転生者たちは終末世界で好き勝手したい!(出来ない) 作:NATTOUGOHAN
というわけで描写を盛りました。
後旧6話は無かったことになりました。(後から見たら出来が酷かったので。)
話を聞いていたグラトニーが、ふと何かに気づいたかのように自分の巨体を見ると声を上げた。
「…いやちょっと待ってくれ。」
「何かな?」
「俺の今の全高は5m近い。いくらヘリが規格外でも、この巨躯を詰め込むには無理があるだろ。現に、俺の個室だってアホみたいな広さなんだぜ。」
CEOはスーツのポケットの中の一つから束ねられた数十枚の紙札を取り出した。
「それについては問題ない。ヘリの積載スペースは君の想像の二倍はあるし、何より——君には少し『縮んで』もらう。」
「それは…?」
「これは、私が以前学んでいたものを応用して作った特別な札だよ。これは普通はエーテリアスに貼れば体内のエーテルを強制的に抜き出し弱体化させることができる代物だが、今回は私が特別にチューニングし、適切なサイズにまで縮んだところで止まるようになってる。まあ弱体化とはいっても君のその特典のおかげで、強さは化け物級のままだけどね。」
CEOは流れるような手つきで札をトラキアンへ放り投げ、同時にオフィスの全端末へ暗号化されたキャロット・データを転送した。
「解析が終われば即座に指示を出す。一秒の遅れも許さない。いいな、諸君。今回の『パレード』に、脱落者は——」
言いかけた、その瞬間だった。
CEOの猫耳が、弾かれたように一点を指して直立する。
ディルムン社所属転生者スレ その70
390:連絡係
CEO大変です!
情報収集していた21機のヘリの内12機が墜とされました。
391:CEO
まじか
何にやられた。
392:連絡係
言葉で説明するのも面倒なので、映像を出します。
[ピンク色の花の様なエーテリアスの大群がカメラに迫り、断絶する映像]
393:CEO
ニネヴェだ、あいつの存在を忘れてしまっていた!
今すぐ情報収集用のヘリを退避させろ!
394:CEO
計画は一旦停止、これでは安全に情報が得られん。
今からパレードの為の露払いを行う。あいつには生半可な兵器は逆に被害を増やすだろうから当社の持っている一番強い武器、兵器を武装ヘリに詰め込んどいてくれ。例のアレもな
ニネヴェに対処するのは少数チームで行くぞ。
「悪いな、予定変更だ。パレードの前にまずは露払いが必要になった。少し乱暴だが、一気にやるぞ。」
CEOの声から余裕が消え、鋭い刃のような響きが混じる。
彼は更にポケットに入れていた札を、トラキアンが既に何枚か貼った5mの巨躯を揺らすグラトニーの胸部装甲へ迷わず更に叩きつけた。
「ぐっ……!? 体が、熱い……!」
グラトニーの全身から、エーテルが蒸気のように噴き出す。凄まじい密度で凝縮されたその肉体が、骨を軋ませる音を立てて収縮していく。5mあった全長は、瞬く間に3m弱の大男ほどのサイズまで縮んだ。
「……力は抜けてねぇ。むしろ、密度が上がって体が軽いぜ。」
グラトニーが拳を握りしめると、周囲の空気が爆圧で震える。
「プグヌス、トラキアン、キャラバン、グラトニー、各々の装備を着たら今配ったキャロットに従って仮設基地に向かってくれ、目標はニネヴェの討伐ではない、無力化だ。」
そうして4人エーテリアスが慌ただしく行くのをCEOは見届けると、誰も居ない部屋で自分に言い聞かせるように言った。
「ここまで上手くいったんだ。今回で終わらせる。絶対に」
プルートー区山岳部ディルムン社臨時基地
そうして山の中に特設された基地に移動した一行は、山のようなサイズのヘリを見上げていた。
「いやー本当にデカいな。」
感嘆の声を上げるその周囲で機械人に偽装されたエーテリアスたちが慌ただしく兵器を搭載している。
「兵器の搭載が完了しました。搭乗してください。」
