弱竹のかぐや、八千代の姫、月へ詠ったいろは唄   作:R,n

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#10凱歌を捧げる

先ほどの発言、どこまで信じて良いものか——

 

向こうは2名、対してこちらは3名、残機の差もある、勝ち筋は有益だ——

 

ここでの戦略的定石とするなら……

 

 

「かぐやかヤチヨを遊撃部隊とし、下部(ボトム)レーンに置き、上部(トップ)レーンにて2名と均衡状態を維持することですが……」

 

「じゃぁどっち行けばいいわけ?」

 

「ヤチヨはどちらでも構いませんぞ〜?」

 

「———かぐや、ヤチヨはこれまで通りそれぞれトップとボトムへ私は——」

 

 


 

 

一人寂しく、私は自陣の前で額に巻き上げた鉢巻を揺らし、ほぅと一息を吐く

 

これでいい、たとえ彼らがトップに行こうが、ボトムにゆこうが、ここから駆け出せば支援が出来る

 

仮にそれぞれ分かれて動いたとして、ヤチヨとかぐやが合流すれば、戦力的には申し分ない、黒虎に当たれば……と言った部分が心配だが、私を詰めるには彼が必須だ、無為な残機消耗は好まないだろう

 

 

「かぐや、ヤチヨ、状況は?」

 

『異常なーし!ねー、本当に櫓取らなくて良いわけ?』

 

『こちらも異常なし、まぁイサミンにも何か考えがあっての事なのでしょう』

 

『ヤチヨも少しぐらい不満言ったら〜?最初からぜーんぜん何もしてないし』

 

『いやいや、そんな事はなき事もアリゲーター……的な?』

 

『何それ〜』

 

 

二人の気の抜けた報告を聞き、相手の戦略を推察する、既に交戦圏に入ってもおかしくない距離、であるならば——

 

空から空を割く音が響き、ガン、と黒い外套(コート)を着込んだ男が、鮮やかなピンクベージュ色の鹿角を生やした女性を背に乗せ、降りてきた

 

 

「……勝ちを捨てたのですか?」

 

「それは貴様もだろう?てっきり、トップレーンに集っているとでも思ったのだがな」

 

「ども〜、かぐやちゃんがお世話になってま〜す」

 

 

フリフリと芦花は手を振って、ひょいと背から飛び降りる、恐らくは2対1を人数差で勝利を得るつもりなのだろうが——-

 

向こうが勝負を捨てた以上、二人に占領を支持すれば、コールド勝ちは確定だ、だが———

 

初戦との対比じゃん!アッツ!!

 

ROKAじゃん、KASSENやってんだ、初めて知った〜

 

局長〜〜!勝って〜〜!!

 

そんな変な奴なんかに負けんな〜〜!

 

黒虎ちゃんハァハア///

 

キッショ

 

でもあの子可愛いよね……

 

 

などと言ったコメントが見える、ここでそのような勝ち方をすれば人(・)気(・)が(・)落(・)ち(・)る(・)の(・)は(・)明(・)瞭(・)だ(・)

 

計画してる策に支障が出かねない、少なくともここで登録者を失うのは痛手なのだ

 

 

「貴方のようなタイプが、わざわざ宣戦布告をするからには、それが嘘である可能性を断じなければならない……それに、現状は私たちが有利です、そんな勝ち方をすれば、人気が伸びる事はないでしょう?」

 

「ふ、つくづく配信者だな、貴様は」

 

「どこか(前世)で聞いたことのあるセリフですね、意識してるんですか?」

 

「戯言を」

 

 

そう言いながら、拳を構えて身を屈める黒虎に、片手を差し出して短刀を抜き

 

自身の首をガリと切る

 

残機を一つ消耗し、再度復活した時点で再度繰り返し、保有残機が一になったのを確認し

 

改めて刀を納刀する

 

 

「……こ(・)れ(・)は(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)で(・)す(・)……長々やるのもつまらないでしょう、私が勝てば両櫓前で待機している二人へ指示を出して、コールド勝ちを、貴方が勝てば、トップに居るかぐやを落として勝ちを狙える……そんなゲームです」

 

「——戯言を……!僕は……!」

 

「逃げますか?この有利な盤面を?逃げるのか?」

 

 

目を向けて、真っ向から相対し、黒虎の様子を目にかけて、ほぅと息を吐くのを眺め

 

 

「二言はないな?」

 

「ええ、お二人とも、お好きにどうぞ」

 

「……えー、まじ〜?ま、ここで勝ったらファンが増えるって事で、頑張ろっか〜」

 

 

そう言いながら、黒虎と芦花が手を構えたのを見て、私は即座に二人へと駆け出した

 

 

「下がれ!ヤツは抜刀術を使う!斬られれば腕の一本は落とすぞ!」

 

「りょ〜!なら、まずは牽制で……!」

 

 

芦花が腕を振るい、5本のマルチミサイル式の爪を飛ばしてくるのを、左手で抜いた小刀で弾き、切って突き進み、後方で爆音が響く

 

 

「うっそ、マジか、不意突いたつもりなんですけど!」

 

「こちらの手札は知られ切っている!奴を近づかせるな!」

 

 

そう言って、黒虎が10本ものかぎ爪を射出しながら、後ろへと引くのを見て

 

