なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第233話 長谷川真昼、馬揃えの歓声を浴びる

「うう~、辰の刻(午前8時)からスタートって何? 準備で深夜起きっておかしくね?」

 

 まだ闇夜の空を見上げつつ、吐く息の白さが目立つのに笑うしかないよ。

 

「未の刻(午後2時)まで行われるそうです。真昼様、熱いお茶をどうぞ」

 

 実行委員の1人、蘭丸君から貰ったお茶を一気飲みしつつ、私は6時間ぶっ続けってヤバくね? 箱根駅伝の距離ならともかく、御所をぐるぐる回るだけなのに。

 

 おにぎりとおかわりのお茶を口に入れつつ、光秀さんが利三さんや久太郎君や弥助たち近習組実行委員と、入念に細部をチェックしてる姿を見つめる。

 そこに忠興君はともかく玉ちゃんがいるのも驚きだよ。

 玉ちゃんの藍色の聖女服の清楚な姿、聖女様を守る騎士な姿の忠興君、どっちも似合ってるけど、光秀さん、最愛の娘が夫と一緒に参加することに微妙な顔をしてたもんなあ。

 ただ、反物屋巡りの最中に蜀江錦とかいう超お宝を玉ちゃんが見つけ、忠興君と一緒に信長様に献上したもんだから信長様、上機嫌で許可しちゃったんだよね。

 ……でもさあ、おごとくちゃんが参加する許可をするのもどうかと思うよ?

 馬が夫って、背の高さ的に群衆見つけづらくね?

 

「よお真昼」

 

 脳天気な声が聞こえて振り向くと、いかにも暴走族にいそうな真っ赤な袴姿の又左さんがニヤニヤしながら近づいてきた。

 

「いつもの制服じゃねえのか、あれのほうが民衆受け良いだろうに」

 

 私の衣装はおごとくちゃんプロデュースに、私が要望したドラ○エIIIの勇者服。青い服に紫色のスカーフ、スカートの下に黄色のズボン、紫色のマント……なんだけど、ズボンはないので生足だ。

 おごとくちゃんめ、間に合わなかったと言いつつ私の生足に視線を固定してたし絶対わざとだろ。

 え? 自分で作れ? えへへ、昔から家庭科苦手なんだよね。

 

「まあ、あんまりいつもと変わんなくなっちゃったけど。又左さんも似合ってるよ、特攻服」

 

「特攻服じゃねえよ! 俺のコンセプトは一番目立つ! どうだ? わかりやすいだろ」

 

「はいはい頑張って。てか、北陸軍のみんなよく来れたね。上杉軍と激闘してるんでしょ?」

 

 又左さんの後ろで一礼してくる、黒マントに天狗鼻つけてるの長近さんだよね?

 持ってる火縄銃でわかったけど、どう見ても黒魔術協会の大幹部だよ。

 

「ああ、加賀での戦いに一区切りついて、北陸は雪だからな。上杉軍も動かんのよ。こっちも動けんがな」

 

「全軍ではなく、成政殿や盛政殿らが居残っています。じゃんけんで負けた2人の顔、フフフ、今思い出しても笑えます」

 

 あの~、長近さん? コスプレしながら言うと、ガチで悪の魔術師に見えるんですが。

 

「他に秀吉殿や恒興殿、一益殿に藤孝殿、孫一殿が不参加ですな。敵国の情勢があるとはいえ、当人たちは無念でしょう」

 

 長近さんが言う通り、織田の全員参加というわけじゃない。

 他にも家康さんから『我が妻の旭殿と参加したかった。信長様ァァァァァ! 急すぎまするぅぅぅぅ』とかいう愚痴の手紙も届いたし。

 信長様もいずれ、真の天下一統後にまたやるかって呟いてたんだよね。

 

「権六おじさまは全身高級唐織だけど色が地味だね」

 

 光秀さんと長秀さんと腕組みして話し合ってる権六おじさま発見。

 アレだね。奇抜な恰好せよと言われてとりあえず唐織買ったって感じだね。

 

 やがて集まってきた面々からどよめきが起こる。

 信忠君、信意君改め信勝君、おごとくちゃんが現れたからだ。

 

 信忠君の七色で配色された衣装が朝日で光り輝く。

 頭にあるの九官鳥の羽じゃん。凄い、どっから手に入れたんだろ。

 マントも七色で一番目立ってるかも。

 

 信勝君は全身銀色に赤いマント姿だ。西洋騎士っぽくてカッコいいじゃん。

 私が播磨にいる時、信長様や信忠君に相談もしないで自分の軍だけで勝手に伊賀忍者と戦って大敗し、信長様に勘当されてたけど信忠君の取り成しで勘当は取り消されたんだよね。

 改名もして、汚名を晴らそうってやる気が全身から漲ってるよ。

 でもその名前でいいのか? 勝つって意味なんだろうけど、また改名しそう。

 

