転生者たちは終末世界で好き勝手したい!(出来ない) 作:NATTOUGOHAN
名前決めるの正直ミスったと思うけど後の祭りなので初投稿です。
「それを貸してくれないかな?」
パエトーンが朱鳶の方を向くとそこには黒く所々紫に光るエーテリアスがいた。
「喋るエーテリアス!?」
その尋常ならざる気配に気づいた青衣が言った。
相手は知能を持ち喋る、これだけでは一般的にはロボットだと思うだろうがその強大なエーテル反応が彼がエーテリアスだと表していた。
「おっと、分かるのか。まあ
そういいセイバーを持っていない方の手で頭と思われるところをポリポリとし、しばらく沈黙を続けた後語り始めた。
「改めて言う。それ貸してくれ、そうしないと首と胴体が泣き別れすることになるよ」
首元に突き付けられた紫色の刃が、冷たい殺気を放ちながら微かに振動している。
朱鳶は息を呑み、わずかに動いた喉仏が鋭い切っ先へと触れそうになるのを必死でこらえた。
青衣はいつでも反撃に転じられるよう全身の重心を落とすが、目の前のエーテリアスが放つプレッシャーはその軽い口調とは裏腹にただ相手が強大なエーテリアスであるということでは説明がつかないほど強烈で、異質だった。
「俺は君たちを傷つけたくはないんだ、だから早く渡してくれない?調査する以外何もしないし、返すからさ」
彼がチラリとパエトーンを見るとそしてまた沈黙し、紫の光を放つ切っ先が朱鳶の頸動脈にわずかに触れ、微かな痛みが走る。このままでは命はないと本能が警告を発する中、朱鳶は恐怖に呑まれず、冷静に相手の出方と周囲の地形を観察していた。
「……調査のためだけに、なぜこのタイミングで?」
このタイミングで無くても、先程の襲撃者の手中にあった時にでも取りに行けば良かったのではと朱鳶が冷徹な声で問い返すと、彼は困ったように肩をすくめた。
「いやあ、俺個人としては君の命とかタイミングなんて正直どうでもいいけど、でも上からの決められた手順、条件で進めろってプレッシャーがすごくてね。まあ条件に合わせるなら変に交渉するより脅した方がずっと効率的だったのさ」
紫の光を放つ切っ先が朱鳶の頸動脈からわずかに離れ、冷たい静寂がホロウの淀んだ空気を切り裂く。
「……調査が終われば、本当に返すのですね」
朱鳶は喉元に走った冷たい感触を無視し、微動だにしないまま視線だけで相手を捉えようとする。
青衣はその隙を逃さず、いつでも跳躍できる体勢を作っていた。
「ああ、約束するよ。べつに君たちをどうこうしたいわけじゃないし」
彼は気だるげに肩をすくめると、セイバーを構えたままもう片方の手で証拠品の入ったコンテナを促した。
朱鳶はゆっくりと息を吐き、恐らく今渡さなければ全員殺され証拠品も奪われる最悪の事態になりかねないと判断し、手元にあった証拠品の入った箱を床に置いた。
「慎重に扱ってください。それは一応、治安局の重要物資です」
「分かってるよ」
彼はその箱を受け取るとセイバーを仕舞い、スキャナーらしき物を取り出し、その箱に向けた瞬間。
バキンッ
彼の輪郭が一瞬ブレたかと思うと三節棍が弾かれる音が辺りに響き、いつの間にかその手はスキャナーではなくセイバーに戻っていた。
「おっと、因みに俺の速度は君達の思っている100倍早いぞ」
そして何事もなかったかの様にスキャンを開始した。
『スキャン開始』
『30%……60%……90%……』
実際は三分程度だったのだがプロキシ、治安官、そしてエーテリアス、その場にいる誰にとってもその時間は長く感じられた。
『スキャンが完了しました
「うーん新入り君の残留物はなし、上司の心配しすぎだったか。まあ約束通り返すよ。無駄に脅しちゃってごめんね」
そう彼は言い放つと箱は丁寧に朱鳶たちの足元へと滑り落とされ、その瞬間、エーテリアスは現れた時と同じ様に空気を切り裂く音と共に消え去ってしまった。
「朱鳶!」
「大丈夫かい!」
青衣とパエトーンが緊張の糸が切れ崩れ落ちた朱鳶に駆け寄り、そして怪我の手当をした。
「なんだったんだ。喋るエーテリアスなんて……」
見たことのないエーテリアスだった。機械の侵蝕体の様にも見えたが、それにしては何か妙だった。まるでトラキアンにそれ専用のパワードスーツを被せた様な……。
それに加えて何か以前に会った様な既視感をアキラは覚えた。
以前会った似た様な存在なんて
「そなたは何か知らんのか?」
「ああ、初めて見たよ」
「……そうか」
そしてピリピリとした雰囲気の中、今度こそパエトーンと治安官は別れた。
数日後、ルミナスクエア
今日は朱鳶達が元の局に戻る日
アキラとリンはプレゼントを送ろうとしたのだが、治安局の規定によって断られ買い取りという形に収まった後、朱鳶はとある人物から電話を受けていた。
その人物とは当代最年少の虚狩り──星見雅、朱鳶とは学生時代の同期であり、今でも連絡を取り合う中であった。
そして真の正義と真のメロンという回りくどい励ましを受けた後、あの広場の怪物について話した後、証拠品を取り返した際に遭遇した奇妙なエーテリアスの話になった。
『結局のところ、その奇妙なエーテリアスの言っていた新入りとやらの詳細は分からなかった』
「そう、残念だわ、もしかしたらあのソウルスティーラーの目的もわかったかも知れないのに」
あのエーテリアスの言っていた新入り、それはもしかしたら白祇重工のプレーンのことかも知れないと朱鳶は思っていた。
だからその何故、プレーンを狙ったかということが今回の解析でわかるかも知れないと思っていた。
