元軍人さん、ダンジョン探索者になる。 作:第616特別情報大隊
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──エンディング
気づいたときには俺は100階層の床に横たわっていた。
「サタナエル……? マルキダエル……?」
ふたりの姿を探して俺は周囲を見渡す。
「旦那様。起きられましたか」
サタナエルはすぐそばにいた。
彼女はすでに服を着ており、にこにこと微笑んでいる。
「子供は……?」
「無事に地獄に与えられました。地獄は優秀な個の情報を得て喜んでいますよ」
「もう生まれたのか……?」
流石にそんなに時間が経ったとは思えない。
俺が気絶していたのはせいぜい5、6分かそこら辺だろう。
「旦那様の情報を受け取った時点で子供は生まれたのです。ボクたちは悪魔ですよ? お腹が大きくなる必要はないのです」
「そうだったな……。忘れていたよ」
サタナエルは悪魔だ。人間とは異なる。
生まれる子供も人間ではないのだから、妊娠という生理現象の必要もないのだろう。
「では、あとは財宝をいただいて帰るとするか……」
「そうですね。どれだけの富でも旦那様は手に入れることができますよ」
「なら、ミュールボットに積めるだけ財宝を積んで凱旋だ」
「それでいいのですか? 旦那様にはこのダンジョンのコンバーター機能をそのまま持ち帰ることもできるのですよ」
「……それはつまり……」
「ええ。ダンジョンの外でも好きなだけ財宝が生み出せるようになるのです」
サタナエルの話は魅力的なものだった。
もし、俺がダンジョンのコンバーター機能を持ちかえれば、無限の富を文字通り得られるのだ。
しかし、デメリットもある。
「ダメだ。それだと一生大井のようなメガコーポに狙われることになる。俺は俺が使いきれるだけの財宝があれば、それで十分だ」
ダンジョンのコンバーター機能を俺が持ち帰れば、ダンジョンから無限のエネルギーをえようとしていた大井などに狙われるのは間違いない。
それは俺が求めていた平穏とは遠い人生になるだろう。
「ふふ。謙虚な旦那様。素敵です。では、財宝を生成しましょう」
サタナエルは小さく笑い、それからコンバーター機能が財宝を生成し始める。
金銀に宝石。あらゆる財宝が次々に生み出されて、それが海賊の隠し財宝のように積み上げられる。
「……やっとか……」
俺は手にした。ダンジョンに臨み続けていたものを。ついに。
正直、途中で手に入らないのではないかと思ったときもあったが、こうして俺は財宝を目の前にしている。
「なあなあ、佐世保! これでもう家賃は払わなくていいか?」
「ああ。家賃は一生免除してやる」
「やったー!」
マルキダエルが財宝を前にしてそんな呑気なことを言って完成を上げていた。
「では、帰るぞ。俺たちは地上に」
それから俺たちは凱旋する。地上に向けて。
* * * *
俺がダンジョンの最深部を制したと言う情報は瞬く間に広がった。
ARデバイスに次々に祝福と取材の求めの着信がつく。
『流石だ、佐世保。あんたならやると思ってたよ』
そう言ってくれるのは皇。
皇は先を越されて悔しいけどと冗談のように付け加えていた。
『佐世保さん! おめでとうございます!』
そう言ってくれるのは九条たち。
純粋に祝ってくれていた。
『ぜひぜひ次のコラボは最深部で!』
そう冗談で言ってくるのは地下街メイロたち。
……いや、冗談だよな?
『ぜひとも最深部のことを聞かせくれ』
そう言ってくるのは斎藤。
情報屋にとっても最深部の情報は興味があるのだろう。
『おめでとうございます。いつか最深部がどんな光景だったか教えてください』
そう言ってくるのは星野。
最深部をメガコーポに渡したくないというやつの理想は一応叶った。
『仕事の報酬をお支払いしておきます』
そう言って送金してきたのはジェーン・ドウ。
90階層の件をやつはちゃんと把握していたらしい。
『我々は君を好待遇で雇用する準備がある』
そう申し出てきたのは司馬。
その申し出を受ける意味は今の俺にはない。
俺は大金を手にし、熊本ダンジョンを去ったのだから。
今は日本のとある場所──少なくともメガコーポによって無法地帯になっていない場所に暮らしている。
「旦那様、朝食ができましたよ」
「佐世保ー! 飯だぞー!」
サタナエルが呼び、マルキダエルが呼ぶのに俺はソファーから身体を起こす。
「ああ」
彼女たちと一緒に。
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この作品はこれにて完結です。
お付き合いいただきありがとうございました!