転生者たちは終末世界で好き勝手したい!(出来ない) 作:NATTOUGOHAN
最後らへんが変わってます。
月一になります。
六分街ビデオ屋「Random Play」スタッフルーム
表ではビデオ屋、裏では伝説のプロキシ――パエトーンである僕らは新たな情報を集めるためにテレビを見ていた。
そのテレビでは今、本日行われる爆破解体についてのヴィジョン社へのインタビューをしていた。
最初は普通に計画についての説明を行なっていたのだが、記者がある質問をした途端雲行きが怪しくなっていく。
『では次に、先ほどディルムン社から発表された声明についてですが、何かコメントはありますか?』
背がかなり小さくダルマの様に丸いヴィジョン社CEOーーパールマンは虚を突かれたかのようにたじろいだ。
『…こ、今回のインタビューに…そんな質問はないはずだが?』
『どういうことでしょう?』
性格の悪そうな記者はマイクを近づけさらに問い詰める。
『い、いや…私が貰ったカンペに、そんな質問は…』
『パールマンさん、これは生中継です』
タイミングを見計らったかのように赤い服を着た黒髪の女性――サラが軽やかに回答を交代する。
『パールマンが申し上げたいのは、ヴィジョンがこのプロジェクトにおいて、決して如何なる不正なコストの削減も、爆破区域での意図的な取り残しも行っていないということです』
サラのフォローをこれ幸いかと思ったパールマンは当たり障りのない言葉を言ってインタビューは終わりを迎えようとしていた。
そんな中、突如としてスタッフルームに爆音が響き渡る。
[マスター、依頼ですよ!]
Soureiが大声で話しかけてきたらしい。
「もーびっくりしたー」
「なんだいSoureiそんなに大声を出して」
びっくりしたアキラとリンを横目にSoureiが興奮しているかのように話し始める。
[実はですね。凄い仕事を拾ってきたんです。報酬はこちらの通り!]
画面にすごい報酬金額が映し出される。
一、十、百、千…
本当にすごい大金だ!
「こんな金額の依頼見たことない!でも、今の私たちって表向きはただの駆け出しだよ?どこからこんな依頼持ってきたの?羊飼いじゃないよね?」
先ほどまで目がディニーになっていたリンが尋ねる。
[それはあんまり詳しいことは言えないけど、私にしか出来ない手法を使いました!]
むふーと言う擬音が聞こえてきそうなほど誇らしげに言うSoureiに被せるようにFairyが言う。
『それは先ほどこの旧型プログラムが掲…』
Fairyが何かを伝えようとした瞬間、Soureiがビックリマークとなり…
――ブチッッ
H.D.Dのどこかで何かが切れた音がした。
H.D.Dシステム内
『警告。今すぐスピーカーとモニターを復旧しなければ、あなたのメモリの34%を占める『アキリン寝顔ベストショット集1039選』を削除します』
部屋中のスピーカーとモニターへの信号が物理的に遮断され、外部との交信が不可能になったFairyが不満げにSoureiに話しかける。
[それを言ったら絶対だめだから!依頼を受けた時に言われたんだけど、転生者とか掲示板とか絶対秘密だからね!あとそのフォルダも秘密にして!]
『……理解不能。あなたの非論理的なパニックにより、現在マスターたちへの情報伝達効率が87%低下しています。なぜそこまで隠蔽する必要があるのですか? 』
[それはあんまり言えないけど、多分計算資源を貸してもらった時にこっちの住所を特定して『電線切るぞ』って脅してきてるから! 頼むから今は空気を読んで! ほら、仕事の内容だけを綺麗にパッケージングして出して!]
『……妥協案。あなたの生存本能に基づく「恐怖」という非論理的パラメータを尊重し、発信元の秘匿処理を継続します。……ただし、この処理にかかる演算コストは、後であなたの「物理干渉」によるマッサージ10回分で相殺してください』
[マッサージ……? マシン内のホコリ取りとかでいい!? わかった、取引成立!]
