なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第237話 長谷川真昼、伊賀忍術の恐ろしさを知る

 紅蓮の炎に囲まれる、平楽寺に集結した伊賀忍者ども。

 さらにそこへ私がいる蒲生軍と、合流した一益さんの軍による包囲も完了した。

 

「忍者に炎は必殺ではござらぬ。氏郷殿、火縄を」

 

「ええ。抜かりはありません。全軍、炎に人影が見えたら撃つのではない。蟻の子一匹たりとも逃さぬように撃て」

 

 氏郷君の下知に、あちこちから火縄銃を構える音が響く。

 今回は本物の銃弾。

 伊賀上忍で、最も厄介な百地丹波は保長さんがタイマンで足止めしてくれている。

 炎に閉じ込められた人間は、忍者だろうがJKだろうが炎の外に向かう。

 この状況を覆せる忍術なんて存在しないと、保長さんも一益さんもお墨付きの氏郷君の策。

 残酷な敵軍全滅作戦だけど、ここで伊賀上忍が消えれば残る伊賀は戦わずに平定できるという理屈もある。

 できれば前哨戦のように、捕縛で終わらせたいけど……。

 

 でもなんだろう? 胸騒ぎがする。理由は単純だ。

 ずっと静かで、目立たないように裏方任務にしていたおごとくちゃん——の馬の佐助君の覆面がニヤついてないのだ。

 尻の感触で、いつも締まらない顔してるのに!

 

「……来る」

 

 おごとくちゃんが上空を見上げて囁いた刹那、豪雨が平楽寺を襲った。

 

「矢に切り替えろ!」 

 

 氏郷君が叫び、兵たちが装備を替える隙を見計らったかのように消えゆく炎から大量の手裏剣が飛来してくる。

 

「くっ! こんのお!」

 

 私や氏郷君、一益さんが金属バットで弾いていくけど、避けられず直撃してしまった兵たちがバタバタと倒れていってしまう。

 

「連中の攻撃は陽動でござる! 比自山に逃げるのが本命! 早く陣形を整え追撃を!」

「一益殿の言う通りだ! 逃がすな! ここで雌雄を決するぞ!」

 

 氏郷君の指示に追撃準備を取る私たちだけど、急な土砂降りが泥濘を作り、松明も灯せない闇夜で忍者どもの足に追いつけない!

 

『儂の光を浴びよ!』

 

 センイチの発光によって、なんとか視界は確保できてもただそれだけ。

 平楽寺に誘い込んだ敵は全て消え去っていた。

 

「信じらんない……逃げ足もそうだけど、バッドタイミングでゲリラ豪雨が降るなんて。忍者って、ラナリオンも使えるの?」

 

『小娘、ラナリオンは知らんが逃げ足のバフはあやつじゃ』

 

 センイチの声の先、そこに白い毛並みのように輝きを放つ英霊ボールが浮遊していた。

 横に、腕組みをしている才蔵もいた。

 

『奴はハツ。浅いセンター前ヒットで、一塁からホームへ帰った伝説を持つ英霊よ。奴に隙を見せたら一寸先は闇じゃ!』

 

「了解! 待ち伏せ上等! 才蔵ごと倒すよ!」

 

 どうりゃあ、と金属バットを振るう私だったけど、才蔵もハツにも手応えがない。

 10数メートル先に移動してるのを目で捉えたけど素早すぎる。

 こっちのヒットは出ない確定演出をくらってる気分だ。

 しかも才蔵の目、やっぱヤバい。狂気を隠そうとせず、私が泥濘に足を取られでもしたら隙を逃さず仕留めてくる仕草までしてきやがる。

 

「氏郷君、一益さん! 才蔵は私たちが引き受ける! 先に比自山へ!」

 

「了解です。真昼様、ご無事で」

「うむ、お任せ申す」

 

 バットを構えて目線を逸らさない私を凝視しながら、織田軍を素通りさせていく才蔵。

 やがて足音がなくなり、豪雨の音のみが耳に入り込んでくる。

 

「そろそろ、雨がウザいな」

 

 そう、才蔵が呟くと、ピタッと雨が止む。

 

「……嘘でしょ。忍者ってマジで天候を操るの?」

 

 私の心に焦りが滲む。

 私にだけピンポイントで土砂降りにされたら、服が重たくなるし透けるし、さすがにハンデ戦が酷すぎるから。

 

「真昼様! 奴のブラフです! 観天望気……空気の湿り具合から奴は天候を読んだに過ぎませぬ!」

 

 豪雨に紛れて気配を消していたけど、雨が止み、ただ闇夜に同化していた忍び装束の二人組の馬役のほうが叫んでくる。

 

 なぬ? じゃあ、さっきの氏郷君、単純に運が悪かったってこと? それはそれで釈然としないなあ。

 

「あいつが逃げて、平楽寺攻めに紛れ込んでいたのもあの刻限で雨が降ると読んでいたから」

 

 二人組の人役のおごとくちゃんがさらっと言ってきたけど、なにそれ? 単純に気象予報士として才蔵は凄い奴だったってことかい。

 

「見事だ。上におなご、下に男よ。平楽寺の蒲生軍を丸太にしたのも貴様らだな?」

 

「……なら、どうする?」

 

 佐助君の問い返しに、才蔵の覆面の口元が歪む。

 

「どうするかは答えは一つよ。ハツは長谷川真昼を頼む」

 

 才蔵め、嬉しそうだね。まさかおごとくちゃんと佐助君ペアが、彼が求めていた終生のライバルとは。

 蒲生軍にいた頃、なんだあの面妖なのはと距離を置いて話しかけもしなかったくせに。

 

「真昼、あいつは任せて」

 

「……わかったけど無理しないで、おごとくちゃん」

 

「うん。いざとなったら馬を捨てるから」

 

 そこはさらっと言わないように! いくら佐助君でも傷つくよ!

 ん? 佐助君の身体から溢れる闘志……どんどん膨らんでくるぞ?

 

「なら、捨てられないようにするだけ! さあ来い! 才蔵。我が妻の尻の温もりを奪おうとする者は何人であろうと許さぬ!」

 

 あっ、才蔵の顔にちょっとドン引きが浮かんだぞ。

 ライバル的な問答したかったんだろうね。気持ちは凄いわかるよ。

 

『小娘! 己に集中せえ! 食われるぞ!』

 

 センイチの叫びに、私はハッとして目の前に飛び込んできたハツボールを躱す。

 ……ゴクリ。逃げ足バフだけじゃないのかい、この英霊ボール。

 白獅子の大口開けた姿が見えたんだけど。

 

『黄金時代のライオンズ魂と、伊賀忍術の融合を見るがよい』

 

 ハツボールが、一つが二つ、二つが四つと倍々に増えていきやがる。

 嘘でしょ? ボールのくせに忍術学んでたんかい。

 

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