直葉「お兄ちゃーん、あの人に手を出されたー。」キリト「お前を〇す」   作:狩宮 深紅

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ちょっと短いですが書きたいものがかけているのでモチベ高めです。
主人公はどれだけいじめてもいい、古事記にもそう書いてある。

(追記)
この小説は新たに閲覧していただいた皆様、ここまでご覧頂きありがとうございます。
今回の3話において主人公に対しての理不尽な暴力描写を意図的にしております。
見られる方によっては不快に思われる方がいらっしゃることも理解しております。そういった描写が苦手や嫌いな方はここでブラウザバックしていただくか、すぐに次話を投稿する予定でありますのでこの話を飛ばしてご覧ください。
改めましてこちらの追記を書く前に今回の描写において不快に思われた方へ、申し訳ありませんでした。


「お前を〇す」

 

 俺――××は、自室のベッドに寝転がり、VRマシンを頭にセットして「リンク・スタート」と呑気な声を上げた。

 

 視界が七色の光に包まれ、次に目を開けた時、俺はアルヴヘイムの煌びやかな夜の街に立っていた。

 

今日のミッションは、先日リアルでオフ会をした直葉ちゃん――ALOでのアバター名・リーファちゃんの『ネトゲ仲間(身内)』への挨拶である。

 

(まあ、あくまで『お試しカレシ』のフリだしな。頼れる年上のお兄さんとして、適当に愛想よく挨拶して、適当に奢ってやれば丸く収まるだろ)

 

俺のプレイヤースキルは完全にエンジョイ勢のそれであり、下の中といったところだ。だからこそ、ゲーム内の人間関係も気楽なものしか築いてこなかった。

 

 

まさかこの後、自分のその圧倒的な平和ボケと想像力の欠如を、文字通り死ぬほど後悔することになるとは思いもせずに。

 

 

 

 

 

 

 

指定されたのは、世界樹の根元にある大きな街の、いかにも高級そうな貸し切り酒場だった。

俺は初期装備を適当に着崩した、いかにも初心者兼エンジョイ勢をアピールしたアバターの身だしなみを軽く整え、個室の重厚な扉の前に立った。

 

「よし。どうもー、こんちわっす!! リーファちゃんの彼氏役の――」

 

 愛想笑いを全開にして扉を開け放った、その瞬間。

 

「…………え?」

 

俺の言葉は、そして思考そのものが、物理的に凍りついた。

部屋の中に満ちていたのは、大衆向けネトゲ特有の和やかな空気などでは断じてなかった。

 

それは、ただのゲームという枠組みを超越した、まるで戦場の最前線、絶対的な死線(システム外)のプレッシャーだった。

 

円卓を囲んで座っていた面々を見て、俺は息を呑んだ。

 

全身黒ずくめのコートを纏った、ALO最強と名高い『ブラッキー先生』。

白と青のカラーの衣装を身に纏った、美しき細剣使い。その苛烈な戦いぶりから『バーサクヒーラー』の異名を持つアスナさん。

 

他にも、赤いバンダナを巻いた落武者風のサムライ、《風林火山》のクラインや、凄腕と噂のピンク髪の鍛冶屋、リズベットなど。

他にもオーナーと思しきスキンヘッドの大男はこちらこそ見てはいないが、明らかに値踏みされている雰囲気がエンジョイ勢である俺でもわかった。

 

(えっ……? なんでこのゲームのトッププレイヤーが勢揃いしてんの? ここ、隠しボスの部屋か何か?)

