ラブライブ! School idol liberty ~ 苺の木の詩 ~ 作:めたんはいどれーと
はやてと
初めは戸惑うはやてたちだったが、やがて決意。そんな二人に向かってサングラス姿の女性は言う。
「よかった! じゃあ、受けてくれたお礼に、ライブ終了後に、あなたたちがいま、一番知りたがっていることを教えてあげるわ」
「あたしたちがいま……一番知りたがっていること?」
「ええ――μ'sに何があったか、よ」
「なっ……」
「あなたは一体誰なんですか?」
「そうだったわね。じゃあまずは自己紹介。私の名前はツバサ。
その名前にどこか聞き覚えを感じ、莉曜が首をひねる。だがすぐに「ああッ!」と声を上げた。
「綺羅ツバサって、第一回のラブライブで優勝した
「あら? 知っていてくれてるなんて嬉しいわ。そう、私は第一回ラブライブの優勝チームA-RISEのリーダーだった綺羅ツバサ。そしてここは、私の母校のUTX高校よ」
ツバサが言うには、本来ここでは今日、別のスクールアイドルがライブを行う予定だったのだが、そのスクールアイドルが急遽出演できなくなってしまったというのだ。
「本当のことを言うと、実は知り合いからあなたたちのことを聞かされていたの」
「そうなんですか!?」
「ええ、あの
「それであたしたちに……」
「そう、今日予定をしていたアイドルが出られなくなって途方に暮れていたところに、たまたまあなたたちを見かけてピンときたというワケ」
そう言ってツバサは、少し表情を引き締める。
「そんなわけで突然の代役で申し訳ないんだけど、本当にあなたたちにライブをお願いしてもいいかしら?」
「モチロンいいですよ。あたしたちもずっとファーストライブをやりたいと思っていましたし……」
「ゲリラライブでもいいからやろうかって話をしていたくらいだし、それがこんなに設備の整った場所でなら、逆に願ったり叶ったりです」
はやてたちブレイブ・ベリーズの言葉に、ツバサは安堵の表情を浮かべた。
「そう、じゃあ開演はいまから4時間後の午後3時から。何回かリハーサルができる時間もあるから、何か要望があったら遠慮無く言ってね――あ、ねぇあなたたち!」
と、ツバサは近くにいたライブ準備のスタッフと思わしき数人の生徒を捕まえる。
「はい。なんでしょうツバサ様」
そう言って、まるで敬愛する主人にかしづくように、かしこまる生徒たち。
どうやらここでは、ツバサのカリスマ性は絶対のようだ。
「あなたたち、実は今日、この子たちにライブの代役をやってもらうことになったの。それで悪いんだけど、いまから色々とこの子たちの準備を手伝ってくれる?」
はやてたちを見て少し驚いた表情を浮かべつつも、その生徒たちはすぐに「はい!」と元気よく返事をする。
その後、生徒たちに手を引かれながら去って行くはやてたち。そしてその姿を見送るツバサに向かって、はやてはふと振り返る。
「それで、あの…ツバサさん」
「なにかしら?」
はやての問いかけに、小首を傾げるツバサ。
「その、本当に知っているんですか? μ'sに何があったのか……」
はやてのその問いに「ええ」とうなずくと、ツバサはほんの少し表情を硬くする。
「μ'sに何があったか、私はすべて知っている。そしてそのすべてをライブ終了後にあなたたちに話すことを約束します」
真摯な表情でそう告げたあと、ツバサは一転して軽やかな笑みを浮かべた。
「だからあなたたちは、いまは余計なことを考えずにライブに集中してね」
「ハイッ!」
それからはすべてがあっという間だった。
莉曜がスマホに入れてあった楽曲を音響スタッフに渡し、リハーサル準備を執り行なわれる。
その準備が整うまでの間、はやてと莉曜は別室に連れて行かれ、その部屋で無数に用意されていたステージ衣装の衣装合わせ、それからメイクのイメージといった打ち合わせをし、その打ち合わせが終わる頃にはリハーサルが行える準備が整ったので、最初のリハーサルを開始。
