直葉「お兄ちゃーん、あの人に手を出されたー。」キリト「お前を〇す」   作:狩宮 深紅

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対人ゲームは死に覚えだよ、キリトさん

 

 

深夜零時。

 アルヴヘイム・オンラインの仮想世界は、現実世界(リアル)が眠りにつくこの時間帯こそが、実は最も多くのプレイヤーで賑わう『ゴールデンタイム』のど真ん中である。

 

 中立都市のメインストリートは、夜更かしを決め込んだプレイヤーたちの喧騒と、露店の鮮やかなランタンの光で溢れ返っていた。

 しかし、そんな賑やかな大通りから一本外れ、さらに複雑に入り組んだ路地裏の奥――エギルの酒場の勝手口に繋がる、人気のない小さな裏広場だけは、ひどく冷たく、張り詰めた空気に支配されていた。

 

「……来たか。」

 

 広場の中央。石畳の上に静かに佇むその影が、低く通る声で呟いた。

 漆黒のコート。背中には、彼のトレードマークとも言える黒剣。

 かつてSAOのデスゲームを終わらせた英雄であり、最強のトッププレイヤー。そして、俺が愛してしまった最強のヒロインの、実の兄――桐ヶ谷和人(キリト)だった。

 

 俺は、ごくりと生唾を飲み込み、彼に向かってゆっくりと歩み出た。

 広場の隅には、酒場の従業員が休憩用に設けたらしい長椅子や木箱が並んでおり、そこには心配そうな顔をしたウンディーネの魔法剣士(アスナさん)と、両手を胸の前でギュッと握りしめ、今にも泣き出しそうな顔をしたシルフの少女――直葉ちゃん(リーファ)の姿があった。

 

「××、さん……っ。」

 

 俺の姿を見た瞬間、直葉ちゃんが弾かれたように駆け寄ってきた。

 そして、俺のアバターの全身をマジマジと見つめ、呆然と目を丸くした。

 

「……あの、××さん。その格好……。」

 

 無理もない。俺の今の装備は、控えめに言って『不審者』、あるいは『動く粗大ゴミ』と表現するのが相応しい有様だったからだ。

 頭には、過去のイベント報酬で手に入れた茶色い『グリズリーの兜(熊の顔)』。胴体には、中級ダンジョンで泥水啜ってドロップさせた緑色の『重騎士の分厚い胸当て』。腕には真っ赤な『ワイバーンのガントレット』、足には銀色の『ミスリルグリーブ』。右手に握っているのは、攻撃力よりも耐久値(壊れにくさ)だけを最優先した、無骨で巨大な鉄のメイスだ。

 

「おう。俺が自力で集められる中で、一番防御力とVIT(体力)が上がる装備をかき集めてきたんだ。トッププレイヤーのスタイリッシュな防具とは程遠い、ただのツギハギのキメラ装備だけどな。」

 

「……。」

 

「カッコ悪くてごめんな。でも、俺にはこれしかできないし、こうなるだろうとは思ってたからな。」

 

 俺が熊の兜の中からおどけて笑いかけると、直葉ちゃんは、ポロポロと大粒の涙をこぼし始めた。

 

「……ごめんなさい……っ! 私のせいで……っ。」

 

「おいおい、泣くなよ。リーファちゃんが泣くようなことじゃないだろ」

 

「だって! 私のあの、嘘のせいで……××さんが、またお兄ちゃんと戦うことになっちゃって……っ! こんなの、ステータスが違いすぎます……!」

 

 彼女は俺の分厚い胸当てにしがみつき、子供のように泣きじゃくった。

 キリトさんが、数歩離れた場所から、静かに俺たちを見つめている。俺は、直葉ちゃんの背中にそっと手を回し、優しくポンポンと叩いた。

 

「俺が、自分の意志で、直葉ちゃんの隣に立つ資格を証明するためのケジメなんだ。」

 

「××さん……っ」

 

