転生者たちは終末世界で好き勝手したい!(出来ない) 作:NATTOUGOHAN
数年前 ディルムン本社ビル・最上階
「お願いします。彼女たちを助けてください!」
ルミナスクエアの一等地に聳え立つディルムン本社、その最上階にある社長室で二人の男が言い争っていた。
一人はCEO、もう一人は会社がまだまだ小規模だった時からディルムン社に度々資金提供をしていた転生者だった。
彼は転生特典を活かし、巨額の資産を稼いだのだがそれではどうしても解決出来ないことに直面し、このようにCEOに懇願しにきたのだ。
「いくら貴方でも……今回は解決出来ないんです」
それは感情を押し殺した声であった。
「どうしてですか!いつも助けてくれたじゃないですか!」
社長室のモニターに映し出されていたのは、バレエツインズでのホロウ発生の速報番組であった。
そして舞踏家の双子がそこに未だ取り残されているということも報道されていた。
「妹たちはまだ生きているんです!」
そう、彼は彼女たちの兄として生まれた転生者であった。
「俺にも事情があるんです。貴方の妹を助けられない事情が」
その無慈悲な宣言に彼は泣き崩れてしまった。
「彼女達はいい子で……きっと皆んなを逃していたら、取り残されてしまったんです……。助けて……」
その様子を見ていたCEOも鬼では無かった。
「仕方ない……か。貴方には資金難の時は助けて貰ったので、いい案が思いた。これなら貴方の妹達を助けられる」
「本当ですか!」
男の顔がパッと明るくなった。
「但し条件がある」
「なんですか?」
「貴方はここに来なかったし、万が一妹達がスターライトナイトとか言い出してもそれは幻覚だ。いいね?」
「分かりました!」
彼は意気揚々と社長室を出て行った。
それと入れ替わるように入ってきたのはクリンだった。
「本当に良かったんですか?あの双子はリストに載っていたはずですが」
「ああ、いいこと思いついた。代理をこちらで設定してしまえばいい。研究所に連絡してくれ、あの先日没になった知能液体金属の試作機を使うとね」
CEOは壁をひっくり返し、ボードを表に出すとその中の一つにバッテンをつけ、そう言った。
「あれは……確か機能を詰め込みすぎて侵蝕耐性がないはずですが」
「まあ救助するまでは持つと思うし、ロスカリファの副副管理人の転生特典も使って保険を何重にも掛けて適当に放逐すればいい代打になるだろう。因みに救出時はスターライトナイトに変装させて極限状態の幻覚で済ませる予定だから。あまり深掘りされたくないし、突拍子がない方が捜査は止まるだろう」
「侵蝕で暴走するまでが計画のうちですか……。が、分かりました。速攻で届ける用に言っておきます」
クリンは専用回線でその試作機を手配すると、そのまま先ほどCEOがバッテンを付けた絵を見ながら言った。
「所でCEOってめっちゃ絵下手ですよね。特徴言ってくれたら私がそのリストの絵を描くのに」
その二つの棒人間というあまりにも簡素で雑な絵を見ながらクリンは溜息をついた。
「まっまあ暗号化の意味もあるからいいんだ。いいね?」
そう言い訳がましくCEOが言っていると社長室の扉がノックされた。
「研究所からお届け物でーす」
「置き配にしてくれ」
「分かりまーした」
社長室の外からドサっと言う音が鳴った。
「とまあそんな感じだから」
「分かりました」
クリンが社長室を去っていく。
CEOはそれを確認すると、置き配の箱から試作機の入ったカプセルを取り出し、そして大急ぎで設定を始めた。
現在 バレエツインズ A棟
時間は現在に戻り、パエトーン、ヴィクトリア家政一行は恐らくレインのメッセージの発信源であるB棟に続くアトリウムに向かっていた。
[ぐぐぐ、いや周囲の空間に影響を与えない程度に優しく持ち上げるのは無理ですね]
だがそのアトリウムへと続く扉は鉄の防火シャッターによって閉じられていた。
手動で空けられる方法はないかとも考えたがまたしても多くの戦闘痕が残され、周囲が瓦礫の山となっていて、向こう側にある筈の手動の開閉機械は目視出来ないのでSoureiに念動力で操作してもらうこともできないだろう。