 おごとくちゃんは黒いトンガリ帽子に黒のローブ姿。

 どこからどう見ても魔女だね。ファイヤーボールどころかドラ○スレイブ使えそう。

 

「真昼様、勇者の姿、似合ってますよ」

 

「ありがとう信忠君。いやあ、感無量だよ。吉乃さんの子供たちがみんな立派になっちゃって」

 

「真昼様は相変わらず涙脆いですね。まだまだです。これからもっと立派な姿を見せ、泣かせますので見ていてくだされ」

 

「うう~、待ってるよ~、信勝君」

 

「フッ。私が一番真昼を泣かせることができる。……布団の中でも」

 

「おごとくちゃん、淡々と意味違うことを言うんじゃありません」

 

 ん? お市ちゃんと三姉妹の姿も見えるぞ?

 

「トリックオアトリート~」

「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ~」

「たくさんくれなきゃイタズラ確定~」

 

 やべえよ三姉妹。完全に別のイベントと勘違いしてやがる。

 

「ハアハアハア、これ、ハネムーンに旅立つイベントにも使えるんじゃない? 私と真昼で実験してみるわよ!」

 

 やべえよお市ちゃん。目がマジだよ。とにかく全力で馬を走らせて逃げなければ。

 

 そんな織田家親族どもとの和気あいあいとした空気が変わる。

 衣装準備を終えた信長様が、センイチたちと現れたのだ。

 

 金紗の頬当てに唐冠頭巾、紅梅色と白の大きな段模様の蜀江錦の小袖に金の刺繍で縁取られ、桐唐草模様の肩衣袴に白熊皮の腰蓑に牡丹の造花、さらに虎の斑模様に刺繍、背中に漆黒のマント。

 近くで浮遊する英霊ボール『センイチ』も白球のくせに化粧で虎模様されてる。

 

「者共! 今日は思う存分に楽しめ! 朝廷と民たちの度肝を抜け!」

 

『優勝パレードにはまだ早いが、要請されたんなら全力で応えんとな。予行演習と思うな! 本気でやるんじゃ』

 

「全軍、プレイボールだ!」

 

「「「「おおっ!」」」」

 

 京の朝に織田軍の雄叫びが木霊する。

 これを合図に、公家の皆さんもぞろぞろと姿を現す。

 ん? 前久様、女装して馬に乗ってるけど、もしかして見物じゃなくって参加すんのか?

 てか、なんで女装なんだよ。

 

「ホッホッホ、祭りは参加してこそ意義があるんや。なあ? 真昼はん」

 

「まあ、それはそうですけど……前久様」

 

「ん? うち、可愛い?」

 

「いえ、馬に乗れるんですね」

 

 私の驚きに、前久様はホッホッホと笑って自分の列に馬を飛ばして走っていく。

 相変わらず底の知れない人だよ。

 ていうか、おっさんの女装、可愛くないぞ?

 

 そして始まるコスプレ馬揃え本番。

 フッフッフ、風と熱狂な歓声が気持ちいいぜえ。

 

「信長様の恰好、なんだかよくわかんないけど凄え!」

「キャー、信忠様カッコいい!」

「織田一族はみんな派手だなあ……五徳姫様の馬、あれ人間だよな?」

 

「あの神々しい若い観音様、誰? 長岡様の嫁? はえ~、綺麗だなあ……長岡様から凄い殺気が来た気が……?」

 

「よっ! 前田利家様! 織田一番の傾奇者!」

「柴田様~、激渋オジ最高!」

「金森様~! 私のハートに火縄銃撃ってー!」

「前久様~、キモかわいい♥」

 

 みんな、好感度爆上がりじゃん。

 フッフッフ、私も負けてないけどね。

 

「うおっ! 真昼様のパンティー、今日はピンク色じゃ」

「さすが真昼様。帝の前でも通常運転じゃ」

「真昼様のパンチラ、これで寿命が一日伸びたわい」

 

 ……いつもの制服スカートより短かった……だと?

 

「おい真昼。かがむな。背筋を伸ばせ」

 

 いやいや信長様? 私それどころじゃないんですが?

 

 はっ! そうだ! これは見せパン、見せパン、見せパン、見せパン。

 うん。今度小麦を手に入れてパンを焼こう。

 

 こうして私は無の境地のまま、約6時間に及ぶ馬揃えイベントは観客十数万人を集める大熱狂と過熱ぶりで大盛況で終わった。

 帝も大変満足し、今後も開催するようにと前久様を通じて信長様に告げてきたほどだ。

 裏方と衣装の準備は大変だけど、1年に1回ぐらいならやってもいいかな?

 

「帝から、今回諸事情で見れなかった公家のために1週間後にもやってほしいと依頼が来た。遠方組は免除。畿内組でもう一度やるぞ! 無論、同じ衣装は却下だ!」

 

 終わった直後の信長様のひと言に、私が起立状態のまま倒れたのは言うまでもない。 

 

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