そのリハが終わるとすぐに、ツバサを含めたスタッフたちと照明や演出の基本プランの打ち合わせをし、再びまた2回目のリハーサル。
その後、軽い昼食を済ませると、今度は仕立て直し終わったステージ衣装と、はやてたちに合わせたメイクをし、本番さながらの3回目のリハーサルが行われた。
さらにそのあと、再びツバサたちと全体の調整や修正の打ち合わせが入り、4回目となる最終リハーサル。そしてその全てが終わると、ようやくはやてたちブレイブ・ベリーズに、本番までの束の間の休息が訪れた。
「ホントにあたしたち、いまからライブをやるんだね……」
二人きりの控え室で、ようやく実感が沸いてきたかのように、その言葉を噛みしめるはやて。
「あ、エリさんに伝えておかなくていいのかな!?」
と、莉曜がその言葉を発したそのとき「あなたたち」と、控え室にいた二人の前にツバサが現れる。
「あ、ツバサさん」
「お疲れ様。いきなり4回もリハーサルをやって疲れてないかしら?」
「大丈夫です! 全然平気です!」
「私たち、体力だけは誰にも負けない自信がありますから!」
「それは頼もしい限りね」
「にしてもUTX高校ってすごいんですね。学校の部活動だっていうのに、芸能プロダクション顔負けの衣装や設備の数々。正直、羨ましいを通り越して、圧倒されちゃいます」
莉曜の言葉に、ツバサは微笑を浮かべる。
「ウチは芸能学科が看板のひとつで、スクールアイドルにもっとも力を入れているからね。これくらいは当然と言えば当然かしら――でも正直、いまウチにスター性を秘めた生徒は少ないのよ。だから他校のスクールアイドルを見れば、みんな刺激を受けて、いい意味で化学変化が起きるんじゃないかと思って、今日のライブを企画したのだけれど……」
「そんな生徒さんたちの前で、私たちがライブなんてやっていいのかな……」
「あら? 緊張してるの?」
「ハイ。実は少し……」
「あははー。実は私も緊張しちゃってマス」
はやてたちの素直なその言葉に、優しく笑むと、「はい。じゃあコレ」と、ツバサははやてに自分のスマホを差し出した。
「へ?」と はやてが差し出されたスマホに耳を当てると、
『――ツバサから聞いたわ。あなたたち、今からライブをやるそうね』
「エリさん!?」
通話口から聞こえてきたのは、エリの声だった。
「ゴメンなさい。エリさんに相談もなしに……」
心底申し訳なさそうに言ったはやてに、通話の向こうのエリは優しい声音で言う。
『――私のことは気にしないで。そんなことより今はライブに集中しなさい。本当は私も行ってあげたいのだけれど、いまからじゃとても間に合わないし……』
「大丈夫です! あたしたちだけで何とかやってみますから」
『その意気よ。大丈夫。あなたたちならきっと出来るわ』
エリと話しているうちに、みるみる緊張が解けていくはやてたちの姿に、ツバサは満足げな微笑みを浮かべた。
それから約一時間後。
まだ開演時刻の30分前だというのに、ライブ会場はすでにほぼ満員状態だった。
「すごい満員」
「あたしたちって、こんなに人気があったんだ……」
会場を埋め尽くす人混みと、その雰囲気を舞台袖から肌に感じ、息を飲むはやてたちブレイブ・ベリーズの二人。
「ん~、それは少し違うかしら」
そんな二人の会話を聞き咎めたツバサが、ほんの少し困ったような表情で苦笑する。
「? じゃあどうしてこんなに満員なんですか?」
「それは当然よ、だって」
そう言ってツバサは軽やかに笑う。
「だって今日ここでは、音ノ木坂学院のスクールアイドル
「へ…?」
「は…?」
ツバサの言葉に、思わず顔を見合わせる二人。
そして叫んだ。
「「ええええーーーーーッッ!!!!!」」
続く。