前回から少し時間飛んで現在18時、任務の少し前、今は任務前のご飯を食べている。
「やっぱり古食の作るご飯は美味いな」
「そりゃどうも、あと一時間で任務、しかも重要な任務だ。しっかり休めよ」
「全く…任務の話を聞いた時はびっくりしましたよ。初めての任務がまさかカイザーPMCの証拠を盗むなんて、そういう任務は先輩方などの慣れてる人達に任せる物じゃないんですか?」
「連ちょ…連邦生徒会長が言うには信頼できるから任せるだってよ、私も最初は断ろうと思ったんだけど拗ねるから断わろうにも断れなくて」
全く、連長には困ったものだ。リン先輩の苦労が分かるよ。明後日にでも土産持って行くか。
取り敢えず私は眠いから寝ようかな、訓練の疲れもまだ取れてないし。任務も何事もなく終われば良いな。
「私は眠いから寝る…時間が来たら起こしてくれ…」
「ご飯食べてすぐ寝たら太るぞ〜、せめて少し運動してからにしたらどうだ?」
「大丈夫…私太らない体質だから…おやすみ…」
「本当に寝ちまったな」
「私が部屋に連れていきます」
ミヤコは古食を抱え、古食の部屋に入りベッドに横に寝かせる。
──────────
「…気持ち良さそうに寝てますね」
私は古食さんを部屋のベッドに寝かせ、しばらく様子を見る。古食さんはすやすやと寝息を立てて、安らかな寝顔で寝ている。
初任務、正直言ってちゃんと完了できるか不安しかない。会社の犯罪の証拠を盗む、しかもその会社はカイザーPMCだ。
寮に戻る少し前に連邦生徒会長に会った、特に話すこともないので会釈だけして戻ろうとした時、失敗しても気にしないでね、と言われたことを今でもまだ記憶に残っている。
「…無事に、帰れると良いのですが」
古食さんは強いし、恐らくカイザーPMCの兵相手にも引けは取らないだろう。だが私は古食さん程に強くはない、もし昨日の朝の様に足を引っ張ることがあれば私はどうすれば良いのだろうか。
「少し、嫉妬してしまいますね」
古食さんの強さに少し嫉妬してしまう。ですがきっと古食さんも鍛えてようやく得た力なのだろう。*1
なら、私も鍛えなければならない。せめて古食さんの足を引っ張らない程に。
「おーい、ミヤコ、そろそろ時間だぞ」
「サキ、分かりました。古食さんを起こしてすぐ準備します」
私は古食さんを起こし、すぐにサキ達の元へ向かって準備しようとした。
「起きてたよ、ずっと」
「!?…古食さん、びっくりさせないでください」
古食さんに振り向けば、目と鼻の先に古食さんの顔があり思わず後に飛び退いてしまう。
「因みにいつから起きてました?」
「『少し嫉妬してしまいますね』の所から。えっちょっ…何で無言でペチペチするの?痛い痛いやめて」
多少の羞恥心から古食さんをペチペチと叩いてしまう。
──────────
「さて、皆準備はできたか?ハンカチ、ティッシュ、あとお弁当におやつ持ったかー」
「遠足かよ。ハンカチ、ティッシュは兎も角お弁当とおやつは要らんだろ」
うんうん、皆準備も完璧そうだな。それじゃ早速出発〜。とその前に、FOX小隊からの呼び出しがかかっているので、集合地点のグラウンドに向かう。
「オトギ、全員来たか?」
「うん、皆来たみたいだね。出欠も確認できないし」
「そうか」
集合地点のグラウンドに着くと、我がクラスの皆も集まっている。周りの声を聞くにどうやらちょっとした注意のようだ。
「では今から少し話したいことを、まずお前ら新入生はこれから初任務に向かう。小隊によって危険度もジャンルも違う、だが少なくとも今のお前らでも多少の怪我はあれど、無事に遂行できるレベルに接点されている。重症を負わず、無事に帰還しろ」
