中村さくら
オカルトや心霊が大好きな女の子。
好奇心旺盛で怖いもの知らず。
妖怪の類いが特に好き。
おへそは縦長の美臍
松田ひかる
さくらの友達。
やれやれ系のツッコミ役。
最終的にさくらに引っ張られてしまうことが多い。
おへそは丸い形でありふれたおへそ
梅雨明け頃の放課後、教室に残ったひかるとさくらが話していた。
「ひかる、雷様がおへそを取る話って知ってる?」
「そりゃ知ってる。でもそれって迷信と言うか、お腹出して寝ないように子供に言い聞かせてたって話じゃないの?」
「いやいや、そうじゃないの。実は噂なんだけど…隣町の高校生の女の子が雷様におへそを取られたらしいわよ」
「んなアホな…」
「まあその噂の真偽はとにかくとして、面白い本を見つけたのよ!」
さくらは何やら本を机から取り出した。
「じゃーん!『雷とへその民俗学』大河内民明丸先生の著書よ!
この人は、昔から雷様の研究をしてる人なんだけど、この本によればその噂みたいな事象は大昔は日本全国で記録があるんだって!」
「ふんふん」
「その多くが雷様が人々のおへそを取ってたから退治されたって話みたいね。
その雷様の祟りを避けるために神社を建てたってケースも有るみたいよ」
「へー」
「で、で、で、実際に雷様に関わりのある場所!
見つけたのよ!近所に!」
「落ち着け。ものすごく騒がしいから」
「N神社にあるんだって!で、敷地の中に雷神塚って場所があって、臍石って岩があるんだって!」
N神社とはさくら達の通う学校の校区内の小さな山の上にある神社である。
「N神社ってマジで近所じゃん。
行ったことないけど」
ひかるの言う通り、N神社は地元の人しか来ない無名かつ小規模な神社である。
「それでね、この本によるとN神社の雷神塚って場所は本当に雷様を封じているんだって!
大昔はN神社の周辺に、雷様が居たんだって!
でも子供や女性のおへそを取って食べていて、人々を困らせていたんだって!
それで、江戸時代の終わりの頃に、N神社の雷神塚に封じられちゃったんだって!」
「あー確かに、博物館だったかでそんな絵見たことあるわ」
「それでね、ここからが大切なんだけど、雷神塚の臍石がね、去年落雷に遭って真っ二つに割れちゃったんだって!
そして隣町のおへそ取られたって噂が出てきたんだから。これは絶対偶然じゃないわよ!」
「うんうん確かに…ってもしかして」
「早速行きましょう!N神社に!明日!」
「明日土曜だけど…やだ、おへそ取られたら困る」
「おへそくらいで雷様に遭遇できるなら安いもんじゃない!」
「とは言うけどさ、おへそ取るってなんかリョナっぽくない?女の子の身体の一部を不可逆に変化させちゃうって」
ひかるが無意識にお腹の辺りをさすりながらいった。
「でも、おへそならなんかユーモラスじゃない?乱暴するんじゃなくて、おへそなんかで済ましてくれるって優しいじゃない!」
「う〜ん、よくわからんけど、わかった。
さくらがそこまで言うなら私も付いてく。
N神社行ったことないし、ついでにお参りでもして行こうかな」
「だからって朝6時は早すぎやろ…」
二人がN神社に集合したのは早朝だった。日は昇っていたが、まだ涼しく感じられる時間だった。
「これくらい早ければ誰にも邪魔されないじゃない!」
「散歩しに来た人とか普通に居ると思う…」
「じゃあ、行くわよ!
