先ほどの発言、どこまで信じて良いものか——
向こうは2名、対してこちらは3名、残機の差もある、勝ち筋は有益だ——
ここでの戦略的定石とするなら……
「かぐやかヤチヨを遊撃部隊とし、
「じゃぁどっち行けばいいわけ?」
「ヤチヨはどちらでも構いませんぞ〜?」
「———かぐや、ヤチヨはこれまで通りそれぞれトップとボトムへ私は——」
一人寂しく、私は自陣の前で額に巻き上げた鉢巻を揺らし、ほぅと一息を吐く
これでいい、たとえ彼らがトップに行こうが、ボトムにゆこうが、ここから駆け出せば支援が出来る
仮にそれぞれ分かれて動いたとして、ヤチヨとかぐやが合流すれば、戦力的には申し分ない、黒虎に当たれば……と言った部分が心配だが、私を詰めるには彼が必須だ、無為な残機消耗は好まないだろう
「かぐや、ヤチヨ、状況は?」
『異常なーし!ねー、本当に櫓取らなくて良いわけ?』
『こちらも異常なし、まぁイサミンにも何か考えがあっての事なのでしょう』
『ヤチヨも少しぐらい不満言ったら〜?最初からぜーんぜん何もしてないし』
『いやいや、そんな事はなき事もアリゲーター……的な?』
『何それ〜』
二人の気の抜けた報告を聞き、相手の戦略を推察する、既に交戦圏に入ってもおかしくない距離、であるならば——
空から空を割く音が響き、ガン、と黒い
「……勝ちを捨てたのですか?」
「それは貴様もだろう?てっきり、トップレーンに集っているとでも思ったのだがな」
「ども〜、かぐやちゃんがお世話になってま〜す」
フリフリと芦花は手を振って、ひょいと背から飛び降りる、恐らくは2対1を人数差で勝利を得るつもりなのだろうが——-
向こうが勝負を捨てた以上、二人に占領を支持すれば、コールド勝ちは確定だ、だが———
初戦との対比じゃん!アッツ!!
ROKAじゃん、KASSENやってんだ、初めて知った〜
局長〜〜!勝って〜〜!!
そんな変な奴なんかに負けんな〜〜!
黒虎ちゃんハァハア///
キッショ
でもあの子可愛いよね……
などと言ったコメントが見える、ここでそのような勝ち方をすれば
計画してる策に支障が出かねない、少なくともここで登録者を失うのは痛手なのだ
「貴方のようなタイプが、わざわざ宣戦布告をするからには、それが嘘である可能性を断じなければならない……それに、現状は私たちが有利です、そんな勝ち方をすれば、人気が伸びる事はないでしょう?」
「ふ、つくづく配信者だな、貴様は」
「
「戯言を」
そう言いながら、拳を構えて身を屈める黒虎に、片手を差し出して短刀を抜き
自身の首をガリと切る
残機を一つ消耗し、再度復活した時点で再度繰り返し、保有残機が一になったのを確認し
改めて刀を納刀する
「……
「——戯言を……!僕は……!」
「逃げますか?この有利な盤面を?逃げるのか?」
目を向けて、真っ向から相対し、黒虎の様子を目にかけて、ほぅと息を吐くのを眺め
「二言はないな?」
「ええ、お二人とも、お好きにどうぞ」
「……えー、まじ〜?ま、ここで勝ったらファンが増えるって事で、頑張ろっか〜」
そう言いながら、黒虎と芦花が手を構えたのを見て、私は即座に二人へと駆け出した
「下がれ!ヤツは抜刀術を使う!斬られれば腕の一本は落とすぞ!」
「りょ〜!なら、まずは牽制で……!」
芦花が腕を振るい、5本のマルチミサイル式の爪を飛ばしてくるのを、左手で抜いた小刀で弾き、切って突き進み、後方で爆音が響く
「うっそ、マジか、不意突いたつもりなんですけど!」
「こちらの手札は知られ切っている!奴を近づかせるな!」
そう言って、黒虎が10本ものかぎ爪を射出しながら、後ろへと引くのを見て
即座に右足で地面を蹴り回避して、小刀を地面に刺し、ぎりぎりと音を立てて、黒虎の対比先に流れ着き
「虎さん!後ろ!」
「ッ!」
「一本目」
そう言いながら右手で長刀を居合い抜き、首を断とうとするも、寸前で後ろに避けられ、距離を取られる
