2番目の話は私の完全な趣味です。
いつかの明日で:その1
ーヤチヨのずつうー
花火大会の翌日、タロウはツクヨミ内のヤチヨの私室を訪れていた。
以前ヤチヨに言われていた"頼みごと"の内容を聞くために。
「お待たせ~。待たせちゃったかな?」
「気にするな。今しがた来たところだ。それより、要件を聞こう。」
「その前に、聞きたいことあるでしょ?今聞いていいよ?」
「ならば遠慮なく聞かせてもらおう。アンタ、かぐやか?」
「…やっぱり、タロウにはバレちゃうか。一応、何で分かったか聞いても?」
「簡単なことだ。どれだけ姿や雰囲気が変わろうとも変わらないものがあった。それだけだ。」
「変わらないもの?」
「彩葉を見る目だ。彩葉たちにはうまく隠していたようだが俺の目は誤魔化せん。」
「そっかぁ、そりゃ見破られちゃうかぁ…他に聞きたいことは?」
「アンタに、何があった。」
「いいよ。お教えいたしましょう!」
ヤチヨの背後の屏風にこれまでの出来事が投影される。
彩葉と分かたれ月に帰ったこと、地球に8000年早く来てしまったこと、そこで触れ合った人々のこと、その全てを。
「…………とまあこんなところかな?その他に聞きたいことはある?」
ヤチヨは、目を瞑り物思いに耽るタロウに話しかける。その心中を察することはできない。
「…いやもう無い。今度はアンタの番だ。その頼みとやら俺に言ってみろ。」
ヤチヨの目が先程までとは一変して真剣なものになる。
「10日後、かぐやの卒業ライブがあるの。そこで月の軍勢との戦いがある。その時、彩葉を
「そんなことでいいのか?月の軍勢、とやらを返り討ちにすることもできるだろうが。」
事もなげにタロウは聞く。
「うん。もし月の軍勢を返り討ちにしちゃった場合、月は十中八九現実世界の
「そうか。良いだろう。その願い聞き入れよう。」
「ありがとう。……さーて、シリアスは終わり!」
ヤチヨの真剣な雰囲気が霧散する。
「あ、その前に…このことは彩葉たちには内緒にね?」
「俺は噓がつけん。」
「知ってる。だから聞かれたら知り合いの頼みごとだって応えちゃって。」
「いいだろう、それなら俺でもできる。だが必要なことなのか?」
「勿論!」
彩葉たちの驚いた顔が見れる。これは重要なことだ。噓は言っていない。
「さて、ここからはさっきの真剣な空気じゃ聞けなかったことを聞いちゃう!」
ヤチヨは屛風の映像を巻き戻し、宇宙船に乗り込んだ直後で止める。
「コレ、なに?」
そこに写っていたのはタロウそっくりなナニカがもう一体のナニカと激しいドックファイトを繰り広げている様子だった。その背後には砕かれた巨大な隕石が漂っている。
「…………まさかもう一度目にすることがあるとはな。
そいつらは『ドン・キラー』と『ドン・キラー・キラー』だ。
『ドン・キラー』は
一度起動してしまったが最後、ドンブラザーズを殲滅するまで一切止まる事はせず、緊急停止させる為の機能も無いので唯一の例外を除いて止める事は不可能だ。俺でさえ歯が立たないほどの強さを誇るまさしく最終兵器だ。
両手足よりジェット噴射での高速移動による飛行能力があり、コレ自体が攻撃手段として機能する。その他にも、口や手から滅茶苦茶な火力のビームを出したり、口から発射後分裂し広範囲爆撃へと切り替わるミサイルなども発射できる。
そして、先ほど言っていた"唯一の例外"というのが、この『ドン・キラー・キラー』だ。
『ドン・キラー・キラー』は『ドン・キラー』とほぼ互角の戦闘力を持っている唯一の存在で、『ドン・キラー』は同格の相手とぶつかった際、自身に危険を及ぼす恐れのある同格の相手を優先的に攻撃するという行動パターンになっている為、『ドン・キラー』を止める際には『ドン・キラー・キラー』を呼ぶしかない。
実際、俺たちも『ドン・キラー・キラー』を呼んだが、両機は拮抗した戦いのまま、空中へ、そして宇宙にまで上昇。
決着の着かない戦いを未来永劫続けながら宇宙の果てへと消えた…筈だったが、どうやら次元の壁を突き破ってこの世界へやってきたらしい。
うちの世界の奴がとんでもないことをしでかしたようだな。本当にすまない。」
「…うん、ごめん。謝罪は一旦置いといて…………何の何の何?」
まったく話が入ってこない。当然である。
「そうか…ならもう一度説明を…………」
「やっぱり大丈夫。完全に理解したから。うん、大丈夫。」
こめかみを抑えながらヤチヨが続ける。
「それに、あの二機がいなくても多分後ろの隕石にぶつかってただろうし。」
「…そうか。寛大な心に感謝する。」
「うん、頭痛がしてきちゃったから今日はお開きにしよっか。ちょっと、疲れちゃった。」
「分かった。俺はこれで失礼する。」
「うん、今日はありがとね……」
こうして2人の密談は何とも閉まらない形で終わったのだった。
-かぐやのぼうけん-
その日、かぐやは一人でツクヨミに入っていた。
「ンンンそこの可憐なお嬢さん。暫しお待ちを。」
かぐやが路地裏を歩いていると路地の陰から一人の大男*1が呼び止めてくる。
「申し遅れました。拙僧、呪符を売り生計を立てるしがない呪符売りのDOMAN(いい発音)と申す者です。丁度、新作の呪符が完成致しまして、どうです?今なら1枚50万ふじゅ~のところ、今ならなんと!3枚20万ふじゅ~で!出血大さーびす、というやつなれば。この呪符を使えばたちまち嫌いな相手の胃腸の調子を崩すことが――」
