元軍人さん、ダンジョン探索者になる。 作:第616特別情報大隊
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──迷宮寺院の戦い
俺たちに向けて押し寄せてくる武装した信徒たち。
「援護する。お前は隙に斬り刻め」
「あいよ!」
俺はアサルトライフルを構え、四月一日は刀の柄に手を置く。
光学照準器を覗き込み、迫りくる信徒たちに俺は銃弾を叩き込んだ。
サプレッサーに抑制された銃声と同時に光学照準器の向こうで血しぶきが上がり、信徒が地面に倒れる。
「敵だ!」
「撃て、撃て!」
最初の数名が倒れると、信徒たちはすぐに遮蔽物に飛び込み、しっかりと光学照準器で狙いを定めて応戦してきた。
「素人じゃないな……」
精鋭とは言えないが、明らかに軍事教練を受けた兵士の動きだ。
遮蔽物を利用し、乱射するのではなくちゃんと狙っている。
やはり相手に戦場帰りがいるという情報は確からしい。
「どうする? このままここで粘るか?」
俺は相手が素人ではないのを見て、四月一日にそう尋ねる。
「いいや。それじゃあ、つまらない」
四月一日はそう言うと弾丸が飛び交う中を飛び出した。
自殺するつもりかと思ったが、やつは機械化された身体を駆使して銃弾を回避し、そして一気に近づいていた信徒に肉薄。
「そらよっと!」
そのまま超高周波振動刀の斬撃で信徒の首を刎ね飛ばした。
首が飛んだ信徒の身体がよろめくのに四月一日はそれを蹴り飛ばし、やつを狙おうとしていた別の信徒にぶち当てる。
「ははっ! ちょろいもんだ!」
四月一日はそう言って大きく笑い、そのまま信徒たちを斬り倒していく。
こうなると乱戦だ。あいつを援護するには俺も肉薄しなければならない。
「サタナエル、マルキダエル。俺は四月一日を援護する。お前たちはここに」
「はい、旦那様」
俺はアサルトライフルを構えたまま銃弾の切れ間に遮蔽物を出て、信徒たちに迫る。
距離を詰めて前線で暴れる四月一日を援護できるようにする。早い話が誤射防止だ。
俺は信徒たちの黒目が見える距離まで近づき、至近距離で発砲。
素早く照準し、引き金を引き、また照準する。
流れるように横に敵を照準していき、確実にそのバイタルを撃ち抜く。
「やるな、
「こっちが本業だったからな」
歩兵の仕事は銃を撃つことだ。
本来ナイフで殺すなんてのは滅多にやらない。
俺はその任務の都合上、ナイフを使う機会が多かったが銃で殺した人間の方が遥かに多いだろう。
信徒たちは俺たちを未だ狙ってくるが、訓練されていたとしても実戦は初めてだったのだろう。
狙いはずれてゆき、パニックが広がりつつある。
「そーらっ! 5人目! あんたは?」
「いちいち数えていられるか」
「それだけ殺してるってわけだな。ひゅー!」
俺と四月一日には無駄口を叩く暇があるぐらい余裕があった。
しかし、状況が変化したのは信徒たちがじわじわと退却を始めたときだ。
「兄弟たちよ! 退いてはならない!」
そう言って現れたのは迷彩服姿の6名の男たちだ。
手にはアメリカ製のアサルトライフルで、チェストリグなどを付けた完全武装だ。
「あの連中、機械化しているぞ」
四月一日がその男たちを見てそう言う。
「ああ。問題の戦場帰りかもしれない。警戒しろ」
「雑魚は斬り飽きていたところだ。レベルアップは歓迎だぜ」
四月一日は俺の警告にそう言い、男たちに突撃していく。
だが、相手はこれまでの信徒とは確かにレベルが違った。
「不信者めが。よくも兄弟たちを!」
男たちは四月一日に向けて隙なく弾幕を張って近づけず、俺の方にも牽制射撃を加えてくる。
まずは四月一日から始末するつもりなのだろう。
俺の方へは最小限の射撃で、四月一日には全力射撃だ。
「手榴弾!」
そして決定打が放り込まれた。
手榴弾だ。放り込まれたそれが放物線を描いて四月一日に飛ぶ。
「おおっと!」
しかし、四月一日は空中で手榴弾を真っ二つにした。
手榴弾は不発。四月一日はすぐに次の攻撃に備えて回避する。
「危なかったぜ。しかし、俺の方から殺すつもりだな。殺意が凄いぜ」
「あれだけ暴れたから恨まれてるんだろうさ」
近くにあった遮蔽物に飛び込んだ四月一日は俺に向けてそう言い、俺はさも当然というののにそう返す。
その間にも周囲では銃声が響き、友軍も教会施設内に突入しているのが分かった。
しかし、友軍がここまで来るにはもう少し時間がかかりそうだ。
「この状況を突破しなければならんな。さもなければ俺たちは死ぬぞ」
「イエス。せっかく強敵が来たんだ。引きたくない」
「なら、3カウントで俺が牽制するから突っ込め」
「あいよ!」
俺はスタングレネードを握り、3カウントを行う。
3──────機械化された教団の兵士たちは俺の方に依然として牽制射撃。
2────しかし、6名ではいつまでも弾幕は張っていられない。
1──一瞬の隙が致命傷になる。
よし。やるぞ。
俺は牽制射撃の合間からスタングレネードを敵に向けて放り投げた。
すぐさまスタングレネードは炸裂し、轟音と閃光で敵を制圧するはずだった。
炸裂音が響き、俺はすぐに遮蔽物から飛び出して銃を構える。
しかし、すぐに反撃が来た。
俺のそばを銃弾が飛ぶ。狙いはスタングレネードのあとでも精確だ。
「クソ。訓練されていたな」
教会の戦場帰りたちはスタングレネードを食らっても動けるように訓練されていたのだろう。
スタングレネードは確かに視野と聴覚を奪ったようだが、敵はそこまで混乱はしていなかった。
「大丈夫だ。これだけ余裕ができれば!」
だが、四月一日の方は状況に戦機を見出した。
敵に向けてイノシシのように突進し、素早く肉薄すると超高周波振動刀を振るう。
刃は機械化され、装甲化されていた教会の戦場狩りを斬り倒す。
「クソッタレ! 兄弟たちを殺しやがって!」
肉薄された戦場帰りたちは即座にアサルトライフルから拳銃、またはナイフに武装を切り替える。
「兄弟か……」
やつらは戦場から帰ってきて、それなのに社会に疎外された中でここに居場所を見出したのだろう。
そのことがその言葉から伝わってきた。
「四月一日。援護する」
俺もアサルトライフルからナイフに切り替えて四月一日の援護に回った。
「
「うるさい。お前は黙って敵を斬れ」
四月一日が嬉しそうにそう言い、俺はそう言い返した。
俺はナイフで攻撃を繰り出し、教会の戦場帰りはそれに的確に応じてくる。
やつらが持っているのも超高周波振動ナイフで、拳銃はグロック。
口径9ミリでは俺の胴体のバイタルは抜けないが、ナイフの方は厄介だ。
「ここは俺たちの居場所だ! 俺たちが居ていい場所なんだ!」
「教会を守れ! 他に俺たちに行ける場所なんてない!」
戦場帰りたちは狂信を滲ませてそう叫ぶ。
やはりこいつはらカルトに縋らなければならないほど追い詰められていたのか……。
だが、今はこいつらは敵だ。
敵は殺さなければならない。特に自分を殺しに来ている敵は。
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