ラブライブ! School idol liberty ~ 苺の木の詩 ~ 作:めたんはいどれーと
<introduction>
とある少女がいた。その少女は夢を失い、自分を見失っていた。
(だが、少女は再び夢を手にすることになる)
とある少女がいた。その少女は夢を憎み、夢を捨てることを決意した。
(だが、少女はその夢の輝きに
とある少女たちがいた。その少女たちは夢を叶えた仲間の少女のことを思うあまり、
仲間であることをやめてしまった。
(だが、少女たちはその絆を捨てきれずにいた)
これは夢を失った少女と、夢を捨てようとしている少女と、夢を叶えた少女を思う、ほんの少し大人になった少女たちの物語り。
prologue はやて 中学三年生 秋
球場に歓声が沸き起こっていた。
秋のインターミドル。女子中学生ソフトボール地区予選決勝。
ここを勝てば、全国大会の出場が決定する。中学時代最後の大会で、14歳、中学三年生の宮永はやては、念願の初優勝――すなわち全国大会出場まであと一歩の所まで来ていた。
試合は現在7回表、スコアは1-0。9回制が一般的である野球と違い、ソフトボールは7回制のため、先攻のはやてたちチームがこの回の裏を守りきれば勝利である。
それはつまり、チームのエースピッチャーであるはやての右腕に、この試合の勝敗がかかっていると言っても過言ではない状況だった。
(いよいよだ……)
7回表の最終回、自軍の攻撃中だが現在2アウト。はやては高鳴る鼓動を押さえつつ、ベンチから自軍の攻撃を見つめていた。
あと1アウトで攻守が交代、最終のマウンドに上がる。多少の疲労は感じているが、これまでは相手打線は完全に押さえきっている。ここまできたら最終回でも一点もやるどころか、ランナーすら一人も出さない覚悟だ。
間もなく迎えるであろうラストピッチに思いを馳せ、気力を振り絞るはやて。そんなはやての耳に、ふとしたメロディが聞こえてくる。
「?」
そのメロディの正体は、これまでずっとはやてとバッテリーを組み続けてきたキャッチャー
莉曜は手にしているスマホにイヤホンを付け、楽しげな表情で何かの音楽を聴いている。
「りょうちん、なんの曲を聞いてるの?」
本来なら「りよう」という読みのだが、はやては親しみを込めて「りょうちん」と呼んでいる。
明らかに気負っている自分とは正反対の莉曜の態度に、どこか拍子抜けしたような表情で問いかけるはやて。そんなはやてに、莉曜は爽やかな笑顔で答える。
「ああ、これ? 最近ハマっている元気のでる曲なんだ」
あっけらかんとそう言ってのける莉曜に、はやては思わず興味を駆られ問いかける。
「へ~なんて歌手?」
「歌手っていうか、スクールアイドルなんだけど…」
「スクールアイドル?」
聞き慣れない単語に首を傾げるはやて。
「うん、まぁアイドルの部活みたいなモンかな。いま聞いてるこの曲は
そういうと、自分が耳にしていたイヤホンをはやてに差し出す莉曜。はやてはそのイヤホンを自身の耳に当てた。
「へ~イイ歌だね。あたしこの歌詞、結構好きかも」
「これを聴くと、がんばらなきゃって思うのと同時に、リラックスもできるんだ」
「うんうん。あたしもさっきまですごく気負っていたけど、この曲聴いたらリラックスできたかも!」
「そういってくれると、わたしも嬉しいな」
そのとき自軍バッターが三振。主審からチェンジのコールがされた。そのコールとともに表情を引き締め直すはやてと莉曜。
「りょうちん! さあ行こう!」
「だねはやて。ラスト1回。ここを守りきれば優勝だ!」
「よーし、行こう! あたしが投げて、りょうちんが捕って、それであとアウト3つ取ったら全国だ!」
「行こうはやて! わたしたちで全国へ!」
「うん、行こう。全国へ! あたしたちなら絶対に出来るよ!」
そうして二人の少女は、最終回のマウンドへと翔け出していった。
続く。