貞操逆転世界でクールな先輩にオスガキムーブかましてたら普通に押し倒された   作:しゃふ

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7話 がおー

 

「あ、あのー、センパイっ?

 ここって、色んな意味で入っちゃ駄目な気がするんですが……」

「いいよ、店長も外出てるし。

 ここなら誰も来ないでしょ」

 

 キッチンらしきところを超えて、センパイに連れ込まれたのは更衣室と書かれた小さな部屋だった。

 電気が付いてなくて、暗い。

 センパイに掴まっていないと、転んじゃいそうだ。

 

 ……てか、バイト中にまったく関係ない知り合いを連れ込むとか、普通に考えて駄目じゃない?

 これ。バレたら余裕でクビでは?

 

「……そんな不安そうな顔しなくていい。

 仕事は別の人に頼んでるから」

「そ、そうですか。

 まぁ、それなら、いいのかな?」

 

 一応受付にもバイトらしき人はいた。

 ついでに平日ということもあってお客さんもあまりいない。

 ちょっとの間抜けるくらいなら大丈夫なのかな。

 

 ……じゃあ、いっか。

 センパイと話せるのは、嬉しいし。

 

「……あの、センパイ」

 

 そう思った僕はセンパイにくっついたまま、語りかける。

 

 とりあえず、言わないといけないことがあるだろう。

 

 ……部屋で助けてくれたこと。

 若干手荒だった気もするが、彼女が僕を守ってくれたのは確かだ。

 

「えっと、その、助けてくれてありがとうご――」

 

 そう思って、僕が感謝の言葉を伝えようとしたとき。

 

 ――更衣室の壁が揺れた。

 

 理由は簡単、彼女の腕が壁をドンと叩いたからだ。

 

 驚くと同時、センパイに掴まれた肩がグイッと前に引き寄せられ、彼女の身体と接触する。

 

 そして、そのまま。

 

 何度、経験しても慣れない甘い感情が僕の口の中に溢れだした。

 

「んぁ、ちょ、せんはい、いきなりは、だめ」

 

 お酒のせいで、身体は熱い。

 

 こんな状態で、キスなんて駄目だ。

 おかしく、なってしまう。

 ……それに。

 

 やっぱ、うまくなってる、せんぱい。

 

 何度も唇が奪われるうちに、徐々にとろんと顔が溶けていくのを感じる。

 頭のふわふわもあって、センパイの全てが僕の身体を支配してしまう。

 なにも、考えられなくなってくる。

 僕が僕でなくなっていく。

 

「だ、だめ、ですっ、センパイっ」

 

 本能的に、僕はセンパイの身体を前へと、そっと押した。

 

 ……すると、センパイは僕から離れていく。

 ほとんど、力を込めなかったにも関わらずだ。

 

 彼女は何も抵抗せず、後ろへと下がってしまう。

 近づいたり、離れたり。

 センパイは本当に、わからない。

 

「……せんぱい」

 

 ――もうちょっと、してても、よかったのに。

 

 

 ……え。あ、いや、違う。

 今のは、その、言葉のあやだ。

 そう、こんな簡単に言うことを聞かれるのはつまらないというか、拍子抜けというか……決して、期待してたとか、そういうわけではない。

 

 ……ないのだ、決して。

 

 僕は頭をぶるぶる振った後、彼女の方へ向く。

 

「……な、なんなんです、センパイ?」

 

「お酒の味がする」

 

 センパイは僕の質問を無視して、こんな言葉をぶつけてきた。

 ……あんなことをした後というのに、なんでこんなに平然としていられるのだろうか。

 ずるい。

 これだと動揺している僕が馬鹿みたいじゃないか。

 

「そりゃ、さっきまで飲んでたので」

 

 僕はできるだけ平然な態度を保ちながら、彼女に言葉を投げ返す。

 

「――それは、ロックだね」

「何言ってるんですか?」

「……さぁ、わたしもよく分からない」

 

 謎の会話をしながら、僕はセンパイにぐちゃぐちゃにされた口元へとハンカチを当てる。

 

 でも、口の中のざわつきは消えてくれない。

 センパイに、キスされた日は、家に帰っても、ずっとこれのせいでぐちゃぐちゃになってしまう。

 

 頭をかかえながら、拭き終えたハンカチをポケットにいれようとしたとき、不意にトーンが下がった声が僕の耳へと入った。

 

「――で、なにやってたの。

 あの女の子たちと一緒に」

 

 声色は鋭い。

 突き刺すような言葉が僕の心臓へと向かって飛んでくる。

 

 ……これ、返答を間違えたらまずいやつだ。

 

「み、見てたなら分かるでしょう。

 クラスの子たちと遊びに来たんです」

 

 僕は身構えながら、彼女に言葉を返す。

 

