ああ、なろう、なれるとも……だから私は——
私は彼女に連れられて、ツクヨミの街中を駆けていく
通りの屋台から目を向けられ、月見ヤチヨという稀有な存在を引き連れた私は、直ぐに注目の的となってしまった
「こっちこっち!早くしないと見れなくなっちゃうよ!」
「っとと……分かったので引っ張らないでくださいよ……」
いつもの彼女と言うよりは、どちらからと言えば、いずれ来るだろう
頭を超す大空には、透明な大鯨が泳いでおり、その中には煌めく星が流れている
幻想的な和の世界の中で、カコンとヤチヨが動きを止めて、あわや転げ落ちる寸前
彼女が強く手を握り、腕を引いて支えてくる
そこはまるで都心のビルからの光景の様に、このツクヨミを一望出来る様な櫓の上に立っていた
「これは……いや、美しい……初めてきましたよ、こんな所」
「ふっふーん、ヤッチョが用意したのはこれだけじゃぁ無いんだなぁ!」
腰に手を当て、 自慢げに指を立てながら、彼女はクルクルと空へと指を差し示し
そちらへと目線を向けたところで
豪勢な音を立てて、空を征く大鯨を超え、月の様に丸く綺麗な花火が舞い上がる
「ねぇっ!ねぇっ!綺麗でしょ!?綺麗だよね!?」
ああ、やはり彼女はヤチヨであり、かぐやでもあると今思い直し
だからこそ
「ええ、とても綺麗ですよ……っと、流石にそろそろ配信の準備もありますから、私はここで」
そう言いながら、私はログアウトをする
最後にちらりと顔を見やれば
「今度は、犠牲になろうと、しないでね?」
悲しそうな顔で、そう何か口を動かしていた
「……ふぅ、こう、やっと……初めて、彼と会えたから、勢い余って連れ出しちゃったけど……大丈夫だったかな……あぁいや、イサミなら平気、 平気のはず!……いやまぁ、もしかしたら……私が知るイサミじゃ無いかもだけど……」
胸の前で手を合わせて、クネクネと指先を弄りながら、顔を沈ませて落としていると、肩から小さなため息をこぼす声がする
「まったく!ヤチヨはすぐそうだ!怖気付くなら会わなけりゃ良かったろ!」
「もー!FUSHIはまたそんなこと言ってー!FUSHIもまた会えて嬉しかったでしょ〜!?」
「ひっぱるにゃぁ〜〜!!!」
ムニムニとプンスコとするFUSHIを引っ張りながら、私はふぅと一息つき、軽く手を触れいつもの部屋へと移動する
ツクヨミの中で一番綺麗な、彩葉との思い出を思い出して作った
後数ヶ月、そうなったら、全てが始まる
部屋の角に作り上げた本棚から、巻物を
「………本当に、約束を違える気なのか?」
心配そうに、FUSHIが、多分きっと、同じ様に酷い顔をしてる私に問いかける
うん、私はきっと、コレからも悩むと思う……でも
「
「………ふん」
とFUSHIが鼻を鳴らした所で
『ネムッテ、 ネムッテ』
チカチカとFUSHIの目が瞬き、私は巻物を棚へと戻す
「そろそろまたお時間なのです……イサミから連絡あったら、返信、お願いね?」
私はそう伝えて、ツクヨミから意識を落とす
微睡む意識の中で、私はあの日の夢を思い返す……
ライブが終わって、月のお迎えが周囲を取り囲んだ
ああ、もうおしまいか………
「すぅ———みぃんなー!今日は本当に!ありがと〜!」
ライブに来てくれたみんなに、私を助けようとしてくれたみんなに………
嫌だって思う、まだまだ遊びたいって思う、でも……コレから起こることを思うと、多分、知ってて良かった、って思うんだ
「かぐや!もう帰らなきゃ行けないの!だから———みんな!
空に浮かぶ水の上で、月の人が羽衣を被せようとする瞬間
「—————かぐやっ!」
従者の灯籠頭の彼らを斬り伏せ、汗を顔中に作り、彩葉のブーメランの片方を手にしたイサミが、飛んできた
「彩葉っ!」
「分かってる!!」
イサミが腕を引き上げると、もう片方を持った彩葉が飛んできて、片手で掴んで居る
刃の大きな刀で、羽衣を持つ腕を切り落として
彩葉は私に飛びついてくる
「彩葉!?イサミ!? なんで……!!」
「イサミが!何とかできるって言ってたから!」
カチンと音が鳴って、いろはのブーメランが元の形になって
彩葉を警戒して灯籠頭の子達に囲まれながら
私は、必死な形相のイサミを、彩葉の肩越しに見守るしか、それしか出来なかった……