えーと、本殿の右手の少し行った所…ああ、あの鳥居がたくさんあるところね!」
さくらが指したのは、雑木林の中に繋がっている道だった。通路の中には鳥居が何本も並び立ち、不思議な雰囲気であった。
「はえ〜すっごい」
鳥居が無数に続く光景にひかるが驚きの声をあげた。
セミの大合唱を聴きながら1分程歩くと、雑木林の開けた場所に出た。
そこには中央にさくら達の背丈ほどもある、真っ二つに割れた岩が置かれていた。
「ここね。あれが臍石。やっぱり真っ二つに割れてるわね…」
さくらが目の前の臍石と本の写真を見比べた。割れる前の臍石には〆縄も巻かれており、何かを封じ込めている様な雰囲気だった。
「じゃあ早速始めたましょ!」
「何を?」
「雷様を呼ぶ儀式よ!」
「儀式?」
「そうよ。こうやって…
雷様ぁ!おへそを差し上げます!降りて来て下さい!」
さくらが突然Tシャツをめくり、裾を縛ってお腹と縦長のおへそを晒した。
「昨日から薄々思ってたけど、やっぱりそれやるの…」
「ほら、ひかるもおへそ出して!」
ひかるもしぶしぶブラウスのボタンを外し、丸いおへそが見えるよう左右に開いた。
「あー雷さまー私のおへそを食べて下さーい(棒読み)」
ひかるも面倒くさそうに叫んだ。
「さあ!来るかしら?」
さくらがおへそを丸出しにしたまま言った。
「散歩中の人に不審者とか思われそう…」
さくらと同じように、おへそが丸出しのひかるが呆れた様に言ったその時-
ピカ!
突然臍石の真上の空間が黄色く輝き、その中から女の子が舞い降りて来た。
「わ〜おへそがふたつ〜美味しそうやね〜」
女の子は虎柄の着物のような格好をして、頭に二本のツノが生えていた。年齢はさくら達と変わらないように見えた。
「うわぁ!本当に来た!」
「マジ?雷様?」
「そーよー。雷様よー」
「か、雷様!あたしのおへそをあげますので、どうか願いを聞いてくれないでしょうかっ!?」
「いーよー。おへそくれるんやったら聞いちゃーよ」
「ふぉぉぉぉ…
雷様、隣町の女の子のおへそを取ったってのは本当ですか?」
さくらはいつになく興奮していた
「ほんとよー 可愛いおへそが見えたけん取ったと」
「ええ…そんな軽いノリで…」
ひかるが慌ててお腹を隠した。
「ほ、本当なんですか?」
「これが証拠よー」
そう言って雷様は、懐から布袋を取り出し、中身をさくら達に見せた。
中には様々な形の女の子のおへそが入っていた。
「うわっグロ」
「うわああ…本物のおへそだぁ…。
ど、どうしておへそを食べるんですかぁ?」
「美味しいけん」
雷様はあっけらかんと答える。
「え?まあ、そりゃそうでしょうけど」
「おへそにはねー、加護の力があるとよ。
母親のお腹の中におったり、産まれたばかりの赤ちゃんは自分の意識がないやろ?
