なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第249話 長谷川真昼、胸の大きさを憂える

 家康さんを安土に呼んで待ってる信長様だけど、面会申し入れ、訴状、各戦線の報告に今後の行動指針の細かいチェックと、相変わらず休む暇もないほど忙しい。

 

 北陸の対上杉戦線もいよいよ大詰め、越中・魚津城攻略間近であり、武田が滅び越後の横っ腹の北信濃も織田領に。

 そこに北越後でも新発田重家が上杉景勝に叛旗を翻し、上杉滅亡も秒読み段階に入っている。

 

 西国の毛利戦線も、秀吉さんと官兵衛さんが優勢に進め、備中高松城に進軍。

 周囲が湿地であり沼地に囲まれている高松城には、人も馬も大軍で近づくのが困難である。

 毛利は迫りくる羽柴軍に、無駄なことをすると当初は勝ち戦気分で構えていた。

 それを官兵衛さんは、近郊にある足守川の流れを堰き止める堤防作りで一変させる。

 完成した堤防は、あっという間に高松城を水で埋め尽くした。

 この鮮やかな水攻め(住んでた人たちにとっては最悪だけど)に、毛利輝元もかなり衝撃を受けたようだ。

 安国寺恵瓊を使者にして、織田との交渉を降伏を前提に語り出してきたのだ。

 

「秀吉に伝えよ! 美作・備中・伯耆・出雲・備後の割譲と、英霊ボール全回収で毛利の降伏を受け入れるとな!」

 

 信長様の返事を伝える早馬が、慌ただしく安土から出立する。

 

「勝三郎(恒興)! 摂津に戻り、秀吉の後詰に備えよ!」

 

「はっ。委細承知」

 

 恒興さんが一礼して出ていく。 

 

「長曾我部ですが、利三の説得が続いていることで大分軟化してきました。元親も現実を知らぬ男ではありますまい。最終的に要求を呑むでしょう」

 

 光秀さんからの説明に、信長様は「うむ」と頷く。

 

「五郎左(長秀)!」

 

「はっ!」

 

「三七郎(信孝)と七兵衛(信澄)を引き連れ、四国に上陸する準備をせよ!」

 

「承知いたしました。三好康長殿と蜂屋頼隆殿と合流し、長曾我部元親殿を先鋒にして九州に上陸いたします」

 

「おう。それが理想だ。任せたぞ!」

 

 長秀さんも一礼して出ていくと、今度は大広間の天井の梁に百地丹波さんが逆さまの状態で現れた。

 

「信長。北条だが、風魔小太郎の気配が消えた。裏でコソコソ動く東の乱破の大親分よ。探るか?」

 

「ほう? 上杉謙信すらだまくらかした加藤段蔵の師と聞いたことがある。興味深い、探れ!」

 

「了解だ。保長も暇そうにしているし、奴も連れて行く」

 

 そう言ってシュッと消える丹波さんだけど、テレポートでもしてんのかよ。

 忍者の動きはホント理解不能だよ。

 

「熊千代(忠興)!」

 

「はっ!」

 

「丹後の父の許に向かい、出陣の支度をせよ! 鶴千代(氏郷)!」

 

「はっ!」

 

「天下一統後の検地を安土を基準に行なう。今のやり方に不具合があるか精査せよ!」 

 

 家康さんが来るのに、みんな忙しそうだ。

 というか、頼りになる人材が次々と信長様の側から居なくなってる。

 残っているのは光秀さんや蘭丸君に弥助といった近習・小姓組のみ。

 

 ——これが本能寺の前の空気。

 

『ついに英霊ボール大戦も終わりが見えてきたわ。信長、そっちのケリはどうするんじゃ?』

 

 信長様の手元で弾みながら、センイチが訊いていく。

 

「フッ。臣従表明や、降伏する連中は当然差し出させるが、朝廷はどう動くか。真昼!」

 

「はいはい」

 

 うおっ、ここで私を呼ぶのかよ。

 

「前久殿の説得は任せたぞ」

 

「あれって説得でなんとかなるもんなのかなあ……」

 

 不安でしかない。前久様のことだし、突拍子もない交換条件出してきそうだし。

 

「なあに、最後は野球勝負で白黒つけるのみよ」

 

『信長の言う通りじゃ小娘! 最終試合が近いんじゃ、気を抜くなよ!』

 

 センイチ? あんた元帰蝶様で前周回の私な秀吉さんが体験した、間近に迫ってる本能寺の悲劇の告白と半兵衛君の策、忘れてるだろ?

