転生者たちは終末世界で好き勝手したい!(出来ない) 作:NATTOUGOHAN
『報告します。アトリウム近辺にて大規模な構造変化を確認』
『何だって』
『不安定なアトリウムの空間状態が周囲に波及し、アトリウムを通るB棟へのルートが崩壊するのと同時に周囲の構造の74%が変化しました。このままレインの捜索を続ける場合B棟へのルートを再計算する必要があります』
『74%……? ほとんど別物じゃないか』
思わず声が漏れた。
この状態で捜索を続けるのは危険が伴うだろう。
しかし――。
『そうか……』
だからといって、捜索を中止するわけにもいかない。
あのプロトタイプの内部にあった記憶素子。そしてなぜか僕の目が反応したあの広場の怪物。
両者の間に何らかの関係があるのならそれを解読出来るレインの協力は不可欠だった。
それにあの怪物の問題も残っている。
もしここで撤退すれば噂どおりあいつはホロウの外にまで現れるかもしれない。
そうなれば、ヴィクトリア家政だけでなく、最悪の場合はビデオ屋まで襲撃される可能性がある。
Soureiが守ってくれているとはいえ、怪物に決定打を与えられる保証はない。
……なら、やるべきことは決まっている。
『Fairy。B棟までのルートを再計算してくれ』
『承知しました。最短経路だけでなく、空間変位の影響が少ない経路も併せて算出します』
『ありがとう。それとライカンさん』
「はい、プロキシ様」
『アトリウム周辺で何かあったらしい。電源を復旧しなくてもB棟に行けるルートが見つかるかもしれないから少し待っていてくれ』
「かしこまりました。ただし、先ほどの怪物が潜んでいる可能性を考慮し十分に警戒しておきましょう」
『うん。……またどんな手を使ってくるかわからないからね』
今度は不意打ちであの熱線を撃たれたらと思うとゾッとする。
そして十分後、僕たちはFairyが示した新たなルートへと足を向けた……。
………
……
…
『これは……ホロウレイダーではないな』
B棟に足を踏み入れた僕たちを待っていたのは、床に散乱する複数の死体だった。
いずれもホロウレイダーではない軍が身につけるような装備を身につけている。
通路の壁には弾痕が残り、床には撃ち尽くされたらしい銃が転がっていた。
少し離れた場所では、盾を構えたまま鉄筋により貫かれている兵士もいる。
壁面には、人間の身体が叩きつけられたような痕跡が残っていた。
金属製の装備はひしゃげ、床の一部は深く抉れ、重装備をしていたと思われる兵士が腹に大きな穴を開けられ倒れていた。
僕は思わず息を呑んだ。
「傷が真新しいですね。恐らく1時間も経っていないかと」
それを観察しているライカンさんが冷静にそう言った。
前々から思っていたのだが、やはり只者じゃないなヴィクトリア家政は。
『解析結果を報告します。エーテル侵蝕度が基準値を下回っており、先ほどの怪物の仕業と考えられます』
『そうか……。じゃあもしかしてさっきの構造変化は怪物がやったのか?』
もしかしたらあの怪物がB棟に渡る過程でシャッターを壊した余波で構造変化が起きたのかもしれない。
だけれど、一つおかしなところがあった。
A棟にあった遺体の痕跡には戦闘の跡がここまで派手に残っていなかったはずだ。
それなのにB棟の遺体は何かしらが来るのを迎撃していたように見える。
まるで真正面から襲われたような……。
そう考えていると突如。
「ぞ、増援か……? たっ助けてくれ!」
その中の一つから声がした。
何か勘違いしているようだけどまあ情報を聞き出す為に助けようか。
『声がする。まだ生きてる人がいるみたいだ!』