「「「「はい!!」」」」
おぉ…ユキノ先輩の演説を聞いてから周りの熱気が凄い。熱くて干からびそうだよ、まぁ兎も角私達も頑張らないとな、危険度なら私達が一番だろうし。
それにユキノ先輩も頑張れば無事に遂行できるレベルだと言っていた。ならきっと大丈夫だろう。
「頑張ろうな。ミヤコ、サキ、モエ、ミユ」
「勿論、元からそのつもりですので」
皆もやる気は高そうで良かった、これなら心配は最低限で大丈夫そうだ。
「ではこれから小隊長と、コードネームを決めてもらう。与えられる時間は5分間だ、早く決めておけ」
コードネームと小隊長か、考えたこともなかったな。まそりゃそうか、任務先で本名知られたら悪用されかねないし。
「コードネームは…まぁRABBIT小隊だしRABBIT + 数字で良いんじゃないか?あとは小隊長だけど…」
「そりゃ…私?」
「サキでは心配です。私か古食さんが無難でしょう」
「はぁ?私だと心配?好きな様に良いやがって」
うーん…私かミヤコか、私はミヤコが良いかなぁ、面倒事嫌いだし皆に指揮出すの私できないし。ミヤコはそういうの慣れてそうてか前にしてもらった時めっちゃやりやすかったしミヤコが一番良いだろう。
「私は…ミヤコを推すよ、前に指揮取ってもらった時も上手かったし。小隊長になれば指揮を出すことも少なくないだろうし力だけの私よりミヤコが適任だ」
「そう…ですか、分かりました。それでは私が小隊長を担います」
これで小隊長問題は解決したな、サキが少し不服そうだがまぁそこは我慢してもらおう。
因みにコードネームはミヤコがRABBIT1、サキがRABBIT2、モエがRABBIT3でミユがRABBIT4、そんで最後の私がRABBIT5だ。
これで残りは作戦会議のみ、会社内の地図は貰っているのでこれで作戦を立てる。にしても複雑な地図だなオイ、一階一階は別にどうってことないんだが次の階に進むための階段の位置が厄介だ。一つ後ろの階の階段の逆に設置されている。
どっかで聞いたことあるな、階段の位置をバラバラにすることで侵入者を防ぐ…みたいな?
「階段の位置が厄介ですね、次の階に進むためにはその階を横断しなければいけません。これでは敵にバレてしまいますし…何か対策を」
「そうだな…なら私に少し案がある。私少し特殊な物を持っていてな、それなら即座に逆の位置に移動することができる」
読者サマにも説明しよう、簡単に言えば結果だけを得る手法だ。
私の神秘に関してはもう説明しないぞ、まぁ話を戻して何事にもスタート、過程、結果が生まれる。だが私の神秘を応用すれば過程をスキップして結果にたどり着ける。
これは移動のみならず運動、勉強でも力は発揮し楽に結果を得られる。ただこれはそれなりに体力を消費するから今の私では一日で精々3回が限度だ。
神秘の研究と実験を繰り返せば更に多くできそうだがまぁ…大丈夫だろう。
「なるほど…分かりました。ではそれで行きましょう」
あとは敵に見つかった時、任務失敗時などの対応を考え不足の事態に備える。それじゃ出発だ、ヘリに乗り込みカイザーPMCの会社の真上まで移動する。
◆◆◆
ここまでは何事もなく来れた。次はカイザーの会社への侵入、各自装備を装着し突入に備える。
「さて…これで作戦会議も完了だ。皆も万全を期して挑むように、じゃあミヤコ、合図を」
「RABBIT小隊、作戦開始」
ミヤコの合図でミヤコ、私、サキの三人が一斉に飛び降り、屋上に着地する。犯罪の証拠が記されている書類が保管されているのは地下3階、今私達がいる屋上から約10階も下にある。