それを狙って悪霊とか悪いもんが取り憑いたりすると。
そうならんように、母親と繋がっとる臍の緒に悪かもんが憑かんよーに加護の力が宿っとーと。
産まれた後もしばらくは臍の緒がお腹に着いとーし、臍の緒が取れて出来たおへそにも加護の力が多少は残っとーと」
雷様は丸出しのさくらのおへそを見つめながら語った。
「へええ…知らんかった」
「おへそのいちばん奥には臍の緒が固まったのが残っとーし、おへその壁とか縁も臍の緒で出来とーとよ。
やけん、おへそにも加護の力ちょっとあると。
産まれて物心ついたら、その力は要らんごとなるけど、おへそには力が残っとーけん、うちはそれを貰って生きとーとよ。
特に女の子のおへそは可愛い形やし、お腹の筋肉が弱くて取りやすいけん好いとーと」
雷様の視線は相変わらずさくらのおへそに釘付けだった。しかし当のさくらは気にも留めなかった。
「ふおおお!それで雷様はおへそを食べるんですね!」
「そーよー。やけんうちも、昔から小ちゃい子とか女の子のおへそを貰って生きとったけど、なんか山伏の人とかがうちをここに閉じ込めてしまったとよ。
なんか久しぶりに出られると思ったら、辺りが凄く変わっとってたまがったねー」
「そりゃ何百年も経ってるしねぇ…」
「でも、可愛か女の子におへそが着いとーのは変わらんかった」
「でも、雷様って昔から居るってことは、雨の神様なんですか?」
「ううん、うちはそんなのとは違うとよ。どっちかって言うと、[[rb:妖怪> あやかし]]の類やね」
「そうなんですか!」
「やけん、雨降はふらせんし、ちょっと電気出すくらいしか出来んと。夏の入道雲が出とう時しかおへそ取れんしね。
人々が言いよる[[rb:道真 > みちざね]]公とかの雷神さまとはちょっと違うと。
それに、雷神さまはおへそ取ったりせんし」
「雷様って他にも沢山いるんですか?」
「そーよー。昔はうちみたいなおへそ食べるのもたくさんおったけど、退治されたり、おへそ食べれんで消えたり、人間と結ばれたのもおったね。
やけん、おへそ食べる妖怪はもうほとんどおらんっちゃないとかいな?
うちが最後の一人かは分からんけど」
「そ、そうなんだ…」
「やけんね、これからはおへそ取るのも年に二三個にしとこうと思っとうよ。
あんま沢山取って、また封じられたら嫌やし。
それにうち、嬉しかったとよ。昔はうちは嫌われとったし。人のほうからおへそやるって言われたのもはじめてやった」
「そうだったんですか…」
「でも本当にくれると?こんな可愛いおへそ」
雷様が、さくらのおへそを見つめながら言った。
「いいですよ!雷様に逢えただけでもおへそあげていいレベルなのに、お話まで出来たんですから!」
「待って、私のおへそはやめて」
ひかるが慌てて言った。
「えーひかる、それはケチじゃないの?」
「だってこれさくらが言い出した事だし、まさか本当におへそあげるとは思って無かったし。
何より私はおへそ大事だから。
さくらみたいに、あげちゃっていいものじゃないから!」
「よかよー。さくらちゃん?のおへそだけ取るけんね」
「え、いいの?」
「おへそくれるってだけでも嬉しーし。そっちの子のおへそも無理に取ろうとして、さくらちゃんにおへそ曲げられるのも困るけんね」
「じゃあ、雷様。お願いします…」
「いいとね?じゃあおへそ貰うけんね」
「マジで?いいの?さくら。おへそなくなっちゃうんだよ?」
ひかるが心配そうき聞いた。
「いいの…こんな不思議なことに本当に遭遇できたから…
おへそがなくなっても、これが証明になるから!」
「よか?じゃあ取るけんね。痛くないよーに取っちゃーけんね」
雷様はさくらにふわりと近づき、彼女のお腹の真ん中、縦長のおへその両側に指を当て、軽くパシッと電気を流した。
「うっ…」
さくらのお腹がビリッと痺れた。
「今の電気は、おへそが痛くならん様にするためやけんね」
雷様はそのまま当てた指を強く押し込んだ。
「あっ、おへその中身が…出て来る…」
さくらのおへその底がにゅるっと丸く盛り上がり、おへその穴から顔を出した。
「わあ!さくら大丈夫?」
ひかるが心配そうに尋ねた。
「だ、大丈夫…痛くないから」
おへその底はそのままお腹から飛び出し、おへその内側も外に飛び出して、さくらの縦長のおへそは肌色のわらび餅のような、丸く飛び出したデベソに変わってしまった。
「えへへ、かわいいおへそになったやん。この出て来とう所に、臍の緒の固まったのが入っとうとよ」
雷様がさくらの飛び出したおへそを指でツンツンとつつきながら言った。
「あひっ!ううっ!」
敏感な飛び出したおへそを突つかれたさくらが悶えた。
「うわああ、凄い…妊娠してもこうはならないよね…」
さくらも変貌した自分のおへそを見ながら恍惚とした表情で呟いた。
お腹の感覚はすっかり変わり、敏感なおへその内側が晒されて、風が吹くだけでもヒリヒリと感じられた。
「うわぁ…さくらのおへそがぁ…」
「じゃあ、行くけんね」
「はい…」
雷様がさくらの飛び出たおへそをゆっくりと引っ張り始めた。
「うっ!うぅん…おへそがぁ…」
おへそを引き出される異様な感覚に、さくらはゾクゾクと震える。
さくらのおへそは、電撃の影響かお餅のようにお腹からびろんと伸びていた。おへそが伸びる度にそこから生まれるゾクゾク感が強くなっていった。
「そろそろ取れるよー」
おなかとおへその間の皮膚に亀裂が入った。
「ひぃやぁぁ…」
さくらのおへそが伝わるゾクゾクとした感覚が最高潮に達したとき-
ブツン!
