貞操逆転世界でクールな先輩にオスガキムーブかましてたら普通に押し倒された   作:しゃふ

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12話 僕らは似ている

「好きな人、いるんだ、天音」

 

 ドカンと、床を叩く音が部室中に響く。

 久しぶりに聞いた本棚が崩れる音。

 

 センパイの手が、僕の肩をぎゅっと掴んで、離してくれない。

 力は強い。痛くはないけど、でも重い。

 

 ——もう何回目か分からないけど。

 

 いつまで経っても、この行為には慣れそうになかった。

 

「……何の話です? センパイ?」

「今言ってたじゃん。

 あの子に、さ」

 

 とぼけようにも、どうやら無駄なようだ。

 むしろ、力が強くなったような気がする。

 

 センパイの顔が近い。

 互いのおでこは完全にくっついていて、逃しては、くれなそうだ。

 

 センパイの顔を見る。

 その目は、パチパチと閉じたり開いたりを繰り返している。

 動揺。

 そんな言葉が頭によぎった。

 

「……ただの嘘ですよ。

 ああ言わないと、帰ってくれなさそうだったので」

「ウソでしょ」

 

 バレた。

 これで解決するなら、簡単だったけど、駄目らしい。

 

 センパイの口が、僕の耳元に近づく。

 

「わかるよ、もう。

 天音がウソをつくときはもっと可愛い顔するもん」

「そう、なんです?」

 

 知らなかった。

 僕は、そんな単純な奴だったのか。

 

 ……いや、あれかな。

 嘘をつくときは、だいたいオスガキモードのときだから、表情も緩んでるのかもしれない。

 

 そんなことを考えてると、少し心に余裕が出てきた。

 相変わらず、心臓の音はうるさくて止みそうにないけど。

 でも話をするくらいはできる。

 

「ねえ、誰なの?

 好きな子って」

「……知りたいですか?」

 

「——知りたくないわけ、ないでしょ」

 

 センパイがそう答える。

 ひどく、僕の肩を揺らしながら。

 

 ……不安がってる、センパイが。

 

 なんとなく、分かってしまった。

 手も、目も、このどうしようもないほどに近い距離も、全ては一つの感情によるものだ。

 

 センパイはきっと、怖がってる。

 

 僕がセンパイから興味を失っちゃうんじゃないかって。

 ……意外と、寂しがり屋さんなのだ、センパイは。

 

 僕と同じで。

 

 ……もう。

 センパイのばか。

 それなら、分かってるはずでしょ。

 

 ——僕がそんなこと思うわけないってことは。

 

 次の瞬間、僕のしたことは単純だった。

 

「——大丈夫ですよ、センパイ」

 

 センパイの背中に手を伸ばす。

 こういうことを、僕の方からやるのは初めてだけど、でもセンパイのためなら、仕方ない。

 

 そのまま、ぎゅっと身体をくっつける。

 センパイの匂いがして、ちょっと頭がくらっとするのを感じた。

 

 安心、する。

 

 ——センパイと僕は似ている。

 

 こんな小さな文芸部、なんで入ろうと思ったかというとセンパイがいたからだ。

 

「……あまね」

「はい、センパイの天音ですよ」

 

 僕たちは似ている。

 なら、きっとセンパイが今抱いている感情だって、同じはずだ。

 

 そのとき、センパイの頬が少しだけ、緩んだのが見えた。

 

「ふふふっ、たまには僕が甘やかしてあげます。

 かっこいいとこ、見せないといけませんし」

 

 恥ずかしいけど、いい。

 センパイが、僕と一緒にいることで、少しでも安心できるならいい。

 

 そして、いつのまにか。

 

 ——センパイも、僕の背中をぎゅっと抱きしめていた。

 

 その様子を見て、僕は声をかける。

 

「ねぇ、センパイ。

 僕の誕生日、覚えてます?」

「……うん、もちろん」

 

「じゃ、ちょうどいいじゃないですか」

 

 

「その日、教えてあげますよ。

 僕の、好きな人」

 

 そう言って、僕はゆっくりと彼女の背中から腕を離した。

 

 もう大丈夫。

 センパイの顔は、完全に可愛くなってるし。

 前みたいなことには、ならない。

 

 

  ……あれ、ならない、よね?

 

「あ、あのぉ、そろそろ離してくれませんか?

 センパイ?」

「やだ」

「な、なんでです?」

「待てないよ、そんなに」

「そんなにって、後数日じゃないですか」

 

「じゃあ、ちょっとだけ、教えて」

 

 あ、これ駄目なやつかもしれない。

 センパイの手は、もう既に僕の背中に触れている。正確には、服の、中に。

 

「だ、だめです、ここじゃ、人も、きますし」

 

 

「あ、ちょ、待っ——」

 

 問答無用、そう言わんばかりに僕はもう一度、センパイに押し倒されるのであった。

 へんたいへんたいへんたいセンパイのへんたい!!

 

 

「……じゃ、帰りますよ、センパイ」

「うん、天音」

 

 その後、なんとかセンパイの説得に成功した。

 ……途中、すっごい、ちゅーされたけど。

 

 やっぱ、僕たちそんな似てないかも。

 僕、あんなヘンタイさんじゃないもんね。

 

 

 

 ——そして、あっという間に時間は過ぎた。

 

「おはよ、天音」

「はい。

 おはようございます、センパイ」

 

 その間、色んなことがあった。

 痺れを切らせたセンパイに抱きつかれたり、ちゅーされたり、噛まれたり、色々だ。

 

 でも、とうとうやってきた。

 そう、今日は僕の誕生日である。

 

「ケーキ、後で買いに行こうね」

「えへへ、デートってやつですね」

 

 その前に、ちょっとお出かけもあるけどね。

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