なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第215話 長谷川真昼、顕如と再会する

 石山本願寺の本堂で、織田使節団を待つ本願寺首脳陣が最期の軍議を開いていた。

 

 本願寺第十一世宗主・顕如と英霊ボール『ツルオカ』が本尊を背にドスの効いた声で叫ぶ。

 

「信長からは降伏勧告ではなく、あくまで未来永劫の和睦を望む、と態度は低い。仏敵取り消しで、追い詰められた我らが自害や磔の運命を回避する。これは当然呑める。が……」

 

『英霊ボール全譲渡も、しゃあないわ。負けたんはこっち。白黒つけなあかん。……けれど石山退去は無茶苦茶や。これのどこが和睦や。ここにいるんは全員門徒。自治権寄越さんかい! 堺や大津のように銭は織田に納める、で済まさんかい!』

 

 法衣を半分脱ぎ、阿弥陀如来の刺青を見せる顕如と、今にも爆発しそうに緑色の発光するツルオカ。

 控える門徒たちの目が据わる。

 

 そこへ本願寺の知のトップ、下間仲孝と英霊ボール『アキヒロ』が発言する。

 

「現状の確認をしましょう。毛利水軍が敗れ、瀬戸内の制海権は織田。村重は逃亡。紀州は織田派の孫一優勢。北条と武田は越後を巡って仲違い。毛利は上洛しようとせず、備前まで織田の領土に」

 

『でも、門徒たちもよくわかったんじゃない? もう、信長が天下取るって。天王寺の大敗までこっち優勢だったのにね。あれで……よぎったよ』

 

 すると本願寺の武のトップ、下間頼廉と英霊ボール『ポッポ』が屈辱を噛み締める。

 

「天王寺で思い知った。認めよう、信長は不世出の天才だ。そこに配下の質が加わる。奴は使えるのを使う。使えるだけの地位に引き上げる。下克上の意味を奴が変えおったわ」

 

『喝だ喝! ……浄土真宗だけの門徒兵はきっついわ。雑賀の傭兵が抜けた時点でこっちの勝ちはないわな」

 

 さらに本願寺の参謀、本多正信が眼鏡をクイッとし、英霊ボール『ノビタ』が発言する。

 

「先年の法華宗と浄土宗が安土で問答した件、信長はよく本能寺や法華宗の寺で宿泊するから法華宗が勝つ出来レースと思われていた。しかし勝ったのは浄土宗というオチ」

 

『あの男は情で動かない。他宗派に喧嘩吹っ掛ける者は許さん、使えるならなんだっていいという思考だね。多分だけど顕如様らが安土に行って、信長の下でこれから働くって言ったらどんどん仕事振ってくると思うよ』

 

 顕如は苦笑した。ノビタの読みは正しいだろうと思ったからだ。

 

「この中で石山退去後、信長に仕えたいと思う者はいるか?」

 

 顕如の問いに、挙手する者は誰もいなかった。

 

「拙僧は死ぬまで顕如様のお側に」

「頼廉と同様でございます。何があろうと、地獄に向かおうと顕如様のお供をいたしまする」

 

 頼廉と仲孝の淀みない口調に、顕如はまた苦笑するしかない。

 

「退去後に坊主軍団率いて流浪する俺か。フフフ、それで安土に進軍するのも悪くない」

 

 そこで本堂の扉が開き、報告が入る。

 

「申し上げます! 織田使節団、入城しました」

 

「通せ」

 

 *** 

 

 巨大な門をくぐり、石山本願寺の内部へ足を踏み入れた私は想像していたような要塞じゃないのに驚いた。

 

 もちろん槍や鉄砲を手にした僧兵たちはいる。

 城砦としての備えも見るからに厳重だ。

 けれどそれ以上に、目に飛び込んできたのは戦う者たちだけではない普通の人々の暮らし。

 

 門徒兵たちは当然ながらいる。

 けれど泣きじゃくる赤ん坊を必死にあやす母親もいる。

 井戸の水を桶に汲んで、子供たちが声をかけ合いながら運んでもいる。

 

「ゴツい僧ばっかだと思ったら、どこにでもある町だね」

 

 輿を担ぎながら呟くと、輿の中から前久様の声が聞こえてくる。

 

「僧の数、少なくなりはりましたなあ。織田に夫や父を殺され、残された女や子は大変やわ。そこへ退去命令。ホッホッホ、どこ行くんやろ?」

 

「前久様、他人の不幸は蜜の味って味わってると、いずれしっぺ返しくらいますよ?」

 

 私がムスッとして言い返すと、ホッホッホという笑い声だけが輿の中で響いていく。

 まったく、このまま金属バットで輿を粉砕してやろうか。

 

 やがて私たちは石山本願寺の最も奥にある巨大な御堂へと通され、目力込めて胡座かいてる顕如たちと対面した。

 輿を降ろして前久様が出てくるのを待ってると、顕如さんが私の眼前に歩いてきた。

 

「よう、お嬢さん。久しいな」

 

「ですね、顕如さん。刺青の調子はどうですか?」

 

 以前来た時、背中の阿弥陀如来の刺青見せて恫喝されたんだよね。

 あの時は半兵衛君と一緒だったっけ。

 

「フフフ。絶好調よ」

 

 次に顕如さんの目は妙向尼さんに向く。

 

「……貴殿が妙向尼殿か。今日はよろしく頼む」

 

「ええ、顕如様。浄土真宗と織田、双方の未来のためによろしくお願いします」

 

 顕如さんの目が光秀さんと貞勝さんに向かう。

 

「織田の法の番人と呼ばれる貴殿ら、法を捻じ曲げぬ意思を貫かれると期待している」

 

「当然でございます。信長様は例外を作ること、依怙贔屓を極度に嫌います。そこに貴賤は関係ありません」

 

「私は穏便に済むことを願ってます。無論、双方のでございます」

 

 光秀さんと貞勝さんの言葉に顕如は大きく頷き、視線が勝三君に向かう……んだけど、両方ともどうしてメンチ切ってるのかな?

 ヤベえよどっちも。ガチの殺意オーラ出しやがるよ。

 しゃあない。ここは私が間に入りますか。

 

「ちょっと、2人とも他校の番長同士の決戦前みたいな雰囲気出さない……で?」

 

 私の心配を余所に、2人はがっちりと握手を交わしたのだ。

 

「フッ。見事だ。鬼武蔵の異名は伊達じゃない。歓迎しよう、森長可殿」

 

「こちらこそ。金属バットを持つ阿弥陀如来の阿修羅顔が見えたでござる。……相当できるでござるな、顕如殿」

 

 ……こいつら、ガチで番長同士の決着風で意気投合しやがったぞ。

 阿弥陀如来の阿修羅顔ってなんだよ。それ、阿修羅だろ。

 

「ホッホッホ、久し振りやす。顕如はん」

 

 ようやく輿から前久様が出てくると、顕如さんは跪いた。

 

「朝廷の介入、ありがたき幸せでございます」

 

「ええってええって。それでは交渉といきまひょか」

 

 飄々と前久様が言う雰囲気に、なんだか和やかムードになっていく。

 一番の問題児の勝三君が顕如さんと握手したもんね。

 これはスムーズに交渉スタートいける!

 ……なんて思ってた私が馬鹿でした。

 

『ギリッ!』

 

 正信さんの頭上に浮遊するノビタの殺意が、光秀さんの袖口から覗いているイシイに放たれた。

 

 おいこら。仲孝さんが持つアキヒロがセンイチにビビり、センイチがツルオカに威圧されておとなしくしてるのに、英霊ボールで揉め事作るんじゃないよ。

 まったくもう。

 

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