さくらのおへそが、お腹から取れてしまった。
「ひゃああう!」
さくらは思わず声を上げてしまった。
お餅の様に伸びていたお腹は不思議と元の状態に戻っていた。
「ああ、私のおへそ…これで見納めなのね」
雷様の手にはさくらのおへそが握られていた。お腹から摘出されたその肌色の塊りは、歪な丸い形をしている。シワもあちこちに入っていて、所々にゴマが付着していた。
「雷様…私のおへそ、食べて下さい」
「いいと?」
「せっかくだから…私の目の前で、お願いします」
「わかった。いただきまーす」
雷様は、さくらのおへそをモキュモキュそ咀嚼し、飲み込んだ。
「さくらちゃん、おへそ美味しかったよー。ありがとうね」
「さ、さくらのお腹は?」
ひかるがさくらのお腹を覗きこむと、そこには真ん中にあるはずのへこみが完全になくなり、つるんとなってしまったお腹があった。おへその窪みがあった辺りが微かに赤くなっており、かつてそこに、可愛いらしい凹みがあったことを示していた。
「ああ…のっぺらぼうになってる…!でも、嬉しい!雷様に食べて貰えた!」
「さくら、本当に良かったの?」
「いいの。こうして雷様に逢えたし、おへそを食べられたら雷様も消えずに生きていけるから…」
(生きていたら、おへそ取られる子も毎年出ると思うんだけどな…)
「それにこのお腹が、不思議なことに…雷様に出会えた証拠になるし…」
「じゃあ、うちそろそろ行くけどいいかいな?」
「はい!ありがとうございました!」
「じゃあねさくらちゃん。ひかるちゃんも、おへそ出して寝らんようにね〜」
雷様は空にすうっと消えて行った。
雷様が消えた途端に、セミの大合唱が始まった。おへその無いお腹をさくらが丸出しにしている事以外は、何の変哲もない初夏の一コマに見えた。
「ねえひかる、このお腹の写真撮って大河内先生に送ったら喜ばれるかな?」
さくらが、制服越しにお腹のおへその付いていた辺りを撫でながら言った。
「やめときなよ。イタズラだって思われるのが関の山だって」
雷神塚に行って、雷様に遭遇出来た事は、まるで白昼夢の様だった。
しかし、さくらのお腹からおへそがなくたのは事実だった。
「こうしてるうちにも、おへそ取られてる女の子とか、いるのかなぁ…」
「さあ?どうだろうね…」
さくら達はこの後雷様に出会うことは無かった。
雷様が近辺で女の子のおへそを集めているかどうかなど、確かめようも無かった。
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ゴロゴロ…
「う〜ん」
夏休みに入ったある日、大変寝苦しい夜だった。
ひかるは布団を蹴飛ばし、おへそを丸出しにしてうとうとしていた。
「おへそ…美味しそうやね〜…」
雷様が開け放たれた窓から、網戸越しにひかるの部屋を覗いていた。