支えになってくれていたから。でも─

 

「─ヒフミが、好きだから。大好きだから、この腕輪を返す。知ってるか?付喪神ってやつ」

「まぁ…一応」

 

 大切にされた物には想いが宿る。だからきっと、この腕輪にも私の想いが宿ってる。私の、ヒフミを想う気持ちが。

 

「大切にされた物には想いが宿る。だからヒフミ、私を忘れないでくれ。必ず私は存在すると、その腕輪が証明してくれる」

「…分かりました。必ず、古食ちゃんとまた会えるその時まで、大切にします」

 

 さて、そろそろ戻らないと。段々寒く…

 

「ハクシュッ…」

「風邪ですか?」

「セッセリナちゃん!?」

 

 ビビるわ、くしゃみした瞬間に後ろに立ってるとかどんなホラー映画だよ。ていうか装飾はどうした装飾は。

 取り敢えずヒフミから少し離れてセリナちゃんに装飾の事を問いただす。

 

「装飾は終わったのか?」

「えぇ、バッチリです」

「そうか…なら良いか」

 

 装飾も無事終わったらしいのでヒフミを連れて家に戻る。

 

「さ、ヒフミ。目隠しを付けてくれ」

「えっと…?なんで目隠しを…」

「まぁまぁ、良いから良いから」

 

 困惑しているヒフミに取り敢えず目隠しを付けてぐるぐる回す、回すのはなんとなくだ。

 

「ほら、家に戻ろう」

「す、すいません…少し酔ったんですが…」

 

 酔って少しフラついているヒフミの頬を突っつきながら玄関のドアを開けて、家に戻る。

 装飾もバッチリだし、プレゼントもクラッカーも、料理も完璧だ。よし、そろそろ目隠しを外しても問題はないだろう。

 

「目隠し外しぞ、ヒフミ」

「わ、分かりました」

 

 ハナコとセリナちゃんにハンドサインを送り、クラッカーの準備をさせて目隠しを外す。

 

      パァン!!

 

「わっ!?」

 

 ヒフミの目隠しを外した瞬間に大きなクラッカーを鳴らして驚かせる、私の想像通りの反応で可愛らしい。

 

「「「「誕生日おめでとう、ヒフミ」」」」

「ふふ…ありがとうございます」

 

 あれ…もうちょっと泣いて喜ぶかと思ったら落ち着いてるな、ヒフミの反応に困惑していればヒフミがふふっと笑う。

 どうやらヒフミは、一昨日に私のスマホを偶然覗いてしまい計画の存在を知ってしまったらしい。えぇ…私がこれまで頑張った意味。けどまぁ、ヒフミも楽しそうだし、嬉しそうな笑顔を見れただけでも充分苦労した価値があったってモンだ。

 

 さて、それじゃそろそろケーキを出そう。と、いう訳で特殊な保冷庫からケーキを取り出し食卓に置く。ヒフミの反応も可愛らしい。

 

「わぁ…!とっても大きなケーキですね」

「そうだろうそうだろう、私が作ったんだ」

 

 ケーキに感動するヒフミを撫でて部屋の電気を消して暗くして、あの誕生日と言えばの例の歌を歌い、歌い終わればヒフミにろうそくを消してもらう。

 

「ありがとうございます、皆さん」

 

 さて、それじゃそろそろプレゼントを渡そうかな。後回しにして渡す機会を失う訳にはいかないし。すぐ後ろの棚から大きな箱を取り出そうとするが、まぁまぁ重くて上手く取り出せない。

 

「む…中々重いな」

「手伝います」

 

 誕生日プレゼントを棚から取り出すのに苦戦していればマリーちゃんがこちらに駆け寄り箱のもう片方を持ってくれる。

 お陰でさっきよりも楽々と取り出せた。後でマリーちゃんは撫で回しておこうかな。

 

「さ、ヒフミ。開けてくれ」

「大っきいですね、分かりました」パッカーン

 

「こ、これはペロロジラ!?」

「フッフッフ…」

 

「古食ちゃんこれとっても高かったですよね!?たしかこれって…」

「一億だったな」

「イチオッ…」

「ヒフミィ!?」

 

 ペロロジラの値段を聞いた瞬間にヒフミが気絶しぶっ倒れたので取り敢えずベッドに運んで寝かせる。しっかし…どうしようか、いつ起きるか分からないし料理も放置できない、困ったな。

 取り敢えず起きるまで私が側にいることにしてもしもヒフミが今日中に起きなかった時の為に、何時でも片付けができるように皿洗いをお願いする。

 

