元軍人さん、ダンジョン探索者になる。 作:第616特別情報大隊
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──ROE
迷宮寺院への偵察から数日後、ジョン・ドウから連絡があった。
『佐世保君。仕事だ。予定通り、我々は迷宮寺院への攻撃に踏み切る』
ジョン・ドウは相変わらず尊大な態度でそう告げる。
「内容を聞かせてくれ。場合によっては断る」
『これが作戦内容だ』
「ふむ」
動員されるのは大井系列の
それから探索者が幾人か投入されるということだった。
俺を含めて全員で10名が投入されると言う作戦だ。
攻撃は教会施設に対して行われ、
「無茶苦茶だな」
俺は率直にそう述べる。
手当たり次第に撃って殺していいなら、
『それが実現可能な人員は集めたつもりだ。彼らも君が参加するなら心強いと言っている。どうだね? 彼らの期待に応えたいだろう?』
「はん。寄せ集めの傭兵や探索者の敬意など貰ってもな。だが、報酬はいいのか?」
『ああ。一人当たり2500万だ』
「ふむ」
金はあるほどあればいい。前にも言ったように。
そして2500万というのはなかなかな大金だ。
しかも、俺ひとりでやれというわけではなく、今回は友軍がいる。
「分かった。受けよう」
『結構。君は受けるだろうと思っていたよ。では、合流地点に向かいたまえ。作戦開始時刻は記載してある通りに
「了解だ」
ジョン・ドウから送られて来た作戦内容に従い、俺は自宅で装備を整えてから友軍との合流地点を目指す。
友軍との合流地点は教会施設から5キロほど離れた雑居ビルだ。
雑居ビルと言ってもそこそこの広さがあり、駐車場も備えているとされていた。
それで、まずは武器の準備だが──。
「サタナエル、マルキダエル。今回は他に人間がいる。俺がいいと言うまで力は使うな。戦いたいなら普通の武器を使え。貸してやる」
「あらあら。そうなのですか? でも、ボクはこの手の武器の使い方はよく分かりませんから」
サタナエルはそう言って辞退。
「俺もいらない! 面倒くさい!」
「はあ。なら、暴れるなよ? いいな?」
「ん!」
マルキダエルは頷いたが、本当に理解できてるやら……。不安だ。
「さて、と」
俺はアサルトライフルを手にして動作を確認し、マガジンをチェストリグのポーチにたっぷりと収めて、医薬品なども準備しておく。
一通りの準備を終えてから、俺は家を出た。
完全武装で市街地をうろつくのは普通の街ならば白い目で見られるだろうが、この街では大したことはない。
サタナエルとマルキダエルを連れていることの方が目立ちそうだ。
それから俺たちは目的の雑居ビルに到着。
雑居ビルの駐車場にはにはスモークガラスのバンが3台停車していた。
タイヤの沈み込み方からしてある程度装甲化されているものだ。
それから雑居ビル内に俺たちは踏み込む。
指定されたフロアは3階で、何もない空テナントだった。
その扉の外にはひとりの武装した人間。その俺たちを警戒する様子は兵士のそれだ。素人じゃない。
「止まれ」
そいつが声をかけて俺を止める。
「ジョン・ドウの仕事に呼ばれた人間だ」
「なら、生体認証する」
そいつはARデバイスで俺たちを生体認証した。
「お前は認証できたが、後ろのふたりは確認できない」
「俺の連れだ。問題はない」
「分かった。トラブルを起こさないように言っておけ」
「分かってる。足は引っ張らせない」
サタナエルとマルキダエルのふたりが参加するとはジョン・ドウも思っていなかったのだろう。
そもそもこいつらに人間用の生体認証が通用するかも分からないが。
「入れ」
そして男は俺たちを空テナントの中に入れた。
部屋の中には計画の通りに俺を含めて10名の男女が待っていた。
その格好はそれぞれまちまちだ。
ラフなスーツに軍用ジャケットと言う出で立ちの人間もいれば、迷彩服でがっちり武装した人間もいる。
それぞれがプロであることは俺を見る目で分かった。
まずは鋭く警戒している。武装や体の機械化率を素早く確認する視線だ。
「よう、また会ったな。あんたが
「お前は大井の重役の護衛か」
スーツにソフトモヒカンという格好の男は、以前にも見たことがある。
大井の重役である司馬という男の護衛をしていたサムライだ。
「ああ。俺は
「ああ。今回は一緒に頑張るとしよう」
四月一日と言う男の言葉からは確かな信頼が窺えた。
それを見たのか、他の面々も警戒を緩めるのが分かる。
「で、仕事の内容だが作戦は大まかにしか聞いていない。決まっているのか?」
「今回はシンプルなお使いだ。込み入った作戦は必要ないだろう」
「カラシニコフで武装した人間を相手にするのは簡単なお使いじゃない。まして、相手には戦場帰りがいると言う情報もある」
俺は軽く言う四月一日に俺はそう忠告する。
「ふむ。なら聞くが、あんたならどういう作戦を立てる?」
四月一日は俺にそう尋ねてきた。
「そうだな。俺は事前に偵察のために忍び込んでいる。連中の警備には僅かだが付け入ることのできる隙がある」
俺はそう言って事前に提供されていた教会施設の空撮写真をAR上に広げて全員に見せ、それから九条が教えてくれた抜け道をマークする。
「ここから気づかれずに内部に潜入できる。そしてそれによって内部で陽動をやれば、正面からの攻撃は容易になるだろう。どうだ?」
「悪くない」
俺の説明を聞いた傭兵らしき男が頷く。
他の人間たちも俺の説明に不満はないようである。
「オーケー。それでやろう。陽動は俺とあんたでどうだ?」
「構わない。内部の構造をある程度知っている人間も必要だろう」
四月一日がそう提案し、俺は同意した。
潜入するならば事前にそれを行ったことがある人間がやるのがいい。
俺は最初から志願するつもりだった。
「決まりだな。他の連中は適当に包囲してから、俺たちの合図を待って攻めろ。誰も逃がすな。
四月一日はそう言って邪悪な笑みを浮かべて見せた。
「では、行こうぜ、
「そうかい」
武装した人間やこちらを殺しに来る人間を殺すことは正当だ。
だが、迷宮寺院の施設には女子供もいた。
それらも殺すことを正当化していいのだろうかと思う。
仕事を取るか、倫理を取るか……。
「道中であんたの伝説について聞かせてくれよ。ドラゴンをソロで殺したんだろう?」
「ああ。一応はな」
この調子からして四月一日が倫理と仕事の天秤を考えていないのは明らかだった。
現場でどう動いたらいいものかと俺は頭を悩ませているのに。
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