 

『十兵衛君の持ってる僕。九鬼嘉隆が持ってるボビー、徳川家康が持ってるノムサンも回収かあ。まあ、楽しい時間には必ず終わりが来るしね。しょうがないかな? ね、十兵衛君』

 

 光秀さんの袖口からイシイが姿を見せてくる。

 

「ああ、勝者の陣営で終わるならイシイ殿も悔いはなかろう」

 

『だね。……そうだそうだ、あと羽柴秀吉のヒロミツと黒田官兵衛のドンデンがいたっけ。強敵毛利の最前線で踏ん張ってるのに回収していいのかなあ?』

 

 イシイが疑問を抱くと、信長様がフッと笑みを零す。

 

「ならば十兵衛とイシイよ。家康の歓待後、秀吉と合流して毛利の降伏を早めよ。それなら文句あるまい?」

 

「承知しました。……それと、信長様」

 

 ん? 光秀さんの声が急にヒソヒソ声になっていく。

 近習たちに聞こえないように、信長様と私の耳に届く音量で。

 

「正室でございます。帰蝶様が秀吉殿になり、吉乃様病没後、未だ不在なのはいささか……いえ、すこぶる予想外であり、天下一統の主が独り身は民草も反応に困るかと」

 

 たしかに。令和でもファーストレディってファッションの最先端みたいに持て囃されるもんね。

 てか光秀さん? なんで真顔で私の顔を見つめてくるのかな?

 まさかとは思うけど、ねねちゃんと結託してたりして。

 産んだらねねちゃんに養子としてプレゼントする約束、ずっと放ったらかしにしてるから心当たりがあるんだけど。

 

「わかった。考えておこう」

 

 あっ、信長様、適当に返事してるよ。

 これ真剣に考える気なさそうだ。

 

「ところで真昼! 英霊ボールどもを回収したら、令和とやらに帰ると言っていたな?」

 

「うん、それが私の役目だし。……てかこのまま戦国にいても歳を取らないのもネックなんだよね。……早く一部分だけでも大人になりたいし」

 

 秀吉さんが大きいし、お母さんとお姉ちゃんも大きいし、成長するのは確実なのにこのままなバストはさすがの私でも嫌だよ。

 

「ただ、英霊ボールどもを戦国にばら撒いたクソ神の姿全然見ないし、ホントに帰れるかもわかんないけどね。センイチ、イシイ、どお? 令和に帰れると思う?」

 

『小娘よ。神と儂ら英霊ボール、どっちを信用するかよ』

 

 センイチさあ。どっちも信用できないのはどうすりゃいいんだよ。

 

『うんうん。ぶっちゃけノリで僕ら戦国にいるけど、この時代の存在じゃないし。多分帰れるんじゃない?』

 

 イシイの発言も根拠なしを強化しやがったよ。

 まったくもう。この2球に聞いた私がアホだったぜえ。

 

「まあ、帰れなかったら織田家にずっとお世話になるね。元の時代まで生きてたら、私の身体の成長も始まるかもだし」

 

 戦国から令和って何年ぐらいだっけ?

 でも殺されなきゃなんとかなるでしょ。

 

「フッ。平和な世、英霊ボール集めのない世で、織田が真昼を養う意味はないがな」

 

「信長様ひどっ! 信長様の正捕手で恋女房とまで呼んでくれた私でもリストラする気ですか!」

 

「なら、ずっと俺の恋女房でいろ! それが織田にいる条件だ」

 

「うへえ……了解でーす」

 

 てか光秀さん? なんで私と信長様の会話聞いててため息つくのかな?

 

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