ゴロゴロ…
「おへそ…美味しそう…」
かつて、ひかるとさくらの前に現れた雷様がカーテンの開け放たれた窓の外、網戸越しにひかるの部屋を覗いていた。
「う〜ん」
この日は8月下旬にも関わらず熱帯夜であり、ひかるはタオルケットを蹴飛ばしてうとうとしていた。
パジャマ代わりのTシャツもはだけてお腹とおへそが丸出しになっていた。
ひかるのお腹は引き締まり、綺麗にくびれていた。腹筋は割れてこそいなかったが、脂肪の薄いお腹にうっすらと浮いていた。その真ん中に丸く可愛いらしいおへそがしっかりと付いていた。
また、おへその右下に盲腸の手術の痕の、引きつったような5センチ程の傷があった。
ひかるのおへそは縦長楕円で、奥にスポーク状のシワとその真ん中にちょこんと盛り上がる臍乳頭がある。
上下にわずかにフチが浮かんでいるおへそで、縦長のおへそにも劣らず魅力的なおへそだった。
ドドーン!
ひかるの部屋のすぐ近くに雷が落ち、ひかるは驚いて目を覚ました。
「はっ…雷…!」
ひかるは咄嗟に以前遭遇した、雷様のことを思い浮かべた。
おへそが出ていないか確認しようとしたところ、再びすぐ側に雷が落ち、窓の外にいる雷様のシルエットが浮かび上がった。
ピシャーン‼︎
ふたたび雷がひかるの部屋のすぐ外に落ちた。
「ひぃっ!…あれ…体が動かない!?」
ひかるの全身が麻痺したようにこわばり、体がほとんど動かせなくなってしまった。
ガラガラ…
「えへへ〜ひかるちゃんやったっけ?可愛かおへそしとうね〜」
雷様が網戸を開けて、ひかるの部屋に入ってきてしまった。ひかるは体が動かず、おへそを隠すことも守ることもできなかった。
「やだっ、雷様⁉︎ もしかして、私のおへそも…取りに来たの?」
「そーよー。可愛いおへそが見えたけんね」
「嫌ぁ! やめて!おへそ取らないで!おへそ大事なんだから…」
「そーやけど、美味しそうやけん…今すぐ取って食べたいっちゃけどね〜」
雷様は動けないひかるのすぐ側まで来て、ひかるのおへそをまじまじと観察し始めた。
ひかるの部屋はすぐ外にある街灯の明かりでうっすらと明るく、雷様の顔もひかるのおへそもよく見えた。
「う〜ん、綺麗なお腹しとーね。
おへそも美味しそうやね」
雷様がひかるのお腹をさらりと撫でた。
「ひいっ⁉︎」
「そんな怖がらんでよかよ、痛くせんけん」
どうやら雷様はひかるのおへそを取るつもりのようである。
「こんな美味しそうなおへそやもん。取ってやらんと失礼かー」
「何勝手なこと言ってるの⁉︎おへそは女の子の大切な部分なのに…」
「じゃあ、おへそいただくけんね〜」
雷様はひかるのおへそのフチをつまむと軽く上に持ち上げた。するとおへそのフチは、マシュマロの様にニュッと伸びた。
「ひえっ⁉︎おへそが…」
おへそのフチはそのまま信じられないほと伸びた。引っ張られたおへそがキュッと縮こまったのを感じた瞬間、プツンとおへそのフチがお腹から千切れてしまった。
「えっ…⁈私のおへそ…どうなっちゃったの?」
「おへその一部を千切ったと!」
そう言って雷様はひかるのおへその千切った部分を食べてしまった。
「う〜ん、ちょっとずつ味わうのもよかね〜」
「ま、まってよ!一部を千切ったって…?そんなことしたら…」
「そっ。おへそがどんどん浅く小さくなっていくとよ」
「そっ そんな…おへそ、壊さないで…」
雷様はひかるを無視して、再びおへそに手を伸ばした。
にゅっ…ぷつん…
2度フチを千切られたひかるのおへそは、はっきり分かるほどに浅くなっていた。