「私にも聞こえていました。あの怪物の匂いがあまりしないので恐らく本物でしょう。ですが、なぜ彼だけが生き残っているのかを考えるべきです」
一度見破ったライカンさんが言うんだから間違い無いだろう。
だが確かにここまで惨状なのだからなぜ彼だけが生き残っているのかが気になるな。
「ボス、まだ嗅いでんの? いやまあその私に化けてたやつを見分けるには必要なんだろうけどさ」
そのエレンの言葉にライカンさんは黙ったまま、その声の方向へと向かった。
「増援じゃ無いのか……。だが……誰でもいい。助けてくれ……」
『ここで何があったんだ?』
「……化け物だ」
兵士は震える声で答えた。
「銀色の……人間みたいな化け物が襲ってきた。A棟に封じていたはずなのに……銃を撃っても無意味だった。盾も、装甲も、全部……」
彼はそこで言葉を詰まらせた。
一瞬気になることが聞こえたが、まずは話を聞くことが先だろう。
「仲間が次々に殺された。俺は瓦礫の下に隠れて……気付いたら、周りは誰も動かなくなっていた」
『それで、君だけが生き残ったのか』
「そうだ……。頼む、ここから連れ出してくれ。何でも話すから……。恐らく……いろいろ知りたいんだろ?」
兵士が縋るようにこちらへ手を伸ばす。
その手はワナワナと震えていた。
僕は思わず一歩近づこうとした。
「お待ちください」
ライカンさんの声が割って入る。
「まだ周囲の安全は確認できていません。不用意に近づくべきではありません」
「で、でも……」
「お気持ちは分かります。ですが、先ほどの怪物は人間に擬態する能力を持っていました。慎重になるべきです」
ライカンさんは兵士から目を離さない。
そのときだった。
背後で何かが擦れる音がした。
ギ……ギギ……
振り返る。
床に倒れていた兵士の手が、わずかに動いた。
『……今、動かなかったか?』
「え?」
エレンがそちらを振り返ったが、そこには何もない。
大量の倒れた兵士たちの死体があるだけだった。
気のせいだったのだろうか。
そう思った瞬間。
ギ……グチャ
骨が軋む音ではなかった。
何かが肉の内側で動いている。
そう理解した瞬間、床に倒れていた兵士の腕があり得ない方向へと跳ね上がった。
バキリ
骨が軋む音がする。
だが、そんなことがなかったかのように死体が床から起き上がった。
【マリオネットプログラム:起動】
それに呼応するように周囲の死体が次々と動き始める。
脚を引きずりながら。
鉄筋によって貫かれた胸を押し広げながら。
己の体を他者や武装で補いながら。
一度死んだはずの死者たちは再び立ち上がった。
その瞬間僕は思った。
完全に囲まれた。
生き残りを囮にした罠だったんだ。
[ギャーこっ来ないで!]
Soureiの悲鳴が木霊する。
「皆様。戦闘態勢を!」
そして――
死者たちが一斉にこちらへ向かって走り出した。
「プロキシ様。後ろに下がってください」
我先にと飛び出してきた死体兵がアーミーナイフを振りかざす。
そのリミッターを外された一撃は自身の体さえ傷つける。
ガキン
義足とアーミーナイフが衝突する。
通常の生物としての限界を超えた出力を引き出された火事場の馬鹿力ともいうべき怪力がライカンさんを襲う。
「フン!」
金属同士がぶつかる甲高い音が響く。
しかし、相手の腕は止まらない。
いや、止める気がないのだ。
骨が軋み、腕が悲鳴をあげる。
それでも死体兵は腕に力を込め続けていた。
「……なんという無茶な駆動でしょうか」
ライカンさんがわずかに眉を寄せる。
次の瞬間、彼は義足を捻りナイフを握る手首を蹴り上げた。
バキッ!
