なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第214話 長谷川真昼、対本願寺の作戦会議に参加する

 織田軍の対本願寺戦線の最前線・天王寺砦に到着すると、すでに私以外の使節団は到着しているはず……と思ってた私は絶句した。

 

「どうりゃあああああああああ! 信盛様! 脇が甘いでござるううううううう!」

 

 ガキンガキンと金属バットがぶつかる音を、着いた早々耳にいれるなよ。

 

「ハアハア……ハア」

 

「信盛様っ! 息が上がってまするぞ! 今日はあと5刻やるでござる!」

 

 勝三君の猛攻に、信盛さんは防戦一方で息が上がってる。

 5刻って、日が今昇り始めてるのに沈んでる頃じゃん。

 

「はいはい、ストップストップ。信盛さんもう歳なんだから遠慮しろや」

 

 ブンと振られる勝三君の人間無骨金属バットを、片手でキャッチして勝三君の頭にコツンと拳骨を落とす。

 

「おわっ! 真昼様。今のは全力でないので、止めたからとそれがしの力を舐めてもらっては困りまするぞ」

 

 いや、やる気になるなよ。

 金属バットを掴む私、グリップに力を込める勝三君。

 両者の目から火花がバチバチ交錯する。

 

 くっ! やるねえ。ガキだった頃と力が全然違うよ。

 ただし細いグリップと太い先端掴んでる私。

 どっちが有利か、5刻ぐらい使って証明しようか。

 

「待て待て。真昼殿、長可。朝の鍛錬は終わりだ。そろそろ朝食の刻限ぞ」

 

 信盛さんの言葉に私と勝三は頷き合う。

 

「勝負の決着はいずれつけるでござる」

「望むところ。早食いで勝三君のおかずを奪っちゃる」

「それがしが先に食って、真昼様のおかずをいただくでござる」

「ほう? 血の雨を浴びたいか?」

 

 砦の一角から煙が上がってる。

 クンクン、白米と焼き魚の匂いだ。

 私と勝三君はダッシュして煙の方角に向かっていった。

 

「やれやれ……」

 

 残された信盛が嘆息して、持っていた金属バットをブンと振った。

 

「ホッホッホ。なんか悩んではります? 信盛はん」

 

 そこへ近衛前久が扇子で口元を隠しながら近づき、声をかける。

 

「……いえ。失礼」

 

 信盛も煙のところへと足を向け、その姿を見た前久は扇子の奥で口を大きく曲げた。

 

 ***

 

 食事を済ませ、私と勝三君は使節団メンバーと対面していた。

  

「えいさん……じゃなかった。妙向尼さん、お久しぶりです。めっちゃ頼りにしています!」

 

「ええ、こちらこそ。真昼さん、勝三が暴走したら始末してくださいね」

 

「はい。喜んで!」

 

「んなっ! もう真昼様に負けるそれがしではないわ!」

 

 勝三のツッコミは放置して次だ次。

 

「相変わらず元気なこっちゃ。真昼はん」

 

 扇子を開いて怪しい笑顔を振りまくのは近衛前久様だ。

 

「どうして信長様のために総責任者に? 言っちゃ悪いですけど、裏でコソコソ企んで、漁夫の利しようとするイメージなんですが……」

 

「言っちゃ悪いことあらへん。そう思われてるの嬉しいわぁ。……もっと言っておくれやす」

 

 私の全身の毛に鳥肌が立ったのは言うまでもない。

 

「冗談どす。真面目に言えば帝のためおす。このままやと顕如はんは死ぬ。帝は顕如はんを死なせたくない。ただそれだけどすえ」

 

 ……ああ、納得。やっぱりこの人の行動原理は帝のみなんだ。

 お公家の偉い人だし、当然だよね。

 

「石山本願寺はただの城ではありません。寺であり、町であり、門徒たちの心の拠り所でもあります。交渉は慎重にしなければなりません。相手を怒らせず、慎重に、慎重にです」

 

 光秀さん? なんで私と勝三君を凝視しながら言うのかな?

 

『やあ、お嬢さん、センイチさん。またよろしくね』

 

 光秀さんの英霊ボール『イシイ』は、相変わらずふわふわした態度で挨拶してくる。

 

「うん。イシイも相手を怒らせちゃ駄目だよ。特に本願寺が持ってる英霊ボールを」

 

 こいつも大概爆弾発言するからなあ。

 まあ、英霊ボールって全部そうだけど。

 

『あはは。僕は大丈夫。ジジイばっかだから接点ないやあ。センイチさんと違って』

 

『なんやとお! ちゅうか本願寺にいるノビタはお前の同僚やないか! 接点あるやろ!』

 

