貞操逆転世界でクールな先輩にオスガキムーブかましてたら普通に押し倒された 作:しゃふ
最終話まで書いてきたので十分ごとにアップしてきます。
ゆっくり読んでください。
「――ただいま」
「お、可愛いオスガキの帰還じゃん」
家に帰宅した僕を待ち受けているのは、ドのつく変態生物、桜井琴音だ。
華の大学生だというのに、彼女は相変わらずだらんと暇そうにリビングに寝転がっていた。
駄目人間め。
……まぁ、用事はあったからちょうど良いんだけど。
「お姉ちゃん、そこに正座して」
手を広げて突っ込んで来た彼女を華麗に避けながら、僕は床を指差す。
「……え、なに、怖いんだけど。
お姉ちゃん、なんかまずいことした?」
「お姉ちゃんがまずいこと以外をしたことあった?」
「……ないかもしれない」
「でしょ」
さて、軽口はこんなところにして本題に入るとしようか。ちなみに正座をさせた理由はない。
「質問あるんだけどさ」
「ん、なに?
またどエロい話でもするの?」
「いや、それは解決したから良くて」
「解決したんだ……」
困惑している姉の顔は実に間抜けである。
まったく、おんなじ腹から生まれたとは思えないね。
ただ、こんなに阿呆ズラを晒されると……少し、悪戯をしたくなるのがオスガキの性である。
そう思い、僕は床に膝をつけた彼女の耳元へ向かって、ゆっくりと顔を近づけ、囁く。
「――お姉ちゃんってさ、責められるのが好きなんだよね」
声と同時、彼女の身体はビクンと震え、顔が赤く腫れあがる。
「……え、あっ、なに?
ま、まじでそういう話してんの?」
「や、やめときなよ?
お姉ちゃん、その、リアルはNGというか、いやダメってわけじゃないけど、天音には、もっと良い人が、その」
「……相変わらずヘタレだねお姉ちゃん。
冗談に決まってるでしょ」
彼女と肩をポンと叩いた後、僕はポツリと呟く。あんまり面白い反応じゃなかったな。
まったく、いつもあんなにお下劣なことを言っているというのに。
ここぞのときに打たれ弱いのはなんでなんだろう。
……いや、姉弟だし、似てるのか、僕ら。
首元にくっきり残る噛み痕、それをなぞりながら、僕はそっとため息をつく。
ま、いい。
そんなことより、本題に入らないと。
そう思った挙動不審な姉を無視して、後ろへと振り返り、
「それじゃあ、入ってきて」
先ほどから開きっぱなしの扉の外。
そこへ向かって、声をかける。
「……し、失礼、します、お姉さん。
私、速水って言います」
そう、そこにいるのは、数時間前、僕にとんでもないお願いをしてきた少女。
――速水ちゃんである。
「ほ、ほんとに、家、上がっちゃっていいんですか?」
「ん、いいよ。減るもんじゃないし」
速水ちゃんは明らかな動揺を見せつつも、ゆっくりと玄関に上がってくる。……うん、めちゃくちゃ緊張してそう。
「……えと、その子はなに?」
「お姉ちゃんの同類」
困惑してる姉にそんなことを伝えた後、僕は場を去るために階段へと駆ける。
「じゃ、後はよろしく。
あ、速水ちゃん。
変なこと言われたら容赦なく殴っていいから」
「……は、はい、わかりました。
桜井さん」
「いや駄目だよ?」
うむ、これで良い。
変態というのは変態同士仲良くすればいいのだ。
きっと、後のことはオスガキ囁き言葉責めASMRがなんとかしてくれる。
満足した僕は自分の部屋に帰還するのだった。
「速水ちゃん。
確かに君の気持ちはわかるよ。
だけどね、オスガキに愛でられるためには、まずオスガキを愛でる気持ちを持つことが大切なんだ」
「はい、はいっ、お姉さん!
