ラブライブ! School idol liberty ~ 苺の木の詩 ~   作:めたんはいどれーと

11 / 14
『これが私たちのファーストライブ!?』 後編

 

 

 

 

「だって今日ここでは、音ノ木坂学院のスクールアイドル『Iri'S』(アイリス)のライブをする予定になっているんですもの」

 

「「ええええーーーーーッッ!!!!!」」

 

 かつてA-RISE(アライズ)のリーダーだった綺羅(きら)ツバサの言った言葉に、初ライブを直前に控えたブレイブ・ベリーズの二人は、思わず叫び声を上げる。

 二人が驚くのも無理がなかった。

 つまり言ってしまえば、いま会場を一杯に埋め尽くしている観客たちは、自分たちではなく、今期ラブライブの最有力優勝候補である、音ノ木坂学院スクールアイドル『Iri'S』の登場を心待ちにしているということなのだ。

 

「元々『Iri'S』は今日のイベントのシークレットゲストだったのよ。それが一部の学生スタッフが口を滑らして、そこから皆に知れ渡ったみたい。でも公式な発表もしていないのに、ゲストの変更を告げるのも変かと思って」

 そういってツバサはチロリと小さく舌を出した。

「でも確かに、いまからあのステージに上がるのには覚悟が要るわね。だから――」

 少し挑戦的な微笑みを浮かべるツバサ。

「やめても、いいのよ」

 その言葉の直後、ツバサとブレイブ・ベリーズの間の空気がピンと張り詰める。だが、

「「やります!」」

 と、二人は即座に答えた。

 そんな二人に、ツバサは今度は優しげな笑みを浮かべ言った。

「よかった。あなたたちなら、そう言うと思っていたわ。じゃあ行ってらっしゃい。あなたたちの精一杯をみせてちょうだい」

「ハイ!」

 

 そうして開演の時刻が訪れた。

 場内アナウンスが響く。

「では登場していただきましょう。本日の特別ゲスト。里賀(さとが)高校スクールアイドル『ブレイブ・ベリーズ』です」

 

「行くよ! りょうちん」

「うん、行こう! はやて」

 

 意を決すると、満員の観客が待つ、ステージへと飛び出すブレイブ・ベリーズの二人。

 

「UTX高校の皆さん、初めまして。あたしたちは里賀高校スクールアイドル『ブレイブ・ベリーズ』です」

 

 と、元気よく挨拶をする二人。だが――

 

 しん、と場内は静まりかえっていた。

 これだけの人数が詰めているのに、まるで大量のマネキン人形を前にしているかのようになんの反応もない。

「私たち自身、今日が初ライブで、皆さんを楽しませることが出来るか、あまり自信がありませんが、精一杯唄いますので、よろしくお願いします」

 という莉曜(りよう)の言葉にも、まるで反応を示さない観客たち。

「え、と…」

 そんなあまりに空虚じみた雰囲気に、はやてが二の句を詰まらせたそのとき――

 

 

(あーあ。私たち、Iri'Sを見に来たのに…)

 

 ふと、誰かがそんな言葉を口にした。

 それから一気にざわつく会場。

 

(そもそも誰? あの子たち)

(里賀高校?)

(ブレイブ・ベリーズ? 聞いたことないわ)

 

 いま会場を満員に埋め尽くしている観客たちにあるのは、失望の視線と落胆のタメ息。

 そんな観客たちの前に立ち、ステージ衣装に身を包んだはやてたちは、その容赦の無い視線を一身に受けていた。

「これが…」

「私たちのファーストライブ!?」

 会場満員の観客たちを前に、はやてたちの足はガクガクと震えていた。

 

 

 

「……」

 

 舞台袖に立っていたツバサは、観客たちからの落胆の視線にさらされ、ステージ上で萎縮してしまっているブレイブ・ベリーズの二人をじっと見つめていた。

 厳しい表情でステージを見つめるツバサ。そんな彼女に「ツバサさん」と話しかけてくる人物がいた。

 

「――あら? 何しにきたの」

 