 そうだ、べつに、後ろめたいことはしていない。

 学校の友達もどきたちと遊びに行くことくらい、高校生なら当たり前のことである。

 

「……それでお酒も飲んで、身体もくっつけてたの。

 あんな可愛い顔しながら」

「い、いや、アレはその、場の流れといいますか、南原さんが強引で……」

「他の女の名前出さないで」

「ひゃい」

 

 彼女の手が僕の頬に当てられて、顎がクイっと上へあげられる。

 体格差というのは残酷なもので、されるがままに僕は彼女に身体を委ねることになった。

 

「天音は、自分の可愛さをもっと理解した方がいい」

「は、はぁ、かわいさ、ですか」

 

 僕の頬をぷにぷにと潰しながら、センパイが呟く。

 

 ……可愛い、という言う割には扱いが雑な気がする。

 もしや、きゅーとあぐれっしょんってやつか。

 

 そう、ぬいぐるみをしばきたくなるアレだ。

 ……何か言い方が悪いね。

 

 そんなことを考えていると、不意に、彼女の細い指が僕の唇をなぞる。

 

「実際、私も天音のことを襲いそうになって百回は我慢してる」

「……え、こわ、猛獣じゃないですか」

 

 

「……がおー」

 

 僕の言葉に反応して、センパイが吠えた。

 

 大きく口を開けた彼女の顔は少し赤い。

 ……それに、いつもの無表情が崩れている。

 

 口角上がった口元に、軽く伏せた目が合わさっており、爆発的な破壊力の笑みである。

 端的に言うと、非常に可愛らしい。

 センパイのこういう表情を見るのは、部室での仲直り以来である。

 

 ……てか、これ、よく考えるともしかして。

 

 ちょっと酔ってる? センパイ。

 

 そういや、キス、されたし。

 僕の飲んでたやつが、センパイの方に行っててもおかしくない。

 

「……あまねぇ、きてぇ」

 

 ……まぁ、可愛いし。

 これはこれで良いか。

 

 僕はセンパイをもっと観察するため、彼女に近づこうとする。

 

 

 だけど、気づく。

 

「……え、ちょっと、なんで近づいてくるんです?」

 

 彼女の方も、僕へと近づいてきていることに。

 

 センパイの目を見る。

 

 ……その目は完全にケモノの目をしていた。

 

「――ん、天音を食べちゃおうかなって」

「へ」

 

 彼女を止める声を出す間もなく、僕の背中が強引に引き寄せられる。

 顔がセンパイの身体にむぎゅっと埋まり、息ができなくなった僕は慌てて頭を出す。

 

 センパイの手が僕の顔を上に向ける。

 既視感。つい数分前の記憶が蘇る。

 

 ……ま、まただ、さっきと同じ、体勢。

 また、キス、される。

 

 僕は、目を閉じて、彼女の行動を待つ。

 下手に、抵抗するよりも、何もしないほうが楽だ。

 センパイも満足したら、やめてくれるだろうし。

 

 

 そう思った、けど。

 

 ――次に来た衝撃は僕が想像していたものとは違った。

 

「んっ、いたっ」

 

 なにか、熱い感触が肌を撫でる。

 正確には、首元を。

 暖かい吐息が鎖骨に触れながら、硬いものが僕の肌へと侵食する。

 少し、濡れたソレは、暖かい液体を胸にとろりと垂らしていた。

 

 僕は、顔を下に向けて、自らの首元へ目をやる。

 ……センパイの顔が、くっついてる。

 でも、ただくっついてるのじゃない、これは。

 

「――か、噛んじゃだめ、センパイ」

 

 センパイの歯が、僕の首に食い込んでる。

 まるで、動物みたいに、噛みつかれて、離してくれない。

 

 僕は、彼女の頭を退けようとする。

 けど、ビクともしてくれない。

 

 それどころか、こそばゆい感覚が僕の肌を襲い出す。

 

「ひゃ、な、舐めちゃ、駄目ですっ、ちょ、ちょっと」

 

 へ、変な声が、でてしまう。

 人生で、一度も経験したことのない感触に、僕の神経が覚醒している。

 

 だめ、これ以上はいけない。

 なにか、目覚めてしまう。僕の心の奥に閉まっている、何かが。

 

 僕は最後の力を振り絞って、彼女の頭に手を置く。

 

「……天音、もう限界?」

「とっくに、です」

 

 そう言うと、彼女の頭が離れていく。

 

 噛まれたところには、まだセンパイの歯の形が残っている。

 ちょっと、痛かったけど、でも、それ以上に違う感情が湧いてきて、頭がそれに、支配されそうだった。

 

「……ま、満足、ですか、センパイ」

「今日のところは」

 

 彼女はそう呟いた後、まるで仕返しのように僕の頭へとポンと手を置いた。

 いつもなら子供扱いだと文句を言うところだが、今はそんなことをする気力はなかった。

 