作業員に促されるまま、一行は高さが5mほどあるハッチから次々と乗り込んでいく。
「想像以上に色々あるぞ。」
「これ確かCEOの杖のプリンターの改良版だっけ、これも搭載されてるんだな。」
「なんだこれエーテル反応停止レーザー砲?なんかの試作機かな?」
ヘリの内部は、まるで移動式の兵器工場だった。
中央にはCEOの杖に搭載されていた3Dプリンターを数倍に大型化した現地でドローンを大量生産出来る「即時実体化炉」が鎮座し、壁面には予備のエーテルタンク、それと謎の青い砲台が整然と並んでいる。
「おい、これを見ろ。例の『ライトセーバー』の完成品だぞ。」
トラキアンが壁のラックから、無骨な円筒状のデバイスを手に取った。スイッチを入れると、筒の両側から高密度に圧縮された紫色のエーテル刃が、低い駆動音と共に伸長する。
「CEOの奴、本気だな……。これ一本で確か都会に家が買えるくらい価値のある上等なエーテル結晶を使ってるはずだ。」
「まあそりゃそうだろ、ボスの虎の子だったステルス付きのヘリを何台も潰されてるんだから。」
プグヌスが自分の巨大なハサミに、追加のレーザー砲をボルトで固定しながら応じる。
彼らが準備を進める中、ヘリのコクピットからスピーカーを通じてCEOの声が響いた。
『……準備はいいか。目的地まであと5分。現在のニネヴェの周囲にはあの映像に映っていたニネヴェの取り巻きーーホーネットの大群が形成されているはずだ、気を付けてくれ。ヘリを失うのも会社が傾くぐらいの損失だが、一番は君たちの安全が優先なのだからな。』
3mの巨躯を窮屈そうにベンチへ預けていたグラトニーが、ゆっくりと立ち上がった。体内に凝縮されたエーテルが、剥き出しの回路のように皮膚の下で激しく明滅している。
「心配してくれてありがとうよCEO、あいつらが俺たちのヘリを壊したんだろ? ……全部利子をつけて食い尽くしてやるよ。」
その時だった。
アラートが鳴り始めたのは。
『目標、こちらに急速に接近中、気づかれた様です。』
船体が、凄まじい衝撃音と共に大きく傾いた。
外部カメラが捉えた映像には、空を埋め尽くすほどのピンク色の「羽虫」——ホーネットが、猛烈な勢いでヘリの装甲を破壊しようとしてヘリから射出された武装ドローンに妨害されている様子が映し出されていた。
「チッ、歓迎会にしちゃあ騒がしすぎるな!」
グラトニーが天井のグリップを握りしめて吠える。
『慌てるな、装甲には高電圧電磁バリアを纏わせている。……だが、いつまでもは持たん。キャラバン、パワードスーツをそこに繋いで最大出力で起動してくれ。』
「了解、ボス! ……出力最大、全開で行くよ!」
キャラバンが球体型ロボットの操作パネルを叩くと、ヘリの機体各所に設置された巨大な拡声器と、ドローンがヘヴィメタルを流しだす。
これは一見、ただのスピーカーに聞こえるのだがその実キャラバンの特典であるヘイトタンクのエーテリアスを集めることしかできないという弱点を補うために作られた周囲のエーテリアスを一気に突き放すためのエーテリアスにとって有害な波長を伴う音楽を出す兵器である。
がこの兵器が効くのは敵だけではなかった。
「うっ頭が痛い。」
「ひどい、人としての感性は素晴らしい音楽と反応してるのに!」
「止めてくれ~」
勿論各々のパワードスーツには、有害な波長対策はされているもののそれでもこの有様であり、対策を施していてもこの有様なのだから外のホーネットにも効果は甚大なのであった。
しかしこれではニネヴェと直接対決時に使えないだろう。
そうしてスピーカーから流れるエーテルコアへの直接の暴力ともいえる波長が、ヘリの外装に張り付いていたホーネットたちのエーテル構成を強制的に乱していく。
[今ので周囲のエーテリアスは大分いなくなりましたが、残っているのがいます!]