「なぁ古食、やっぱり別の所から侵入すれば良かったんじゃないか?地下3階までかなりの距離もあるしその分リスクも上がるぞ」
「ダメだ、下に行けば行く程兵も多くなる。それによって下では殆ど隠れる場所がない、そこから侵入すれば確定でバレるからな」
それと理由はあと一つある。屋上から4階程下がったVIPルーム、そこにあるエレベーターは地下2階まで繋がっている。
流石に地下3階までの道は別にあるみたいだがそれだけでもかなりのアドバンテージが得られるし安全だ。
「私が先に見てくる。ミヤコ達は私が合図したら入ってきてくれ」
周りに警戒しつつ屋上から8階に続く階段を降りる。
「ッ!」
私は危険を察知し咄嗟に身を屈めれば私の頭があった場所を弾丸が通過し、コンクリートでできた壁に埋もれる。
その後も続く弾幕に避けるなり棒で弾くなり対処を続けて隙を伺う。
「今だ、ミユ」
『り、了解』
私の合図と共にミユの声が耳に付けている小型通信機から響きロボット兵を撃ち抜く。相変わらず精度が凄いな、ミユのスナイプは。
「よくやった、助かったよRABBIT4」
『あ、ありがとう…RABBIT5も怪我しない様に頑張ってね…』
その言葉を最後に通信機が切れ、入れ替わりでミヤコの声が私の耳に届く。
『こちらRABBIT1、そちらの現状は?』
「オートマタが一人いたがRABBIT4の狙撃で破壊された、もう安全だ」
『了解』
通信機の繋がりが切れ、少し待てばミヤコ達が階段の上から降りてくる。
さて、ここで私の出番。神秘を稼働させ私たちが今いる階段から向こうの7階まで続く階段で移動する。
「ッ!?」
「本当に一瞬で移動した…どういう原理なんだこれ?」
「企業秘密ってやつだ。少なくともまだ話す気はない」
さて、エレベーターがある階まであと2階。私の神秘があるからと言えどバレる時はバレる。それに想像以上に見張りも多くてかなり危険、一人の時なら隠れつつ制圧できるが…仕方がない。
「ミヤコ、サキ、耳と目塞いどけ」
「何故…ですか?」
「良いから良いから」
今から初めることは誰にも知られたくない、知られてしまったら面倒なので取り敢えず耳と目を塞ぐようにして準備する。
「さて…初めるか」
私が色彩に近づいたことによって得た力、そしてその力を今できる隅々まで探求して得た技、とくと見せてやろう。
「色彩ってのはな、反転以外も色々なことができる。まぁ
一度だけ見れた、遠い遠い未来。途中退場した私だけが見れなかった、
私が色彩を稼働させた瞬間、手の平の上にとても小さな紅い
「違いを痛感する静観の理解者、来い」
私がそう、言葉を漏らした時。鯨のようで少し違うメカメカしい物が生成される、だがそれは宇宙を連想させるような藍色に小さな星が散りばめられていて、
だがその強度、威力は本物にも引けを取らず、なんなら身体が小さい分本物すらも上回るのかもしれない。
「敵を駆逐しろ、誰一人逃すなよ?頼んだ」
私の命令を聞き入れたビナーは大きく咆哮を上げ、オートマタに突っ込んでいく。流石はコピーとは言えどデカグラマトンの預言者だ、まぁあの程度は敵にもならないだろう。
ビナーを見送った私は紅いサンクトゥムタワーを消失させ、二人に目と耳を塞ぐのをやめる様に言う。
「ようやく終わったか………は?なんだこれ?壁に大きな穴が空いていて部屋も散乱している…?」
「まぁまぁ、気にするな気にするな。些細なことだろ」
「いや壁に大きな穴は些細なことじゃないだろ!?本当に何があったんだよ…」
困惑する二人を取り敢えず落ち着けて6階に移動する。道中で罠とかあったが私の神秘の前には無力無力、ガハハ一方的な殲滅は楽しいゾイ!
