元軍人さん、ダンジョン探索者になる。   作:第616特別情報大隊

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80階層

……………………

 

 ──80階層

 

 

 ARに司馬からの着信が届く。

 

「もしもし?」

 

『佐世保君。君に任せたい仕事があるのだが、時間を取れないかね?』

 

「仕事の内容によるが」

 

『それはここでは話せない。あとでアレキサンドライトで会おうではないか』

 

「分かった」

 

 俺は司馬からの要請を受けるつもりだった。

 メガコーポの仕事は金になる。

 逃す手はなかった。

 

 それに70階層以降の情報はない。

 それについてもメガコーポを頼らざるを得なかったからだ。

 

「サタナエル、マルキダエル。アレキサンドライトに向かうぞ」

 

 俺はサタナエルたちにそう声をかけ、自宅を出るとアレキサンドライトに向かう。

 いつものように民間軍事会社(PMSC)のコントラクターたちが警護に当たる高級商業地区に入り、いつものように高級感が漂うアレキサンドライトに入った。

 それからVIPルームへ。

 

「よう、兄弟」

 

「……四月一日。今日も司馬の護衛か?」

 

「イエス」

 

 VIPルームの前には司馬の護衛でありサムライの四月一日が立っており、やつは俺を見つけるとにやにやと笑っていた。

 

「今日はあんたの連れも通していいと言われている。行けよ」

 

「そうする」

 

 今回はサタナエルとマルキダエルの通過も許可され、俺たちはVIPルーム内に。

 

「やあ、佐世保君。来てくれて助かったよ」

 

 VIPルームでは司馬が俺を待っていた。

 

「司馬。仕事の内容を聞こうか」

 

「早速だね。プロらしくて素晴らしいことだ」

 

 司馬はそう感心すると俺のARデバイスに情報を送信してくる。

 

「我が社は現在90階層に到達している。しかしながら、そんな中で80階層に問題が生じた。80階層のエリアボスであるドラゴンの変異種が出没したのだ」

 

「ふむ」

 

 送られて来た情報は80階層のエリアボスの情報。

 そこには無人地上車両(UGV)の撮影しただろう映像が添付されている。

 薄暗闇の中で無人地上車両(UGV)のセンサーが80階層の様子を映す。

 そして、ドラゴンの姿が映像の中に現れた。

 

 ドラゴンの鱗の色は金色、瞳の色は赤。

 そのドラゴンはサタナエルやマルキダエルと同じほどの大きさであり、そんなドラゴンが無人地上車両(UGV)を見つけると炎を浴びせかけた。

 そこで無人地上車両(UGV)からの映像が途絶えるが、音だけは拾っている。

 

『……忌々しい人間どもめ……』

 

 そう低い声が呟くようにそう言うのが聞こえてきた。

 それから無人地上車両(UGV)は踏みつぶされ、完全に破壊された。

 

「今の音声は?」

 

「ドラゴンのものだと我々は考えている。このとき80階層には無人地上車両(UGV)以外とドラゴン以外存在しなかったからね」

 

「喋るドラゴンか……」

 

 俺は少しばかりサタナエルたちの方を見た。

 これはサタナエルと同じ地獄からやってきたドラゴンなのだろうか?

 

「問題は喋るだけではないと言うことだ。このドラゴンには銃火器がまともに通用しなかった。太平洋保安公司は無反動砲まで使用したが、効果はなかった」

 

「それはまた……」

 

「さて、君がほとんどソロで70階層を突破したことは知っているし、君が竜殺し(ドラゴンスレイヤー)であるのは周知の事実。そこで君の力を借りたいのだ。この80階層のエリアボスを葬るために」

 

 司馬の求めはそういうことだった。

 どういうわけかこいつは俺が70階層をついに踏破したことまで知っていて、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)としてもう一度ドラゴンを殺せと求めているのだ。

 

「受けてもいい」

 

 俺は司馬に対してそう言う。

 

「ただし、条件がある」

 

「……聞こうか」

 

「あんたらがダンジョンの最深部を目指しているのは知っているが、俺も最深部を目指している。大井は90階層まで突破したと言うことだが、90階層までの情報がほしい。そして、俺が最深部を目指しても妨害しないと約束してほしい」

 

 俺の求めはふたつ。

 ひとつは90階層までのマップとクリーチャーの情報。

 それから大井が俺が最深部を目指すことを妨害しないという約束。

 

「ふむ。君は本気で最深部を目指しているのか? 最深部に何があると思っている?」

 

「財宝。俺が一生安心して暮らせるだけの価値ある財宝だ」

 

「財宝か……」

 

 俺の言葉に司馬は渋い表情を浮かべた。

 

「あんたもまだ最深部に到達してはいないんだろう? 最深部に何があるのか夢を見るのは自由なはずだ」

 

「分かった。90階層までのデータと通行許可を与えよう」

 

「しっかりと文章にしてくれ。口約束では困る」

 

「当然だ。意外かもしれないがメガコーポにとっても約束は重要なことなのだよ。信頼とブランドに関わる問題だからね」

 

「そうかい」

 

 メガコーポが本当に約束を守るのかは知らないが、ここで得るものを得ておかなければ最深部を目指すのは難しいかもしれない。

 俺はそう言って司馬から情報を許可を得た。

 90階層までの情報と司馬の名で記された俺の通行を許可する文章とIDだ。

 

「オーケー。じゃあ、仕事を引き受けよう」

 

「ありがとう。ドラゴンの討伐作戦はこれから7日後だ。作戦計画を渡しておく。当日は遅れずに79階層まできてもらう。君には大いに期待しているよ」

 

「ああ」

 

 司馬からそう依頼を改めて受け、俺は頷き、VIPルームを出た。

 

「四月一日。終わったぞ」

 

「ああ。そりゃよかった。ここにきても酒も飲めないじゃ退屈でね」

 

「お前はドラゴン退治には加わるのか?」

 

「ドラゴン退治? いいや。俺は司馬さんの護衛だ」

 

 俺の問いに四月一日は肩を竦めた。

 

「そうか……」

 

 俺の他に動員されるのは太平洋保安公司の連中だけだろうかと思いながら、俺はサタナエルたちを連れてアレキサンドライトを出た。

 

「サタナエル、マルキダエル。このドラゴンに見覚えはあるか?」

 

 俺はアレキサンドライトの外でサタナエルたちに司馬から渡されたドラゴンのデータを渡して共有する。

 

「ふむ。知らないドラゴンですね。マルキダエル、あなたは?」

 

「知らん! 他のドラゴンになんて興味ない!」

 

 サタナエルは首を横に振り、マルキダエルもそう返した。

 

「お前ら、本当に横のつながりが希薄なんだな……」

 

 サタナエルはマルキダエルも知らなかったしな。

 

「まあ、そもそもこのドラゴンがどこの誰かと分かっても意味がない。どうせ殺すんだ。80階層で通せんぼしているこいつをぶちのめし、俺たちは最深部に潜る」

 

「ええ、旦那様。やって見せましょう」

 

 俺は覚悟を新たにし、サタナエルたちとともに自宅に戻った。

 ドラゴン退治はこれから7日後。

 俺たちは無事にドラゴンの変異種を倒せるだろうか……?

 

……………………

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