骨が折れ、ナイフが宙を舞う。
だが死体兵は怯まない。
空いた左手を伸ばし、ライカンさんの脚にしがみつき、行動を阻害しようとする。
その隙に複数の死体兵がライカンさんに銃口を向けた。
それは間違いなく、味方を巻き込む射線であった。
「させないっての!」
だが凍てついた刃がそれを阻止した。
エレンはそのままそのしがみついていた死体兵の腕をその剪定ばさみで引き剥がした。
「助かりました」
ライカンさんはそのままその死体兵を壁に蹴り飛ばしたかと思うとその死体兵は爆発。
よく見るとライカンさんの足元には抜かれたばかりの手榴弾のピンが落ちていた。
もし引き剥がすのが遅れていたらと思うとゾッとする。
あたりは完全に乱戦になっている。
エレンとライカンさんは前衛として戦い。
「大変歩き方のマナーがなってないこと」
リナさんは集まってくる死体兵たちを電撃により足止め。
「失礼します!」
カリンは丸鋸による切断により、死体兵たちが復帰することを防いでいた。
だがしかしそれでも周りの絶縁体となりうるものを盾にしていたり、周囲からパーツを回収し己の体を補修した死体兵によって突破され僕に迫るものがあったがそれはSoureiが辺りのコンクリート片を投げ、吹き飛ばしてくれた。
「どっどうなってんだ」
生き残りの兵士があまりのことに混乱している。
当然だ、彼にとってはつい先程まで同僚だった仲間たちがこうやってゾンビのような凶悪な存在となり襲ってきているのだから。
『解析結果を報告します。死体の中に不自然な電気反応を確認、何らかの物体が死体の中に入り電気反応で筋肉を刺激している模様。恐らく先程の侵食された兵器によるものとされます』
『これを?あれが?』
例えエーテルに侵食されたとしても元の兵器の性質からはかけ離れない筈である。
だとすればあれは元々搭載されていた機能であるということになる。
どうやらあれをここに放棄?した人は相当冒涜的な人物らしい。
『神経に刺激を送り操る形のため、肉体に負荷を与え続ければいずれ止まると思われます』
そのFairyの言う通り、少しづつ動いている死体兵の数は減ってきているようだ。
だけれど死体兵の一人がこちらに走ってくるのが見えた。
よく見るとその体には手榴弾と瓦礫が大量に巻きつけられていた。
『まずい! みんな伏せて!』
僕が叫ぶより早く、ライカンさんが動いた。
「お下がりください!」
彼は正面から受け止めることなく横から強烈な蹴りを叩き込んだ。
死体兵の身体が宙を舞う。
その直後。
ドンッ!!
轟音と共に炎と破片が通路を覆い尽くした。
「きゃっ!」
リナさんのボンプたちが一斉に後退する。
僕もSoureiが作ったコンクリート片の盾に身を隠した。
【稼働可能な死体の90%を消費】
【目標達成:不可】
【マリオネットプログラムを停止します】
轟音が遠ざかり、辺りに静寂が戻った。
それと同時にあれほど活発に動いていた死体も今はただの屍となっていた。
「終わった……のでしょうか」
原型を留めていない自爆した死体をよく見ると血では無い何か銀色の液体が抜け出ているのが見えた。
恐らく先程の怪物の一部か?
「たっ助かったのか」
生き残りの兵士の安堵の声が聞こえる。
先程の考察が正しければ、彼はあの怪物に生かされ僕たちを死体の中心におびき寄せる為に利用されたと言うことになる。
どうやらあの怪物は僕たちが思っていた以上に厄介な相手なのかもしれない。
と、そう言うことを考えていると。
ドサッ
物音がする。
『!』
また死体が動き出したと思い慌てて後ろを振り返ると。
先程まで元気だったはずのエレンが倒れていた。
マリオネットプログラムは流石に不味いのではと思ったCEO本人から研究の破棄を命じられて現在この機体にしかプログラムは残っていません。
因みに発案者兼開発者の一人はとある一件で軍を辞めてディルムン社に入ったクローン研究者です。(第5話参照)
第三章はどれぐらい長い方がいい?
-
1話ですぐ終わる
-
最低3話ぐらいでじっくりやる