お、ビナーも敵を全員殲滅し終わったみたいだな。いやー疲れた疲れた、預言者は強いけどその分使い終わった後に疲労が降りかかってくるからキッツい。
「少し余裕も生まれたし休憩しようか、私特製おにぎりあるけどいる?ここまで気張ってて疲れただろ?」
「では少しだけいただきます、ありがとうございます古食さん」
「おっけー、サキもいるよね。はいこれサキは塩っ気強めでミヤコは確か控えめだったよね」
「ありがとな古食!けど何で私の好み知ってるんだ?一言も話した記憶がないが…」
「少し観察してたんだよ、これから一緒に過ごす仲間だし好みくらいは把握しておきたいよな〜って思ってだな。塩っ気が強いご飯と控えめなご飯を用意して反応を比較してたんだよ」
「なるほどそれで…」
納得した様子のサキが一口食べたのを皮切りに私とミヤコもおにぎりを食べ始める。うん、我ながら上出来だな。
あとは地下2階から地下3階までの道を探さないとか、ミヤコとサキに少し離れることを伝えて少し遠く離れた所に移動する。
「さて…探索ならビナーが適任だろう、出てこいビナー」
再度手の平に紅いサンクトゥムタワーを生成しビナーを生み出す。だが先程のビナーとは比較して小さく、私の足元程度だ。
更に強度も威力も先程のビナーとは大きく違い、とても弱い。だがその分を移動速度、隠密性に回した探索専門のビナーだ。
「任せたぞ」
ビナーを手の平から降ろし、行かせる。ビナーは私の願いを聞き入れ即座に出動する。
小さいし弱いがまぁ大丈夫だろう、戦闘用ビナーと比べて弱いだけでオートマタ程度には引けをとらない。まぁ当たり前か、コピーとは言えどデカグラマトンの預言者だからな。ちょっと弱くなった程度では負けないよ。
「すまんすまん、少し待たせたな」
「遅いですよ、古食さんがモタモタしていたのでサキが残りのおにぎりを全て食べてしまいました。全くサキは…」
「はぁ!?ミヤコだって古食の分も食べてただろ!?全部人のせいにするな!」
「ふふっ、そんな美味しかったならまた帰ったら作ってやるから喧嘩するな」
しかしまぁ少し残念だな、後でコッソリ食べようと思ったのにまさか見つかって食べられてしまうとは。だがまぁ、美味しく食べてくれたのなら作り手としても嬉しいな。
『ちょっとちょっと〜、なに三人だけで盛り上がってんの?私もおにぎり食べたかったんだけど〜』
三人で談笑しているとヘリの中で待機しているモエから通信が入る。
「案ずるなモエ、ヘリの中にあるバッグ漁ってみろ」
『え、バッグ?ちょっと待っててー…』
耳に装着された小型通信機から何か漁るような物音が聞こえる。
『おにぎりあったー!ありがと古食♪』
「そりゃ良かった、確かモエは鮭と昆布で良かったよな?」
『よく分かってんね〜♪』
モエの
ビナーとの視界共有である程度道筋も把握したし今も敵の探索と制圧に努めてもらっている。
「あっ、あとミユ、お前のバッグにもおにぎり入れといたから。梅干しで良かったか?」
『えっ…あっ、うん…あ、ありがとう…』
相変わらず自信のなさそうな声色だがどこか嬉しさも感じられるので恐らく正解だろう。
「じゃ、しゅっぱーつ!」
休憩も充分取れたので立ち上がり荷物の整理をする。
「さて、それじゃさっさと四階まで降りてエレベーターに乗るよ」
早速下の階まで続く階段に向かう。そういや…カイザーで少し不自然な部分があるって連長が言ってたな…まぁ恐らく大丈夫だろう。さっさと資料入手して帰宅帰宅〜。
「…さっきから不自然な程に敵がいませんね、普通ならこんな手薄にはならないはずですけど」
「イヤー、ナンデダロナー」
まぁ…秘密にはしておくか、色彩の詳細を聞けば怒られそうだし。そういや最近司祭とも話してないよな、夢にも出てきてないし…まぁ別に大丈夫か。
「…?」
「どうしたんだ古食?何か気になる物でもあったのか?」
小さな違和感、とても小さな、気付けるかも怪しいほどの違和感。ただそれが次第に大きくなって、私を呼び寄せる。