 ツバサもその人物の来訪に気づき、ゆっくりと向き直る。そんなツバサに向かって来訪者は言った。

 

「なぜ、今日私にライブをさせてくれなかったんですか?」

 

 その言葉に、ツバサは小さくタメ息をつく。

「言ったでしょ。私はよりベストで完璧なモノを求めている。だから、いまのあなたのソロ状態でしかない欠陥だらけのIri'S(アイリス)をステージに立たせる気は毛頭ないわ――アリサ」

 

 そう、声をかけてきた人物は音ノ木坂学院スクールアイドル、『Iri'S』の絢瀬 亜里沙(あやせありさ)だった。

 ツバサの言葉に、アリサは不満げな表情を浮かべる。

 

「だけどそれがこの結果ですよ? 見てください、あの子たち完全に萎縮してます。これじゃああの子たちに、このステージが勤まるわけないじゃないですか」

 

 そうアリサに言われ、ツバサはゆっくりと目を閉じる。

 

「あなたの言う通りね。このステージは失敗に終わるかもしれない……」

 

「だったらなぜ――」

 二の句を告げようとしたアリサを「けど、」とツバサは遮った。

「だけどそれは、あなたが言うようにあの子たちが萎縮して、完全にあきらめてしまった場合の話――けれど見なさい」

 そうツバサはつぶやくと、再びステージに視線を送る。

 

「あの子たち、まだあきらめていないみたいよ」

 

 

 

(もう帰ろっか)

(そうだね、いくら待ってもIri'Sは出て来なさそうだし…)

 

 一方、ステージに立つブレイブ・ベリーズの二人の前では、そんな言葉とともに一部の観客が席を立ち始めていた。

 

(帰ろ帰ろ)

(帰って、A-RISEやμ'sのDVD見てた方がマシだわ)

 

 次々とつぶやかれる落胆の言葉とともに、増えていく席を立つ人々。

 

「そんな……」

 アセる莉曜。思わず隣に立つはやてを見る。すると――

 

「…る……」

 

 はやてが何かをつぶやいていた。

「はやて…?」

 そのつぶやきが聞き取れず、首を傾げる莉曜。

 

「…る……」

 

 だがはやては、また同じつぶやきを口にする。

「る…?」

 そんなはやてに、莉曜が思わず聞き返した次の瞬間――

 

 

「うるさ~~~~~~いっっ!!!!」

 

 

 と、突如大声で叫んだはやて。同時に、「キーン」とマイクがハウリング現象を起こす。

 アリサやツバサを始め、会場の観客たち全員があんぐりと口を開け、唖然とした表情ではやてを見つめていた。そんな観客たちに向かって、はやては続ける。

 

「あたしたちが、みんなの期待を裏切ったことはわかってる! だけど、それでもあたしたちはみんなを笑顔にしたい! そしてあたしたちもみんなと笑顔になりたい! だからお願いです。ほんの少しの間だけ、あたしたちに、みんなとの時間を重ねさせてください!」

 

 そう言って、はやてはステージ中央で深々と頭を下げた。

「はやて…」

 顔を上げることなく、依然頭を下げ続けるはやてを見て、莉曜も唇をきゅっと結ぶと、

「私からもお願いします。私たちの歌を聞いてください!」

 と、深々と頭を下げる。

「りょうちん……」

 そんな莉曜を横目で確認し、はやては少しだけ安堵の表情を浮かべた。

 

「あ、あの子たち、無茶するわね」

 唖然とした表情のまま、ツバサがそうつぶやく。

 無茶。

 そう、それは無茶そのものだった。

 一歩間違えば観客全員からの反感を買い、ライブそのものが崩壊しかねない。そんな行為をたったいま、はやてはやってのけたのだ。

 

 だが、間違いなく――

 

 空気が変わった。

 

 その気配を察し、はやてと莉曜の二人は顔を見合わせると、ステージ上で一歩前に出る。

 瞬間、それが合図であるかのようにイントロがスタート。

 そしてはやてたちは唄い始めた。精一杯、いまの自分たちのすべてをこめて。

 その曲のタイトルは――「RAIN-BOW!」。

 