強引に開けようとはしているがやはり空間が不安定なのがネックとなり、無理そうだ。
「やはりですか」
『どう言うことだい?』
僕がそう聞くとライカンさんは停電によって暗闇に包まれた通路を見渡して言った。
「このシャッターは停電により自動で閉まる仕組みになっておりますが、私共はプロキシ様のご友人がそのB棟に居られるということはこのシャッターも何らかのの損傷を受けて通過できる状態になっていると考えていたのですがそう上手くはいかないようですね」
ライカンさんはそう言うと停電に対処する為に用意していたらしい資料を広げ、僕に見せてくれた。
「ですが、図面によるとバレエツインズの二棟はそれぞれの地下の発電所から電力供給を受けており、本来ならこのような停電は起こり得ないはずなのです」
でも僕たちがやってきた時から
『じゃあ。地下に行ってその停電の原因さえ特定出来れば、復旧させてこのシャッターを開けられるかもしれないってことかい?』
「左様でございます。今回はプロキシ様のご友人を迅速に探す為にこの様な遅れを取ってしまいましたが本来なら先にこちらに行くつもりだったのでございます」
そんな感じで僕達は地下に行くこととなった。
バレエツインズA棟 地下
「プロキシ様、これより先に制御室と発電室がございます」
地下に向かった僕たちは電力復旧のために何をすればいいかを話し合っていた。
「事前の調査によりますと棟内の電力を復旧するにはいくつか手順が必要なようです。まずは制御室に向かい、停電の原因を突き止めましょう。それが故障であれ何であれ、解決が困難な場合は、予備の電力系統に切り替えるのです。」
『具体的には?』
「次にリスクが伴いますが制御室にとどまり操作を行う側と、発電室に向かい予備のエーテル発電機を起動させる側の二手に分かれます」
その二手に分かれる時の組は、リナの提案により電気回路に詳しいライカンとリナが発電室にとどまり、発電室側ではエーテル原料の運搬が主な仕事となるため力仕事が得意なカリンとエレンが行くこととなった。
リナさんはこれで戦力のバランスが丁度いいと言っていたけれど、ヴィクトリア家政で一番強いのって誰なんだろう……。
……あっそういえば。
『ちょっと待ってくれ。別れる前に合言葉を決めておかないかい?幽霊は人に化けるという話だっただろう?』
「プロキシ様、それは私も考えていた所でした。別れるとなった以上片方がその幽霊と接触する可能性がありますから」
「では、合言葉は『月下の舞踏会』、返答は『招待客は二人』ということでいかがでしょう?」
リナさんが、いつもの優雅な笑みを浮かべながら提案した。
「……もう少し簡単なものでもいいんじゃないか? いざという時に噛んでしまいそうだ」
[いざとなったら私かFairyが答えるので大丈夫ですよ]
『じゃあそれでいいんじゃないかな。とにかく、合言葉は絶対に忘れないようにしよう』
「はい。まあでも偽物がこちらに現れた場合、合言葉だけで判断するのではなく、相手の挙動にも注意する必要がありますわね」
リナさんはそう言って、二匹のボンプを見た。
『怪しいやつはビリビリだ!』『まずは質問! 答えられなきゃビリビリだ!』
「ふふっ、頼もしいことですわ」
……なんだろう。ドリシラたちの物騒な発言を聞いていると、少しだけ安心してしまう。
相手は人間に化ける怪物だ。
見た目も、声も、場合によっては会話まで再現できる。そんな相手を前にして、外見だけを頼りに仲間かどうかを判断するのは危険すぎる。
だからこそ、合言葉を決めた。
これなら、少なくとも事前に決めた情報を知らない相手は見分けられるはずだ。
……本当に、それだけで十分ならいいのだけれど。
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第三章はどれぐらい長い方がいい?
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1話ですぐ終わる
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最低3話ぐらいでじっくりやる