弱竹のかぐや、八千代の姫、月へ詠ったいろは唄   作:R,n

3 / 5
————貴方が、彼女の代わりになれるとでも?

ああ、なろう、なれるとも……だから私は——


#3羽衣の奥山今日超えて……?

私は彼女に連れられて、ツクヨミの街中を駆けていく

 

通りの屋台から目を向けられ、月見ヤチヨという稀有な存在を引き連れた私は、直ぐに注目の的となってしまった

 

「こっちこっち!早くしないと見れなくなっちゃうよ!」

 

「っとと……分かったので引っ張らないでくださいよ……」

 

いつもの彼女と言うよりは、どちらからと言えば、いずれ来るだろう彼女(かぐや)に似たようなはしゃぎ様で、わたしの手を引き屋根に駆け上がり、走り出す

 

頭を超す大空には、透明な大鯨が泳いでおり、その中には煌めく星が流れている

 

幻想的な和の世界の中で、カコンとヤチヨが動きを止めて、あわや転げ落ちる寸前

 

彼女が強く手を握り、腕を引いて支えてくる

 

そこはまるで都心のビルからの光景の様に、このツクヨミを一望出来る様な櫓の上に立っていた

 

「これは……いや、美しい……初めてきましたよ、こんな所」

 

「ふっふーん、ヤッチョが用意したのはこれだけじゃぁ無いんだなぁ!」

 

腰に手を当て、 自慢げに指を立てながら、彼女はクルクルと空へと指を差し示し

 

そちらへと目線を向けたところで

 

 

ひゅ〜〜〜

 

 

どんっ!

 

 

豪勢な音を立てて、空を征く大鯨を超え、月の様に丸く綺麗な花火が舞い上がる

 

「ねぇっ!ねぇっ!綺麗でしょ!?綺麗だよね!?」

 

彼女(かぐや)の様に花の様な笑みを浮かべ、私に問いかけてくる様を見て

ああ、やはり彼女はヤチヨであり、かぐやでもあると今思い直し

だからこそ

 

かぐや(ヤチヨ)にあの様な思いは、させられないと今思う

 

「ええ、とても綺麗ですよ……っと、流石にそろそろ配信の準備もありますから、私はここで」

 

そう言いながら、私はログアウトをする

最後にちらりと顔を見やれば

 

 

「今度は、犠牲になろうと、しないでね?」

 

 

悲しそうな顔で、そう何か口を動かしていた

 

 


 

 

(イサミ)がログアウトをするのを見送って、私はそっと胸を撫で下ろす

 

「……ふぅ、こう、やっと……初めて、彼と会えたから、勢い余って連れ出しちゃったけど……大丈夫だったかな……あぁいや、イサミなら平気、 平気のはず!……いやまぁ、もしかしたら……私が知るイサミじゃ無いかもだけど……」

 

胸の前で手を合わせて、クネクネと指先を弄りながら、顔を沈ませて落としていると、肩から小さなため息をこぼす声がする

 

「まったく!ヤチヨはすぐそうだ!怖気付くなら会わなけりゃ良かったろ!」

 

「もー!FUSHIはまたそんなこと言ってー!FUSHIもまた会えて嬉しかったでしょ〜!?」

 

「ひっぱるにゃぁ〜〜!!!」

 

 

ムニムニとプンスコとするFUSHIを引っ張りながら、私はふぅと一息つき、軽く手を触れいつもの部屋へと移動する

 

ツクヨミの中で一番綺麗な、彩葉との思い出を思い出して作った()()()()()()()の様な眺め

 

後数ヶ月、そうなったら、全てが始まる

 

部屋の角に作り上げた本棚から、巻物を一巻(いっかん)取り上げる

 

「………本当に、約束を違える気なのか?」

 

心配そうに、FUSHIが、多分きっと、同じ様に酷い顔をしてる私に問いかける

 

うん、私はきっと、コレからも悩むと思う……でも

 

 

()()()()はね〜、こう思うのです!彩葉にも、帝にも、もっちろんイサミにも!……私が好きな人には、苦しんでほしく無いな、ってさ」

 

「………ふん」

 

とFUSHIが鼻を鳴らした所で

 

『ネムッテ、 ネムッテ』

 

チカチカとFUSHIの目が瞬き、私は巻物を棚へと戻す

 

「そろそろまたお時間なのです……イサミから連絡あったら、返信、お願いね?」

 

私はそう伝えて、ツクヨミから意識を落とす

 

微睡む意識の中で、私はあの日の夢を思い返す……

 

 


 

 

ライブが終わって、月のお迎えが周囲を取り囲んだ

 

ああ、もうおしまいか………

 

 

「すぅ———みぃんなー!今日は本当に!ありがと〜!

 

ライブに来てくれたみんなに、私を助けようとしてくれたみんなに………

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()感謝を伝える

 

嫌だって思う、まだまだ遊びたいって思う、でも……コレから起こることを思うと、多分、知ってて良かった、って思うんだ

 

「かぐや!もう帰らなきゃ行けないの!だから———みんな!()()ね!かぐや、いっぱい、いぃっぱい……!みんなのこと!応援してるから!」

 

空に浮かぶ水の上で、月の人が羽衣を被せようとする瞬間

 

 

「—————かぐやっ!」

 

従者の灯籠頭の彼らを斬り伏せ、汗を顔中に作り、彩葉のブーメランの片方を手にしたイサミが、飛んできた

 

「彩葉っ!」

 

「分かってる!!」

 

イサミが腕を引き上げると、もう片方を持った彩葉が飛んできて、片手で掴んで居る ()()()()()()()を振りつける

 

刃の大きな刀で、羽衣を持つ腕を切り落として

彩葉は私に飛びついてくる

 

「彩葉!?イサミ!? なんで……!!」

 

「イサミが!何とかできるって言ってたから!」

 

カチンと音が鳴って、いろはのブーメランが元の形になって

 

彩葉を警戒して灯籠頭の子達に囲まれながら

 

私は、必死な形相のイサミを、彩葉の肩越しに見守るしか、それしか出来なかった……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。