貞操逆転世界でクールな先輩にオスガキムーブかましてたら普通に押し倒された   作:しゃふ

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5話 オスガキはチョロい

 

 どうも。オスガキです。

 今日も元気なオスガキライフ送ってます。

 

 最近はとても楽しい毎日です。

 センパイも元気を取り戻してくれましたし、なんなら前より距離が近くなった気がします。喧嘩を超えて、仲良くなれたんでしょう。

 

 ……ただまぁ、少々近すぎる気もしますが。

 

「あの、センパイ、どこ触ってるんですか」

「ふともも」

「よく堂々と言えますね。

 僕以外の子にやったら即刑務所行きですよ、これ」

「……天音にしか、しない」

「ん、そーですか。

 ……ひゃ、ちょっとセンパイ、手、冷たいです」

 

 近い、絶対近い。

 前までここまで触ってくることは無かった。

 

 間違いなく例の件があったせいだ。

 ……その、キス、とか。

 色々あったせいで、センパイが僕に触れるハードルが下がっている気がする。

 

「……はい。もうお終いですっ。

 これ以上触るようならお金取っちゃいますよ。

 僕の身体は高いんです」

 

 彼女の手をグイッとに上へ退ける。

 すると、センパイはちゃんと諦めて、本を読むのに戻ってくれる。

 ……強引では、ないんだよなぁ。

 

 僕の頭に数日前の記憶が蘇る。

 無理やり腕を掴まれて、引きずられるように壁に押し付けられたあのときの記憶が。

 何度力を込めても、ピクリともしなかった彼女の身体が。

 

 ――でも、思うのだ。

 

 僕は男である。

 少々中性的な容姿をしているかもしれないが、それでも男の子である。

 

 センパイは女の子である。

 色々と僕よりおっきいし、今も僕を膝に乗せているけど、でも女の子なのだ。

 

 ……だとしたら、単純な力比べなら僕の方が強いんじゃないだろうか。

 あのときは、いきなりだったから押し負けただけで、本気を出せばセンパイくらいひょこっと持ち上げられる。うん、そんな気がする。

 

 

 よし、センパイに僕の恐ろしさを教えてやろう。

 

「センパイ。腕相撲をしましょう」

「……え、なんで? 腕折られたいの?」

「怖いこと言わないでください。

 もしそんなことなったら、普通に泣きますよ、僕」

 

 というか折りにこないでよ。センパイ。

 そう思いながらも、僕はセンパイに向かって笑みを浮かべる。

 

「ふふんっ、よくよく考えたらセンパイみたいなザコ、僕の相手にならないんです。

 なんせ、所詮センパイはか弱き乙女ですからね。

 ……あ、すみません。乙女じゃなくてど淫乱女の間違いでした」

「よし、やろっか。

 腕、千切れたらごめんね」

 

「受けて立ちましょうとも」

 

 センパイの膝から降りた僕は、机に肘をつけて彼女を待つ。

 

「ほらほら、さっさとにぎにぎしましょうね?」

 

 挑戦的な声で煽ってみると、センパイの手が僕の手に絡みつく。

 僕より少し大きな冷たい手。

 触っていると、少し、身体が熱くなるのを感じる。

 

 あんまり触ってると、変になりそうだ。

 そう感じた僕は、スタートの号令をかける。

 

「――それでは、よーいドンですっ!」

 

 瞬間、僕の手が机へと叩きつけられる。

 

 

 あ、無理だ、これ。ぜったいかてない。

 

 千切れるっ! まじで腕取れるっ!

 肩がゴリゴリ言ってるっ、死ぬ、逝っちゃう!

 

 あまりの衝撃に、壊れそうなほど溶けた声を漏れはじめる。

 

「……っぁ、せん、ぱいっ、だめです、しんじゃい、ます」

 

「……ちょっと、天音、声」

 

「お゛せんぱいの手、すっごいですっ、お、お゛れりゅ」

「……」

 

 あれ、なんか急に力が弱くなったな。

 センパイの顔へと目を向ける。

 すると、彼女はなぜか驚愕の表情している。

 

 よく分からないが、チャンスだ。

 僕は力の限りを腕に込める。

 

「センパイ、イけっ、イっちゃえっ、僕の腕で、ぶっ壊れちゃ――」

 

「……あの、ドアの前、人いるけど」

「へ?」

 

 

 あ、ほんとだ。いる。

 なんか、見覚えのある人が立ってる。

 

「……あ、委員長。こんにちは」

 

 そこに立っていたのは、委員長こと速水さん。

 彼女は持っていた本を床へと落とし、ガタガタと震えている。

 ……そして、ゆっくりと顔を上に向けた後、

 

「――が、学内での変態行為は禁止ですっ!!」

 

 とんでもない爆音を部屋に響かせた。

 

「ちがう、変態は天音だけ。私はやってない」

「……はぁっ!?

 あんなどエロいキスかましてきて何言ってるんですかっ!?」

 

「どエロいっ!?? な、なに言ってるんですか桜井さんっ!?」

 

「速水ちゃんは黙っててっ!

