なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第222話 長谷川真昼、本願寺骨肉の争いを決着させる

 本願寺本堂で繰り広げられていた顕如VS教如に、センイチを投げて止めようとした私なんだけど、顕如の背後を襲うヒロセに水平で投げたはずが、なぜかセンイチが真上から落ちてくる。

 

 え~、今のを私の目で見た記憶映像をリプレイ検証で再生してみよう。

 

 まずセンイチを私が投げる。

 ↓

 よれよれで浮遊したアキヒロにぶつかる。

 ↓

 センイチが上空へ。

 ↓

 アキヒロが飛ばされてヒロセにぶつかる。

 ↓

 ヒロセが壁へ。

 ↓

 アキヒロが教如の拳に当たる。

 ↓

 その隙を逃さず顕如さんが教如をワンパン&三日月蹴りでノックアウト。

 ↓

 色んな風圧が渦巻いて、間近にいた頼廉さんと仲孝さんに直撃。

 ↓

 現状に戻る。

 

 おっと、私の脳内で審判私が出てきました。

 解説私さん、私選手大丈夫でしょうか?

 うーん、そうですね。リプレイ見た限り大丈夫かと。

 さあ、判定は?

 審判私、両手を横にしました。セーフ、セーフです。

 私、無罪です!

 観客席の全員私も大熱狂、スタンディングオベーションで指笛吹いて判定を喜んでます。

 

 ツルオカとポッポもアナブキとトクジを倒したようだ。そいつらを転がし、頼廉さんと仲孝さんを起こして顕如の側に駆け寄っている。

 

「ボクシングなら貴様の勝ちだったろう。が、MMAならまだ負けん。ちっ……まだ息があるか。とどめだ」

 

 倒れている教如へ拳を振り下ろす顕如さんの一撃。

 

 バチィィィィ!

 

 それを今度は寸でのところで私が止める。ふう、死にかけの顕如さんじゃなかったら間に合わないし受け止めきれない威力だったよ。

 

「そこまで。気絶してるんです。決着はつきました」

 

「お嬢さん、邪魔するな。こいつはこのままだと織田に処刑される。ならば俺の手で殺すことこそ唯一の解よ」

 

 アザと血だらけの刺青筋肉坊主ってだけで迫力ありすぎるのに、怖いこと言わないでよまったくもう。

 

「信長様の条件は退去です。処刑はありません。なぜなら、織田に被害が出ていないんです」

 

 私の言葉に、空気が軽くなるのを感じる。

 ただ1人、意識は取り戻したけど倒れ伏してピクリとも身体を動かせない教如を除いて。

 

「クソッ……クソ。もう少しで……俺の死が本願寺の戦いに意味があったと……後世に伝えられた……のに」

 

 涙が教如の目尻と本堂の地面を濡らしていく。

 

「意味? 死に意味があるなんて、私は理解できません」

 

「ふざけるな……小娘ごときが俺に説法するか……」

 

 面倒くさいなこいつ。殴って気絶させちゃろか?

 

 そんな私を制したのは、フラフラ状態のアキヒロだった。

 

『死に意味はあるかもしんないよ』

 

「ちょっ⁉」

 

 慌てる私だったけど、私の肩で小休止しているセンイチが『まあ、最後まで聞いてやらんかい』と囁いてきて口を噤む。

 

『僕もね、キャンプで退任表明しちゃったことがあるんだ。監督として今年で死ぬ。そう決意して選手たちの力を引き出すために。……でもね。そしたら開幕9連敗。1勝15敗1分けという最悪スタートを切っちゃったんだ』

 

 ザワッ。

 

 しみじみ語るアキヒロに、他の英霊ボールたちの空気が凍る。

 

『絶対優勝するぞってキャンプで予祝までしたのにね……ハハ……胴上げまでしてもらってこの体たらく。生きてるのに死んでるような気分だったよ』

 

 ザワワ。

 英霊ボールどもが濡れた雫で光る。

 あの~、顕如さんたちも涙ぐんでるのはなんでかな?

 

『でもね。選手たちは諦めなかったんだ。みんなに救われて僕は生気を取り戻し、チームをAクラスに引き上げた。……死を意識することで力が抜けたからかな? まあ色紙のおかげかもしんないけど』

 

 アキヒロの言葉に、英霊ボールたちの啜り泣く声が激しくなる。

 ええい、うるさい。色紙ってなんだよ、ファンにサインして回ったんか?

 

「真昼殿、文字職人ですよ」

 

 満身創痍の仲孝さんが、同じく傷だらけの頼廉さんに支えられながら言ってくるけど、なんでドヤ顔なの?

 餅職人って、ますます意味不明なんだけど。

 ゴクリ。これが終わったら妙向尼さんに餅を焼いてもらお。

 

 私は倒れている教如に目を向ける。

 もう味方の英霊ボールが撃破されているというのに、それでも教如の心は折れなかったようだ。

 彼は唇を噛み切り、赤い血を滲ませながら叫ぶ。

 

「ならば……! この屈辱はどこへ置けばよいのだ! 織田にやられた仲間の恨みを!」

 

 教如の悲痛な問いに、私はこう言うしかない。

 

「恨みを抱えて生きてたっていいじゃないですか。正信さんだって、そのままで家康さんのところに戻りましたし。恨みを抱え、それでも人として生きていく。だから宗教が人に刺さるんじゃないかなあって、私は思ってます」

 

「……随分と綺麗事を」

 

「あと一応言いますけど、織田だって信長様の兄弟や親族、お犬ちゃんの旦那さんとかいっぱい死んでるんですからね! 自分だけ悲劇の主人公になろうとしない!」

 

 私のとどめの一言に、ようやく教如も折れてくれたようだ。

 

「……わかった。石山を明け渡そう」

 

 よっしゃ! これで万事解決! あとは貞勝さんと光秀さんに任せるだけだ。

 なんて思ってた私の鼻に、なんか焦げ臭い煙が入ってきた。

 

『いかん! みな早く退避せい! 英霊ボール大戦の風圧で本尊前の蝋燭が倒れておったわ! もう間に合わん!』

 

 ツルオカの叫びに、私たちは全力疾走で隠し通路に向かうのだった。

 ん? ヒロセが弾き飛ばされた場所の近くだったような……?

 

 おっと? なぜかここで脳内審判私が出てきました。

 なんでしょう? なんで出てくるんでしょう?

 解説私さん、これはまさか判定が覆るんですか?

 うーん、そうですね。燃えちゃってますからね。

 さあ、判定は⁉

 右手拳を握りしめて、くの字! アウト! アウトです!

 審判私、判定を覆しやがりました!

 観客席の全員私、大ブーイングです!

 

 ……えっと、ごめんなさい、阿弥陀如来様。教如を救うので許してください。 

 

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