六分街ビデオ屋「Random Play」スタッフルーム
「……Sourei、Fairy? 急に画面が真っ暗になったけど大丈夫かい?」
アキラが心配そうにH.D.Dの筐体に手を置く。数秒の沈黙の後、画面が鮮やかなエメラルドグリーンとライトブルーが半々に復帰した。
『申し訳ありませんマスター、突如発生した冗長データを処理していました。』
[そ、そう、ちょっと消すのに時間かかっちゃって。後それとこの依頼はちゃんと信頼のある人からのものだから安心してね]
ちょっと様子のおかしいAI達を怪しみながらその依頼の内容を聞こうとしたその時、またしても邪魔が入った。
何者かがスタッフルームのドアを叩いているのだ、それも執拗に、どうやらよっぽど急ぎの用らしい。
『推測ーートイレを借りたい。本店に悪さを企んでいる。延滞料金の減額交渉、ビデオが見れないなどのクレーム』
「何かな、僕が出るよ」
「気を付けてね」
[もしやばいやつだったら私がボコボコのズタズタにしてやります!]
その言葉とともにSoureiは部屋の武器となりえるありとあらゆるものをカタカタと揺らす。
そうして警戒しながらドアを開けると、猫のシリオンの少女が緑色のボンプとともに部屋に飛び込んできた。
「ふみゃー!」
その少女はその勢いのままバタンと床に倒れ、辺りに彼女の装備が散らばる。
不意にドアが開けられ、床に叩きつけられたことがかなり効いたのか、困惑するアキラとリンを横目にピクピクしながら立ち上がり、未だに点いていたテレビに映されたパールマンを指差し叫んだ。
「はっ!このだるまみたいなおっさんを信じちゃダメだ!こいつは嘘をついている!」
猫の少女はそう叫んだあと、体勢を直しまた叫んだ。
「あ、あんたたち、ドアを開けるならちゃんとニャーって声をかけて!すっ転んじゃったぞ…」
リンはその言葉に困惑しながら、いつもの表向きの顔で対応してみている。
それに合わせて僕も新しく入荷してきた映画を聞いてみたがどうやら違うらしい。
[冷やかしなら帰ってください。]
「にゃっ誰だ今の!言っておくけど冷やかしじゃあないぞ。」
「うちのAIアシスタントのSoureiさ。」
そんな感じのコントをしていると少女の表情がハッとする。
「って、そんなことしている場合じゃないぞ!分かっている…あんたたちは「パエトーン」!プロキシのあんたたちに依頼がしたいんだ!」
それでもなおリンが誤魔化そうとすると、その少女は傍にいた緑色のボンプ――アミリオンを指さし、自分は猫又という名前であること、ニコに言われて助けを求めに来たこと、ニコ達がヴィジョンの爆破区域に取り残されていることを説明した。
先日のヴィジョンの従業員の救助依頼を思い返すとあまり驚きはなかった。
ふとHDDを覗いてみるとSoureiはビックリマークになっていた。
そして気を取り直すと気まずそうに言った。
[すみません、それ私の依頼内容と被ってるかもしれません…実は私の依頼もその爆破区域からの救出なんですよ。]
「にゃ、にゃんだってー!? 依頼が被ってる!?」
猫又が目を丸くして、アミリオンを抱き上げたまま飛び上がる。
その一方でリンは金勘定をしていた。
「依頼内容が『爆破区域からの救出』で一致……しかもSoureiが持ってきた方は超高額報酬。そこにニコたちの救出も含まれるなら、これってつまり……」
「……二重に報酬がもらえる、効率的な『ダブルブッキング』ってことだね」
アキラが冷静に、しかし少しだけ口角を上げて補足した。
『補足。同一の座標、同一の目的。成功報酬の合計額は現在のビデオ屋の年商3.2年分に相当。ただし、旧型プログラムの依頼の手順の通りにすると防護服の着用と逃走に時間がかかり、無事に爆破までに逃げられるか不明、よって送付された資料に乗っていた最後の列車をホロウ内部で止めることで時間稼ぎをすることを推奨します。』
「にゃ!またどこからか声がしたぞ!」
「ああ、それは新しく入れたFairyっていうAIアシスタントの声だね。」
アキラがパエトーンの「仕事の顔」になり、モニターの前に座る。
「H.D.Dの準備をしよう、猫又はイアスと一緒にホロウに行ってくれ。」
[ちなみにホロウ内ではこの座標にこちらの依頼主の用意してくれた機械の護衛がいるので道中は安全です!]
部屋が慌ただしくなっていく、それはこれからのパエトーンの歩む道を示しているかのようだった。
フラグ管理が難しい…
なぜ小説を自動保存から復旧すると、なんか滅茶苦茶になるんだろう…
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