『だが、そのエーテリアスについて分かったことがあるかも知れない』
「!」
『十数年前からホロウ内のH.A.N.D.の前哨基地は度々、「知性保有疑義個体」と呼ばれている複数の特殊エーテリアスによる襲撃がなされていた』
「そのエーテリアスの内の一体が今回のエーテリアスだと?」
『ああ、おそらくそうだろう。そのエーテリアスの中に超高速が特徴のトラキアンの亜種がいた。確か防衛軍提供のアーカイブによるとトラキアン・ラピッドという名だったはずだ』
「トラキアン・ラピッドですか」
『奴らは神出鬼没でな、私が駆けつけた頃にはすでに姿を消しているので直接戦ったことはないのだが、奴らは単独で基地を相手にできる。これだけは確かだ』
「そうですか」
『だからあの時渡したのは正解だっただろう。命あってのメロンだからな』
「励ましと情報をありがとう。雅。また近いうちに」
『ああ、それでは』
電話を切り、ため息をつく。
もしあのエーテリアスがソウルスティーラーと関係のあるのなら、想像以上にとんでもない裏の組織が潜んでいるのかも知れない。
そう思いながら朱鳶は青衣と一緒に元の局へ出発したのだった。
地下 ディルムン地下オフィス
ここはディルムン社の本拠地となった地下オフィス。
旧都陥落時、式輿爆破の余波である地殻変動で崩壊した旧地下オフィスを再建する際にこの際ディルムン社の本拠地にしようと言う案をもとにして作られたコロニーであり、地底深くまで続くホロウ空間に作られたエーテリアス転生者の為の居住地を中心として、様々な表沙汰にできない施設が存在している。
そんな空間のある建物にトラキアンはいた。
彼は地下オフィスのドーム状の空間が一望できるテラスで天井に投影された偽りの夕日を眺めながら黄昏ていた。
「Sourei怒ってるかな〜」
掲示板を確認してみると完全にカンカンになったSoureiがスレを立てて、治安官達にグルみたいに思われるじゃないかとCEOに文句を言っている。
「一回取り込まれたとは言え、転生特典の力が少しでも残留してることはないとは思うんだけどな」
今回トラキアンが襲撃したのはCEOが分離させたとは言え一度は侵食され転生特典を使われていたので、証拠品に転生者の痕跡などが残っていないかと心配になり指示されたからである。
トラキアン自身は一度共に戦ったパエトーンとSoureiをそう言うことに巻き込むのは忍びなかったが、まあ本当に残っていたのなら大問題のため仕方なく向かったのだ。
「おーい、ミルトンからミアズマソフト貰ってきたぞ。一緒に食べないか」
後ろの自動扉が開き、CEO謹製のサイズ縮小の札でびっしりの体で禍々しいソフトクリームを運んできたのはグラトニーだった。
「おっミアズマか、なんか脳にドバッと幸福という概念そのものが流し込まれるような味がして好きなんだよ。ありがとう」
感謝の意を述べると一緒にソフトクリームを食べた。
「お前もだいぶ大きくなったよな。10年前は十数枚貼るので十分だったのに今では倍以上が必要になってる。確か今はCEOの指示でキャラバンと一緒に郊外でエーテリアス食い放題してるんだっけ、また巨大化が加速するな」
「そうなんだよ、このコロニーを外のどんな圧力に晒されても大丈夫な様にする計画には俺が強くなることが大前提条件とは言うがそこまで強くなる必要はあるんだろうか?まあ捕食本能を抑えるにはいい感じなんだが」
「CEOの意図は俺にもわからないけど、俺たちみたいな奴のために動いているのは確かだからまあ従っておけばいいんじゃない?」
「まあそうか、あっそうだ日が沈む頃には計画洗浄で大雨を降らすらしいから早めに屋内に戻った方がいいぞ、そして戻ったら掲示板で野良エーテリアス勝ち抜きトーナメントの生配信でも見ようぜ。各地から様々なエーテリアスを誘拐して戦わせてるんだってさ。ちなみに俺が賭けてるのはミアズミック・トラキアンだ。お前と同種なんだから強くないわけないだろ」
「君に言われてもな……」
目の前の転生特典によって種などという概念そのものから昇華し始めている同僚を見つめ、トラキアンは言った。
そしてグラトニーは屋内に戻り、そしてトラキアンも屋内に戻ると外は急速に曇っていき、大雨が降り始めたのだった。
●モルマン情報屋
【速報】郊外でホロウの謎の消滅が相次ぐ
郊外の複数箇所でホロウの不自然な縮小、消滅が相次いている。
この異常事態に対してHIAが声明を発表し、来月ごろには調査団が編成される予定だ。
消滅したホロウの周辺ではまるで誘導されているかの様にエーテリアスが一箇所に向かっていたという目撃情報が多数あり、今回の事件との関連性が疑われている。
一説によると大量のエーテリアスの消失によってこの事態が引き起こされているかもしれないとのことで、その先に何が待っているか分からないので絶対について行ってはいけないとのこと。
マジで何が起こってんだ。
ただの消滅ならHIAは声明出さないだろ。
なんか1日数個のすごいペースで郊外の小型ホロウが消失してるらしい
ヤバくないか?
もしこれが新エリー都周辺で起こったらエーテル採掘ができなくなっちまう
エーテリアスの行くところって何処なんだ?
誰か行った人いる?
そのエーテリアス見たんだけど何故か自分もそっちにいきたくなったんだ
まあ誰がどう見てもヤバいから行ってないけどね
なんか十数年前に自分があった現象に似ているような⋯⋯
………
……
…
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