元軍人さん、ダンジョン探索者になる。 作:第616特別情報大隊
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──新しい刃
改めて最深部を目指すと決めた俺は早速準備に入った。
「
最深部を目指すと決めたら徹底的な準備をしなければならない。
俺は装備をケチることなくしっかりそろえることにした。
商業地に並ぶ軍用の
センサーがあれこれとついており、ARデバイスにリンクさせることでその情報を共有できる。
お値段1500万だが、今の俺ならば手の届かない値段じゃない。
「武器もしっかりと整えておかないとな」
俺はそう呟き、今も腰のホルスターに収まっている超高周波振動ナイフの柄を僅かに触る。
こいつは長年の相棒だったが、そろそろ新しい武器も持っておくべきだろう。
俺は銃火器以外の武器を扱っている店を眺める。
それらの店にはどこから流出したのか軍用爆薬が売られていたりと不法地帯ならではの品ぞろえだった。
もちろんサムライたちが使う超高周波振動刀が売られているのもこの辺りだ。
「さて、いいものはないかね……」
俺が好むのは比較的刃渡り長いコンバットナイフ。
人間相手には長いが、クリーチャーなとを相手にする場合にはその長さが役に立つ。
しかし、長すぎると扱いずらい。
俺は兵士であって刀で戦うサムライではないのだから。
「ん」
そこで俺は店頭に並ぶ、面白い品を見つけた。
それは超高周波振動型のナイフ──ではなく脇差だ。
見れば様々な超高周波振動刀が売られている店だった。
「佐世保?」
「ああ。皇か。奇遇だな」
そこで声をかけてきたのは皇だ。
「そうだね。あんたがサムライの装備に興味があるとは思わなかったよ」
「いや、そういうわけじゃないんだ」
俺は刀ではなくナイフを探していることを皇に語った。
「それならいい当てがあるぞ」
皇はそう言い、俺たちを別の店へと案内する。
そこは店と言うよりも町工場で、金属を加工する音が外まで響いている場所だった。
看板には『黒田金属熊本支社』とある。本社は別のところなのか……?
「あたしの刀はここでオーダーメイドしたんだ。あんたもここで頼むといい」
「オーダーメイド? 凄いな……。しかし……」
「あんただって今はもう金がないわけじゃないだろう? 装備品のに掛ける金はケチらない方がいいよ」
皇は俺の肩を掴み、悪ガキのような笑みを浮かべてそう言う。
「分かった、分かった。頼んでみるよ」
「あたしが紹介するよ。そうしたら最優先で作ってもらえるはずさ」
皇はそう言って町工場の中に入っていき、中にいる作業員と話すと、やがて作業着姿の初老の男が皇のそばに来て頷き、俺の方にやってくる。
「ナイフが欲しいとか。お求めの品を伺いましょう」
そう言われたので俺は自分が持っている超高周波振動ナイフを取り出す。
「これと同じようなのが欲しいんだが……」
「ほう。大井重工の0030式超高周波振動ナイフですね。軍用ナイフとして優れたものですが……旧式であることは否めません」
「ああ。金が入ったので装備を新しいのにしようと思ってな」
「分かりました。では、より良い品を作りましょう」
それから初老の男は俺の戦闘スタイルや手の大きさを調べ、それから1週間あればできると約束してくれた。
予算は……3000万円。
「では、よろしく頼む」
「ええ。お任せを」
俺は一度老人に別れを告げて、それから自宅に戻った。
* * * *
それから1週間後のこと。
俺たちは再び黒田金属を訪れた。
「佐世保さん。出来ましたよ、これです」
俺が作業場を訪れると初老の男性が現れ、一振りのナイフを見せた。
それは黒い刃を有する俺がこれまで使っていたのと同じ刃渡りのものだ。
「おお。ありがとう。これはよさそうだ」
俺は軽くナイフを振るって見て、その重さもグリップの握り心地もちょうどいいことを確かめた。
超高周波振動機能にも問題なさそうだ。
「では、支払いを」
俺は予算きっちりの3000万円を支払い、それから作業場を出ていく。
「早速試し切りと行きたいな。ダンジョンに軽く潜ろう」
「ふふ。旦那様、子供みたいに嬉しそうですね」
「あ、ああ。やっぱり新しい装備が手に入ると気分がな」
サタナエルにそう指摘されて俺は僅かに頬を赤らめた。
流石に子供っぽすぎたか。
「でも、そういう旦那様も好きですよ。少年の心を忘れていない旦那様も」
「……そうかい」
誉められているのやらどうやら分からないが、サタナエルの好意は今は以前ほど煩わしくはない。
サタナエルの好意は……割と素直に受け取れる。
それから俺たちはダンジョンに軽く潜ることにし、自宅で準備するとダンジョンへと向かった。
まずは10階層まで軽く潜ると決意し、俺たちはダンジョンに潜る。
道中での大したことのないクリーチャーはできればいつもは避けるのだが、今回は積極的に交戦していく。
何せ目的は試し斬りなのだから。
「ふんっ!」
ゴブリン、ダイヤウルフ、人食いネズミ。
それらを斬り刻んでいく。
「悪くないな。とてもいい感じだ」
これまで使っていた大井のそれよりもはるかに切れ味がいい。
すっとクリーチャーの肉や骨が切れる。本当に軽く切れるのだ。
流石に3000万かけただけはあると満足できるものだった。
そして、俺たちが10階層に到達したときだ。
「……ミノタウロス」
そこにはミノタウロスがいた。
変異種らしき赤黒い体毛のミノタウロスだ。
「────────ッッ!」
そいつは真っ黒な殺意に燃える瞳を俺の方に向けると咆哮を響かせた。
それからミノタウロスは俺の方にこん棒を振りかざして突撃してくる。
「よし。お前で腕試しだ」
俺はこのミノタウロスを倒すことでナイフと自分の相性の最終確認とすることに。
「行くぞ──」
突進してくるミノタウロスに対して俺はナイフを振るう。
ミノタウロスの分厚い皮膚と筋肉が熱したナイフでバターを切るようになめらかに切れていく。
ミノタウロスは悲鳴を上げるが、逃げはせず、こん棒を振り回して俺に応戦しようとしてきた。
「そいつも叩き切る」
俺はそのこん棒すらもあっさりと切断した。
こん棒は真っ二つになり、ミノタウロスが動揺するのが分かる。
やつは自分の得物が奪われたことに一瞬狼狽えたものの、すぐに肉弾戦へと移行。
「それでは俺には勝てんよ」
俺はミノタウロスの動きを見きり、その首にナイフを突き立てた。
新しいナイフの刃はミノタウロスの首を半分ほど裂き、ミノタウロスは大量の血をまき散らして倒れる。
「よし。やったぞ」
俺はミノタウロスを撃破した。
ほとんど何の苦戦もせずに。
新しい装備と自分の技術に、俺は改めて自信を有したのだった。
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