 

俺が完全にドン引きして立ち尽くしていると、部屋の隅から、見慣れたシルフの少女が小走りで駆け寄ってきた。

 

「あっ、××さん! こっちです!」

 

リーファちゃんは、俺の腕にピトッと密着するように抱き着いた。

その瞬間、円卓に座る歴戦の勇姿たちの視線が一斉に俺に突き刺さり、室温がさらにマイナス五十度ほど下がった気がした。

 

「ちょ、直葉ちゃん……じゃなかった、リーファちゃん? この人たち、君の身内って……」

 

「はい! 大切な家族みたいな人たちです」

 

リーファちゃんは、底知れぬほど美しい、満面の笑みを浮かべた。

そして、俺の腕をがっちりとホールドしたまま、円卓の勇者たちに向かって言い放ったのだ。

 

「お兄ちゃん、アスナさん、みんな! 紹介するね。――私に手を出した、××さんです♡」

 

「――は?」

 

俺の口から、間抜けな声が漏れた。

 

待て。今、なんと? お兄ちゃん? あのブラッキー先生が、あの可愛い直葉ちゃんの実の兄?

 

いや、それよりも――『手を出した』って、なんだ!?

俺がパニックに陥る暇もなく、ギャラリーたちは即座に反応した。

 

「てっ……手を出したって、どこまで!?」

 

真っ先に立ち上がったのは、バーサクヒーラーことアスナさんだった。

彼女は本当の妹を心配する姉のような、悲痛で焦燥に駆られた表情でリーファちゃんに駆け寄ろうとした。

 

「直葉ちゃん、まさか無理やり……っ! 怪我はない!? 本当に大丈夫なの!?」

 

「ええっと、それは……」と、リーファちゃんが頬を赤らめて口ごもる(※完璧な演技である)。

 

その反応を見たアスナさんが、ゆっくりと俺の方に視線を向けた。

適当に着崩した初期装備。ヘラヘラしたモラトリアム全開の軽薄なアバター。それを上から下まで値踏みしたアスナさんの顔から、心配の色がスッと消え去り――代わりに、凄まじい『怒り』の炎が立ち上った。

 

「こんな……いかにも女の子を騙して遊んでいそうな、軽薄な男に……っ! 私たちの直葉ちゃんが……っ!」

 

ギリッ、と。

アスナさんの手が、腰の細剣(レイピア)の柄を強く握りしめた。

 

「みんな下がってて。まずは私が、この害虫を千切りにするわ。ヒールをかけながら、永遠に。」

 

「ちょっ、待ってアスナさん!? 目がマジ! バーサクヒーラーの目がマジだから!!」

 

俺が悲鳴を上げたその時。

 

「この野郎ォォォ! まだ高校生の直葉ちゃん相手に何してんだテメェ!!」

 

「直葉ちゃんの純潔を返しなさいよこのチャラ男ォォォ!!」

 

サムライ姿のクラインさんと、有名鍛冶屋のリズベットさんまでもが、武器を抜き放ってブチギレていた。

 

 

 

完全に終わった。俺は今、全方位から理不尽な魔女裁判にかけられている。

 

だが、真の地獄はそこからだった。

 

 

「……いや、アスナ。クライン、リズも下がれ。」

 

 

低く、地を這うような冷たい声。

円卓の奥から、一切の光を失った真っ暗な瞳をしたブラッキー先生ーーーもといキリトさんが、無言でゆっくりと歩み出てきた。

 

彼の背中から、チャキ……と、重厚な黒剣が引き抜かれる音が響く。

 

「……お前か。」

 

「ひぃっ!?」

 

俺は腰が抜けそうになりながら、一歩後ずさった。

キリトさんは、妹の報告を反芻するように、ギリギリと歯を食いしばりながら低く呟いた。

 

「『お兄ちゃーんあの人に手を出されたー。』……だと?」

 

その言葉には、SAOのデスゲームを潜り抜け、数々の死線を越えてきた英雄の、ありとあらゆる負の感情とシスコンの業が煮詰まっていた。

 

キリトさんは、俺を氷のように冷たい――否、もはや無に等しい眼差しで睨みつけ、文字通り、死刑宣告を下した。

 

「…………お前を殺す。」

 

ピロンッ、という無機質な電子音と共に、俺の目の前に赤いウィンドウが突きつけられた。

 