 これで保険は取れたけど…まぁベストなのはヒフミが起きてくれることだよな、だけど今の私達にできるのはヒフミが起きるのを信じて待つだけだ。信じて待とう。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 しかし結局ヒフミは起きず、致し方ないが誕生日パーティは中断となった。折角ヒフミの誕生日なのにこんな結果になったのも私のせいだ。

 今更すぎるがこんなことになるのなら下手に慣れてないサプライズなんかより普通に祝っておけばよかった。

 

「んぅ…古食ちゃん」

「ヒフミ…?」

 

 私が誕生日パーティの結果に後悔の念に駆られていたらヒフミが起きた。私の神秘で予測はできていたからこの時間帯に起きることは分かっていた。

 

「誕生日パーティは…」

「すまん、中断になった。明日にまた再開することになった」

「いえ、今しましょう」

「でももう夜の1時だぞ、こんな時間帯じゃ…」

 

「やります、皆も起こしましょう」

「…分かった」

 

 恐らくヒフミのこの決意は、私が自分を責めてると見抜いてのことだろう。本当にヒフミは強い、いつも私のことを助けてくれるし、いつだって私の前を先導してくれる。

 だから、そんなヒフミに私ができることは全て実行する。ヒフミを守りたいから、どんな敵からも。改めて決意できた、何があってもヒフミを守る。例え世界が反転しても。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「今から再開すると聞きましたが…」

「すまん、急に起こして」

「いえ、それは大丈夫です。むしろちゃんと誕生日パーティができて嬉しいです」

「じゃ、再開しようか」

 

 ヒフミに誕生日でよくあるとんがり帽を被せて一番目立つ席に座らせる。因みに席が一つ足りなかった為、マリーちゃんは私の膝上だ。可愛くて守護りたくなる。

 改めてバースデーソングを軽く歌って食事を始める。ヒフミは少食だから、ケーキのロールケーキ少しとお肉でお腹いっぱいになってしまった。うーん、どうしようか。

 

 私もそんなに食べれないしハナコも胸だけでそんな食べない、セリナちゃんももう無理らしいし…困ったな、想像以上に料理が余ってしまった。そういやマリーちゃんは…

 え、凄い沢山食べてる。幸せそうな顔とピクピク動いてる耳が可愛らしいし、パンパンの頬が可愛い。

 

 マリーちゃんの可愛さに見惚れていると私の視線に気付き、途端に頬を赤らめ食べるのをやめてしまう。

 

「あの…古食先輩、そんな見られると恥ずかし…くて…」

「私は可愛いものを眺めてるだけだから大丈夫だよ」

「むぅ…」

 

 マリーちゃんは私が頭を撫でると頬を赤らめながらも食事を再開し、しばらく頭を撫でながら見守っていると気付けば食卓の上の料理は空。凄いなマリーちゃん…一人で殆ど食べちゃった。よくこんな小さな身体に入るな。

 

 その後はヒフミ達とパーティゲームで遊んだり枕投げをしたり楽しく過ごせた。

 最初は私のせいでヒフミの誕生日を台無しにしてしまったかと思ったが、ヒフミに助けられて楽しい誕生日パーティにできた。本当にヒフミに恩返しできる日がくるかは分からんが、必ず恩返しはする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜約4ヶ月後〜

───────────────────

 

 

「本当にお別れなんですね」

「案ずるなヒフミ、今生の別れでもない。必ず会いに行く」

 

 ヒフミの誕生日パーティから約4ヶ月の月日が流れ、今私達は空港にいる。SRT特殊学園に向かう為だ。

 1話から全て読んだ読者サマにはお分かりだろうが、私はティーパーティー生徒会長候補とかいう桐藤ナギサの策略により、中等部卒業に伴いトリニティからSRTに飛ばされることになったのだ。そして今がその時、中等部を卒業し、高等部になったのだ。

 

 ヒフミに会える機会が激減するのは悲しいが、決して会えない訳ではない。会える日は必ず会いに行く。あと毎日ビデオ通話もするように約束したし、多分大丈夫。多分。

 

「じゃあなヒフミ、元気でな」

「はい、今よりももっと強くなって必ず古食ちゃんに会います!」

 

 やはりヒフミは頼もしい。こんな幼馴染達が居てくれる私は本当に幸せだな。なら私ももっと強くなって、ヒフミを守る。

 

「古食先輩、お気をつけて」

「ありがとな、マリーちゃん」

「古食ちゃん、戻ってきたらまたあのアニメを…♡」

「嫌だ、絶対に」

 

