元軍人さん、ダンジョン探索者になる。   作:第616特別情報大隊

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空中戦

……………………

 

 ──空中戦

 

 

 解き放たれたグリフォン。

 

 やつは殺気の籠った目で俺たちを睨みつける。

 

「作戦は?」

 

「今回の作戦で持ってきた小口径の銃弾はやつに通用しない。こうなりゃ近接戦だ」

 

「そうでなくっちゃ!」

 

 なぜか嬉しそうにそういう四月一日。いかれてんのか?

 

「やつがミンチになるまで斬り刻むぞ。他は体育館の外にグリフォンが逃げないように包囲しろ!」

 

「了解した!」

 

 俺と四月一日がナイフと刀で前に出て、他の傭兵たちは周囲を包囲。

 

「さあ、グリフォン狩りだ」

 

 俺はそう言って自分を鼓舞し、迷宮寺院を相手に虐殺を繰り広げたグリフォンに立ち向かう。

 グリフォンは怒り狂っており、翼を広げると俺たちに突撃してきた。

 

「おっと!」

 

 まず狙われたのは四月一日で、やつはさッと身をひるがえしてグリフォンの突撃を回避する。

 しかし、怒りに燃えるグリフォンは広げた翼で四月一日を殴るように薙ぎ、四月一日の身体が吹っ飛ばされた。

 しかし、やつを心配している暇はない。

 グリフォンは次に俺を狙ってきたからだ。

 

「来やがれ……!」

 

 俺は正面からのグリフォンの突撃に身構える。

 機械化した肉体の出力を180%まで引き上げ、強化脳も起動させておいた。

 もう他にできることはない。

 

「──────────ッッッッ!」

 

 グリフォンは再び咆哮を上げ、俺に向かって突撃してくる。

 強化脳のおかげでその動きは緩やかに伝わってきた。

 ライオンの四肢が地面を駆け、広げられたワシの翼が羽ばたき、俺の方に猛スピードで突っ込んでくるグリフォン。

 下手に躱そうとすれば、四月一日のように翼で吹き飛ばされるだろう。

 ならば──。

 

「ふんっ!」

 

 俺は突っ込んできたグリフォンの首にしがみつき、ナイフを突き立てる。

 赤い鮮血が吹き、グリフォンが言葉にならない悲鳴を上げた。

 

 グリフォンは首をぶんぶんと振るって俺を振り落とそうとし、俺は必死にしがみついてナイフでグリフォンの傷を抉っていく。

 

 しかし、グリフォンが広げた翼で飛び上がったので俺はグリフォンの首から離れた。

 それからグリフォンはそのまま飛び続けて体育館の天井を破ると、外へと飛び出してしまったのだ。

 

「不味い。逃げられた!」

 

 非常にやばいことにグリフォンは外に出てしまった。

 このまま街の方へと逃げられれば、民間人にも被害が出てしまう。

 

「四月一日! 動けるか!?」

 

「ああ、畜生。足が折れた。無理そうだ」

 

「分かった。なら、あとは俺がやる」

 

 俺は四月一日が動けないことを知ると体育館の外に出て、グリフォンの姿を探す。

 グリフォンはよろめきながらも南に飛んでいる。ダンジョンのある方角だ。

 

「旦那様」

 

 車両を出せば追いつけるだろうかと考えていたとき、サタナエルがやってきた。

 

「サタナエル。どうした?」

 

「グリフォンを追いかけるのでしょう? お手伝いできますよ」

 

 にこにこと笑って言うサタナエル。

 

「……まさか飛ぶのか?」

 

 俺はやつの言葉からそう察した。

 

「ええ。そうしなければ追いつくのは難しいかと」

 

「クソ。確かにその通りだが……」

 

 このぼろぼろの道路だらけのダンジョン周囲の街で、飛行するグリフォンを車両で追いかけるのは難しい。

 だが、サタナエルが以前やったように翼を広げて飛べば、追いつける見込みはある。

 その場合は大勢の地上にいる人間がそれを目撃することにあるだろうが……。

 

「分かった。頼む、サタナエル。やつを追うぞ」

 

「畏まりました、旦那様」

 