ボロボロとノイズを撒き散らしながら墜落していく羽虫たちの隙間から、ついに「それ」が姿を現した。
零号ホロウの女王は30mはある巨大な花びらのような羽をその不快な羽虫に投げ下ろそうとした。
だが、それは果たされることはなかった。
突如としてその手に衝撃が走ったのだ。
その正体はハンマーであった。
質量と速度こそパワーと言わんばかりのその強力なブースターが取り付けられた超質量のハンマーはその腕を弾き飛ばし、大きな円を描きながら持ち主であるグラトニーのもとへ帰った。
「やっぱり素晴らしいな俺のハンマーは」
グラトニーの放った一撃は、ニネヴェの巨大な触腕を物理的に捻じ曲げるだけでなく、爆圧によって周囲の空間を一時的に真空状態へ叩き落とした。
―ギュルピアァァァァーーー
羽虫如きにしてやられた女王は怒りに震えたかのように体を揺らし、地面から巨木ほどの太さのある触手を何本も突きだし、ヘリを破壊しようとしていた。
「やばいぞ、トラキアンも出てきてくれ。この数は間に合わん。」
「分かってるって。」
グラトニーが吼えると同時に、ヘリの側面ハッチから影が飛び出した。
「待たせたな! 加速……臨界突破!」
トラキアンが空中で静止したかと思うと、次の瞬間には紫色の残像だけを残して消えた。
彼の手にある「ツインセーバー」が、目にも止まらぬ速さで触手を切り裂いていく。
あっという間に数十本はあった触手がノイズとなっていった。
「伐採完了!」
『伐採完了、なんて言ってる余裕はないぞ! 第二波が来る!』
CEOの警告と同時に、女王の背後から無数のエーテル弾が、まるで意思を持つ流星群のようにヘリを強襲する。その一つ一つが、触手よりも遥かに高いエーテル密度を誇っていた。
ドローンもそれを迎撃しようとしているが、現状体当たりによる誘爆しかできていないようだった。
それを見たトラキアンは、同じように迎撃を試みようとしたが、何発か迎撃した後一瞬で元の位置に戻った。
『何があった!』
「これはエネルギー弾です!壊そうとして迎撃したら先に俺の武装まで壊れてしまう!」
そういうとトラキアンはヘリの内部へ戻っていった。
「……あーはいはいそういうことね!自分の出番ってわけだ!」
キャラバンは機体から飛び出すと、パワードスーツの背面に増設された加速ブースターを点火した。
空中を舞う無数の高密度エーテル弾。それらは本来、ヘリという「巨大な獲物」を狙って収束していた。
「お前ら、標的を間違えてるよ! こっちだ、こっちを見ろ!」
キャラバンがパワードスーツの全リミッターを解除し、精神を「不快感の極致」へと同調させる。その瞬間、ヘリを狙っていた流星群のような弾丸たちが、物理法則を無視して急激に軌道を変えた。
すべての弾道が、一点——ちっぽけな蜘蛛の異形へと一点集中する。
「うわあああ! やっぱり怖い! けど、当たらなきゃどうってことないんだよ!」
キャラバンは空中をデタラメに回転しながら、弾丸の隙間を縫うように滑空する。まるで意思を持っているかのように追尾してくるエーテル弾を引き連れ、さっきからジェットパックで滑空中のグラトニーと頂上決戦をしているニネヴェの顔面に当たるように調整していく。
『クリン、解析データを送れ! 衝突まであと3秒!』
『……算出完了! 今です、キャラバンさん、左下方へ離脱!』
クリンの冷静なナビゲートに従い、キャラバンが急反転。直後、彼を追っていた数百発のエーテル弾が、避ける間もなく主であるニネヴェの顔へと突き刺さり、大爆発を起こした。
―ギィ、イィァァァァァァァ!!
自らの攻撃で顔面を焼かれた女王が、苦悶の叫びを上げる。
『よし、隙ができた! グラトニー、一気に叩きつけろ!』
「おう! 言われなくても……もう飛んでるぜ!」
爆煙を突き抜け、上空から「肉体の弾丸」が降ってきた。
3mまで凝縮されたグラトニー。その手には、さらにブースターを四基増設した超大型ハンマーが握られている。
『グラトニー、その札の一部を今だけ剥がせ。リミッターを一時解放する!』
「おう! ぶっ飛んでも知らねぇぞ!」
グラトニーが胸の札の端を指で弾くと、抑え込まれていたエーテルが一気に膨張。
落下速度、ブースターの推進力、そして5m級の本来の質量。それらすべてが一点に集中した。
「
衝撃。
ハンマーがニネヴェの核に接触した瞬間、零号ホロウが揺れた。
ニネヴェの巨躯が、まるでスローモーションのように地面へと叩きつけられ、そのあまりの質量に負けた地面が沈んでいき、周囲の空間がガラスのようにひび割れ、ノイズが走った。
【零号ホロウ拡大】リアルタイム情報交換スレ Part8
89:名無しの転生者
……なんか揺れたぞ
90:名無しの転生者
地震?こんな大災害の最中に?
