なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件~   作:ハムえっぐ

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第3話 長谷川真昼、織田家に就職する

 おおっ、廊下を歩くとギイギイ音がする。

 匂いもなんか落ち着くし、庭も手入れされて花が綺麗に咲き誇っている。

 古風な感じがしていいね。

 

「藤吉郎、戻ったのか。おや、そいつはなんだ? バテレンってやつか?」

 

「藤吉郎様ああああああ!」

 

 暫くすると、槍を両肩に乗せた背の高いイケメンさんに声をかけられたかと思うと、ピンク色で花柄模様が可愛らしい着物を着たロリっ娘が突進してきた⁉

 

「ぐふっ……」

 

 なぜ私に頭突きを? ……幼女に攻撃されるなんて想定外だよ。

 合法的に幼女を抱っこできるかと期待したのが敗因だぜえ。

 

「なに、こいつ? 犬千代! バテレンてなあに?」

 

 幼女は藤吉郎さんに抱っこされながら私を見下ろしてくる。

 肩に乗ってる猿からよしよしされて喜んでるの、なんか和むなあ。

 みぞおちめっちゃ痛いけど。

 

「バテレンってのは南蛮人っつう意味さ。ほら、着ている服が変だろ?」

 

「本当だ! 足袋も草履もへーん!」

 

「しっかし短い袴だな……ゴクリ。今度まつに履かせてみたいぜ」

 

「南蛮人って鼻が天狗みたいで髪の色も変って聞いたことあるけど、この人の髪色、私たちと同じで鼻もちっちゃーい!」

 

 言いたい放題だね。

 まあ、この時代に制服がないのは百も承知だから反論しないけど。

 純日本人ですいませんね。

 

「私は長谷川真昼! 本日付けで織田家に就職しました! よろしくお願いします!」

 

「「おお~」」

 

 びっくりするも祝福してくれる、長身イケメンさんとロリっ娘さん。

 うんうん、陽気な人たちで助かるよ。

 

「違う違う。この通り奇妙な存在よ。信長様にお目通りをと思って連れてきただけだ」

 

 藤吉郎さんがやんわりと否定してきやがった。

 ちっ、勢いで流されないとは、やるな。

 

「ところで、この方たちは?」

 

 私の質問に、槍を両肩に乗せてる男がニヤリと笑う。

 

「俺は前田又左、現在織田家追放中の浪人よ」

 

「浅野ねね! 藤吉郎様の婚約者!」

 

 おお~、どっちも名前は知ってるぞ。

 前田又左は利家で有名な人だよね。信長様の幼馴染で槍の達人! 加賀100万石!

 そんでもって藤吉郎の奥さんのねねちゃん! 秀吉をずっと支えたって話だよね!

 又左さんはイメージ通りだけど、ねねちゃんちっさ! こんなロリっ娘と結婚する藤吉郎さんヤバっ!

 

 ん? 現在追放中の浪人?

 

「又左、お主もいつ戻ったのだ? 信長様から帰参の許しを頂けたのか?」

 

 藤吉郎さんが不思議そうに訊ねた。

 

「うんにゃ、内蔵助もまだ怒ってるし柴田様も秩序が乱れるって思ってるってよ」

 

「えっと、何をしたんですか?」

 

 私のオタク知識をフル回転させる。

 そういえば、なんか追放されて復帰した話があったっけ? たしか……理由は?

 

「ああ、盗っ人を一匹たたっ斬っただけさ」

 

 わーお。爽やか笑顔で親指ピシッとさせて言うのが、戦国時代って感じがするなあ。

 

「それがね、信長様が役立つ奴だったのに、なんで俺に処置を任せないんだ! って激怒して追放されちゃったんだよ! 馬鹿だよねこいつ! まつちゃんが可哀想!」

 

 ケラケラしながらねねちゃんが言うけど、絶対楽しんでるよね?

 

「それを言うなって。……と、俺が今日信長様にお目通りしたのは、珍しい物を拾ったから献上がてらにな。喜んでくれたけど、帰参は駄目っつーから次の機会を待つさ」

 

「珍しい物? どんな物ですか?」

 

 気になる。だって私という珍しい者の前にもっと珍しい物を見ていたら、私の存在価値が薄れちゃうじゃないか。

 

「ん~? 握り拳ぐらいの球体で、赤い縫い目があったな。珍しい武具かもしれんが用途は分かんね」

 

 球体で縫い目? それって……?

 私の魅力の前の前座として役不足だね。

 なんの問題もなし!