一枚の資料。それが違和感の正体だった、私は違和感の強い方向に向かい、その違和感を手に取り読み始める。
「嘉瀬乃 古食 実験としての価値あり、見つけ次第捕獲。生死問わず、腕や目玉のみの一部位のみでも可…か」
「…は?オイ一体どういうことだよ、なんで古食の名前がこの会社に?」
…嗚呼、そういうことか。裏がいるんだな、この会社には、私を幼き色彩と見抜くような奴が。
良い度胸じゃねぇか、「生死問わず」ねぇ?このもしもの神秘を相手に大きく出たモンだ。舐めてやがる、良いぜ、ぶっ壊してやる。こいつの地獄の果の未来まで私が定めてやるよ。
「この情報も持ち帰って一度…ッ!?」
「…すまん、少しキレちゃってな。まぁなんだ、私は平気だから気にするな」
落ち着け古食、私を実験体として見てるのならいつか私の前に現れる。その時で良い、その時に壊せば良いんだ。今はそれよりも任務だ。
にしても私を狙う奴か、それに神秘の研究…随分と変な奴だな。まだ成長途中だが一応色彩本人でもあるんだぞ、よく操れると思えるな。
他にも神秘の研究に関する資料があったのでそれらも確認し、収集する。過去にも数人か、被検体となった人がいたようだ。
しかしそれらはあまりにも猟奇的で、解剖、死体からの抽出、生きたままの実験など人の血が通っているのか疑わしい実験だ。
「はぁ…まさかこんな猟奇的な実験をするような奴に目を付けられるとはな」
「これって古食が捕まれば…お前もこんな実験をされるってことか…?」
「まぁ、十中八九そうだろうな。私だけ特例で良待遇なんて有り得ないし、にしても捕まればこうなるのか、随分と怖い奴だな。まだ15〜18歳の子供に対してコレとは」
まぁ…捕まらないようにしないとな。私だってこんな実験受けたくないし、ヒフミに会えないまま御臨終なんて断固としてお断りだ。
「はぁ…さっさと行くぞ、こんな資料、見るに耐えない」
「分かり…ました…」
ミヤコとサキの顔色が優れない。まぁそりゃそうか、私だって平然としているが内心は狼狽えている。精々真顔を維持するのが精一杯だ。
それに、何か嫌な予感がする。事態が大きく動き出すような、これはただの直感。だが、私の直感は当たる。
◇◇◇
その後は無事に資料も得て、私も神秘の実験のことなんて頭から消えかけていた。だが未だに消えない
いや…実験のことは気にしてちゃ任務に支障が出る。忘れるとまでは行かなくとも、せめて行動に支障が出ないように──
ドゴォン!!!
「!?!!?」
「な、なんだこの音は!もしかして私達のことがバレたのか!?」
もしそうだとしたらマズい、とくにあの実験を行っていた本人がいるとすれば私が捕まるかもしれない。
私はサキとミヤコを抱き寄せ神秘をフル稼働させて、経過を切り抜き「ビルの外に出た」という結果だけを得る。だがそのビルの外は侵入前の静寂さを見失い─
「─は?」
幾百、いや、幾千かもしれない。それ程もの巨大な機械兵、ゴリアテが待ち構えていた。
『嘉瀬乃 古食、その他の二人』
「!?」
そのゴリアテの数に立ち尽くしていると一番前の黒塗りのゴリアテから声が鳴り響く。
『私はカイザーPMCの理事だ。特にお前らに興味もないし、その程度の証拠では損害もそれ程に大きくないので見逃そうと思ったのだがな。黒服…私の協力者から捕獲をお願いされたので捕まえることにした』
「チッ…逃げるぞ!ミヤコ、サキ!」
この数じゃ抵抗のしようがない、モエにも通信してヘリを──
「ッ!?、ミヤコ!!」
ミヤコとサキを引き連れ必死に逃げていると大量のミサイルがミヤコを睨み、突撃する。
私は咄嗟に動きミヤコを引き寄せ私の後ろに移動させ庇う。
「ッ……?」
「チッ…大丈夫か、ミヤコ」
「古食さん…その、足に直撃して…」
足に直撃したのか…ここからミヤコを抱えて逃げても捕まってしまう、サキに頼もうにもかなりの距離ができてしまった。なら─
「はぁ…仕方がない」
「古食さん…?一体何を…ッ」
精一杯の力を込め、ミヤコをサキに投げ飛ばす。無事に受け止めてくれたようだ。
「古食!お前も早くこっちに…」
