元軍人さん、ダンジョン探索者になる。 作:第616特別情報大隊
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──100階層の謎
俺たちは低位悪魔を蹴散らしながら最深部を目指して突撃している。
「旦那様、雑魚は任せてください」
「そうだ! 俺たちがやってやる!」
道中の低位悪魔はサタナエルとマルキダエルも対処してくれた。
何せサタナエルの言ったことは正しく、次々に低位悪魔が湧くのだ。
こんな物量戦を戦えるほどの余力は、俺たちにはない。
「頼むぞ、サタナエル、マルキダエル」
俺たちはお互いに全力を尽くしながら突き進む。
もしかすると最深部は200階層とかいう途方のないものかもしれない。
だけれど、今の俺は進むことを選んだ。
やはり、それが正解である気がしたから。
「────────────ッッッッッッ」
低位悪魔たちは俺たちの足止めを試みるように次々に湧く。
俺はショットガンで、ナイフで、あるときは手榴弾でそれを排除。
サタナエルとマルキダエルも炎を放って、全てを焼き払っていった。
そうやって91階層、92階層、93階層、94階層、95階層と俺たちは突破していく。
「弾薬はまだまだ大丈夫だが……」
少しばかり疲労を感じる。
20階層で休憩しただけで、90階層までは一気に潜ったので当然と言えば当然なのかもしれない。
さらには90階層でデュラハンとも交戦しているのだ。
「少し休まれますか、旦那様?」
「そうしたいな……」
そうしたいが、悪魔が湧き続けるこの階層で休憩するのは難しい。
「俺たちが見張っているから休んでも大丈夫だぞ!」
「そうですよ、旦那様。ボクたちが見張っておきます」
しかし、ふたりがそう促してくるのに俺も座り込んで少し休みたかった。
食事をし、足を休ませ、精神の緊張を一度ほどきたい。
「では、すまないが任せる」
俺は一度休むことにした。
ミュールボットに積んであった戦闘糧食III型を貪るように食い、水を飲み、そして座って足を休ませる。
本当に小休止程度の休憩だったが、それでも俺の体力は大きく回復した。
これまでな仲間がいなかったので、こうした小休止を取ることも難しかったが、これもサタナエルとマルキダエルのおかげか……。
「よしっ」
俺は体力を回復させ、立ち上がった。
「もういいのですか、旦那様?」
「大丈夫だ。俺はもっと辛い行軍も経験しているこれぐらいは平気だ」
「ふふ。流石は旦那様です」
サタナエルは満足そうにそう言い、俺は小休止を終えて再び前進する。
低位悪魔はやはり湧き続け、山ほど準備してきた弾薬は急速に消耗されつつあった。
「99階層……!」
それでも俺たちは99階層までの突破を達成した。
恐らく人類として達したこのダンジョンの最下層だ。
大井ですらこの付近の情報は持っていなかった。
最高記録更新というわけだ。
「あとは100階層に何が待ち受けているかだな……」
99階層からは100階層に何が待ち受けているのかは分からない。
ただ、これまでのエリアボスの強力さから言って、100階層のエリアボスもかなり強力なものになるだろうことは間違いないだろうが……。
「旦那様」
サタナエルがそこで俺を呼び止める。
「ついに地獄が近いです。そして、地獄の門を守る強力な守護者の存在を感じます。用心されてください」
「……ああ。分かった」
サタナエルが笑みを消して警告するのに、俺は静かに頷き、覚悟を決めた。
まずは100階層に向けて
しかし──。
「何……?」
100階層に
完全に
「クソ。どういうことだ。これも地獄が近いからか……?」
それがいきなり壊れるというのは不吉な前兆だ。
「……こうなったらこのまま踏み込むしかないな……」
偵察が不十分なのに踏み込むことには危険を感じるが、いつまでもここに踏みとどまってはいられない。
もう少しでゴールかもしれないのだ。
やっと俺の夢が果たせるかもしれないのだ。
「進むぞ」
俺はそう宣言し、100階層に向けて階段を下っていく。
俺は地獄が近いと言われて硫黄の煮えたぎる池が存在するようなものを想像していたが、そんなことはなかった。
「これは……」
100階層は宇宙空間のように黒一色だった。
暗いわけではない。壁も床もまるで構造がつかめないぐらいに黒いのだ。
そんな暗黒の中心に太陽のようにに光が輝く。
「ここが地獄との接点」
サタナエルが静かに告げる。
「つまりは最深部です」
「ここが最深部……?」
約束されたお宝は見当たらない。
本当にここが最深部なのか……?
「おおーっ! 懐かしい雰囲気だ! 本当に地獄が近いな!」
「待て。財宝はどうなっている? 俺が求めていたお宝は……?」
マルキダエルも呑気にそういうのに俺は慌てふためいた。
「旦那様。ボクたちは情報生命体であり、地獄もまた情報化された世界です。そして、このダンジョンは情報を物質に転換できるコンバーター」
サタナエルが説明する。
「つまりは情報さえあえれば何だろうと生み出せるのです。旦那様を不老不死にすることだってできるし、使いきれないぐらいの富を生み出すこともできる。なんだってできるのですよ」
「それがダンジョン最深部のお宝か……」
俺は金銀財宝が眠っている光景を夢見てきたが、違ったのだ。
金銀財宝を生み出せる仕組みこそがダンジョンのお宝だったのだ。
「しかし、そのためには最後の守護者を倒さなければなりません」
サタナエルがそう言うのに中央で輝いていた光源が瞬く。
次の瞬間、俺たちの前に現れたのは──。
「なっ……これが最後の守護者……?」
それは恐ろしい化け物でも、巨大な化け物でもなかった。
それはほとんど俺と同じ存在だった。
俺の顔をし、俺の身体をし、俺と同じ構えでショットガンを構える男。
「ダンジョンと地獄は学んだのです。誰がこの世界でもっとも恐ろしく、強力な存在なのかを。それはまさに旦那様だったのでしょう」
「クソ。最後の最後で自分と戦えと言うわけか……!」
「ええ。まさにドッペルゲンガーです」
俺は俺と全く同じ武装のドッペルゲンガーを相手にショットガンを構える。
俺が俺のままならばクリーチャーとは違ってショットガンの弾丸は有効なはずだ。
しかし──。
ドッペルゲンガーは加速してそれを回避。
向こうもショットガンの銃口を俺に向け、射撃をしながら向かってきた。
銃弾が頬を掠め、俺は強化脳を稼働させて次の射撃も回避する。
「畜生!」
俺は最後の敵を相手にあがく。
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