貞操逆転世界でクールな先輩にオスガキムーブかましてたら普通に押し倒された   作:しゃふ

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10話 一緒に登校

 

「天音、寝癖すごいね」

 

「んにゃ、仕方ないでしょう。

 センパイを待たせるわけにはいかないので」

 

 制服に身を包んだ僕は、半分寝ぼけた頭のまま鞄を背負っていた。

 

 隣にいるのは、センパイ。

 なんか知らないけど、朝から僕の家の前に立っていた。

 

「じゃ、行こっか。学校」

「ん、はいはい。

 にしても、早いですよ」

 

 どうやら、一緒に学校に行くつもりらしい。

 

 もう、連絡くらいはしといてくれたらいいのに、センパイ。

 急すぎですって。

 

 ……まぁたぶん、昨日の電話のせいだろう。

 家、来ていいって言っちゃったし。

 にしても、行動が早いものだ。

 

「……てか、なんで家知ってるんです。

 ストーカーでもしてました?」

「知ってちゃ駄目なの」

「いや、否定してくださいよ……

 流石の僕でも勝手に付いてきてたりしてたら怒りますよ」

 

 ほんとにしてたのか。

 そう思って、僕はセンパイの方へ振り向く。

 

 すると、そこには。

 

「……もしかして、覚えてないの?」

 

 ぷくっと頬を膨らませたセンパイがいた。

 

「へ? なんの話です?」

「……むー」

「むーむー言っても分かりませんよ。

 ……あー、もう、そんな顔しないでください」

 

 膨らんだ頬は止まることなくどんどん大きくなり、ついでに僕の方に近づいてきていた。

 

 ペタッと、互いの頬がくっつくくらいに。

 

「……近いです、センパイ」

「柔らかいね、天音のほっぺた」

「そんなの知らないです。

 ひゃ、くっつけた駄目です」

 

 怒ってるのか、拗ねてるのか、分からないけど。これ以上は良くない、また、変なことをされるってなったら駄目だ。

 

 ……まだ、朝だし。

 

「その、センパイ。

 僕、なんか忘れちゃってますか?」

 

 だから、僕はできるだけ冷静に、ひんやりとした彼女の肌へ意識を向けないようにしながら、語りかける。

 

 疑問をぶつけると同時、センパイはさらに身体を近づけてきた。

 朝のぼんやりとした頭の中に、センパイの匂いが充満して、おかしくなりそうなほど身体が火照る。

 

 そうして、僕がとうとう白旗をあげそうになったとき。

 

 センパイが声を放った。

 

「前、家まで送ってあげたことあるでしょ」

 

「……あ」

 

 そういえば、あった気がする。

 ちょうど、一年前くらい。

 センパイと出会ってすぐの頃、確かに。

 

「どうしたの?」

 

 ……いやでも。

 普通そんな昔のこと覚えてなくない?

 しかも、雨の日とかだったし。

 一緒に帰ったのも、一回だけだし。

 

 ……むしろ、覚えてるセンパイの方がおかしい気がする。

 

「……ふふっ、ふふふ。

 あれーっ? もしかしてセンパイ、そんな前のこと覚えてたんですかぁ?

 一回一緒に帰った程度で家まで覚えてるって。

 あれですよ、重いってやつです、おもおもです。

 ふふふ、やっぱりセンパイは変態さんですね」

 

「ん、かもね」

 

「……むー、面白くない反応」

 

 せっかく可愛い顔が見れると思ったのに。

 

 やっぱ、最近、慣れられてる気がする。

 頑張って習得したオスガキが無駄になっている。

 

 そう思って地団駄を踏んでいると、横からセンパイの声が声を放った。

 

「ね、天音。

 手、握っていい?」

 

「……好きにしたらいいじゃないですか」

 

 センパイの手が僕の手に触れる。

 いつも勝手に触ってくるくせに、こういうとこは変に律儀だ。

 センパイらしい、とは思うけど。

 

「やっぱり、天音は可愛いね」

「ん、はいはい、そーですね」

 

 そのまま、僕はセンパイと一緒に歩く。

 学校は近い。

 急がなくても十分もすれば着くだろう。

 

 なのに、今日はやけに遅く感じる。

 ん、センパイがいっぱい道草を食べてるせいに違いない。

 

「私、誰かと一緒に学校行くの、初めて」

 

 そんなことを考えていると、ふとセンパイが話しかけてきた。

 

「お、奇遇ですね。

 僕も初めてです」

「……うそ」

「いや嘘じゃないですよ。

 友達とか、いませんでしたし」

 

 疑ったような目でこちらを見てくるセンパイ。

 

 ……本当なのに。

 そんなに信用ないの? 僕。

 

 不満めいた感情が湧いた僕は、ツンと口を尖らせながら、センパイの言葉を待つ。

 

「前、モテるって言ってたじゃん」 

「あれは高校に来てからの話ですよ。

 で、こっちに来てからはずっと一緒じゃないでしょ、僕たち」

「……じゃあ、中学は?」

「ずっと一人ですよ。

 あんまり、人と話すの得意じゃなかったので」

 

 センパイだけだ。僕の友達は。

 ……だから、そんなに心配とかしなくていいのに。

 

 そう思っても、センパイの目は変わらない。

 少し不安げな落ち着きのない瞳。

 僕の言葉を、イマイチ信じられてないのだろう。

 

 ……あー、もう、仕方ない人だ。

 

 僕は、センパイの方へ近づく。

 こっちから近寄るのは、あんまりしない。

 近づきすぎると、センパイは離れちゃうからだ。

 

 でも、ちゃんと伝えないと不安になっちゃうなら。

 

「――心配しなくとも、センパイ以外のものにはなりませんよ」

 

 僕は小さく、そう呟く。

 センパイにしか聞こえないような、小さな声で。

 

「……他の子、見たら嫌だよ」

「はい、もちろんです」

 

 センパイが納得してくれたかは、分からない。

 でも、言葉を放ってから、僕の手を握る力はぎゅっと強くなっていた。

 

 その行為の意味は、たぶんセンパイだけが知っているのだろう。

 

 そうして、僕らはまた歩き出す。

 

 今日は部活もある。

 センパイと一緒にいれる時間もいっぱいだ。

 

 ……あ、でも、そういや、今日は新入生が見学に来るんだっけな?

 ま、いいや。

 適当に対応してたらなんとかなるだろう。

 

 そんなことを考えながら、僕は再度足を進めるのだった。

 

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