『プレイヤー・キリトから、デュエル(全損モード)の申請が届きました』

 

「ちょ、待って!? 誤解! 言い方!! 俺、リアルで人混みではぐれないように、直葉ちゃんに手を差し出しただけだからぁぁぁ!! 肉体関係なんて一切ない健全なお兄さんだからぁぁ!!」

 

俺は涙目になりながら絶叫した。

しかし、周りは誰も聞く耳を持たない。それもそのはず、俺の腕にしがみついているリーファちゃんが、ニコニコと幸せそうな笑顔を浮かべたまま、一切の訂正をしようとしないからだ。

 

「ええい、話が通じないなら逃げるが勝ちだ! ごめんなさいリーファちゃん、俺、君の彼氏は荷が重すぎ――痛っ!?」

 

俺はデュエル申請を無視し、回れ右をして出口である扉へと飛び込もうとした。

しかし。

いつのまにか俺の背後に回り込んでいたリーファちゃんが、扉を背にして立ち塞がり、ドンッ、と俺の胸を両手で押し返したのだ。

 

「どこに行くんですか、××さん?」

 

「へ……?」

 

リーファちゃんの笑顔は、ぞくりとするほど美しく、そして底なしに黒かった。

 

「私の彼氏なんですから、逃げるなんて許しませんよ。ちゃんとお兄ちゃんたちに、その身をもってご挨拶してくださいね?♡」

 

彼女の細い指が、俺の手を優しく包み込み、その手を動かし目の前に浮かんでいたデュエル申請の『承諾(OK)』ボタンを、容赦なく、そして的確にタップさせた。

 

『デュエル、スタート!』

 

システムのアナウンスが響き渡る。

逃げ道である扉は、直葉ちゃんによって完全に封鎖された。

そして振り返れば、そこには本気の殺意を纏った黒衣の剣士のが、黒剣を上段に構えて迫っていた。

 

「あ(終わった)」

 

俺のプレイヤースキルは、エンジョイ勢の下の中。

相手は、世界を救った最強のイレギュラー。

 

――ズババババババァァァンッ!!

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

剣の軌跡すら見えなかった。

俺の視界を、圧倒的な剣閃と、エフェクトの爆発光が覆い尽くす。

100パーセントあった俺のHPゲージは、たった一瞬、瞬きをする間に消し飛び、レッドゾーンの残り1ドットでギリギリ停止した。

 

「あ、あばば……。」

 

全身を貫く仮想の激痛(ペイン・アブソーバーが設定されていても、精神的なショックは凄まじい)に、俺は無様な悲鳴を上げながら、酒場の床にゴロゴロと転がった。

 

ピクピクと痙攣する俺の首筋に、冷たい黒剣の切っ先がピタリと突きつけられる。

 

「……次は、現実(リアル)で殺す。二度と直葉に近づくな。」

 

地獄からの声に、俺は白目を剥いて泡を吹くしかなかった。

 

(……ふふっ)

 

床に転がる不憫な彼氏と、彼女の為に激昂する身内たち。

 

その光景を扉の前から見下ろしながら、リーファ――桐ヶ谷直葉は、誰にも見えないように会心の笑みを浮かべていた。

 

(これでお兄ちゃんたちにも、××さんが私の『彼氏』だって完全に認知されましたね。これだけの修羅場を共有したんですから……もう絶対に、私から逃げられませんよ?)

 

平和で軽薄なモラトリアム大学生の退路は、こうして完全に、そして物理的に断たれた。

 

最強の妖精たちによる理不尽な制裁と、策士な妹の甘く重い愛情。

俺の地獄の『お試しカレシ』生活は、ここからが本当の始まりだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 




ここまで書き溜めてたので連続投稿です。

今回の感想と評価を頂けると嬉しいです!

追記
ランキングに上がっててびっくりしました!
皆様が読んでくださったおかげです!ありがとうございます、
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