なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第203話 長谷川真昼、鉄の船で勝っても笑いきれない

 荒木村重の裏切りに、信長様は持久戦を選択した。

 理由は無理攻めで損害を出し、他戦線に影響が出るのを恐れてるからというのもあるけど、一番の理由が時とともに有利になるからだ。

 

「高山右近と親しかったな。説得してこい」

 

 と、信長様が命じたのは、宣教師フロイスさんの従者である盲目のエセ日本語片言を話す日本人・ロレンソさんと、京のイエズス教会神父のオルガンティノさんだ。

 

「神ノ啓示ト言ウツモリハアリマセン。デスガ本願寺二コノ世ノ信心ヲ任セル。ソレ即チ、教会ガ不要ニナルコト」

 

「信長様ハ、宣教師モキリシタンモドウデモイイト思ッテル御方デス。使エルカ使エナイカノミ。貴方ハドッチデスカナ?」

 

 2人はじっくりねっとりと、キリシタンの立場として右近さんのみならず、周辺の荒木方を説得していく。

 てか信長様、使えるなら宣教師も使うって発想よく思いつくなあ。

 知行上げてる配下じゃないのに。

 京の教会で神に祈ってたら信長様が現れて、やってくれと頼まれた時の『え? 僕ガデスカ?』のキョトン顔、噂になって織田家を駆け巡ってるよ。

 そりゃそうだよね。祈ってた神じゃなく、信長様が現れただけで心臓が止まるよ普通。

 

 さらに紀伊から本願寺・荒木に救援しに行こうとする雑賀衆を、織田方の孫一さんたちが逆に狩場として陸地を封鎖。

 

「ったく。俺に背中を向けるとはいい度胸よ。……そんなに本願寺が大事かねえ。大事の順番を間違えたら、戦場は死ぬだけよ」

 

 これにより、陸地から荒木方に救援に行くのは不可能となる。

 

 さらにさらに、瀬戸内でも徐々に織田方が優勢に転じていく。 

 堺から松井友閑さんが次々と織田方に兵糧を支援するのに対し、荒木村重の籠る有岡城に入る兵糧は日に日に減っていったのだ。

 

「毛利め! 約束を守らぬとは!」

 

 村重が怒り狂って海を睨むが、毛利水軍は慎重だ。

 伊勢志摩から紀伊半島を経由し、瀬戸内に現れた新・織田水軍。

 たった6隻の船が、600隻を誇る毛利水軍に睨みを利かせていたのだ。

 

「うわぁ。ガチで鉄の船造っちゃったんだね。お疲れ様、嘉隆さん、一益さん」

 

 私がいる羽柴軍も、海上封鎖に駆り出されて出陣。

 嘉隆さんの好意という名の戦力補強で鉄の船に乗せてもらってるのだ。

 

「ガハハ。又右衛門と善兵衛の手柄よ。俺は船なら形はこうで、船員が寝るところバッチリにしてくれと頼んだくらいさ」

 

 おお! 船室広い! これなら嘉隆さんも大の字で寝れるね。

 嘉隆さん、いい笑顔だよ。

 

「うむ。あの2人がいなければ、この戦況を一変できなかったでござろう」

 

 搭載されている大筒を撫でて、一益さんも感無量という感じで海を見て呟く。

 

「その2人は? 今頃志摩で連日連夜祝杯してるんだろうなあ。羨ましい」

 

「又右衛門殿は長秀殿に呼ばれ、安土の最後の仕上げ。善兵衛殿も、国友の生産ラインに遅れが出てるので戻ったでござる」

 

「あっ、やっぱり休みはないんだね。織田家って」

 

 相変わらずの織田家にいる人たちの扱いに、自分だけじゃなくみんな大変だね。うんうん、不公平感なくて全員こき使われてるからホッとするよ。

 ……いや、信長様。休ませろや。特に私を。 

 

 嘉隆さんの横で、虹色に輝く英霊ボール『ボビー』も興奮して叫んでいく。

 

『ヘイ、嘉隆! 織田水軍は世界一ネ! 毛利水軍との第二戦、メンバー一新したこっちの力を見せつけてやるネ!』

 

『その通りじゃ! 未来永劫屈辱は忘れぬ。それは勝利を掴むためよ!』

 

 センイチも気合十分で叫んでいく。

 うん、前回のメンバーは全員海の藻屑に消えちゃったけど、彼らの犠牲を忘れたわけではない。

 リベンジは、必ずしないと。

 

「ですが、さすがは毛利水軍の将、村上武吉。船の数はこちらの100倍なれど、迂闊に突っ込んで来ぬでござるな」

 

「睨み合いでダメージ受けるのは荒木村重だけよ。こっちは兵糧運ぶのを邪魔するのみさ」

 

 嘉隆さんの一言に、私は600艘が浮かぶ敵の安宅船艦隊を目にしていった。

 

 ***

 

「よもや船を鉄で囲むとは。焙烙玉に火矢が有効手段にならぬ」

 

 今回は前回と違い、村上武吉ら村上水軍を中心に編成を組んでいる。

 英霊ボールも『アニキ』のみだ。

 

『センイチさんはともかくボビーか。05年日本シリーズを思い出して、正直ぶつかりたくないけえ』

 

「木の船と鉄の船。ぶつかられたらひとたまりもない。さて、どうするか」

 

 淡路島まで来ている後詰の児玉就英も動こうとしない。

 

 ——そこへ、本願寺の下間頼廉から書状が届く。

 

『荒木は捨てる。毛利は無理せず、兵糧は石山へ』

 

 武吉の目が鋭く据わる。

 

「小早船の機動力で駆けよ! 1艘でも多く、石山へ運ぶのだ!」

 

『我が鉄人のバフ。海に落ちればしまいよ。……兵糧を運び、無理せず戻れ』

 

 兵に指示し、武吉は一大決戦を避けるべく淡路島まで撤退を決断。

 200艘の小早船が石山へ決死の航行を開始していく。

 

「動いたか毛利。……そう来るか。全滅させよ!」

 

 嘉隆さんの下知で大筒と火縄が雨霰のように毛利水軍に襲いかかる。

 向こうからも焙烙玉や火矢が飛んでくるけど、鉄の装甲板によって燃え広がることはない。

 時間にしてわずか二刻(4時間)。

 半数の船に石山へ物資は運ばれたけど、帰りを待ち伏せして全滅させた。

 

「これで、毛利もそう易易と物資を運べぬと理解したでござろう。本願寺との決着も近く、また、荒木村重は詰んだでござる」

 

 一益さんの総括を、私は毛利の小早船の残骸が浮かぶ海を見つめながら聞いていく。

 

「全滅させてごめん。でも、私も負けるわけにいかないから」

 

 毛利主力が一大決戦を避け、彼らが持つ『アニキ』ら英霊ボールの奪取には失敗した。

 官兵衛さんも未だ消息不明状態。

 半兵衛君も明らかに体調が悪い。

 荒木村重との決着もまだついておらず、本願寺もしばらく持ち直す兵糧を手に入れた。

 一手一手、問題を解決していくしかない。

 私は姫路の方角を向き、秀吉さんと戻る播磨戦線の解決を強く意識していった。

 

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