 それでも無関係の人間が死ぬよりマシだろう。

 そう考えて俺はサタナエルに飛んでもらうように頼んだ。

 サタナエルは翼を広げ、俺を抱えると上空に飛び上がる。

 

「俺を置いていくな!」

 

 続いてマルキダエルも飛行してついてきた。

 こいつは付いてきて何をするのか不明であるが。

 

「飛ばしますよ」

 

 サタナエルはそう言うと加速し、南に逃げるグリフォンを追う。

 グリフォンは必死に南に、ダンジョンのある方角に逃げているが、サタナエルは着実にそれに追いつきつつあった。

 

「サタナエル。やつの上を取れ!」

 

「はい、旦那様」

 

 俺はサタナエルにそう命じ、サタナエルが上昇。

 グリフォンの上の高度を押さえたサタナエルは、高度300メートル程度を飛行するグリフォンにそのままアプローチする。

 

「いいぞ。適当なところでグリフォンに飛び移る。やつを撃墜するんだ」

 

「本気ですか、旦那様?」

 

「危ない時は助けてくれるんだろう?」

 

「ふふ。そうでしたね」

 

 サタナエルは俺の言葉に優しげに微笑むとグリフォンの背に向けて降下していく。

 グリフォンの姿が急速に近づき、やつが俺たちに気づいて焦って翼をより懸命に羽ばたかせるのが分かった

 

「今だ!」

 

 俺はサタナエルに合図し、グリフォンの背に飛び乗る。

 空中に放り出され自由落下の浮遊感を僅かに味わいながらも、すぐに俺がグリフォンの背にしがみついた。

 

 そしてナイフでやつを首を滅多刺しにする。

 

「──────────ッッッッ!」

 

 グリフォンは雄たけびを上げて暴れ、空中での姿勢が乱れたことで失速。

 じわじわと高度が落ちていき、地面が近づく。

 

「いい加減に……死ね……!」

 

 グリフォンと初めて戦う俺にはグリフォンの急所は分からない。

 必死に首を貫き続けたら、やがて気泡の混じった血が滲み始めた。

 

「やったぞ。気道を裂いたな……!」

 

 ダンジョンのクリーチャーでも呼吸は必要だ。

 そのための肺に繋がる気道が傷ついたということは、こいつはもう長くない。

 

 俺が勝利を確信したとき、グリフォンが急に急降下を始めた。

 姿勢の制御が完全に失われたのだろう。

 高度200メートルほどから俺たちは真っ逆さまに降下していく。

 

「佐世保!」

 

 そこで俺を拾い上げたのはサタナエルではなく、マルキダエルだった。

 マルキダエルが俺の身体を掴み、引き上げる。

 

「助かった、マルキダエル……。危うくグリフォンと一緒に合い挽き肉になるところだった……」

 

「お前は俺の(つがい)だからな! あとこの仕事の報酬も欲しいし!」

 

「はあ。お前のそういうところは安心するよ」

 

 マルキダエルはそう言って俺を抱えていた。

 

 グリフォンの方はそのまま地面に向けて落下していき、地面に衝突してぐしゃりと潰れるのが分かった。

 間違いなくやつは死んだ。

 

 それを確認してから俺たちの地面に降りる。

 幸いにも周囲に人はおらず、俺たちは目立つことなく路地に降りた。

 

「旦那様、ご無事ですか?」

 

「無事だ。お前たちのおかげでグリフォンも民間人に被害を出さずくたばった」

 

 サタナエルが心配そうにしてやってくるのに俺はサムズアップして答える。

 

「ふふ。お役に立てたようで何よりです」

 

「ああ。とても役に立ってくれた。じゃあ、これから迷宮寺院の施設に戻ろう。四月一日たちに顛末を説明しなければならない。……不都合な部分は除いて」

 

 サタナエルとマルキダエルがドラゴンで悪魔で俺が飛んでグリフォンを追いかけて殺したと言えば大問題だ。

 そこら辺は伏せておく必要がある。

 

「しかし、何と説明していいやら……」

 

 飛んで逃げたグリフォンを走って追いかけて殺した?

 無理があるだろうが、それぐらいしか説明のしようがない……。

 

……………………

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