「それに、俺はエンジョイ勢だけど、タダじゃやられないからな。……リーファちゃん、もし俺のこと本気で応援してくれるなら、一つだけお願いがあるんだけど。」

 

 俺の言葉に、直葉ちゃんは涙をゴシゴシと拭い、力強く頷いた。

 

 俺がその『お願い』を口にすると、彼女は「……はいっ!!」と鋭く返事をし、スッと両手を天に掲げた。

 

『────!』

 

 直葉ちゃんの唇から、古ノルド語の響きを持つシルフ族の呪文が、高速の詠唱となって紡ぎ出される。

 次から次へと発動する、シルフ族の最高位の支援魔法(バフ)。物理防御力上昇、魔法耐性上昇、敏捷力上昇、自動回復付与、最大HP一時増加――彼女が持てるありったけの祈りと罪悪感、そして俺への愛情が込められたバフの光が、何重にも俺のアバターを包み込む。

 

 すべての詠唱が終わる頃には、俺のツギハギのキメラ装備は、まるでクリスマスツリーかミラーボールのように、赤、青、緑の極彩色のエフェクトで発光していた。

 

「……完璧だ。ありがとう、リーファちゃん。最強の気分だよ。」

 

「……絶対に、無理しないでくださいね……っ」

 

「おう」

 

 俺は、彼女の頭をもう一度撫でてから、振り返った。

 広場の中央。静かに黒剣を抜いたキリトさんが、俺に向かってデュエル(1対1の決闘)の申請ウィンドウを飛ばしてくる。

 

『――Duel Mode:Normal(HP全損決着)』

 

 俺は、熊の兜の奥で深く息を吸い込み、『YES』のボタンをタップした。

 二人の間に、60秒のカウントダウンタイマーが浮かび上がる。

 

「一つだけ、条件を付けさせてもらう。」

 

 俺は、巨大な鉄のメイスを構え、黒の剣士に向かって言った。

 

「決闘は、一回きりじゃない。……俺の心が折れて、立ち上がるのをやめるまで。何度でも、デュエルの再申請を受け入れてほしい。」

 

「……。」

 

「俺は、絶対に逃げない。」

 

 キリトさんは、俺のその言葉に少しだけ目を細め、コクリと小さく頷いた。

 空間に浮かぶタイマーが、ゼロになる。

 

『――DUEL、START!!』

 

 システム音声が鳴り響いた、そのコンマ一秒後だった。

 俺の視界から、黒いコートの姿が『消失』した。

 

「――っ!?」

 

 速い。速すぎる。1度見たことがあるから反応できる、そんな甘い考えはしていない、それを意識した上で、見えなかった。

 

 気づいた時には、キリトさんはすでに俺の懐、文字通りゼロ距離にまで踏み込んでいた。

 

 下段から跳ね上がる、漆黒の斬撃。

 リーファちゃんの極大バフが掛かっていても、キリトさんの圧倒的なSTR(筋力)と武器の威力の前に、俺の重騎士の胸当てはいとも容易く防御を貫通された。

 

 ガガァァァンッ!!

 

「ガ……ァッ……!!」

 アミュスフィアのペインアブソーバーが働いているとはいえ、凄まじい衝撃と仮想的な痛覚が全身を突き抜ける。

 俺のHPゲージは、たったの『一撃』で、緑から黄色、そして一気に赤へと反転し、そのままゼロになった。

 

『――WINNER:Kirito』

 

 決着のシステム文字が浮かび、俺の体はポリゴンの光となって砕け散り、直後に、数メートル離れた広場の端で再構築された。

 デュエル開始から、わずか三秒。

 何が起きたのかすら理解できないほどの、圧倒的で絶望的な力の差だった。

 

「……ハァ……ハァ……っ。」

 

 俺は、石畳に膝をつき、激しいショックによる疑似的な息切れに苦しんだ。

 勝負にならない。大人と赤子の手をひねるようなものだ。

 だが、俺は震える足に無理やり力を込め、立ち上がった。そして、急いで元の場所に戻り、視界の端にあるメニューから即座にキリトさんへ向けて『デュエル再申請』のウィンドウを飛ばした。