「悪いな、私は今のミサイルで身体が思う様に動かない。さっさとミヤコを連れてモエのいるヘリに戻れ」
言った通り、先程のミサイルを諸に受け身体を思い通りに動かせない。まぁ十中八九捕まるだろう、だがただで捕まる気はない。私のできる限り抵抗してやる、もしかしたらあの実験によってこれで最期かもしれない。
「──古食さん!!」
「ミヤコ…」
ごめんな*2
───────────────────
とあるオフィス、黒いスーツに包まれた人とは呼べない漆黒の肌の
「捕まえてくれましたか、理事」
「あぁ、言われた通り古食を捕らえてきたぞ。契約通りこちらに資金を寄越してくれるんだろうな?黒服」
「えぇ、この幼き色彩が手に入れば5億円程度失ってもまだお釣りが出る程、感謝いたします」
「お前が目を付ける理由も少しは理解できた、まさか手負いの状態から我々の軍隊の8/10を削るとは。しかしまぁ5億でその程度また復旧できる」
「彼女の使っていた物、まさかデカグラマトンの預言者までも使用できるとは驚きました。既にあそこまで色彩を使いこなしていたとは…しかし、色彩は更に深く、彩りに満ちている」
全身が黒い大人…黒服と呼ばれていた者は冷静ながらもその声色から高揚を隠しきれていない様子だ。
理事はその様子に理解不能の意を態度で示していながらも契約によって得られた5億に愉悦に浸っているようだ。
「彼女はどちらへ?できれば今すぐにでも実物を拝見したいのですが…」
「あぁ、それなら今部下がこちらに護送車で寄越しているところだろう。無論、気絶させているし拘束具も装着している。暴れることはあれど制圧は容易だろう」
「何から何まで感謝いたします。それでは私はまた別の用がありますのでこれで…クックック…」
黒服は満足気にクックック、と気味悪く笑いつつドアを開け退出する。カイザーの理事もまた銀行の口座に5億円が入ったことを確認し、高らかに笑いながら部屋を後にする。
───────────────────
「古食さん…」
古食さんが居なくなってから次の日、私は今、連邦生徒会長に呼び出され生徒会長室に向かっている。理由は明白、古食さんの件だろう。私の不手際で古食さんは私を庇った。原因は全て私にある。
「…連邦生徒会長、月雪ミヤコです」
三回、ノックを鳴らし月雪ミヤコが生徒会長室に到着したことを知らせる。
「どうぞ、入ってくださいミヤコさん」
連邦生徒会長のその声は酷く冷静で、普段の暖かみが少しも感じられない。怒っているのが分かる。 当たり前だ、連邦生徒会長と古食さんは仲が良く、高い頻度で会っていた。そんな人が私のミスで居なくなってしまったのだ、何を言われても言い返せない。
「失礼…します」
生徒会長室の普通より一回り程大きなドアを押し、そのドアを開ける。
「来ましたか、ミヤコさん」
「…」
連邦生徒会長は奥のガラス張りの壁の外を眺め、こちらに振り返らず、話を続ける。その背中からは寂しさを覚えてしまう。
「今回呼び出された理由はお分かりですよね、古食さんの件です。こんな危ない任務に行かせるべきではなかったと…今でも悔やんでいます。なので、古食さんを取り返すべく!」
連邦生徒会長は、先程の静けさをまるで知らないかのように声を大きくし、私に語りかける。
「FOX小隊と、貴方たちRABBIT小隊の合同作戦を考えております。実行日は一週間後です」
「一週間後…ですか、それは少し、遠いと思いますが」
一週間後、その間古食さんが何もされず、無傷である保証はない。もしもその間に何かされていれば…
「貴方の考えも分かります。その一週間で古食さんが何もされないとは考えずらいです、ですが、この一週間は貴方たちを鍛える一週間でもあるのです」
「ッ…」
そうだ、私が弱かったから古食さんは私を庇った。ならもう、二度と古食さんに庇われないくらいに強くならなければならない。
「明日から貴方たちRABBIT小隊の訓練を古食さんと同レベルにします。どれほどのレベルかは…お分かりですよね、貴方たちは間近でその訓練を見てきたのですから。そしてその訓練がどれほどキツいのかもお分かりですよね」