 あのですね、センパイ。僕は未だにアレはないと思ってますからねっ!

 ムードもへったくれもありませんっ!」

「最後の方は天音も楽しんでたでしょ。

 ……ほら、見て、この写真。どうみても喜んでるでしょ」

 

「いや、それは、その。べ、別に喜んでなんていませんよっ!

 まったく、これだから処女は困っちゃい――んっ、ちょ、ばかっ!!

 み、みられて、んむぅ!?」

「ほら、喜んでるじゃん」

 

 強引に唇を奪われた僕は、抵抗できず、彼女に何度も貪られる。

 ぜ、ぜんぜん反省してない、この人。

 

 どうしようもなく彼女に身体を預けた僕は、目を横に向ける。

 

 ……そのとき、僕の目はとんでもないものを捉える。

 

「うわっ!? ちょ、速水ちゃんがぶっ倒れちゃってますっ、センパイ! 滅茶苦茶血出してますぅ!」

「……ほんとだ」

「なんでそんな冷静なんですかっ!

 い、行きますよっ、保健室までっ!」

 

 こうして、僕らは保健室へと速水さんを運ぶことになった。

 

 幸い、ただの鼻血だったようで、大事にはならなかった。

 が、どこまで見られたかは分からない。

 ……明日からどうやって話せばいいのだ。

 

 というかなんで速水さんは部室に来たんだろう。

 用でもあったのか?

 

 そんなことを考えながら、僕らは部室へ帰還した。

 

 

 

「……ねぇ、結局あの子誰だったの」

 

「うちのクラスの委員長です。

 名前は速水ちゃん。少々生真面目なとこはありますが良い子ですよ」

「……あっそ」

 

 部室への道中、センパイに委員長のことを聞かれる。

 ……お、何だこの反応。ちょっと気になるな。

 

「――あれぇ? もしかして嫉妬しちゃいましたかぁ?

 セ・ン・パ・イ?」

「……うるさい口。

 塞いであげようか?」

 

「はっ! そんなこと言っちゃって、こんな廊下でやる勇気はない――んむっ!? あ、らめ、ちょっ」

 

 が、好奇心というものは猫を殺す。

 僕のニヤニヤは彼女の身体によって、無理やり潰された。

 

 てか、ここ廊下なんだけど。人来たらどうするんだ、まじで。

 

「……やっぱ変態はセンパイの方じゃないですか」

「ん、天音が可愛いのが悪いよ」

 

 僕が吐き捨てた言葉は、何とも言えない言葉で返される。

 ……果たしてそれは、回答になってるのだろうか。

 

 そのまま、僕は彼女と歩く。

 相変わらず、部室へは遠い。話す内容も思いつかない僕は静かに廊下を進む。

 

「……ん」

 

 だが、そのとき。センパイが少し気になった。

 何かを話そうとして、辞める仕草。

 一瞬声が出たと思えば、吐息と混ざって消えていく、

 

「センパイ? 何か隠してませんか?」

 

 疑問に思った僕は彼女に問いかける。

 

「……カクシテナイヨ」

「いや、明らかに片言ですよね。

 ちょっと、何なんですか」

 

 センパイは黙って歩いている。

 先ほどまでより少し、駆け足で。

 僕は慌てて彼女に歩幅を合わせる。

 

 彼女が次に言葉を発したのは、部室に着いてからだった。

 

 

「……明日、ここ来れない」

「え?」

 

 センパイは小さな声で、僕に向かって呟く。

 

「バイト、始めたから。

 たぶん、明々後日も来れないと思う」

 

 相変わらずの無表情だけど、でも声色はいつもと少し違っている。

 けど、そこに含まれる感情はよく分からない。

 

「えー。なんですそれ。

 僕、暇になっちゃうんですけど」

「ごめんね、天音」

 

 僕は不満気にセンパイに伝える。

 だって、約束じゃないか。こうやって、放課後一緒に遊ぶというのは。

 それを発案者の彼女から破るのは駄目だろう。

 

 でも、センパイの態度からするに、今からなしにするってのはできないだろう。

 結局、僕が折れるしかないのだ。

 

「……ふん、だったら仕方ないですね。

 それじゃあ僕は適当に女の子でも引っ掛けて遊んで来ます」

「――は?」

 

「センパイが悪いんですからね。

 あんだけ言ったのに、僕に構ってくれな……あ、うそうそ。冗談です。首掴むのやめてください。

 もう、可愛い後輩ジョークじゃないですか」

「そっか、そうだよね」

 

 危ない。今一瞬、センパイが前と同じ目をしていた。

 やはり、こういう話はNGなのだろうか。

 

 僕は話を変えようと、彼女に言葉を放つ。

 

「で、何のバイトなんですか?」

「……内緒」

「いや、隠すことないでしょう。

 んー、この辺ならコンビニかスーパーですかね?」

「違う」

 

「……もしかして、えっちなバイトですか?」

「君は何を言ってるの?」

 