勉強になりますっ」
部屋に戻ってしばらく経っても、ガヤガヤと騒ぐリビングの音は鳴り止まそうにない。
……すごい盛り上がってるな、あの二人。
そんなことを思いながら、僕は束の間暇つぶしとして、スマホを取り出す。
しばらく、ユーチューブやらネットニュースやらを見てみるが、相変わらず、僕を襲う退屈は癒えてくれない。
「センパイ、会いたいな」
センパイはバイト中だ。
けど、意外と緩そうなとこだったし、もしかしたら、またサボってるかもしれない。
通話アプリに手をかけるのは早かった。
「――出るかな、センパイ」
バイト中ということを考えたら、出ない可能性の方が高い。でも、センパイならって思ってしまうのは仕方ないことだろう。
……出てくれたら、いいな。
そう思って、自らの首筋をなぞったとき。
『天音? どうしたの?』
……センパイの声が聞こえた。
でてくれた。
純粋に、そんな気持ちが頭を支配して、勝手に頬が緩んでしまう。
ん、だめだめ。
僕はそんなちょろいやつじゃないのだ。
できるだけ平然に、僕はスマホの奥の彼女に向かって呟く。
「えっと、その。
暇してたのでかけただけです。
……あれです、イタズラ電話ってやつですよ」
少し上擦った高い声。
電話というのは、会って話すよりも緊張する。
センパイがどういう顔なのか、分からないからだ。
言葉を放って数秒後、センパイが声を返す。
「……じゃあ、切ってもいいの?」
淡々とした平坦な声。
それを聞いて僕は思わず、肩を震わせ、冷たい息を漏らしてしまう。
……やっぱ、迷惑だったの、かな。
そんな考えが頭によぎり、喉がつっかえる。
だけど、センパイの声が聞きたいって気持ちは止めることができなくて。
「それは、やだ、です」
放たれた言葉は、自分でも驚くほど、細い声だった。
「……ちょっと、待ってて」
僕の声を聞いて、センパイがガチャガチャと動きだしたのが分かる。
どうやら、誰かと話しているようだ。
……相手の声は聞き覚えがあった。
たぶんあの日ロッカーをあけてきた人だ。
そのまま数分が経った後、センパイが戻ってきて、言った。
「バイト、抜けてきたから大丈夫。
……ごめんね、天音。イジワル言って。
話そうか、ちょっと」
「――はいっ!」
こうして、僕は彼女との束の間のひと時を得ることに成功したのである。
「寂しかったの? 天音」
「……べつにぃ?
というか、センパイが悪いんですからね。
部活来るって、約束してたのに」
「それはごめんね。
今度、埋め合わせするから」
「……絶対ですよっ?」
センパイと話すのは楽しい。
彼女の声を聞くだけで、平凡な日常に色がついていくような、そんな感じがする。
……最近は全然平凡じゃないけどね。
そんな調子で話し続けていたとき、ふと速水さんのことが話題に出た。
「――あの子、家にいれたの?」
「ん、まぁ、そーですね。
最初逃げようとも思ったんですが、ちょうど家に変態がいたので。今はリビングで大はしゃぎしてますね」
正直カミングアウトされたときはビビったけど、とはいえ、彼女は悪い子ではないのだ。
それは今までの学校生活でよく知っている。
変な女の子たちに絡まれたとき、守ってくれてたし。
そう思って、彼女の話をしていると。
「……うわきもの」
不意にセンパイが息を漏らす。
その声は、何度か聞いた低い声。
……怒ってるときのやつである。
でも今日は。
僕の方こそセンパイにぷんぷんなのである。
部活、来てくれなかったし。
「えーっ? なんです、センパイ?
友達を家に呼ぶくらい普通なんですけどっ??」
「……その子、天音のこと好きなんでしょ?」
「へっ? いや、えと。
それは、知りませんが」
「――襲われたらどうするの?」
「いや、センパイじゃありませんし、そんなことしませんよ、速水ちゃんは」
「……私もしないよ?」
いや、したでしょ、あんた。
なに平然と嘘ついているのだ。
「ガブっとしておきながら、何を言ってるんです」
僕は呆れるように言う。
首についた痕は今も深々と残っていて、センパイが隣にいるような、そんな気さえしてくる。
……隣に、か。
「――そんなに言うなら、センパイも来ればいいじゃないですか」
言葉を放つ。
べつに、センパイに来て欲しいとかそういうんじゃない。
ただ、その、普通のことだ。
速水ちゃんを家に入れた以上、センパイが家に来るのも駄目なことじゃないだろう。
「……いいの?」
「べつに、いいですけど」
センパイの顔は見えない。
電話越しだから、当然だ。
でも。
「――うん、ぜったいね、天音」
スマホ越しの彼女の顔がとびっきりの笑顔だったってことは、なんとなく分かった気がする。
次の日の朝。
「ん、来ていいって言われたから」
「……えぇ」
起きるとセンパイが玄関に立っていた。
……行動、早くない?