転生者たちは終末世界で好き勝手したい!(出来ない) 作:NATTOUGOHAN
バレエツインズの怪物
バレエツインズ
「あーあ……いつまでこんなトコで警備しなきゃいけないんだ?屋上で何かするならヘリコプター使えばいいじゃないか。最近のはあれだろ?ホロウ内でも使えるようになったんだろ?あーマジで怖すぎて感覚がなくなってきた。早くアジトに帰りたいんだが」
薄暗く静まり返ったバレエツインズの上階。崩れたコンクリートの物陰で、反乱軍の男が一つきつい溜め息をついた。
「文句言うなよ。俺たちの『正義』を執行するにも弾薬とディニーがいるんだ。雇い主の言われた通り大人しく巡回してりゃ、報酬は出るし、ヘリコプターだって提供してる会社の専用ネットワークに接続しなきゃホロウ内で使えないって話だからな」
もう一人の男が銃の安全装置を確認しながら鼻で笑う。だが、その声にもどこか緊張が混じっていた。この廃ビルはただでさえ気味が悪いからだ。
「……なぁ、ここさ。『幽霊』が出るって噂、知ってるか?」
暇を紛らわせるように、男が声をひそめた。
「幽霊? 侵蝕体かエーテリアスの見間違いだろ」
「いや、違うんだよ。なんでも『人間の姿に化ける』らしい。ドッペルゲンガーみたいなもんだが……普通に親しげに会話までしてくるんだと、そして一旦目を付けられたらホロウの外に出ても逃げられないだとさ」
「……おいおい、やめろって。そんなの見分けつかないだろ。こんな暗がりで不吉な都市伝説語ってんじゃねぇよ」
「ははっ、まあ都市伝説だしな。そんな都合のいい化け物が本当にいるわけ——」
言葉の途中で、コツン、コツンと足音が響いた。
暗闇の奥から、見慣れた反乱軍の装備を身につけた男が歩いてきた。
「おーい、交代の時間だぞ。ごくろうさん」
「おう、助かったぜ! ちょうど怖すぎで死にそうだったんだ」
男たちは胸をなでおろし、警戒を解いて歩み寄る。
そしてやっとこの退屈で、ちょっと怖い任務から解放される。
と思ったその時だった。
その同僚の体が銀色に溶けたのだ。
「ぐはっ」
そしてそれに驚いていると腹をその男の腕が貫いていた。
「まさかっお前!」
先ほどの話が頭によぎる。
力もなく倒れ込む仲間を前にして男はその同僚のような何かを撃った。
だが相手は動じなかった。
その何かの腕が変形する。
「えっ」
その男の足が突如として閃光と共に動かなくなった。
いや、痛みもなく蒸発したのだ。
支えるものがなくなった身体が倒れ込み、そして男は意識を失った。
その何かは再び犠牲者を求めて静寂に包まれたバレエツインズを歩んでいく。
生気もなく彷徨う姿はまるで幽霊の様であった。
バレエツインズ前 地下広場
今日はヴィジョン爆破事件の裁判の日である。
「まさか、バレエツインズに来ることになるなんてな!」
そんな中アキラ、ビリー、アンビー、猫又の僕たち四人はプロトタイプの中にあった記憶素子を解読するため、失踪した凄腕ハッカーレインによってスパムされていた謎のメールに送付されていた場所を調査していた。
「ビリー、知ってたの?」
「ああ!ここのホロウが発生したとき、取り残された双子の舞踏家が奇跡的に脱出したんだが、もうだめかと思ったときスターライトナイトが現れて助けてくれたって言ったらしいんだ」
「へー」
猫又が興味なさげに言った。
「だからよ!もしかしたら今回の調査でマジもんのスターライトナイトに会えるかもな!」
そう興奮するビリーにSoureiが冷水を浴びせかける。
[今調べたところ、その証言自体は実際にあったようですね。ただし、極限状態で見た幻覚だった可能性も高いみたいです]
「おいおい、Sourei! 夢がないことを言うなよ!」
[すみません。事実確認は大切なので]
「まあまあ。行ってみなきゃ分からないだろう」
僕は苦笑しながら、ビリーをなだめた。
スターライトナイトが本当にいたのかどうかはさておき、今はレインの手掛かりを探すのが先だ。
そしてメールが送信されていた場所は、バレエツインズの屋上のホロウから飛び出た場所ということが判明し、僕たちはバレエツインズに入ることになった。
中はピカピカなのだけれど、暗く、そして気味が悪い。
霧が濃いので、何時幽霊が出てもおかしくないおどろおどろしい雰囲気に包まれていた。
僕はホラー映画が苦手なのだけれど、それ以上にSoureiが初見のホラー映画を見ると嫌いを通り越して気絶するので、少し心配だな。
『Sourei?大丈夫かい』
[……うん。大丈夫です……はは]
絶対大丈夫ではなさそうなので今回はあまりSoureiのサポートは当てにできないかもしれないな……。
そう考えつつ、タワーの中を散策していた。
[ううっ暗いし、見えないし、なんか絶対なんかいるし、怖いよ~]
「それはエーテリアスじゃねえか?」
一行はバレエツインズに入ってからずっと何かしらの気配を感じていた。
その気配がエーテリアスではないかと話していると……。
[むっ、殺気!]