 なんだ、僕は大真面目に言ってるのに。

 センパイは口数が少ないし、変なバイトに巻き込まれてないか心配してやってるのだ。

 

 ……というか、べつに教えてくれてもいいだろう。

 なんでだ。そこまで、僕は信用がないのか。

 

「……教えてくれないなら、いいもん。

 べつにセンパイが何しようが勝手ですもんね。

 好きにすればいいじゃないですか」

 

 僕は拗ねたように、顔を下に向ける。

 ふんっ、センパイが悪いのだ。

 

 そう、思ったとき。

 

「……だって、サプライズだから」

 

 センパイが僕の耳元に、小さな声で囁いた。

 

「へ?」

「天音の誕生日。もうすぐでしょ」

 

「だから、プレゼ――」

「あー、駄目駄目っ! 言っちゃ駄目ですっ!

 え、あ? センパイ、そういうの祝ってくれるタイプだったんですかっ!?」

 

 聞いちゃいけないことを聞いたっ。

 さ、さぷらいずって、つまり、センパイがお祝いしてくれるってことだろう。

 

 ……だ、だから、隠していたのか。僕に勘繰られないようにするため。

 

「……君には、世話になってるからね」

 

「そ、それってえっちの意味ですか?」

「……やっぱ、祝うのやめよっかな」

 

「あーっ、ちゃんと祝ってくださいっ!

 えへ、えへへ。センパイとパーティですか。

 もう、それなら許しちゃいます。チューしちゃいたいくらいです」

 

「そっか、じゃあ楽しみにしてる。

 ……まだ、天音からはしてもらってないもんね」

 

 そう言うと、彼女は僕の頭をぐりぐりと撫でる。

 いつもは子供扱いに文句を垂れるところだが、今日のところは許してやろう。

 

 ……てか、なんか勢い余って変なこと言っちゃったな。

 ま、いいか。誕生日まではまだ時間がある。

 数日もすれば忘れてくれるだろう。

 

「はい。僕も楽しみですっ、センパイっ!」

 

 

 

 次の日の放課後。

 僕は教室で机に頭をゴロゴロしていた。

 

 センパイがサプライズを考えてくれたのは嬉しい。

 家族以外と誕生日を祝うのは始めてだし、なにより、センパイに祝ってもらえるのは嬉しい。

 

 ……だけど、結局暇なのは変わりない。

 センパイがいないとなれば部室に行く意味もないし、本当にやることがないのだ。

 家に帰っても姉に絡まれるだけだし、大した趣味もない。

 ……はぁ、どうしようか。

 

「ね、ね。桜井くん。

 どうしたの、そんなに暇そうにして」

 

 そのとき、隣の席に誰かが座る音がした。

 

「……あ、僕に話してるの?

 えっと……何とかさん」

 

「あはは、何とかさんはないかなぁ。

 できれば南原さんって呼んでね」

 

 まあまあ合ってる気もするが駄目らしい。

 てか、そんな名前だったんだな、この人。

 

 南原さんを名乗る彼女はこの前の昼休み、僕に絡んできた子の一人だ。

 もう二人いたけど、どっちかは内村さんだったりするのだろうか。

 

「……で、何の用。

 あんまりウザ絡みしてくるなら委員長呼びつけるよ」

「そ、それはやめてほしいかなぁ。

 ……あ、でも確か今日は休みだよ、あの子。貧血なんだって」

 

 そういや確かに、朝から委員長を見ていない。

 

 もしかして、昨日のアレが効いたのだろうか。

 滅茶苦茶鼻血出してたし。

 

 ……今度ちゃんと謝るとしよう。

 そんなことを考える僕に対して、目の前の少女は言葉を続ける。

 

「用は単純。

 前に言ったじゃん。今度遊び行こうって。

 で、今からクラスの子何人かでカラオケ行くから一緒にどうかなって」

「……あー、言ってたね。そういや」

 

 作り物っぽい笑みを浮かべながら、目の前の少女は机へと手を置いた。

 んー、カラオケかぁ。どうしよう。

 お金もないしなぁ。

 

「僕、今無一文だよ。

 財布の中には非常食の飴ちゃんしかないよ」

 

「もちろん、桜井くんの分は私たちで奢るからさ。

 あ、なんならお菓子もいっぱい買ってあげる」

「行く」

 

 決してお菓子に釣られたわけじゃない。

 そう、決してだ。

 

 ……まぁ、どうせ暇だし、いいだろう。

 センパイもバイトに浮気しているのだ。

 僕が友人もどきと遊びに行くのも許してくれるだろう。

 

「……桜井くんって、やっぱチョロいな」

 

「え? なんか言った?」

「ううん、何も。それじゃあ行こっか。

 遅くなるまでには帰るから安心してね」

「ん、そだねー。うへへ、ただ飯だぁ」

 

 ということで、僕は南原だか、南郷さんに着いていくことになった。

 

 途中寄ったコンビニでお菓子をいっぱい買った。

 買いすぎて若干顔が引き攣ってた気もするが気にしない。

 

 ふふふ、僕は金がかかる男なのである。

 

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