転生者たちは終末世界で好き勝手したい!(出来ない) 作:NATTOUGOHAN
轟音がようやく遠ざかっていった。
制御室に漂う煙の向こうで、焼け焦げた床から細い煙が立ち上っている。
壁面のモニターはほとんどが消灯し、残ったものも意味不明な警告表示を繰り返していた。
……いや、これはまずい。
「皆様、ご無事ですか!」
『……ああ』
ライカンさんの声に、僕はようやく自分が床に伏せていることに気付いた。
そして白いもふもふの中にある確かな筋肉に包まれていることも。
恐らくライカンさんが咄嗟に僕を掴み、回避してくれたのだろう。
「ええ……無事ですわ……ガイド様もご無事で何より」
リナも無事だったようだ。
それに彼女のボンプ達も。
ライカンさんの腕から抜け出して改めて周囲を見渡していると壁に大きな穴が空いている。
恐らくあの怪物が放った熱線によるものだろう。
あれをなぜ最初から使わなかったのかよくわからないがどちらにせよ何も分からず蒸発することは避けられて良かった。
そう思いながら詳しく観察していると瓦礫がこちら側に不自然に散乱していることに気付いた。
恐らく壁の向こうにあった何かが爆発したのか?
そう考察しているとFairyから連絡があった。
『周囲のデータの再測定が完了しました。周囲に先ほどの存在の反応は見受けられません』
『……よかった。ひとまず、近くにはいないんだね』
そう口にしたものの、安心しきることはできなかった。
人間に化け、こちらの警戒をすり抜けた怪物だ。
探知に引っかからないからといって遠くへ去ったとは限らない。
カリンとエレンが気がかりだ。
『Fairy? 測定が完了したなら本物のエレンとカリンの居場所はわかるかい?』
『80%の確率でそう言うと思い、既に両名の位置を推定。そこまでの移動ルートも計算済みです』
『ライカンさん、リナさん、取り敢えずエレンとカリンの居場所が分かったからそこに行ってみようか』
「承知しました。ですが、くれぐれも警戒を怠らないように」
ライカンさんはそう言うと、周囲を確かめるように視線を巡らせた。
溶けた鉄筋が露出し吹き飛んだコンクリート片が散乱するライカンさん曰くもう今の人手では復旧不可の制御室を去り、僕たちは本物のエレンとカリンのいるであろう座標へと向かった。
「あ、来た来た。遅かったじゃん」
瓦礫の陰から、聞き慣れた気だるげな声がした。
エレンだ。
その隣には少し煤けたカリンが立っている。
二人とも目立った怪我はなさそうだった。
『エレン、カリン、無事だったんだね』
「んー、まあね」
「わ、私はその……エレンさんに助けていただいて……」
「はいはい。そういうのは後でいいから」
エレンは面倒くさそうに手を振った。
「そっちは? なんか爆発音がしたけど」
「偽物に襲撃されました。エレンの姿をした噂の幽霊です。合言葉も盗聴されていました」
「うわ、マジ? あたしの偽物とか趣味悪すぎでしょ」
それを聞いたエレンは心底嫌そうに顔をしかめた。
「それで、どうやって偽物だって分かったの?」
その問いに、ライカンさんが答えた。
「匂いです」
「……匂い?」
「ええ。姿形も声もエレンそのものでしたが、生き物特有の匂いがありませんでした。あれほど精巧に擬態していても、そこまでは再現できなかったようです」
「へえー……ん?」
エレンは感心したように頷いた。
だがその直後何かに気付いた様に顔をハッとさせた。
「ふーん……」
そして、ゆっくりとライカンさんを見上げた。
何だろう何か空気が先程とは一変しようとしている気がする……。
「……ねえ、ボス」
「はい、なんでしょうか」
「それってさ」
エレンが半歩、後ろに下がった。
「普段から、あたしの匂いとか嗅いでるってこと?」
「…………」
ライカンさんがピキリと固まった。
「いえ、決してそのような意味ではございません。私はあくまで、周囲の異常を察知するために──」
「いや、分かってる。分かってるけどさ」
エレンは片手で自分の鼻を覆った。
「えー……。ボスって、あたしが近くに来たら毎回匂いチェックしてるの? うわ、キモ……」
「エレン!?」
「や、別に怒ってるわけじゃないよ? ただ、なんか……こう……」
エレンは言葉を探すように視線を泳がせたあと、ライカンさんからさらに距離を取った。
