なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第228話 長谷川真昼、英霊ボール大戦の裏側に迫る

 私たちが金堂と呼ばれる、高野山に住む坊主たちの居場所を強襲……もとい、震える案内人の坊さんに、大日如来という真言宗が信仰するでかい仏像がある部屋に通された。

 

「勝手に墓を立てた罪、連中が墓に入ることで許す」

 

 ど真ん中で胡座を崩して座り、金属バットをいつでもブン回せる位置に配置した信長様、現在殺意ゲージMAXである。

 

「真言の猿ども、阿弥陀如来が大日の手下だと? 頭ン中蛆虫湧いてやがんのか?」

 

 右に正座して座り、一見するとさすが本願寺の宗主という毅然とした姿勢なのに、口から出るのは他宗派の悪口超えて殺意ゲージMAXな顕如さん。

 今にも拳が大日如来を破壊しそうである。

 

「嬉しいねえ。天下人の信長と、本願寺の顕如さんと同じように墓を建ててくれたんだ。いつもは眉間にぶち込む鉛玉を、口に銃身押し当てて直接プレゼントしてやるよ」

 

 左で火縄銃を構えて座ってるのは、やっぱり殺意ゲージMAXで今から出てくる偉い人を即暗殺しかねない孫一さん。

 

 うん、空気がヤバい。

 信長様の横でちょこんと座ってる私は縮こまっちゃうよ。

 みんな、ちゃんと私の分も残してよね。

 勝手に生前葬しやがった主犯に、金属バットを叩きつける分を。

 

 センイチは浮遊してキョロキョロしてる。

 

『信長、小娘、忘れんなよ。高野聖どもは反信長活動し、右衛門尉(信盛)を重症させた。厄介な敵地ど真ん中ぞ』

 

 おお。センイチがまともなことを言ってる。

 自分だけ墓がなかったの拗ねてるね。

 

 やがて白髪白髭の爺さんが厳かに入ってくる。

 1人? 囲まれてる様子も、爺さんが慌ててる様子もない、か。

 可哀想に。人身御供にされたんだね。この面子にか弱い爺さんだから許してって言い訳、通用しないぜえ。

 

「よくぞ参られた。拙僧の名は清胤。皆様の接待役を仰せ仕りました」

 

 ドンッ! と地響きがなる。

 信長様が金属バットを地面に突き刺したのだ。

 

「トップはどうした? 貴様で全て説明でき、責任を取れると言うのか?」

 

 そんな信長様の挑発に、清胤と呼ばれた爺さんは首をコクンと動かす。

 

「ええ。拙僧が全て説明し、責任を全て持ちましょう」

 

 ホントに? 即答すぎてなんか怪しいな。

 

「じゃあまずは俺から質問だ。てめえら、土橋平次・太田左近ら反信長を支援してやがるな? 何が目的だ。たかが高野山の坊主どもが信長に逆らう理由を言え」

 

 口を開いたのは孫一さん。いきなり喧嘩腰だね。でも火縄銃ぶっ放さないなんて凄いよ。

 私だったら火縄に火を点けてから言ってたかも。

 

「反信長を支援というのとは違います。我らの目的は天下泰平を遅らせること」

 

 淡々と返答した清胤さんの言葉に全員顔色が変わる。

 天下泰平を遅らせるって……今まで出会った敵で一番ヤバい答えが出てきたぞ。

 

「坊主の分際で天下に介入し、あまつさえ戦乱を終わらせん、か。想像以上に糞だな、真言」

 

 正座のまま、指をパキポキ鳴らす顕如さん。

 坊主の分際って、あんたも坊主だし反信長連合で一番長く活動してたの誰だっけ?

 

「そこは訂正を。戦乱を終わらせる気はございます」

 

 清胤さんは動揺もしなければ後退りもしない。

 本音だとはわかる。けれど矛盾が酷い。

 

「それってつまり、信長様が作る天下泰平は認めないってことですか?」

 

 金属バットを握りしめ、私が訊ねる。

 戦乱は終わらせたいのに信長様の邪魔をするって、そうだとしか思えないから。

 

「それも違います。天下泰平を作るのに人格は関係ありません」

 

 あれも違うこれも違うって、じゃあこの爺さんたちは何がしたいのさ。

 

「じゃあ、なぜ右衛門尉を襲った? 奴は仏門を求めてここに来たはずだ」

 

 目線だけで人を刺殺しそうな信長様の問いに、清胤さんは初めて即答しない。

 

『説明し、責任を取るんじゃろ? はよ言わんかい!』

 

 センイチが真っ赤に発光して清胤さんに詰め寄る。

 観念したのか彼は嘆息してから言葉を続けていく。

 

「少し、外を歩きましょうか。皆様の廟のある場所を」

 

「そこに答えがあると言うんですか?」

 

 私たちの答えを聞かずに歩いていく清胤さんの背中へ、私が訊ねる。

 なんだろうこの感覚? 私は答えを知ってる気がするぞ?

 

 私たち4人の廟は、金堂に入る前に見た時と寸分変わらぬまま存在している。

 人が手入れし、丁寧に管理されている証拠で。

 

「やっぱ気味悪いな。まるで本当に祀られている気分になってきたぜ」

 

「大事にされてるのはわかった。が、本人の許可なく造っていたのは許せん」

 

 孫一さんが舌打ちし、顕如さんも腕組みして苛々しながら呟く。

 

「……」

 

 信長様も何か感じ取ったのか、自分の廟を凝視している。

 そんな信長様の横に清胤さんが立ち、ようやく答えを口にしてくる。

 

「信盛殿は、信長様と真昼殿の廟を見て思い出したのです」

 

「思い出した? 何を……」

 

 私の呟きに清胤さんははっきりと口にする。

 

「信盛殿は、何度もこの時期に高野山に訪れていたことを」

 

「待て。そいつはおかしい。右衛門尉にそんな暇はなかった。奴の行動を、俺は逐一把握していたんだぞ」

 

「信長様の仰ること、真にご尤も。ならこう言えば宜しいかな? 英霊ボールどもは戦を永遠に終わらせようとせず、戦乱に終止符が打たれようとすると時を巻き戻している、と」

 

 ……は?

 

「なぜそれを真言が知ってるかのように言える?」

 

「顕如殿の疑問もご尤も。拙僧も記憶があるわけではございませぬ。しかし我らは高野山に籠り、常人には理解できぬ奇人変人を多く輩出しております。この4つの廟がその証」

 

「えっと、わかるように教えてほしいんですけど?」

 

 ビュン!

 

 私がキョトンとして口にしてる横で、なぜか信長様がセンイチを手にして自分の廟に向かって振り被って投げたんだけど⁉

 

 うにょ~んという擬音が入りそうなぐらい空間が捻じ曲がり、センイチが信長様の手に戻ってくる。

 

「なるほどな。異界か。この世にまだこんなところがありやがるとは」

 

 信長様? 邪悪な笑顔で喜ばないで?

 

『干渉不可か。こりゃ儂だけじゃどうにもならんわ』

 

 センイチもわかったように口にするな。

 

 残る私たちは清胤さんを凝視していく。彼の次の呟きを待つために。

 

「……この4つの貴殿らの廟だけではありません。ここにある偉人の墓は全て、誰が建てたか不明のまま、忽然と現れるのです」

 

「「「はあ⁉」」」

 

 とんでもない回答を耳にして、私たちが驚愕したのは言うまでもない。

 

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