弱竹のかぐや、八千代の姫、月へ詠ったいろは唄   作:R,n

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絶対に救って見せる、君はかぐや姫じゃ無い———
だから私は、君のために———


#2:我が世誰ぞ、常ならん

改めて、背を正しながら私は前に向き直り、長い髪を揺らして笑顔を作る

そうすると、すぐ側の観客の波から、バタバタと倒れるような音が聞こえて、いささか心配にはなるけれど、表情を作り続けて、話を始めなければならない……

時間は幾許か押してしまっているらしい

 

「改めまして、神仙組局長兼、日本堂和傘下の配信グループ所属ライバー、桃園イサミと申します……この場の皆様には聞き馴染みある言葉でしょうが、どうぞ本日はよろしくお願いします」

 

 

小さく頭を下げれば、コメントや現地のファンの声が、今までの比にならない程度の大歓声を作り上げてゆく

 

 

「おー、っぱイサミさん人気ですねぇ、配信始めたのは何年前でしたっけ?」

 

「そうですね、配信を始めたのは早10年ほど前……あぁいえ、それはツクヨミに来た頃ですね、正確に言えば、配信は6年ほど前でしょうか」

 

「そうだねぇ、KASSENが始まったのも〜……私が覚えてる限り、今から6〜7年ぐらい前だから、本当、時間が過ぎてくねぇ」

 

進行役のオタ公の質問に答えたところで、合間でヤチヨが口を挟む

その顔はどこか楽しげで、まぁ、確かに彼女からすれば待ち望んでいた時だろう

 

「とまぁ、アイスブレイクはここまでとして!話題はこちら!」

 

オタ公が腕を振り上げれば、画面には

 

 

ツクヨミの今後の発展、

起こり得る問題について

 

 

と表示されている、それと同時に、オタ公は一歩身を引いて、話し合いがスタートする形となった、

話題の口火を切ることになったのは……神仙組のトシだった

 

「んまぁ、今まで散々口酸っぱく言われてたけど、やっぱ発展は頭打ちじゃ無い?」

 

「えー?ヤッチョはまだまーだ、発展していきたいなー?って思ってるよー?風のまたまた三郎と言うか〜?明日は明日の風がFLOWと言うかー?」

 

「一介のライバーの視点だと、ゲームに音楽、ライブに配信活動、後はクリエイターサポート、ここまでやってる時点で凄いですし、これ以上は流石に運営側も厳しいんじゃ無いかなと……希望を出すなら味覚再現は……」

 

 

トシとヤチヨが会話を広げている中で、ソウジはこちらに顔を向け、カンペを流し見しながらも、話を広げるように口を切る

 

 

「味覚って言えば、最近日本堂和と、ツクヨミの協力を受けて、擬似的な再現プログラムが作られてなかったっけ〜?」

 

「そうだね、現在は試作段階で、テスターの募集を受けている筈だよ、多くの人の味覚認識を参考に、電子データに変化させるプログラムを開発中だったね、希望者は……今表示したサイトのURLを確認して、是非応募してみてほしいかな」

 

ソウジから受けたパスを、少し砕けた口調で話しつつ、事前にヤチヨが用意していたURLのポップアップを表示させる

 

この事は以前から決まっていたのだ、グループのスポンサー兼、ツクヨミの参加グループだ、大人同士の決議の中で、()()と決まっていた話だ

 

 

「味覚が再現されたら〜、ヤッチョはねぇ〜、パンケーキ!ふわっふわのパンケーキを食べたいんだ〜」

 

「僕は現実じゃぁ食べられないクソ辛い麻婆豆腐とかかなぁ、後はクッソでかいプリン!」

 

「お二人とも食い意地張ってますねぇ〜、あたしはそうだなぁ……いっそ身近なジャンクフードかなぁ」

 

 

やんややんやと話が広がり、皆一様に食の話へと移り変わってゆく

甘いものから辛いもの、手軽なご飯などに変わっていく………

 


 

「おっと、だいぶん時間が過ぎてしまいましたが、そろそろ配信はここまで!最後に皆さんから一言ずついただきましょうか!」

 

時刻を見れば、既に3時間ほど経過しており、コメントもなだらかになっていた

 

「では私から、みなさま、本日はありがとうございました、1時間後にKASSENのSETSUNA*1にて、視聴者参加型の配信を行う予定ですので、ぜひご参加くださいませ」

 

「僕は明日〜、ツクヨミで大規模な射撃大会を行うから〜、みんな参加申請を忘れないでねー?」

 

「私はここ一週間の配信予定は、配信アーカイブでお伝えしてるんで、ファンの皆さんは確認してくださいね」

 

 

私の挨拶を契機に、ソウジやトシも、各々の予定を伝えて、軽く笑みを作っている

 

一拍置いて、皆の視線がヤチヨへと流れて、おほんと咳き込み、白い髪をたなびかせながら、彼女は笑みを見せながら

 

「ヤッチョにかんしては、 この後配信はお休み!期待してくれたみんなごめんね〜!また明日、夕方ごろに配信をするから、期待して待っててくれるとヤッチョは嬉しいな!」

 

彼女がパチンとウィンクをして見せると、ファンの多くは湧き上がって声が上がり、オタ公はため息がちに呆れたように顔を引き攣らせ

 

「はいはい!んじゃぁ今日はここまで!私はこの後はNEWS TSUKUYOMI!!に出る予定なんで、そっちも要チェック!それじゃぁ、またの配信を〜!」

 

 

そう言いながら、配信画面はパチンと閉じられ、私達の周囲も、多くの魚が取り囲む、トシとソウジは、互いに予定があるのか、青く瞬き青い花びらとなってログアウトしてゆく

 

私もログアウトしようとすると———

 

 

「あ!まってまって!ちょい待——ぶべっ」

 

と彼女が目の前に割り込もうとし、バタンとその場に倒れ込んでしまう

 

「大丈夫ですか?月見さ——」

 

「ヤッチョは大丈夫!それより!」

 

手を差し伸べた途端、がしりと強く掴まれると同時に、彼女が顔を上げる

 

「イサミくん、ちょっと、付き合ってほしいことがあって———」

 

 

*1
KASSENに存在する、1on1(タイマン)専用モード、特殊なバトルフィールドに転移し、互いにダメージを与え、HPゲージを削り切った方が一点を取得する、本作品においては三点先取から一点先取まで、多様なゲームモードを選択できる

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