「怪我しないでくださいね、あと病気も、古食ちゃん心配なので…」

「ありがとねセリナちゃん」

 

「おっと、そろそろ時間だ」

 

 もうそろそろ私の乗る飛行機に乗る時間だ、これ以上皆と居るのは厳しいだろう。やはり少し寂しいな、もう皆から離れないといけないのは。今すぐに戻りたい、だが行かなければならない。辛いものだ、別れというものは。

 

「古食ちゃん」

「…ヒフミ」

 

 葛藤しているとヒフミが後ろから私を抱き締める。最後の最後までヒフミに助けられっぱなしだな。だがそのお陰で決心できた、そろそろ時間だ、行かなければ。 

 

「私は…」

「大丈夫だヒフミ、お陰で決心できた」

 

 肩にかかっているヒフミの腕に手を置き、私の肩から降ろす。振り返りヒフミの目を視る。そう悲しそうな顔をされてはまた行きたくなくなってしまうな、だけど私だって強くなると決めたんだ。

 

「ありがとう─」

「古食ちゃ…」

「じゃ時間ないからまたな!必ず会いに行く!」

 

 ヒフミの言葉を最後まで聞かずに飛行機の入口まで走る。その言葉を最後まで聞けばまた帰りたくなる、それにヒフミの言葉を無視したのは私なりの決心だ。心苦しいがヒフミなら大丈夫。そう信じて飛行機に乗り込む。

 

「行っちゃいましたね」

「そう…ですね」

「でも古食先輩なら大丈夫ですよ、強いですから」

「そうですね、私達はただ古食ちゃんを待つだけです」

 

 皆はヒフミ()を置いてお土産屋にあるお菓子等を見回る。ただ私だけはどうしても気乗りしなかった、古食ちゃんを最後まで見届けたいから。

 飛行機が見えなくなる最後まで見届ける。雲の上の上まで飛び立つまで。

 

「──ありがとう」

 

 私は見えなくなる最後にその一言を漏らし、皆のいるお土産屋に向かう。古食ちゃんは確かに心が弱い、必ず折れない。古食ちゃんは弱くて強いのだから。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「到着〜!!」

 

 飛行機に乗り約2時間後、ようやく到着しずっと座っていた影響で固まった身体を伸ばす。

 さて、あとはSRTが手配したタクシーに乗るらしいが…タクシーらしき車は見当たらない、が、なんかめっちゃ高そうな黒塗りの車が一台目の前にある。いやこれがタクシーなわけ…

 と、考えていれば黒塗り車からロボット運転手が出てくる。

 

「貴方が嘉瀬乃 古食様ですね、私はSRT特殊学園から手配されたタクシーの運転手です」

 

 タクシーだった。

 

「どうぞご乗車ください」

「え、あっはい」

 

 タクシーだったことに旋律していると乗車を促されて流れに任せて乗車する。おっと既に4人も先客が、なんか短髪の胸デカい人の目が怖いから慎重に乗り込む。

 

「うわ…ふっかふか」

 

 車の椅子に座ればめっちゃふかふかだった。流石高級車(だと思う車)、椅子も高級なのだろう。

 ふかふか椅子に少し盛り上がっていれば白髪の人に話しかけられる。

 

「どうも、私はRABBIT小隊の隊長、月雪ミヤコです」

「私は嘉瀬乃 古食、たしか同じ小隊なんだっけ」

「そうですね、貴方も私と同じRABBIT小隊です」

 

 どうやらこの月雪ミヤコさんが私の所属するRABBIT小隊の隊長らしい。穏やかそうで安心安心。

 

「私は空井サキだ、あまり馴れ合うつもりはない」

「冷たいなぁ…」

 

 どうやら空井サキは目付き通り冷たい人だったらしい。いたずらしたくなるような人だな。

 

「私は風倉モエ、よろしく〜♪」

「うん、よろしく」

 

 風倉モエはフランクで話しやすいな。私としても嬉しい。

 

「わ、私は…霞沢ミユ…です」

「よろしくね」

 

 うーん可愛い、小学生時代の初対面のマリーちゃん味を感じて守護りたくなるような子だ。

 取り敢えず自己紹介だけを終わらせてあとは無言。私は寝てたから知らんけど起きたらなんか空気が悪かった。*3

 ま良いや、到着到着〜。このあとは自分のクラスに連邦生徒会長が来て各クラスに挨拶回りしに来るらしい。殊勝なこった。

 