やはり中近距離を保とうとするか
そう、それで良い
それを眺め、片手で長刀の鞘に手をかけ、右手で長刀を差し直し
轟々と鞘が薄緑に輝き風が纏い始める
「ッ……!鹿角!距離を取れ!!」
「は?何言って——」
「二本目」
瞬間、鞘から刀を抜き荒び、横一閃に凪を描く
薄緑の風が空を掻き、ゴゥと轟音を立てて、風に沿うように勢いを描く
黒虎は咄嗟に身を逸らし、髪の毛先が軽く裂け
芦花の上半身と下半身を分断し、パラパラと花弁とかしてリスポーンするのを横目に見る
「あっ……!」
「鹿角……!くっ……!」
「これで一対一ですね、黒虎」
両手足を地面に構え、四肢を地に着く姿で、こちらを警戒する体制に入るのを見て、後詰は終わりだと理解して
コツ、コツと両手で長刀を構え、近づいて
ガリ、と床石を爪で抉る音が響き——
「隙だらけだぞ!」
「そっちこそ!」
黒虎が私へ向けて、地をかけ、全力を賭して突き進むのを見て
瞬間、黒虎の目前には突き刺された短刀が現れ、咄嗟に地面に爪を立ててブレーキを掛け———
「……三本目」
その隙の見えた首に刃を立て、振り下ろし……
男は花弁に散って行く
「……勝ちです、かぐや!ヤチヨ!今です!」
『りょ〜!かい!』
『りょ〜なので〜す☆』
指示を両名にゴォンと二箇所から同時に鐘の音が響き、コールド勝ちが確定した瞬間、中央広場に青い花弁と化して転移される
「いーさみ〜ん!お疲れ様なので〜す!☆」
「ぐえっ……ヤチヨ」
「あ、ずっるーい!私も頑張ったのにー!」
転移した瞬間、首にしめつくような圧を幻視しはたとため息をこぼし、抱きつく彼女の名前を呼べば、かぐやは拗ねたようにハンマーを片手に大きな声を上げて
「かぐや、あんまりそういう事は言わない方がいいですよ、ヤチヨも——」
「ヤチヨが許されてんのに私はダメなわけ〜?やだやだやだー!」
「ふふふ、イサミンの背はヤッチョの特等席ですぞ〜?」
「ずーるーいー!」
背に抱きつき、肩や薄桃の羽織にしがみつき、ぐいぐいと引っ張り、これがいつまで続くのかと考えていれば——
「そこまでにしておくと良い、彼奴も疲れが見えているだろう」
「か〜ぐや、まみまみは先帰っちゃったから、迎えに来たよ」
同様に青い花弁と化して、芦花と黒虎が現れた
芦花はかぐやの腕を取り、黒虎は両手を組み上げて
「……桃園イサミ……良い戦略眼だった、
「貴方の思考も厄介でした、二度とやり合いたくないですね」
「ハ、痴れ事を……二度もやり合えば貴様が勝つに決まっている」
「貴方の方こそ、想定外の戦略を叩き込んでくるでしょう?」
にこやかに互いに手を合わせて、握手をし合いながら褒め称え合う
ヤチヨもいつのまにかそばを離れ、かぐやや芦花の側で話し込んでいた
「いやはや、これぞ正しく男同士の友情という奴ですなぁ〜」
「ヤチヨだ……まー、あたしにはわかんないけど、結構楽しそうにしてんじゃん」
「私も頑張ったのにー……いさみーん!また今度一緒に遊ぼー!!」
彼女が大きく手を振りながら、自信を主張しそう伝えてくるので
「……ふむ、ええ、構いませんよ……ではまた今度、こちらから連絡させていただきますね」
「え、マジ!?やったやったやったー!!!ねぇROKA!凄いでしょー!!」
「はいはい、凄い凄い、まみまみも待ってるから、私たちは帰るよ」
「えぇ〜……イサミン!私からも今度連絡するから!またね!」
そう言いながら、二人は青い花弁となって消え、ふうと一息つきながら
「さて、私も本日の配信はここまでとさせていただきます、よろしければチャンネル登録などしていただければ幸いです、では、また次回————」
そう言いながら、配信枠に蓋を付けて、しばらくしたら終了するように設定を行なって、漸くゆっくりと一息をつく
「さて、 ヤチヨに黒虎………しばしをお話しを、聞かせて頂きましょうか」
そう言って私は、 その場を振り返った