 

 

あきらめてきた夢たちを 指折り数えて過ごした夜、

窓に打ち付ける雨音だけが 慰めだった。

 

冷たい雨は時に優しく、辛い思い出を洗い流してくれたね。

だけど気がついて。その雨はあなたがうつむき、流した涙だということを。

 

だ・か・ら――

 

RAIN-BOW! さぁあの弓で空に向かって射ちだそう

落ちてくる冷たい雨の矢じゃなく、心で流した雨の矢を

 

そうしたらホラ。不安な明日も、また笑顔になれるから。

 

RAIN-BOW! さぁあの弓で空に向かって射ちだそう

心に流した雨の矢じゃなく、あなたが願ったその思いを

 

そうすればホラ、ぼやけた明日も、七色に輝くから。

 

 

 

「…………」

 

 会場は静まりかえっていた。

 

 観客たちは誰一人として何も言わず、無言のままステージを見つめている。

 そんななか、自分たちの歌を唄いきったブレイブ・ベリーズの荒い息づかいだけが、会場に響いていた。

 

「やれ……」

「……たのかな、私たち……」

 

 と、荒い息のまま、顔を見合わせる二人。

 

 果たして――

 確かに、はやてたちは力を出し切った。

 しかしそれでも、芸能学科もありスクールアイドルに力を入れている学校であるUTX高校の生徒たちを納得させるには、あきらかな力不足であった。

 

 だが、そのとき――

 

 パチパチパチ…と、会場に響く唯一の拍手。

 

 その拍手はステージのわきから聞こえてきていた。はやてたちが驚いてそちらをみると、そこには一人の美しい少女が、はやてたちに向かい拍手をしていた。その人物は――

 

「アリサさん……」

 

 その拍手をしていた人物は、音ノ木坂学院のスクールアイドル『Iri'S』のアリサであった。

 アリサは無言のままゆっくりと歩きながら、ステージ中央はやてたちのすぐ隣まで来ると、会場に向かって言った。

 

「みなさん、ゴメンなさい。今日、私たちが出られなくなったため、急遽彼女たちに代役をお願いしたんです」

 

「え…?」

 アリサの言葉に、驚きの表情を浮かべるはやてと莉曜。そんなブレイブ・ベリーズの二人をよそに、さらにアリサは続ける。

「あまりに唐突な代役だったため、完璧なパフォーマンスではなかったかもしれない。だけど普通なら断る状況を、彼女たちは引き受け、そして唄ってくれた。だから皆さん、お願いです。どうか彼女たちの勇気に、拍手を……」

 

 突然のアリサの言葉に、会場がざわつき始める。

 

(やっぱり予定外の代役だったんだ…)

(聞いたことないグループ名だもんね)

(しかも初ライブだって)

(それって、マジ?)

(よく引き受けたなぁ)

(でも、それにしては――)

(結構、よかったかも…)

(うん、なんか「熱」を感じたっていうか…)

(正直まだまだって感じだけど、その度胸はすごい!)

(だね)

(そうだそうだ)

(がんばったよー! あんたたち!)

(私、少しだけ感動しちゃった)

(あ、それ私も)

(ブレイブ・ベーリーズ。名前覚えておくねー!)

 

「はやて…」

「りょうちん…」

 

 観客たちから贈られる言葉に、二人は手を取り合い、笑顔とともに涙を浮かべる。

 そんな二人に向かって、まばらだった拍手は少しずつ増えて行き、やがて会場全体を包み込んでいった。

 

 それは――

 

 そう、それは、純粋な感動から沸き起こる拍手ではなかったかもしれない。

 

 だが、それでもその拍手はまぎれもなく、今日ここで初ライブを成し遂げた、はやてたち『ブレイブ・ベリーズ』に贈られたものであった……。

 

 

 

                              続く。

 

 




作中歌「RAIN-BOW!」の歌詞は、今作のオリジナルです。
ちなみに曲はありません(汗

次回は『これが私たちのファーストライブ!?』+αと称して、少し短めのエピソードをUPするかも……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。