大きさと形は変化していないが、おへその深さが普段の半分くらいになってしまっている。
「もう…やめて…私のおへそが…無くなっちゃう…」
「う〜ん。美味かね〜」
雷様は三度ひかるのおへそに手を伸ばし、今度はやや大目におへそのフチを千切って行った。ひかるも、おへそが大きく引き締まるのを感じた。
「ああ…私のおへそぉ…」
ひかるのおへそは更に浅くなり、おへその底のシワがお腹とほぼ同じ高さまで浮き上がっていた。
「も、もうやめて…おへそがなくなっちゃう…」
ひかるは雷様に懇願した。
しかし雷様は
「ごめんね〜あんまり美味しいおへそやけん、ちょっと我慢できんと」
ひかるのおへそに雷様が手を伸ばし、千切ってしまった。
ひかるのおへそは小さくなり、お腹の
真ん中に小さな丸い模様が入っている様な、もはやおへそと呼べない僅かなシワに変わった。
「ああ…私のおへそがぁ…」
雷様の指が変わり果てたひかるのおへそを摘み、プツッと取ってしまった。
ひかるのおへそが全てお腹から千切り取られ、完全に窪みが無くなった。
「お、おへそが…無くなっちゃった…お母さんから貰った、大事なおへそが…」
おへそが無くなった途端、ひかるは身体の強張りが無くなり、身体の自由が効くようになるのを感じた。腕や脚に力が入るのを確かめた瞬間ー
「あ、あれれ。お腹に力が入らない?」
不思議なことに、ひかるの引き締まったお腹の、うっすらと浮いた腹筋がすうっと消えていった。それと同時にお腹が胃下垂の様にぽっこりと膨らみ、腰のくびれも無くなってしまった。
「お腹がぁ…どうなってるの?」
ひかるは、お腹に力が入らなくなったため、起き上がることもままならないようである。
「お腹の筋肉の真ん中のおへそが無くなったけんね、お腹に力が入らんごとなったとよ〜」
「そ、そんな…ひどい…」
「大丈夫、朝になる頃には力が入るようになるけん」
「さくらの時は、こんなこと無かったのに…なんで…」
「さあ?何でかいなね〜?取り方が違ったからかいなね〜?
ん?なんかいい匂いするけど、何かいな?」
雷様はひかるの学習机の引き出しから、小さな木箱を取り出した。
「や、やめて!それは…」
「わぁ!臍の緒やん!滅多に食べれんけん嬉しかぁ」
「食べないで…!私のおへそに付いてた、お母さんに繋がってた…大切なものだから…」
しかし、雷様はひかるの言うことを無視して臍の緒をむしゃむしゃと食べてしまった。
ひかるが母親と繋がっていた部分が雷様に全て食べられてしまった。
不意に雷がひかるの部屋のすぐそばに落ち、轟音に包まれたひかるの意識は闇の中に落ちて行った。
翌朝、ひかるは自分のお腹を見て昨晩の出来事が夢でない事を悟った。
しかし、本当に自分は雷様におへそを取られてしまったのだろうか?
ひかるのお腹には比較的大きな手術の跡があったが、手術をした際におへそも無くなってしまった気がする。
むしろ、今までお腹におへそがあった方が夢だったのではないだろうか?
落雷の強烈な電磁波と、おへそを奪われたショックでひかるの意識は混濁し、以前から自分にはおへそが無いと信じるようになってしまった。
現代に蘇った雷様は、相変わらず女の子のおへそを狩っていた。
昔と違うのは一夏に数個のおへそを取るに留め、プールや海水浴場には姿を現さず、屋内や人気のない場所でおへそを出している女の子を襲うようになった事である。
これにより、「雷さまにおへそを取られて食べられる」という昔話の様な逸話が都市伝説として、まことしやかに語られるようになった。
今日もまた一人、女の子お可愛らしいおへそがお腹から姿を消したのだった。