即座に右足で地面を蹴り回避して、小刀を地面に刺し、ぎりぎりと音を立てて、黒虎の対比先に流れ着き

 

 

「虎さん!後ろ!」

 

「ッ!」

 

「一本目」

 

 

そう言いながら右手で長刀を居合い抜き、首を断とうとするも、寸前で後ろに避けられ、距離を取られる

 

やはり中近距離を保とうとするか

 

そう、それで良い

 

それを眺め、片手で長刀の鞘に手をかけ、右手で長刀を差し直し

轟々と鞘が薄緑に輝き風が纏い始める

 

 

「ッ……!鹿角!距離を取れ!!」

 

「は?何言って——」

 

「二本目」

 

 

瞬間、鞘から刀を抜き荒び、横一閃に凪を描く

 

薄緑の風が空を掻き、ゴゥと轟音を立てて、風に沿うように勢いを描く

 

黒虎は咄嗟に身を逸らし、髪の毛先が軽く裂け

 

芦花の上半身と下半身を分断し、パラパラと花弁とかしてリスポーンするのを横目に見る

 

 

「あっ……!」

 

「鹿角……!くっ……!」

 

「これで一対一ですね、黒虎」

 

 

両手足を地面に構え、四肢を地に着く姿で、こちらを警戒する体制に入るのを見て、後詰は終わりだと理解して

 

コツ、コツと両手で長刀を構え、近づいて

 

ガリ、と床石を爪で抉る音が響き——

 

 

「隙だらけだぞ!」

 

「そっちこそ!」

 

 

黒虎が私へ向けて、地をかけ、全力を賭して突き進むのを見て私(・)は(・)右(・)に(・)避(・)け(・)て(・)や(・)る(・)

 

瞬間、黒虎の目前には突き刺された短刀が現れ、咄嗟に地面に爪を立ててブレーキを掛け———

 

 

「……三本目」

 

 

その隙の見えた首に刃を立て、振り下ろし……

 

男は花弁に散って行く

 

 

「……勝ちです、かぐや!ヤチヨ!今です!」

 

『りょ〜!かい!』

 

『りょ〜なので〜す☆』

 

 

指示を両名にゴォンと二箇所から同時に鐘の音が響き、コールド勝ちが確定した瞬間、中央広場に青い花弁と化して転移される

 

 

「いーさみ〜ん!お疲れ様なので〜す!☆」

 

「ぐえっ……ヤチヨ」

 

「あ、ずっるーい!私も頑張ったのにー!」

 

 

転移した瞬間、首にしめつくような圧を幻視しはたとため息をこぼし、抱きつく彼女の名前を呼べば、かぐやは拗ねたようにハンマーを片手に大きな声を上げて

 

 

「かぐや、あんまりそういう事は言わない方がいいですよ、ヤチヨも——」

 

「ヤチヨが許されてんのに私はダメなわけ〜?やだやだやだー!」

 

「ふふふ、イサミンの背はヤッチョの特等席ですぞ〜?」

 

「ずーるーいー!」

 

 

背に抱きつき、肩や薄桃の羽織にしがみつき、ぐいぐいと引っ張り、これがいつまで続くのかと考えていれば——

 

 

「そこまでにしておくと良い、彼奴も疲れが見えているだろう」

 

「か〜ぐや、まみまみは先帰っちゃったから、迎えに来たよ」

 

 

同様に青い花弁と化して、芦花と黒虎が現れた

芦花はかぐやの腕を取り、黒虎は両手を組み上げて

 

 

「……桃園イサミ……良い戦略眼だった、僕(やつがれ)もああしたことだろう……」

 

「貴方の思考も厄介でした、二度とやり合いたくないですね」

 

「ハ、痴れ事を……二度もやり合えば貴様が勝つに決まっている」

 

「貴方の方こそ、想定外の戦略を叩き込んでくるでしょう?」

 

 

にこやかに互いに手を合わせて、握手をし合いながら褒め称え合う

 

ヤチヨもいつのまにかそばを離れ、かぐやや芦花の側で話し込んでいた

 

 

「いやはや、これぞ正しく男同士の友情という奴ですなぁ〜」

 

「ヤチヨだ……まー、あたしにはわかんないけど、結構楽しそうにしてんじゃん」

 

「私も頑張ったのにー……いさみーん!また今度一緒に遊ぼー!!」

 

 

彼女が大きく手を振りながら、自信を主張しそう伝えてくるので

 

 

「……ふむ、ええ、構いませんよ……ではまた今度、こちらから連絡させていただきますね」

 

「え、マジ!?やったやったやったー!!!ねぇROKA!凄いでしょー!!」

 

「はいはい、凄い凄い、まみまみも待ってるから、私たちは帰るよ」

 

「えぇ〜……イサミン!私からも今度連絡するから!またね!」

 

 

そう言いながら、二人は青い花弁となって消え、ふうと一息つきながら

 

 

「さて、私も本日の配信はここまでとさせていただきます、よろしければチャンネル登録などしていただければ幸いです、では、また次回————」

 

 

そう言いながら、配信枠に蓋を付けて、しばらくしたら終了するように設定を行なって、漸くゆっくりと一息をつく

 

 

「さて、 ヤチヨに黒虎………しばしをお話しを、聞かせて頂きましょうか」

 

 

そう言って私は、 その場を振り返った

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