 

「……っ!? ××さん!」

 

 木箱の陰から、直葉ちゃんが悲鳴のような声を上げる。

 キリトさんは、無言のままその申請を受諾した。

 

『――DUEL、START!!』

 

 第二戦。今度は距離を取って、防御に徹してみる。

 しかし、キリトさんの猛烈な連続攻撃の前に、俺の鉄のメイスは三撃目で弾き飛ばされ、直後に胸を貫かれて全損。

 第三戦。俺は持参した『煙玉』を地面に叩きつけ、目くらましをしてから背後に回り込もうとした。

 だが、煙の中から飛んできた的確な直剣が俺の眉間を貫き、怯んだところに武術スキルの連撃を浴びせられて全損。

 

 第五戦。第八戦。第十戦。

 

 俺はアイテム欄を開き、中級の回復ポーションをガブ飲みしながら泥臭く逃げ回り、広場の木箱や壁を盾にして時間を稼いだが、キリトさんの剣はそんな小細工を一切許さず、ことごとく俺のHPを刈り取っていった。

 

「……嘘でしょ。あの人、あれだけ完膚なきまでに叩きのめされてるのに……。」

 

 木箱の陰で見守っていたアスナが、信じられないものを見るような目で呟いた。

 第十五戦。第十八戦。第二十戦。

 幾度となく地に這いつくばり、斬り捨てられ、圧倒的な暴力の前に蹂躙されても。

 ゲームの仕様上、俺のキメラ装備の見た目がボロボロに砕けることはない。だが、俺のインベントリの中にあった三十本の回復ポーションと、十個の煙玉、各種のバフアイテムは、ついに底をつきかけていた。

 これ以上ないほどの『無様』を晒している。それでも、そのツギハギの熊の兜を被った青年は、決して目を逸らさず、心が折れる気配すら見せずに、即座に立ち上がって『再申請』を飛ばし続けてくるのだ。

 

「もう……もうやめて、××さんっ! お兄ちゃんも!!」

 

 直葉ちゃんが、涙声で絶叫する。

 だが、俺は振り返らず、二十一回目のデュエル申請を飛ばした。

 

(……見えてきた。……見えてきたぞ)

 

 俺は、息を荒くしながらも、熊の兜の奥で、ゲームの攻略法を見つけた時のように目をギラつかせていた。

 俺のプレイヤースキルは下の中。動体視力も反応速度も、トッププレイヤーには遠く及ばない。

 

 まともに打ち合えば、一万回やっても一万回負ける。

 だが、俺は『エンジョイ勢』だ。数え切れないほどのゲームで、理不尽な死に覚え(リトライ)を繰り返してきた、しがない生粋のゲーマーだ。

 この二十回の、文字通り身を削るような『死に覚え』の中で。俺は、キリトさんの動きの中に、一つだけ――システム上の『絶対的な弱点』を見出していた。

 それは、VRMMO特有のシステムである**『ソードスキル』発動後の、強制的な硬直時間(後隙)**だ。

 ソードスキルは、システムのアシストによって超常的なスピードと破壊力を生み出す反面、技が完全に終了した直後、コンマ数秒の間だけ、アバターの動きがシステムによってロックされ、完全に無防備になる。

 トッププレイヤーであるキリトさんは、その硬直を最小限に抑える技術(スキルコネクトや体術でのカバー)を持っているが、それでも『ゼロ』にはならない。

 

(……キリトさんが一番よく使う、あの上段からのソードスキル。あの技の後なら、確実にコンマ五秒の隙ができる(wiki知識)。……俺の手持ちのポーションは、次で最後。やるなら、今しかない……!)