 取り敢えずクラスに移動する。どうやら皆も同じクラスらしい、しかも皆すぐ近くの席。

 まぁそれなら仲良くしたいよなと皆に話しかけるがミユはどもって話せない、モエは爆弾の話ばっかでよく分かんない。ミヤコは適当に相槌うつだけでサキには睨まれる。

 あかん、仲良くできる気配がしない。あとで連邦生徒会長に苦情言っとこ。

 

 と、噂をすればチャンポチャラン。早速連邦生徒会長が私のクラスに入り教卓に立つ、流石連邦生徒会長。圧が凄い…けどあんまりだな、司祭クンに比べればひよっこ程度の圧力、アイツ意外と圧が凄いんだよな。

 眠くてあくびをしていればなんか連邦生徒会長がこちらを見てくる。私なんかしたっけ。

 

「では挨拶を。私は連邦生徒会長、名前は…伏せておきますがこれから皆さんに指示を出すこともあります。以後お見知りおきを」

 

 堅いこった。私仲良くできなさそうだな。

 

「…ふふっ、古食さん、今私のこと堅い人と思いましたか?」

「よく分かったね」

「まぁ超エリートの連邦生徒会長ですから当たり前ですよ当たり前、それはそうとあとで生徒会長室に来てね。言いたいことあるから」

「はーい」

 

 なんか…思ったよりフランクだな。まぁ別に良いや、そんなことより何故かミヤコ達の視線が痛い。なんでや、まぁそんなことも置いといてHRも終わり生徒会長室に向かう。

 

「どーも、来ましたよー連邦生徒会長」

「きたきた、ほらここ座って」

 

 生徒会長室のドアを開けると、ソファでゴロゴロしている連邦生徒会長にソファに座るように言われる。なんか反抗したら解体(バラ)されそうだから大人しく従う。

 

「アイスいる?ハー◯ンダッツ」

「いるいるー」

 

 連邦生徒会長からハーゲンダッツとスプーンを受け取ってハーゲンダッツの蓋を開ける。

 

「それで呼び出した理由なんだけどさ、なんか面白そうな人だから呼び出しちゃった☆」

「えぇ…」

 

 何ともまぁ自由な人だこと、けどまぁそういう人は嫌いじゃないし良いか。

 

「そうそう、ついでなんだけどさ」

「?」

 

「連邦生徒会長って長いしあだ名を考えようかと」

「ふふっやっぱり面白い人だね」

 

 この青髪片目隠れ、思ったよりフランクで話しやすい。私仲良くできそうだ。それにしてもあだ名…どうしようか、うーん、適当に最初の文字と最後の文字を繋げて…

 

「連長とかどう?」

「連長…ですか」

 

 連邦生徒会長こと連長の反応的に好反応らしい。良かった良かった。

 

「良いですね、連長」

 

 その後教室に戻ろうとすれば連長に腕掴まれてしばらくゲームした。連邦生徒会長ともあろう方がこんな呑気で良いのかと言ったら権力使えば大丈夫大丈夫、とのこと。不安しか残らねぇよ。

 でもまぁ…連長がそう言うならそうなのだろう、因みに私は戻ったら普通に怒られた。あとミヤコ達にも。何でよ、ついでに私のことも守ってくれよ連長。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「そういや今日から寮暮らしか〜…」

 

 現在入学式なども終わり放課後、寮暮らしなのを思い出して寮に向かう。寮ってどんな感じなのだろうか、私は狭いイメージしかないが…いやでもあの黒塗り高級車がタクシーの学園だ。きっと広いのだろう!

 

「おぉ…広い」

 

 やはり広かった。いや普通に広い。一人暮らしに勿体な…

 

「ここが寮…広いですね」

「まぁ5人で過ごすには丁度良いだろう」

 

 寮の広さに盛り上がっていると私以外のRABBIT小隊のメンバーが入ってくる。え?一人暮らしじゃないの?他のメンバーの乱入に困惑しているとサキが呆れている。

 どうやらミヤコが言うには一つの部屋に一つの小隊らしい。えぇ〜、そういうことかよ…だから部屋も予想以上に広かったのか。

 

「うーん…まぁそういうことならよろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

    …私が逃げたと思った奴手を上げろ

*1
ヒフミは何かイラッときたのでチョップした模様。

*2
上上下下←→←→BA

*3
寝てる古食に緊張感ねぇなコイツ、とのこと。因みにミユはミユミユしてた。




 受験も控えているのでこれまでより更に投稿頻度も遅くなると思います。ですが私の作品と古食ちゃんを忘れずにこれからも、これからでも、ご愛読してくださると光栄です。

 と、お堅いのは置いといてお気に入り登録と評価、あと感想よろしくね〜。
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