ラブライブ! School idol liberty ~ 苺の木の詩 ~ 作:めたんはいどれーと
その場所は白い壁に囲まれた、清楚な部屋だった。
そこは個室らしく、白いシーツに包まれたベットがひとつあり、その脇に置かれている花瓶に飾られていた花は、とてもよく手入れがされている。
そしてその部屋に、彼女は眠っていた。
はやてと
「あれが……」
「
「そう――
と、ツバサは寂しげな表情で答えた。
「高坂さんに何があったんですか?」
3人の入室にもまるで起きる気配がなく、眠り続ける穗乃花を見て、はやてたちがツバサに問いかける。
はやてのその言葉に、ほんの少し躊躇するような表情を浮かべるツバサ。だがすぐに「約束だものね」と小さくつぶやくと、静かに話し出した。
「ある日、μ'sのメンバーの一人に、ラブライブ運営本部から電話がかかってきてね……」
ツバサは穗乃花の寝ているベッドの側まで近づくと、脇の花瓶に活けられた花を慈しむように優しく撫でる。
「内容はTVの出演依頼。特別番組でスクールアイドルの特集をするから、ラブライブ優勝チームのμ'sに、ぜひとも出演して欲しいという内容だったらしいわ」
そう言ってツバサは小さく笑う。
「穗乃花さんを含めたμ'sのメンバー全員が、その依頼を喜んで受けたわ。そのときにはもう、3年生の卒業とともに、μ'sは解散することを決めていたらしいから、最後の記念にするつもりだったんでしょうね」
それから遠い目を浮かべるツバサ。
「奇しくもその電話のあった日は、
「……」
寂しげにそう語るツバサの話を、はやてたちは無言で聞き入ることしか出来なかった。そんな二人に向かって、ツバサはたんたんと話を続ける。
「前回優勝者である
「さすがμ's……」
感心したように莉曜が言う。だが、ツバサはすぐに言葉を継いだ。
「――と、誰もがそう信じて疑わなかったわ」
「え…?」
そしてツバサはゆっくりと目を閉じる。
「ある会場で、μ'sがライブを行うことになったの。実はその少し前から問題になっていたらしいのだけど、運営やTV局、そしてライブ会場を取り仕切るスタッフの予想以上に、μ'sの人気が凄まじかったみたい。
結果、ライブ会場の整備や誘導がうまく行えきれず、混乱をきたすことがあったらしいのよ。そして、そのライブ会場で、それは起こってしまった――」
「なにが…あったんですか?」
「一人の女の子がね、熱狂した観客たちに押しつぶされて転倒。さらにつまづき転倒した観客たちの下敷きとなり、大けがをしてしまったの。
すぐに病院に運ばれたんだけど、残念ながら女の子は下半身に大けがを負い、一生車椅子の生活を余儀なくされてしまったわ……」
「そんな…」
「すぐにTV局とラブライブ運営本部の人たちが、その女の子の家族の元へ謝罪をしに行ったわ。だけど女の子の両親は取り合ってくれなかった。
それを聞いた穗乃花さんを始めとするμ'sのメンバー全員が自分たちも謝罪に行きたいと、TV局の人に申し出たんだけど……。
きっと未来の金の卵となるかもしれないμ'sに、ダーティなイメージがつくのを恐れたんでしょうね。μ'sのプロデュースを名乗り出ていたプロダクションやTV局側がそれを受けなかった。
それどころか、女の子の両親にすら、『もう娘とは2度と近づかないでくれと』、弁護士を通じて言われたそうよ。
そしてTV局側は、今回の事件をおおやけにしないことと、μ'sのメンバーを女の子に近づけさせないことを条件に、多額の慰謝料を払って、女の子の両親と和解した。
でもμ'sのみんなは――特に穗乃花さんは、リーダーとして強く責任を感じていたらしく、何度も何度も自らが謝罪に赴く交渉をしたみたい。だけどダメだった……」
ツバサは眠り続ける穗乃花を見ていた。その表情はとても優しげで、だが、とても哀しげだった。
「それからの穂乃果さんは見ていられなかったわ。きっと近づくことを禁じられたその女の子に、せめて自分たちの活躍している姿を見てもらいたかったんでしょうね。本格的に始動し始めたメジャーデビュー計画に向けて必死だった――事件のことを振り切るかのように、毎日毎日、精力的に活動して、一人でもインタビューやPR活動の依頼を受け続けて、寝ているヒマすらどこにもないんじゃないかってくらい頑張り続けた……。
もちろん、絢瀬さんたちも、穗乃花さんの体調を心配して、何度も何度も止めようとしたみたいだけど、結局は穗乃花さんの気の済むまでやらせてあげようということになったみたい――結果、ライブ中に、穗乃花さんは疲労と心労とでふらつき、ステージから転落。
頭を強く打って意識不明の重体となり、もう2年以上も意識が戻らないまま、ここ
「そんな……」
「そしてμ'sのメンバーたちの間で話し合いがもたれ、結局μ'sはそのまま解散。中にはかなり強引な手段を使って引き留めようとしたラブライブ運営やプロダクションの人もいたらしいのだれども、彼女たちは頑として応じなかった。でもそんな一連の経緯から、絢瀬絵里はラブライブ運営本部やスクールアイドルの存在に疑問を持つようになり、その他のメンバーたちも徐々に疎遠となっていき、離れ離れになってしまったのよ」
「…………」
言葉がなかった。はやても莉曜も何も言えず、μ'sに起こった悪夢のような出来事を、ただただ聞いていることしか出来なかったのだ。
そんな二人に、ツバサは次の言葉で締めくくる。
「これがμ'sの真実。〈みんなで叶える物語〉の結末よ」
ツバサからμ'sに起こった出来事を聞かされたはやてと莉曜は、沈痛な面持ちで病室をあとにする。そしてそのままツバサと別れ病院から出たとき、そこには二人のことを待っている人物の姿があった。
その人物とは――
「アリサさん……」
そう、その人物とは音ノ木坂学院スクールアイドル『
真摯な表情で二人を正面から見据えると、アリサは言う。
「話が、あるの」
続く。
一応、次回で第一部完結となる予定です。