『うへえ。あのメガネ。ミリ単位の制球要求してきて疲れるんだよなあ。しかもさあ。8回まで投げて疲れたから降板したいって言ったらブチギレてくるんだもん。「死んでもいいから投げろ。ノーノーやるぞ!」とか言ってさあ。わけがわからないよ』

 

『当たり前じゃボケェ! なんでノーノーしてる奴が降板願い出るんじゃ! 儂が監督ならぶん殴ってるわ!』

 

 ほおら、イシイが早速センイチ怒らせてるし。

 

「そうだ。真昼殿。先年丹波攻略の際、悪右衛門が持っていた英霊ボール『アクタ』を回収しました。どうぞお受け取りを」

 

「ありがとう。光秀さん!」

 

 光秀さんが寝息を立てる白球を渡してきて、私は筆でシュッシュと名前を書いていく。

 

『アクタさんか。悪右衛門が病死し、丹波で継承争奪戦になったと聞く。……こいつも主が死んで、さぞかし無念やったろう』

 

 センイチにそう言われ、私は掌を合わせてアクタに向かって合掌した。

 

 それが終わったタイミングで貞勝さんが語ってくる。

 

「京、堺、摂津、河内、紀州……一向宗の門徒の根は畿内に深く張り巡らされております。終わらせ方を誤れば、我々が長年戦ってきた意味が失われかねませぬ」

 

 うん、相変わらず真面目だね。

 

「さらにツルオカを始め、ポッポやアキヒロら英霊ボールも多数。玉砕されれば久秀や村重以上の損害が出てしまう」

 

 光秀さんも拳を握って目に力を入れる。

 そう。ここから第一歩をどう交渉するかで、本願寺が軟化するか強硬になるか決まるのだ。

 顕如のツルオカ、下間頼廉のポッポ、下間仲孝のアキヒロ、本多正信のノビタ。

 さらにツルオカ親衛隊のアナブキ、トクジ、ヒロセがいる。

 これだけ巨大な英霊ボール組織が破れかぶれになるのも避けないと。

 

「信長様から提示された条件は三つ。仏敵取り消しと、石山退去及び英霊ボール全回収。一つ目は問題ないと思います。ですが残り二つ。これが問題かと」

 

 妙向尼さんの一言に、私も腕組みして唸るしかない。

 

 すると前久様の懐から、黒く渋い光を放つ英霊ボールがフワリと浮かび上がった。

 

『⁉』

 

 イシイの球体の色が白から蒼白に変わる。

 

『なんや、驚かんのかセンイチ。クンクン、ははーん。お前、ヒロミツと繋がってるな』

 

 その英霊ボールが放つ圧倒的なオーラに、センイチが嫌そうな光を放って唸った。

 

『さ、さあ。何のことやらさっぱり。……出たのう寝業師! あんたの違法スレスレの行為で、儂らの頃にはガチガチで法律で禁止されたんやぞ!』

 

 いやいや、センイチ? それ禁止されてなきゃやろうとしてたでしょ。

 ……以前ヒロミツから聞いた、全108の英霊ボールのうちの確定している107の1つ。その名はネモト。

 プロ野球界でも剛腕で多くの弱小球団を常勝チームに変えた、異名『球界の寝業師』。

 よくわかんなかったけど、秀吉さんからお姉ちゃんが12人いてドラフト会議が始まりました。当然全12チームにお姉ちゃんがドラフト1位で入るはずなのに、同一球団のドラフト12位まで全お姉ちゃんを指名させることを可能にしていた存在だとか。

 ……ぶるっ。反則どころじゃないよ。超極悪チーム完成じゃん、それ。

 

『あ~。僕、二代目ネモトなんて言われたっけ。あはは、昔過ぎてよく知らなーい』

 

 イシイの軽口に、ネモトがギラリと睨む。

 目がないのに。

 

 するとイシイは、サッと光秀さんの袖に逃げていった。

 ヤバいね。あのマイペースボールが、バイブみたいに震えてるのがわかるよ。

 ネモト。かなりの実力ボールのようだ。

 

『儂にセンイチにイシイ。これだけあれば十分やろ。行くで、前久』

 

「ネモトはんがそう言うなら信じまひょ。ほな、全員起立。石山に入るで」

 

 総責任者の前久様の命令に、私たちは立ち上がる。

 

「ねえ、前久様。朝廷の英霊ボールってネモトだけですか?」

 

「おかしな質問しはりますなあ、真昼はん。ま、教えまひょ。一条はんも英霊ボール持ってるで」

 

 そう言って輿に乗る前久様。

 

『ヒロミツが知ってるほうだけやったな』

 

「……うん」

 

 センイチと私のひそひそ話。そこへ前久様が不思議そうに口にする。

 

「真昼はんと長可はん。はよ輿を動かしてや」

 

 ちょっと待て。私と勝三、輿担ぎに呼ばれたのか?

 私と勝三の殺意ゲージが上がったのは言うまでもない。

 

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