91:名無しの転生者
いや、ディルムン社の奴らがなんかやったんじゃない?
「何にもやること無かったんだけど、やったか?」
今回出番の無かったプグヌスはドローン映像を見ながら、呑気に呟いていた。
『いや、この程度でやられるやつじゃ無いぞ。ニネヴェは。後それとお前の仕事はこれからだから今からお前の手につけてるレーザー砲外してそこに有る青い砲台持って降りろ、それは重すぎてお前以外持てないからな。』
「……俺以外重すぎて持てない? そりゃカッコいいな。」
プグヌスがヘリの床に固定されていた「青い砲台」——対超大型個体用・エーテル反応停止レーザー砲を掴み上げる。
ズシン、とヘリの機体がきしむ。
エーテル結晶の塊のようなその兵器は、それ自体が小さな山ほどの質量を持っていた。だが、プグヌスの「最大握力」はその反動すらも物理的にねじ伏せる。
『いい返事だプグヌス。グラトニーが作った「隙」は長くは持たん。ニネヴェが再び立ち上がる前にその砲台で撃て』
「合点承知!」
プグヌスがハッチからダイブする。
落下の衝撃で地面を粉砕しながら着地すると、目の前にはグラトニーのハンマーで顔面を潰され、もがき苦しみながらも光線をヘリに向かって打とうとするニネヴェの姿があった。
「そうはさせるか!」
プグヌスはトリガーを引くと、砲身の先から青白い光が放たれニネヴェはあっという間に時が止まったかの様に動かなくなった。
「すごいな。」
その様子を見ていたグラトニーは、そのピクリとも動かないニネヴェを見ながら驚いていた。
((最初っからこれで良かったのでは?))
途中からヘリに戻っていたトラキアンとキャラバンは同じこと思ったが敢えて言わないことにした。
『一応言っておくがこれは一発限りだし、外したら大惨事だからな、最初からこれで良かったわけでは無いぞ。』
青白い光が収まり、零号ホロウの女王が完全な静止体へと変わる。
周囲に漂っていた枯渇病をもたらす極めて人体に有害なエーテルが、急速に霧散していった。
「……ふぅ。一発勝負、心臓に悪いね。」
キャラバンがパワードスーツのハッチを開け、生身の姿でヘリの風圧に耐えながら呟く。
その横で、グラトニーは再び札を貼り直し、3mの「凝縮モード」へと戻っていた。
「おいCEO。これ、いつまで持つのさ。ニネヴェが目を覚ましたら、今度こそ俺たちが破壊されるぞ。」
『心配いらん。そのレーザーは対象のエーテルを一週間ぐらい一時的に「フリーズ」させるものだ。……さて、クリン。軍の動きはどうなっている?』
通信機から、キーボードを叩く音と共にクリンの冷静な声が返る。
『……現在、防衛軍の主力部隊はプルートー区の境界線で足止めを食らっています。ニネヴェの反応消失を確認し、混乱している模様。……今です。これ以上ないタイミングです。』
『よし。全機に通達。オペレーション・パレードを再開せよ。』
【零号ホロウ拡大】リアルタイム情報交換スレ Part10
120:名無しの転生者
なんか空に突然ヘリが現れたんだけど
121:CEO
俺のヘリだ。
今から転生者の救助活動を開始するよ。
122:名無しの転生者
今自分11階建ビルの7階にいるから助けてくれー
123:名無しの転生者
茶色の家に居るんです助けて
124:名無しの転生者
俺も!
この後、予定よりとても遅れましたが無事計画を完遂できました。
投稿は(おそらく)週1ぐらいになります。
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