元軍人さん、ダンジョン探索者になる。   作:第616特別情報大隊

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90階層のさらに先へ

……………………

 

 ──90階層のさらに先へ

 

 

 大剣を振るって突撃してくるデュラハン。

 俺はそれを迎え撃つ。

 

「来やがれ!」

 

 本来は騎乗して使うものだろう大剣を俺の方に向けて突くように突き出し、デュラハンは突進してきた。

 俺はその刃の切っ先をナイフで弾き、デュラハンにカウンターのようにナイフを突き出す。

 しかし、ナイフがやつの胸に再び突き刺さってもやはり手ごたえはない……。

 

「クソ。どうなってやがる」

 

 デュラハンが反撃に出て大剣を振り回すのに、俺は再びやつから距離を取る。

 

 そこで俺はあることに気づいた。

 これまでの階層に出没したゾンビのことを思い出したのだ。

 あれは寄生虫が死体に宿り、そうすることで死体を動かしていた。

 もしや、デュラハンも同じなのではないか、と。

 

「それならば──」

 

 俺はデュラハンに肉薄することを再度試みる。

 デュラハンは隙なく大剣を振るうが、俺はその刃を弾き、防ぎ、肉薄。

 

「食いやがれ!」

 

 俺はナイフをデュラハンに突き立てる。

 それと同時に炎をナイフからデュラハンの体内に流し込んだ。

 炎がデュラハンの身体に流し込まれる。

 もし、寄生虫がこいつを動かしているならば、これで仕留められるはずだ……!

 

 デュラハンの身体が高熱に焼かれ、そしてやつはぐらりと姿勢を崩した。

 そして、そのままやつは倒れ、動かなくなった。

 再び動き出す様子は、一切ない。

 

「よし。やったぞ……!」

 

 90階層のエリアボスであるデュラハンを撃破だ。

 

「やりましたね、旦那様」

 

「ああ。やったぞ。馬の方は?」

 

「私たちで仕留めました」

 

 デュラハンが跨っていた軍馬の方も、無事にサタナエルとマルキダエルが撃破していてた。

 焼け焦げた軍馬の死体が転がっている。

 

「しかし、これは何の装置なんだ……?」

 

 俺は90階層の中心に設置された謎の機械を見た。

 今のごうんごうんと重低音の音を立てる機械の目的は謎であった。

 

「これが地獄からエネルギーを抽出するための装置なのではないでしょうか?」

 

「これがか? ふむ……」

 

 俺はサタナエルにそう言われてジェーン・ドウに言われたことを思い出した。

 90階層で大井が行っている地獄からエネルギーを抽出する実験。

 だが、その言葉から想像していたのとは違っていた。

 地獄からエネルギーを吸い出すと言う言葉から俺が想像していたのは、もっと魔法陣やら生贄やらを置いたオカルト的な装置だった。

 この装置は真っ当な科学のそれに見える。

 

「どうする、佐世保! ぶち壊していけば金になるんだろう!」

 

「ううむ。デュラハンとの戦闘で壊れたことにしてぶち壊していくか……?」

 

 ジェーン・ドウからの依頼を達成すれば金がもらえる。大金だ。

 それは今ここにある機会を壊すだけでいい。

 

「では、やっちまうぞー!」

 

「ちょっと待て、マルキダエル!」

 

 俺が大井と敵対関係になる可能性も考えている中、マルキダエルが炎の剣を抜いた。

 そして、炎が機械を包み、機械は音を立てて崩れ始めた。

 

「あーあ……」

 

 俺は燃え上がる機械を見つめてただそういうことしかできなかった。

 

「大金ゲット!」

 

「馬鹿野郎……。頼むからもうちょっと考えて動け……」

 

 俺は力なくマルキダエルの後頭部を叩く。

 

「旦那様、次はどうなされますか?」

 

「このままさらに地下に潜ろうかと考えている。今ならばそれが可能だろう」

 

 サタナエルの問いに俺はそう答える。

 

 俺たちはこの90階層までやってきた。

 ちょうど大井も逃げたタイミングで。

 次に潜ったときに同じような幸運があるとは限らない。

 

 最深部に至るには今しかチャンスはないように思えたのだ。

 

「では、潜りましょう。最深部に向けて」

 

「ああ」

 

 俺たちは90階層からさらに下に潜る階段に踏み込んだ。

 ここからは完全に未知のエリアである。

 大井からの情報には90階層までの情報しかなく、これから先にどんなクリーチャーが出るのか、マップはどのようなものかも分からない。

 

 それでも俺は進んだ。

 今を逃せばもうチャンスはないように思えたから。

 

 俺たちは91階層に足を踏み入れる。

 不気味なほどに静かだ。

 

「……無人地上車両(UGV)を先行させる」

 

 俺はここで無人地上車両(UGV)を走らせた。

 無人地上車両(UGV)は静かな駆動音を立てて、俺たちの前方を進み、偵察を行う。

 

「旦那様、敵はいましたか?」

 

「今のところは見えないが……」

 

 そこで不意に無人地上車両(UGV)のセンサーが何かを捕らえた。

 

「こいつは……」

 

 それは見たこともないような化け物だった。

 おぞましく、醜い姿をしたクリーチャー。

 吸血コウモリのような顔をし、その肉体は人間のよう。

 

「低位悪魔ですね」

 

 ARで情報を共有しているサタナエルがそう言う。

 

「低位悪魔? お前たちの仲間と言うことか?」

 

「馬鹿を言うな、佐世保! 俺たちは高位悪魔だ! あいつらとは全然違う!」

 

「そうなのか。つまり、強くはないのだな?」

 

「強くない!」

 

「それが聞けて何よりだ」

 

 サタナエルやマルキダエルのような悪魔が雑魚として大量に現れるならば脅威だが、そうでないならばどうにかなる。

 俺はショットガンを構えて、低位悪魔に向けて突撃。

 

「────────────ッッッッッッ」

 

 静かに忍び寄ったつもりだが、低位悪魔は俺に気づき甲高い雄たけびを上げた。

 

「黙れ、不細工野郎」

 

 俺は叫ぶ低位悪魔に向けてスラグ弾を叩き込んだ。

 低位悪魔は銃弾を受けて、よろめくが一発では倒れなかった。

 やつは傷を負ったまま、クマのように鋭い爪の並ぶ腕を振るって襲い掛かってくる。

 

「もう一発!」

 

 俺は今度は頭に向けて銃弾を叩き込んだ。

 低位悪魔は僅かによろめくが、明らかに致命傷には至っていない。

 しかし、隙は生じた。

 

 俺は低位悪魔に肉薄し、ナイフでやつの首を裂く。

 鮮血がほとばしり、低位悪魔は崩れ落ち、そのまま──。

 

「消えた……」

 

 悪魔は消滅した。

 死体などは残らず、硫黄の刺激臭を残して消え去った。

 

「この深層は地獄に近いせいでしょう」

 

 そんな現象に驚く俺にサタナエルがそう告げる。

 

「情報の世界と実体の世界の境目があいまいなのです。ここでは一度肉体を持った悪魔たちも、すぐにそれを失ってしまう」

 

「ふむ……。逆もあり得るのか? 情報生命体がすぐに実体を持つことも?」

 

「あり得ますね」

 

「そいつは不味いな……」

 

 気づけば周囲が悪魔だらけということもありえるわけだ。

 

「ならば、一気に突っ走るしかない」

 

 俺は無人地上車両(UGV)をAI操作で先行させ、一気に前に進んでいった。

 ここを駆け抜けて一気に最深部に……!

 

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