辺りの空気が震え、ムニュっと音がする。
突如何かが飛んできたのをSoureiがキャッチした音だ。
「これは……ハサミ?」
それは園芸用のハサミのようであり、戦闘用のようにも見えた。
『Sourei。戦闘準備をしてくれ』
意外にもSoureiが冷静だからこれは当てに出来そうだな。
[分かりました]
辺りの電灯が軋む音がする。
もし何か起きた場合に破壊し、破片を操るために。
そして階段の上のほうからコツン、コツンと足音がしてきた。
「誰!?」
足音が近づいてくる。
それはただの足音というより、金属製の何かの音であった。
「流石伝説のプロキシ、パエトーン。お見事でした。さぞ容易い道中だったでしょうが──」
アンビーのマチェーテを握る力が強くなる。
「ここが終点です」
その声の主は、白い狼のシリオン──ライカンであった。
「オオカミ?」
そしてライカンさんはここが私有地であること、今から30秒以内に要件を説明しなければならないと言った。
だがしかしヴィジョン爆破事件の時に出会った丸鋸メイド──カリンが居てくれたおかげでこの場は和解し、彼ら「ヴィクトリア家政」と協力関係を結ぶことが出来た。
そしてニコの不手際で、ヴィジョン爆破事件の裁判に邪兎屋の全員が参加することになっていたことが発覚し、ビリー、アンビー、猫又の3人とはお別れになることになってしまった。
あと少しでレインの捜索が出来なくなってしまう所だったよ。全く……。
「でさー、いい加減ハサミ返してくんない?」
ダウナー系サメイド──エレンがそのSoureiにキャッチされ、フヨフヨ浮いたままとなっていたハサミを眺めながら言った。
『ああそうだったね』
[ほいっと]
フヨフヨ浮いていたハサミがエレンに近づいていき最終的にその手に収まった所で次はSoureiは関与していないのにも関わらずフヨフヨと浮いている少し小さめの2匹のボンプとそれを操るロングスカートのメイド──リナに話しかけられた。
「プロキシ様のその物を動かす不思議なお力、種も仕掛けも感じられないなんて誠に不思議ですわね」
リナも浮いてはいるのだがスカートの裾から、ときおり電光が走るように見えるので恐らく磁気を利用して浮いているのだろうか。
『不思議!不思議!』『滅茶苦茶不思議だ!何でやってんだ?』
リナに合わせて2匹のボンプ──アナステラとドリシラが合唱している。
だけれど。
[……]
『実は……僕も原理はわからないんだ』
僕も前に聞いたことあるけど、知らない知ってても言えないって感じなのか結局答えてくれなかったしな……。
そんなこんなで最高裁判所行きの飛行船に向かう邪兎屋を見送った後、イアスのメンテナンスのついでにヴィクトリア家政のみんなと地下広場で直接会うこととなった。
その際僕は適当な場所に停めようかと思っていたのだけれどSoureiがそれじゃ行儀が悪すぎますと言われてしまったので、近くのもう管理する人がいないと思われる駐車場に停める事となった。
そうして広場に辿り着くとライカンさんが迎えてくれた。
「プロキシ様、お待ちしておりました」
こうして生で改めて見ると、やっぱり上流階級御用達の人なんだということが一目でわかるな。
その後は、イアスのメンテナンスを進めながら、ヴィクトリア家政の面々と親交を深めることになった。
エレンには「パエトーンって、もっとネクラで、頭に増幅装置か何かを付けて念動力を使ってるんだと思ってた」と言われるし、リナさんにはイアスを調子に乗らせた結果、あれこれ情報を聞き出されるし。
おまけに、ライカンさんからの忠告を忘れてリナさんのバニラクリームのスコーンを食べようとしたところ、Soureiに何故かとんでもない勢いで怒られてしまった。
カリンには少々意地悪な質問までしてしまったが、それも含めて、楽しい交流の時間だったと言えるだろう。
バレエツインズ A棟
交流とイアスのメンテナンスを終えた後、改めてヴィクトリア家政と一緒に再びバレエツインズの中に調査することにした。
だがしかし中に入っていくにつれ、不自然な形跡が見受けられるようになった。
『これは……溶けた後か?』
ホロウレイダーの物だったと思わしき装備には、熱で溶かされたような跡や、貫かれた跡が存在していた。
『解析結果を報告します。エーテル侵蝕度が基準値を下回っており、エーテリアスによるものではない模様』
そして周囲を見渡すと、不自然な程戦闘の形跡が無かった。
『不意打ちでやられたのか?』
と、そんなことを話していると。
「やっぱりあの噂、本当なのかも」
その痕跡を見ていたエレンが言う。
「ん?噂って、何のことだい?」
まさかビリーの言っていたスターライトナイトのことかと思ったが絶対違うだろう。
「ガイド様、その件に関しましてはわたしが改めて説明させてくださいまし。このバレエツインズではここ最近、幽霊が出ると言う噂はご存知でしょうか?」
「いいや、聞いたことはないな」
「その幽霊は人に化けるのですが、言葉を流暢に話し、会話もするそうですわ」
そこまで聞くと零号ホロウから迷い込んできたただの擬態能力の高いドッペルゲンガーの変種のように思えるけど。
「ですが、本題はここから、一旦その存在に目を付けられると、どんなに抵抗しようが、ホロウ外に逃げようが追いかけ、最後にはその命を刈り取るのだと……」
「ホロウの外まで追いかけてくるのか」
「そのような噂があったのも、かつてのこと…だったのですわ。最近になって、噂と同じような経験をしたと訴える方が現れるまでは。そしてその方は後日、行方不明になってしまったのです」
『恐ろしいな』
思わず声が漏れた。
「ご主人さまは、バレエツインズが事故物件という名の不良債権となることを危惧されましたわ。そこで表向きには設備のメンテナンスとしつつ、その真相究明をわたしたちに命じられたのです」
そんなことを話している僕たちは、崩壊した建物の破片の一つが銀色にプルプルと震えていたことを気づいていなかった……。
ゲージが進みました!ありがとうございます!
あとついでにお気に入りもお願いします。
第三章はどれぐらい長い方がいい?
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1話ですぐ終わる
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最低3話ぐらいでじっくりやる