そうセールストークを続けながらじりじりとかぐやを追い詰めていく。
「ふ」
「ふ?」
「不審者だァァァァァ!!」
「ンンンンンン⁉お待ちを!拙僧怪しいものでは――」
言い終わる前にかぐやが彩葉に持たされていた防犯ブザーのピンを一気に引き抜くと、辺りに甲高い鐘の音が響き渡る。
「ンンンンンンここは逃げるが勝ち、というやつなれば!いざ!急急如律令!」
だがそれより早く警官帽をつけた黒い球体に触手が放射状に生えた一つ目の妖怪NPC*2が大勢やって来てその大男の身動きを封じる。
「お待ちなされ!拙僧怪しいものではございません!ただ拙僧お手製の呪符を売り込もうとしていただけで――」
「ふざけるな!こんな薄暗い行き止まりの路地で!お前みたいな怪しい男が少女を追い詰めている!これのどこが怪しくないというんだ!」
「そうだ!このロリコンめ!」
「ふざけた格好しやがって!」
「ンンンンンンまさに!正論!」
「来い!このロリコンめ!」
「ほら、さっさと歩けこのロリコン!」
「それでも、それでも拙僧はやっておりませぬ!」
そう言いながら男はしょっぴかれていった。
その後、男が解放されたのはゲーム内時間で半日を過ぎた後であった。
それもこれも安倍晴明のせいである。
「おのれ清明ェェェェ!!」
-いろはと3にんのドンモモタロウ-
「はーはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!」
「ハッピーサンシャァァァァァァイン!!!!!!!」
「イエェェェェェェェェェェェェェェェェイ!!!!!!!」
「あーもう、うっさい!」
上から順にノーマルなドンタロウ
支持率5000%の総理大臣なドンモモタロウ
サンシャインで池〇なドンモモタロウである。
そう、彩葉は現在三人のドンモモタロウに囲まれていた。
なぜこんなことになったかというと――
その日彩葉は休みであった。窓からさす穏やかな陽気に釣られ昼寝をした。
そこまでは良かった。
気が付くと真っ白な部屋にいた。どういうことかと混乱していると後ろから誰かやってくる。
ひょっとして私の他にも迷い込んだ人が…
そう思って振り返ると
目の前にドンモモタロウがいた。しかも3人。
「え――」
なぜここに?と聞く間もなく真っ白な部屋が爆音で満ちる。
「はーはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!」
「ハッピーサンシャァァァァァァイン!!!!!!!」
「イエェェェェェェェェェェェェェェェェイ!!!!!!!」
「うわー⁉何何何!?」
そして現在に至る。
彩葉は耳をふさいで耐えていたが段々イライラが募っていき、限界に達する。
「いい加減に、しろォ!!」
「はーはっはっは!?」
「サンシャイン!?」
「イエェェェェイ!?」
いつの間にか持っていたハリセンで反射的に全員引っ叩くと意識が遠のいていく。
「うわァァァ!って夢…?」
荒い息であたりを見回すといつもと変わらない部屋が広がっていた。
「はぁ、なんかとんでもない悪夢を見ていた気がする…」
その時ちょうど家のインターホンが鳴る。
「お届け物です。サインかハンコおっ!?」
なんかムカついたのでとりあえず残像を出しながら超高速で近づき腹パンする。
だが、残念なことに鍛え抜かれたタロウには大してダメージにならなかった。
「何故腹パンを…」
「なんかムカついたので。スイマセン。」
「そうか。まぁいいサインかハンコを頼む。」
「はい、どうぞ。ありがとうございましたー。」
彩葉が荷物を抱えて戻るとあることに気づいた。
起きた時には気づいていなかったが、自分の布団を囲むようにドンモモタロウのぬいぐるみが3体置いてあるのだ。
こんな真似をする馬鹿は一人しかいない。
「か~ぐ~や~?」
「ど、どうしたの彩葉?そんな顔して。」
「これかぐやの仕業でしょ?」
そう言い3体のドンモモぬいをかぐやに見せる。
ドンモモぬいを見たかぐやの目がキラキラと輝く。
「そう!かわいいでしょ!作ってもらったんだ~。」
「かわ、いい?」
コレが?
「え~、ヤッチョはかわいいと思うけどな~。」
「すっっっっごくかわいいです。」
いつまでたっても推しに弱い彩葉であった。
「でっしょ~?このぬいぐるみ、いろんな人のところに送っといたから。」
「え゛?」
「皆喜んでくれるといいな~。」
「きっと喜んでくれるよ。私もこれ貰ったら嬉しいもん。」
かぐやに同調するようにヤチヨもうんうんと頷く。
「もう、どうにでもなれ…」
犠牲となるであろう関係者各位にせめてもの哀悼をささげ、彩葉は見て見ぬふりをした。
後日、帝アキラは送られてきた"ソレ"に腰を抜かして情けない悲鳴をあげていたそうな*3。
その様子を乃依は面白そうに録画していた。
彩葉 - ドスとハリセンの扱いが何故か上手くなった。暇さえあれば2人とイチャコラしている。
アキラ - タロウ's ブートキャンプが未だにトラウマ。今でもたまに夢に見る。
ヤチヨ - 最近タロウの動きにツクヨミが耐えられるようになり一息ついていたところ、タロウがまた想定外の挙動を起こし仕事が増えた。ヤチヨはキレた。
DOMAN - 留置所で厚かましくもカツ丼を所望したところ何故か麻婆豆腐を食わされた。ツクヨミでは味を感じない筈だが何故か全身に鋭い痛みが走った。それもこれも清明のせいである。