「生成AI使って何かやってみたい」という気持ちと「このネタどう文章にするんだ……?」という気持ちが合わさって生まれた作品です。
便利ではありましたが、「こうしたいな」というビジョンも必要ですし、細かい言葉尻直したりで、なんだかんだでまだ人の介入は必要なんだな、というのが今回の経験で分かりました。
題材が題材なだけに、こういう技術使ってみるのも、アリですよね?
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26666423
先輩には、あの人がいる。その現実は、胸の奥にずっと刺さっている。
中川夏紀先輩と吉川優子先輩。あの二人は、お似合いだ。周囲も、当たり前のようにそう思っている。
私は、違う。
どれだけ想っても、届かない位置にいる。でも――それでも想ってしまう。夏紀先輩が、愛おしくて、たまらなくて。
だから考えた。
“私にできることは、何か。”
夏紀先輩は子どもが好きだ。街中で家族連れを目で追ったあの横顔を、私は知っている。女性同士では、子をつくれない。世界はその一点をゆっくりと諦めのように抱えている。
でも――私は、諦められなかった。夏紀先輩が望む未来を、どうにかして叶えたい。その一心で、私は動き出した。
§
私は、研究棟の白い廊下を歩き、重たい扉をくぐって、深夜の実験室に戻っていく。ライトは昼のように明るいのに、研究室は暗かった。モニターの光だけが、荒れた自分の顔を浮かび上がらせる。
私は“女性同士で遺伝情報を融合し、生命を生み出す技術”を確立しようとしていた。倫理委員会から呼び出されるのは、週に三度になった。
「安全性が議論されていない」
「社会構造を揺るがす可能性がある」
「そもそも動機が不純だ」
そんな言葉を浴びながら、私はただ、ペンを持って記録を続けた。
深夜三時。研究室に私一人しかいない時間帯が、一番落ち着く。薬品の匂いがこもり、冷却機の低い唸りだけが響く。ガラス越しの培養器で、細胞が静かに分裂し、私はそのひとつひとつに祈るような気持ちを込めた。
「……どうか、進んで」
自分でも思う。同じ言葉を何百回繰り返しただろう。失敗が続いた。
遺伝子修復が間に合わず、細胞は途中で崩れていく。
融合過程で暴走し、二度ほど施設を一時閉鎖させた。
そのたび、研究チームの人間は減っていった。
「あの子は危険だ」
「目的が狂っている」
「マッドサイエンティストK」
廊下ですれ違う同僚たちは目を逸らし、教授ですら距離を置くようになった。
だけど、構わなかった。夏紀先輩の未来が、そこに繋がっているなら。
私は、誰に何を言われてもやめなかった。睡眠は断片的になり、食事も忘れることが増えた。
ある日、鏡に映った自分の瞳が無表情すぎて、思わず立ち止まった。
『奏ってさ、たまに怖いくらい全力で突っ走るよね』
先輩がふざけ半分に言ってくれた言葉を思い出す。
あの時は笑って返したけれど、今は、その言葉が重かった。
§
研究は、ついに最終段階に達した。融合細胞は安定し、分裂は抑制され、生命として進むための条件がそろい始めていた。データを仕上げ、論文を世界に向けて投稿した瞬間、世間は嵐のように沸き立った。
「革命的だ!」
「危険すぎる!」
「倫理違反だ!」
「救われる家族がいるはずだ!」
「破滅を招く研究だ!」
賞賛と怒号が入り混じり、私の名前は、世界の議論の中心に投げ込まれた。脅迫メールが届き、家族のもとにも取材が殺到した。研究棟には警備員が配備され、外を歩くことすら危険だと言われた。
それでも私は――ほんの少しだけ、誇らしかった。
だってこの技術は、夏紀先輩の未来を“可能にした”のだから。
「……これで、よかったんですよね、先輩」
つぶやきながら最後のデータを保存すると、ふっと気が抜けるように体が傾いた。床の冷たさが背中に触れた瞬間、視界が濁り、闇が押し寄せてきた。
意識が落ちる。でも、後悔はなかった。
§
「――っていう夢を見たんですけど、夏紀先輩どう思います?」
気づくと私は、夏紀先輩の前で、話をすべて語り終えていた。購買のクリームパンをかじっていた先輩が、完全に固まっていた。
「………………奏」
「はい」
「重っ!!」
「えっ」
「いやいやいや、ちょっと待って。何その……映画三本分くらいの内容」
先輩は思わず机にパンを置き、手で顔を覆った。
「奏、あのね……学校の昼休みで聞く話じゃないよ、今の」
「そうですか?」
「そうだよ!」
先輩は何度も深呼吸してから、私を見た。その目は、驚き半分、心配半分だった。
「……夢の中の奏、すごかったよ。すごいし、頑張ってた。そこは本当に思う」
「ありがとうございます」
「でもね」
先輩は笑いながら、しかし真剣な声で言った。
「誰かのために全部捨てちゃう奏は……見ているこっちが苦しくなるよ」
胸が、きゅっと締め付けられた。
「……私の未来のためとか、そういうのはさ」
夏紀先輩は、照れくさそうに頭をかいた。
「そんな重いもんじゃなくていいんだよ。奏がちゃんと笑っててくれたら、それで十分だから」
そう言って、ぽん、と私の頭を軽く叩いた。
「だからもうちょい、軽めの夢にしよう? ね?」
「……はい」
「よし。じゃ、部活行くぞ後輩」
夏紀先輩は、いつもと同じようで、けれどどこか温かい笑顔を向けた。その笑顔のために、私はどれだけ世界を敵に回したんだろう――
夢の中でさえ、と思いながらついていった。