「……今日みたいなことが起こらないように。天音も気をつけること。

 次同じことがあったら、もっと凄いとこ食べるから」

「す、凄いとこって?」

「……知りたい?」

「や、やっぱ、いいです」

 

 センパイの言葉を聞いてから、僕は噛まれた首元を触ってみる。

 ……すると、少しデコボコとした感触が僕の指に伝わってきた。

 

「あ、痕ついちゃったじゃないですか。

 どうするんですか、明日も学校あるのに」

 

 僕は慌てて首の痕を押さえるも、センパイの腕によって、その手は外される。

 

「……それつけてたら変なのも寄ってこないでしょ。

 隠そうとしたら駄目だから」

「こ、こんな付けてたらヘンタイになっちゃうじゃないですかっ!」

「……いいでしょ、前もお腹につけてたし」

「あ、あれは見えないとこだからいいんですっ!」

 

 僕は服を引っ張って無理やり痕を隠そうとする。

 だが、位置が悪い。

 ちょうど見えやすいところを噛まれたせいで、隠そうとしても微妙に見えてしまう。

 

 ……うぅ、さっきからやられっぱなしだ。

 

 僕はため息をつきながら、引っ張った制服をもとに戻す。

 

 ……それにしても、今日のセンパイは手強い。

 あのお酒のせいか、行動が普段の数倍、大胆になっている気がする。

 

 いつもは僕が翻弄してる……っていうわけでもないけど、でも、ここまで良いようにやられることはないはずだ。

 

 どうしようかと悩んでいると、不意にセンパイが僕の耳元で囁いた。

 

「……あと、一つ聞いてもいい?」

「ひゃい? なんです?」

 

 今は考え中なのに。

 そう思いつつも、僕は彼女の言葉に耳を向ける。

 

「私たち、付き合ってるの?」

「……はい?」

 

 ……え、突然なんだ。

 

 そんな話した覚えなんて……あ、いや、あるわ。

 つい数十分前にあるわ。

 

 南原さんに聞かれて、嘘をついたんだった。

 説明するのが面倒くさくて、付き合ってるって。

 

 ――聞いてたのか、声。

 ……あれでも、カメラだと音までは聞けなそうだけど。

 もしかして、部屋の近くで張り込みでもしてたのか?

 

 いや、今はそんなことはどうでも良いか。

 この質問は利用できる。

 

 ……さっきまでの仕返しだ、反撃と行かせて貰おうじゃないか。

 

 僕は喉仏をあげて、いつもの煽り声を作り出す。

 こちとら、毎日家で声も作ってるのだっ!

 ふふっ、覚悟してもらおうか、センパイ!

 

 ――僕は彼女に対して言葉を放つ。

 

「あれ、あれ、あれれっ?

 センパイ、もしかして信じちゃってたんですっ?

 もうっ、付き合ってるとか、嘘に決まってるじゃないですかぁ」

「……嘘なの?」

 

「う、嘘ですよ。えと、そういうのはですねー?

 告白とかして、お互いに納得しないとなっちゃ駄目なんですよ?

 ま、センパイみたいな性欲まみれの処女ちゃんには分かりませんかねーっ?」

「……意外とウブなんだ、君」

 

「は、はぁっ!?

 これが普通ですっ!

 付き合うとか、そういうのは簡単にするんじゃなくて、長いこと、友達として過ごした後にですね……」

「そういうのがいいんだね」

 

 ……思ってたのと違うっ!

 センパイの反応も何か余裕そうだしっ!

 もっと、こう、慌てふためく姿見たいのだ僕はっ。

 

「――じゃあ、長いことってどのくらい?」

「……い、一年くらいじゃないですか?」

「そうなんだ」

 

 よし。ここからが本番だ。

 そう、僕は名誉あるオスガキなのだ。

 センパイを翻弄して、彼女の顔を滅茶苦茶に僕で染めてや――

 

「……じゃあ、来月にする」

「え?」

 

「ちょうど、誕生日もあるし。

 その日にしよっか」

 

 ……へ?

 え、あ、センパイ? そ、それって、どういうこと?

 

「な、なんの話ですか?」

 

 僕は彼女に問いかける。

 声はもう完全に、普段通りに戻ってしまっていた。

 でも、そんなのどうでもいい。

 

 ……センパイの言葉の真意を聞きたい。

 だって、今のタイミングで、来月とか言ったら、それはもう、そういうことじゃないか。

 

 彼女の言葉を待つ。

 数秒の間だけど、随分と長く感じた。

 

 

 そして、僕の耳元で小さな声が囁かれる。

 

「――ないしょ」

 

 




日間6位なってましたっ!
応援ありがとですっ、これぞオスガキパワー!
さらに上へと行きたいので評価とお気に入りをぜひっ!
踊って喜びます!
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