「はい…ですが、お願いします。私は今のまま、弱いままではいられませんので。必ず強くなって古食さんを取り返します」
「ふふっ…その心意気や良し!ほらさっさと訓練に行きなさい!生易しい訓練は今日までですよ!」
「ッ…はい!」
私の決意の言葉を聞き、連邦生徒会長は古食さんと一緒にいた時のような朗らかな笑みを浮かべ、嬉しそうに私に命ずる。きっと古食さんも、この光と暖かみに釣られてしまったのだろう。
───────────────────
「…ん」
私は目が覚め、周りを見渡す。コンクリートでできた壁と床、正面には鉄格子がはめられており、横にはボロボロのベッドしかない。
そうか、やっぱり負けて捕まったんだな。いやー…本当にあんな実験をされるのなら、私はもう死ぬのかね。最期にヒフミと一度でも会いたかったな〜。そういや…死に戻りして今があるんだけど、今回もまた死に戻りしちゃうのかな。
もしそうだとすればまた中学時代からかな〜…流石に3周目は勘弁してほしい。
「クックック…起きましたか、古食さん」
「アンタ誰?ゴリアテから聞こえた声とは違うけど」
「クックック…これは失礼、私は黒服と申します。神秘の実験を行っていた張本人です」
「あぁ…お前が」
なるほど、こいつが私の捕獲を目論んでいたのか。にしてもこいつ人間か?顔真っ黒だし、なんかヒビみたいのもあるし片目しかないし。
「そんでさ、私ってこれから死ぬの?教えてよ黒卵」
「黒卵ではありません、黒服と呼んでいただければ幸いです。それで古食さんの生死でしたね、えぇ…今のところは殺す予定はありません。ただ色彩の本質を見たいのです、貴方はまだ不完全とは言えど色彩そのもの。本質は既に捕らえているのでしょう?」
「まぁ…そうだけどさ、じゃあ教えたら解放してくれる?」
ダメ元で交渉を試みる。まぁ十中八九ダメだろうな。
「良いですよ」
まぁそりゃそう…え????????
「え?は?良いの?私が言うのもなんだけど折角捕まえた色彩だよ?そんなすぐ解放なんて…」
「私は色彩の本質が知りたいのです。まだ他にも解明したい所は山程ありますが…いきなり答えでは面白味のカケラもないでしょう、教えていただければそれで結構です」
「ふーん…少し見直した」
なんだ、黒卵かと思ったら良いところあんじゃん。適当にボコボコにしてやろうかと思ったけどまぁこれなら不要かな。
「あー…けど私ちょっと"アレ"やりたかったな〜」
「アレ…とは?」
「『私は決して屈しないぞ!』ってやつ」
そう、アレだ。女騎士が敵に捕まって抵抗するがそれも虚しく堕ちてしまうやつ、まぁ本当に堕ちる気はないんだけど。
「すみませんが私はそのようなジャンルには詳しくないので」
「ま、そりゃそうか」
さてと、どうやら黒卵が言うには何かの準備でしばし忙しいから話を聞くのは一週間後らしい。そしてこの空間に嫌気が刺して逃げられては困るから、とまぁまぁ豪華な部屋を用意してくれた。
「マンガやら娯楽アイテムが沢山あるな…流石にスマホはないけど」
まぁ当たり前か、スマホまで支給すれば助けを求められるからな。そんな馬鹿な真似はしないだろう。
「クックック…古食さん、折角ですしお茶会でもどうですか?」
「おぉ、良いぞ。にしてもお茶会か、お茶会なんてトリニティに居た頃以来だな〜」
いや〜、被検体?の私がこんなゆっくりしてて良いのかね、ミヤコ達は今も忙しいだろうに。まぁ…ミヤコ達もボロボロ血みどろの私より笑いながら帰還してくる私のほうが良いだろうし別にいっか。
「あぁ、それとこれから毎日訓練の様な物をしてもらいます。具体的には色彩を測るためですね、色彩の力を使用してもらい、それらを私が観察・研究します」
「なるほどねぇ…おっけー」
そういうことで、これから一週間黒卵の所で過ごすことになった。
続く
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