 

 『――DUEL、START!!』

 

 二十一回目のカウントダウンがゼロになった瞬間。

 俺は、今までのように逃げ回るのをやめ、あえてキリトさんの正面に、メイスを構えて突っ込んだ。

 

「……!」

 

 俺の予期せぬ前進に、キリトさんが僅かに眉を動かす。

 そして、迎撃のために、黒剣を上段へと振りかぶった。剣が青白いシステム光を帯びる。俺が二十回の死の中で、最も多くHPを全損させられた、あの重いソードスキルだ。

 

(来る……っ! 今だ!!)

 

 俺は、回避行動をとらなかった。

 その代わり、極限まで防御力とVITに極振りしたキメラ装備と、直葉ちゃんがかけてくれた防御バフのすべてを信じて――あえて、黒剣の軌道の『外周ギリギリ(即死しないライン)』へと、自分から身体を滑り込ませたのだ。

「――っ!!」

 キリトさんの黒剣が、俺の左肩を袈裟懸けに切り裂く。

 凄まじい激痛と衝撃。HPゲージが、一瞬で残り1割(レッドゾーン)の『数ミリ』まで消し飛ぶ。

 だが、俺は耐えた。肉を切らせて、ギリギリで即死を免れた。

 

 そして。

 技を振り抜いたキリトさんの身体が、システムによって完全にロックされ――動きが止まる。

 

「貰ったァァァァッ!!」

 

 俺は、残された右腕の全力を振り絞り。

 無骨な鉄のメイスを、硬直状態のキリトさんの横顔に向かって、泥臭く、全力で振り抜いた。

 ガキィィィンッ!!!

 

「……っ!」

 

 鈍い炸裂音が、路地裏の広場に響き渡った。

 俺のメイスは、キリトさんの顔面を庇おうと咄嗟に持ち上げられた、彼の左腕のガントレットにクリーンヒットした。

 ダメージとしては、キリトさんのHPゲージをほんの数ミリ削ったに過ぎない。

 だが。圧倒的な格下の、ステータスもスキルも遠く及ばないはずの『一番弱いエンジョイ勢』が、最強の英雄の動きを二十回の死を以て見切り、自らの肉体を囮にして、完全に狙いすました『有効打』を叩き込んだのだ。

 直後、硬直から復帰したキリトさんの蹴りが俺の腹部を捉え、俺の残りのHPは吹き飛び、二十一回目のデュエルは終わった。

 しかし。

 広場の端に再構築され、荒い息を吐きながら石畳に四つん這いになっている俺を見下ろすキリトさんの瞳は。

 先程までの「ただの査定」から、一人の戦士を前にした時の『承認』の色へと、確かに変わっていた。

 

「……ハァ……ハァ……っ。まだ……まだだ、もう一回……!」

 

 俺が震える手でメニュー画面を開き、最後のポーションを使おうとした時。

 

「もういい。……デュエルは、終わりだ。」

 

 キリトさんが、黒剣を背中の鞘にスッと収め、低く、静かな声で告げた。

 そして、俺の前にゆっくりと歩み寄り、見下ろして問うた。

 

「なぜ、そこまでして立ち上がる。俺に勝てないことくらい、最初の数回で嫌というほどわかったはずだ。」

 

「…………」

 

「ステータスも、プレイヤースキルも、お前と俺とじゃ天地の差がある。いざという時、お前のその力で、本当に直葉を守り抜けると思っているのか」

 

 それは、強者ゆえの、あまりにも残酷で真っ当な問いかけだった。

 だが、俺は。

 ツギハギの熊の兜を脱ぎ捨て、一切の消費アイテムが尽き果てたアバターのまま、絶対にキリトさんから目を逸らさずに立ち上がった。

 

「……アンタの言う通りだ。俺はゲームじゃクソ雑魚だし、いざって時にモンスターから直葉ちゃんを守る力なんてない。」

 

 俺は、息を整え、心の底からの、魂の叫びを彼に叩きつけた。

 

「アンタは、世界を救った本物のヒーローだよ。でもな……英雄のアンタが傍にいるからこそ、直葉ちゃんはいつまでも『強い妹』でいなきゃいけないんだ!!」

 

