なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第238話 長谷川真昼、平楽寺での戦いにケリをつける

 センイチの発光により平楽寺付近で繰り広げられる戦場は、ナイター球場のようになってるそうな。

 対戦カードはおごとくちゃん&佐助ペアVS霧隠才蔵と、私VS英霊ボール『ハツ』である。

 

「忍法・霧隠の術」

 

 才蔵が発すると闇夜より濃い霧が発生して、おごとくちゃん&佐助ペアの視界を奪う。

 

「将を射んと欲すればまず馬を射よ。狙うなら馬を狙って」

 

 冷静に告げるおごとくちゃんだけど、どこから攻撃が繰り出されているのか、着ている黒装束の端々に次々と裂け目が入る。

 

 それなのに佐助君の黒装束は綺麗なままだ。

 

「おなごを狙うとは外道だな、霧隠才蔵。俺を狙え、さすれば忍びとしての究極奥義を浴びせてやる」

 

 佐助君の挑発に返事はない。代わりに来るのは真空波。

 おごとくちゃんの首を切断すべく放たれた。

 

 私のほうも、たった1球のボールに囲まれている。

 英霊ボール『ハツ』の分身の術で、前後左右に白球がある。

 輪っかから抜け出したいのに抜け出せない土星になった気分だよ。

 しかもどんどん攻撃してきやがるし、全部に硬球の重みがある。

 

 カキン、カキン、カキン!

 

 襲われては打ち返すけど、金属バットでジャストミートしたのに遠くに飛ばないでフッと消え、別の分身が現れて攻撃に転じてくる。

 

 ハアハアハア。……こういう企画って2分ぐらいで終わるもんじゃね? 連続スイングで敵を弾き飛ばせ! なんてのがあったってセンイチが言ってたぞ?

 

『10分経つが、まだスイングスピードが緩まぬか。まあよい、無限でも構わぬこちらと疲労する人、どちらが有利か火を見るより明らかよ』

 

 ちぇっ、全方向から聞こえてくるから本体判別は無理か。

 

「ねえ……なんで忍者の里で修行してたの? 白球なのに」

 

 私の疑問に、ハツは攻撃の手を緩めないまま語りだす。

 

『……儂が地味だからだ』

 

「いやいや、なんか神走塁したって聞きましたけど。浅いセンター前ヒットで1塁からホームって、普通に凄いじゃないですか」

 

 BOOOOOOONN!

 

 ほえっ⁉ なんか今、ライオンの咆哮が聞こえた気がするぞ?

 

『ゴールデングラブ8度、ベストナイン5度、選手として日本一7度! 優勝10度! 監督としても優勝2回!』 

 

「凄い! 野球人として頂点に立ったんですね!」

 

 自慢話を語り出してくれたし、ここはヨイショあるのみ!

 

『小娘! 儂の所属していた球団は⁉』

 

 ん? なんで質問してくんの?

 

『儂のポジションは!』

 

 ……いや、そう言われても困る。

 

『やっぱりじゃ。なんで儂、あんなに名手と呼ばれ、神走塁もしたのに、称号忍者が手に入らなかったんじゃ。リョウスケより儂のほうが忍者じゃわい!』

 

「えっと……だから戦国の世で忍者の里に?」

 

『その通りじゃ! 山賊どもを従えていたのに、日本シリーズ1回も出ていないせいで監督としても地味扱い! この屈辱、英霊ボール大戦で晴らしてくれるわ!』

 

「忍者じゃなくて山賊の親分じゃん!」

 

『黙れ小娘ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

 

 全方向同時にデッドボールぶつけるように迫りくるハツの群れ。

 マズい。さすがの私も背中に目はない!

 殺られる!

 こうなったら一か八かだ!

 

「全部捕球してやる!」

 

 私は金属バットを放り投げ、万が一のために持っていたキャッチャーミットを構え、片膝を地に着けて冷静に迫りくる白球を凝視していく。

 

 バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ!

 

『なっ……!』

 

 ふう。なんとかなったぜえ。

 

『グッ……抜けん。なんちゅう握力じゃ』

 

 ミットの中に残った1球がジタバタするけど逃がすもんか。

 

「バットで打ったら消えるから、捕球しても消えると思ったよ」

 

『まさか……そんな理屈で全部掴む……だと? ふざけるな! 四方八方、前後左右の全方向だぞ!』

 

「まあ、信長様も荒れ球だし。このくらいはよくあったから」

 

 投球練習でも、投げて私が捕ったらもう次の球を投げてきたことあったし。

 

「球威も信長様以下だったから、ギリギリいけた感じ」

 

 何気なく呟いた私の言葉に、ハツは心を折られたようだ。

 

 ——球体が忍術を学ぶと笑われた戦国初日。

 唯一真剣な眼差しで、イチから教えてくれた百地丹波との厳しく辛く、血を吐くような修行の日々。

 そんなハツの記憶が私に流れてくる。

 

『儂の修行は……無駄だった……のか』

 

「ううん。そんなことはないですよ。だってハツは、百地丹波との日々が楽しかったんでしょ?」

 

『……フン』

 

「丹波も殺させないから、安心して眠って」

 

 ミットから出して撫でてあげると、ハツは安心したかのように寝息を立てていった。

 

 さてと、もう一つの戦いも決着がついたようだ。

 

 ***

 

 才蔵の放つ黒い霧に真空波で、おごとくの黒装束は見るも無残に切り刻まれている。

 佐助の挑発にも興味はない。

 

(次で首を刎ねる。妻を殺されて激昂するがいい。それでこそ、一対一の忍びの殺し合いが完成する)

 

 大きく身体をエビ反り、両手を頭の後ろから全忍力を込めて空を斬る。

 

(終わりだ! さあ、殺し合おうぞ、猿飛佐助!)

 

 断末魔と発狂と復讐の殺意が聞こえるのを待つのみ。

 なのに、何も起こらない。黒い霧の内側は静まり返っている。

 

(防がれた? いや、我が霧は忍術を無効化する。丸太に身代わりさせることも、脱出も不可能。……よもや妻の死に呆然としてるのではないだろうな?)

 

 それならば期待外れだ。ライバルの価値もない。

 

「死ね。猿飛佐助」

 

 再び、才蔵は真空波を放つ。

 手応えあり。

 

「さて、丹波様の加勢に向かうか」

 

 そう呟き、霧に背中を見せた刹那。

 

「グハッ!」

 

 才蔵の背中に、真空波の衝撃が直撃した。

 

「鎖帷子、もう少し上なら首を刎ねられたのに」

 

 おごとくの残念そうな声が耳に入る。

 シルエットで、四つ足の佐助の背に乗っているのがわかった。

 

「……なぜ、生きている。どうして2人とも生きてるんだ!」

 

 振り絞った才蔵の血を吐くような呻き声を、佐助は誇らしげに返していく。

 

「貴様の敗因は修行不足だ」

 

「この俺が……修行不足……だと!」

 

「そうだ。俺は妻の馬になりながら忍術修行をしたのだ。貴様の真空波なぞ、我が妻の尻の温もりに比べたら軽いそよ風のようなものよ」

 

「……何を言っているのか……さっぱりわからん。……グフッ」

 

 おごとくのパンチが後頭部に決まり、才蔵は沈黙した。

 

「いずれわかるさ。貴様も大事な妻を持てばな」

 

 佐助は誇らしげに囁き、才蔵も背に乗せようとして妻と接触してしまうと思い直し、口で咥えて持ち上げた。

 

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