「今まで普通に隣歩いてたのが、ちょっと嫌になっただけ」
「そ、そんな……!」
「ライカンさん、落ち着いてください……!」
リナが慌てて取りなす。
「ライカンさんは私たちの安全を考えて行動してくださったのですから。ね?」
「もちろん理解していますわ。ただ……」
リナは口元に手を当て、少しだけ考え込んだ。
「私も、これからは香水を変えた方がよろしいのかしら……」
「リナまで!?」
『いや、そこは気にしなくていいと思うな!?』
僕は思わず口を挟んだ。
そもそも、あの状況で偽物を見破れたのはライカンさんのおかげだ。責められるようなことではない。
……ないのだが。
「まあ、ボスも大変だねー」
エレンはそう言って、僕の肩をぽんと叩いた。
「これからはあたしと話すとき、鼻で息しないでね」
「それは呼吸をするなということでしょうか!?」
「じゃ。頑張って」
「無茶をおっしゃらないでください、エレン……!」
瓦礫だらけの通路に、ライカンさんの悲痛な声が響いた。
さっきまで怪物の熱線に焼かれかけていたというのに、今度は別の意味で気の毒になってきた。
結局、ライカンさんがエレンに誤解を解くことはできなかった。
……いや、そもそも僕たちは、こんなところで油を売っている場合ではない。
そして僕たちは先程の謎の爆発がなんだったのかを取り敢えず調べることにした。
発電所の件はどうしたのとエレンに言われたけれど、制御室無しでは電力があっても正常にホテル内に行き渡らないの諦めることにしたと言ったら。
「じゃあ仕事しなくていいってこと? やった〜」
と言われた。
エレンらしいな。
そして暫く爆発のあった方角に向かっていると、エーテル燃料の容器の破片らしきものが見つかった。
『解析結果を報告します。容器内部のエーテル燃料は外部からの高温刺激によって急激に反応し、容器の爆発に至った可能性が高いです』
『もしかして先程の怪物がやったってことかい?』
先程の熱線が頭に過った。
あれだけの爆発の引き金を引いた熱線なのだから、このエーテル燃料を爆破させることも容易なはずだ。
それにいくら何でもあの爆発はあの怪物にとって都合が良すぎたのだ。
『状況証拠からは有力な仮説ですが、断定には至りません』
まだ仮説の段階だが、もしそうだとすれば最初から撃たなかったのはあの威力の熱線を放つのに相応のインターバルがあるのか?
そう考えれば辻褄が合う気がする。
『ライカンさん、恐らく先程の爆発はあの怪物が熱線でやったんだと思う』
「同感です。恐らくですが完全な分断を引き起こしたかったのでしょう」
そして僕達がこれからどうしようかと話しているうちに、上階でまた何かが起ころうとしていることに全く気付いていなかった。
Side ????
【優先順位を変更中 現在の最優先ターゲットの現在地 B棟】
バレエツインズに潜む怪物は次なるターゲットを目指していた。
だが反乱軍による数々の抵抗によりダメージを受け、そして先程の電撃が止めとなり擬態機能が故障。
それにより真の姿を晒しながら歩いていた。
【障害物を確認】
B棟へと続くアトリウムを塞ぐシャッターがあった。
【迂回路を検索中……】
【迂回路 無し】
だがそれにとっては無意味だった。
腕が伸び、そして鋭利となり、刃となる。
そこからは呆気なかった。
紙を破くように、豆腐を崩すように容易く、そして破壊的に。
周囲への影響などお構いなく。
何回も何回も何回も、刃と化した腕は振り落とされそのシャッターは完全に破壊されてしまった。
【最終目標の為の手段を再考中】
【現在使用可能な機能だけでは不可能と判断】
【マリオネットプログラム 現在使用できま██ 解凍を開始します】
その侵蝕によって侵されたプログラムがその邪悪な機能を解放する。
バレエツインズ内のほぼ全ての生存者を確実に殲滅するために……
次回 Dancing With The Dead
第三章はどれぐらい長い方がいい?
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1話ですぐ終わる
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最低3話ぐらいでじっくりやる