「……っ」

 

 キリトさんの肩が、ピクリと震えた。

 

「俺は、ただの平和ボケした、くだらない大学生だ。アンタみたいにカッコよく剣を振るうことはできない」

 

 俺の脳裏に、あの安アパートでうなされていた、痛々しい彼女の涙がよぎる。

 

「でも! あの子が抱えてる地獄みたいな痛みを忘れさせて、無理な強がりを解いて、ただの『普通の女の子』に戻して腹抱えて笑わせてやれるのは……何度アンタに斬り捨てられても、こうして泥水啜って笑って立ち上がるような、俺みたいなくだらない男だけだ!!」

 

 静寂に包まれた裏広場に、俺の叫びだけが響き渡った。

 長椅子の陰で、直葉ちゃんは両手で顔を覆い、声にならない声で嗚咽を漏らしている。

 アスナさんも、小さく息を呑み、祈るように両手を組んでいた。

 キリトさんは、俺のその真っ直ぐで、泥臭い言葉を真正面から受け止めた。

 数秒の、長い沈黙の後。

 彼は――ふっと、どこか安堵したような、重い肩の荷を下ろした『兄』としての、ひどく柔らかい笑みを浮かべた。

 

「……証明してみせろ。お前のその『平和』の覚悟を」

 

 キリトさんは、再び背中から黒剣を抜いた。

 だが、そこに先ほどまでの敵意や査定の殺気はない。これは、彼からの『最後のテスト』だ。

 

 剣が、眩いばかりの光を放つ。

 俺も、残された全気力を振り絞り、ひび割れた鉄のメイスを構えた。

 

「うおおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

 俺は、絶対に目を開いたまま、最強の剣士が放つ最後の一撃に向かって、正面から突っ込んでいった。

 圧倒的な光の奔流。俺の視界は真っ白な全損エフェクトに包まれた。

 

 ――数秒後。

 

 石畳の上で再構築された俺は、静かに目を覚ました。

 全身の力が抜け、指一本動かす気力も残っていない。俺が大の字になって荒い息を吐いていると、視界の上に、一つの影が落ちた。

 キリトさんだった。

 彼は、地に倒れ伏す俺に向かって、スッと右手を差し出していた。

 

「……お前の意地、確かに見届けた」

 

「……」

 

「お前───いや、あなたの言う通りだ。俺の隣にいる限り、あいつは、直葉は無理をして剣を握り続けるだろう。……あいつに『普通の女の子』としての平和を教えられるのは、あなたしかいない」

 

 俺は、震える右手を持ち上げ、その英雄の大きな手を、しっかりと握り返した。

 キリトさんは、俺を力強く引っ張り上げると、俺の目を真っ直ぐに見据えて、深く、静かに頷いた。

 

「――直葉を、頼みます。」

 

 その言葉を聞いた瞬間。

 俺の視界の端から、「××さぁぁぁんっ!!」という直葉ちゃんの泣き叫ぶ声が近づいてきて、俺のアバターは凄まじい勢いのタックルを受けて再び地面に押し倒された。

 

「うわっ!? ちょ、すぐ─リーファちゃん!?」

 

「よかった……っ! よかったぁぁ……っ!」

 

「おいおい、泣きすぎだって。……ほら、言っただろ? 俺は絶対に逃げないって。」

 

 俺の胸の中で泣きじゃくる直葉ちゃんを優しく抱きしめながら、俺は、呆れたように笑いながらこちらを見ているキリトさんと、アスナさんに向けて、Vサインを作ってみせた。

 一番弱いクソ雑魚エンジョイ勢の俺が、最強の魔王から、世界で一番可愛いお姫様を奪い取った、アルヴヘイムの夜。

 

後日、どこからか噂が漏れたのか、一部始終のみを見ていた野次馬から『ブラッキー先生相手に命知らずにも挑み、ハーレムを1人引き抜いたバカ野郎がいる』という話が流れたのは、このときの俺は知らなかった。

 

 

 

 




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