 

「じゃあな。藤吉郎。ほら、ねねも行くぞ。菓子を買ってやるからまつにも届けろ」

 

「仕方がないなあ。えへへ、お菓子」

 

「……全部食うなよ」

 

 そんな会話しつつ、2人は逆方向に去っていった。

 ねねちゃんは私に近づいて、こんなことを言ってからだけど。

 

「藤吉郎さんに惚れても無駄だからね。彼女は私のなんだから」

 

 なんて、女の嫉妬の眼を滲ませながら。

 

 こっわ! 幼女こっわ! 恋する乙女を敵に回しちゃいけないってはっきり悟っちゃうよ。

 安心して、私、イケメンだけじゃなくって私より強い人がタイプだから、って告げようとしたのにスタスタ去ってっちゃうし!

 ん? 彼女は私のなんだからね?

 

「どうしたのだ、真昼。着いたぞ。信長様のお部屋はここだ」

 

 おお、緊張してきた。

 私でも知っている超有名人の織田信長! 私の勘によるとイケメン率100%!

 帰蝶とのラブラブを見れなかったのは残念だったけど、吉乃さんって奥さんはどんな人なのかな?

 えへへ、私に一目ぼれしてきたらどうしよう? 吉乃さんと正妻争いしちゃったりして。

 うーん。でも私、女の争いって苦手だからなあ。拳で決着ってのも変だよね。

 頼むから私に惚れないでよ、信長様!

 

「入れ」

 

 襖の奥からイケメンボイスが響いてきて、胸が高まる!

 さあいよいよご対面だよ、織田信長!

 

「藤吉郎、参上しました」

 

 片膝を曲げてスーッと襖を開ける藤吉郎さん。

 私も慌ててしゃがんで藤吉郎さんの真似をする。

 第一印象は大事だよ。私!

 

 すると部屋の中で、ドンッ! という音が鳴ったのだ!

 壁に穴が空いていて、そこにコロコロと白くて縫い目がある拳ぐらいの球体が転がってるんですけど⁉

 投げたと思われる人物……おお、やっぱイケメン! 面長だけどキリッとしている! この人が織田信長か~。

 私は右腕で小さくガッツポーズ作って喜んだんだけど、なんとおっさんの声が聞こえてくるのだった。

 

『いい筋をしているぞ! 大エース誕生じゃ!』

 

 ん? おっさん声、どこから聞こえてんの? ここにいるの、私と藤吉郎さんと信長様だけなんだけど。

 

「ふむ、毬杖(ぎっちょう)や石合戦より戦向きよ、野球とやらは。センイチと言ったな。俺にもっと野球とやらを教えよ。これは命令よ」

 

『応! ドラゴンズとタイガース、イーグルスを優勝させた儂の手腕の見せどころよ。頼んだぞ、織田信長!』

 

「ボールが喋ったあああああああああああ!」

 

 私の魂の叫びが木霊するのだった。

 

「藤吉郎! 猿!」

 

「はっ」

「ウキー」

 

「なんだ? これは?」

 

 私を指さすなー。これって言うなー。完全におっさん口調で喋るボール以下の扱いになってるじゃん、私。

 

「はっ! 帰蝶を訪ねて来たとのことですが、私は面識がございません。義龍の間者かもと疑いましたが、面妖な出で立ちから可能性は低いかと。帰蝶がいないと知るや、織田家に仕官したいと申したので連れてきました」

 

「帰蝶を? ふむ。其方何者だ。端的に話せ」

 

 よし、ここは自己アピールの場だよね。

 信長はやっぱこういう性格なんだ。気が短いで有名だよね。

 なら、私は素のままでいける!

 

「昨日、500年後の未来から来た長谷川真昼です! 戦闘力なら姉以外には負けません! 精一杯働きます!」

 

「採用!」

 

 うっし。私は両手でガッツポーズを作る。

 衣食住ゲットだぜ。

 

「よろしいのですか? 三郎様」

 

「案ずるな。センイチから大方の事情は聞いておる。それにこの者、只者ではないぞ。俺が鎌倉の世にでも飛ばされたら適応するのに数日はかかるわ。なのに此奴は1日で適応。うつけか英雄かの類いよ」

 

 む? うつけって酷くない? 英雄もやだよ私。

 だって普通の女の子だぞ?

 

「はい質問です!」

 

「許す!」

 

「なんで帰蝶様と離縁したんですか! 嫌いになったんですか!」

 

 ん? 藤吉郎さんの身体がピクッとしたぞ?

 

「政治的判断だ! 子供を産まなんだのも、古参衆たちを説得できなかったのも俺の責任よ。嫌いになんぞなっておらん」

 

「それを聞いて安心しました! 吉乃様ってどんな人ですか!」

 

「お、おい真昼、ズケズケ聞きすぎだ」

 

 慌てる藤吉郎さんだけど、気になるのは気になるし。

 

「吉乃は可愛い! 再婚同士だから遠慮も要らぬ!」

 

 ほら、信長様も答えてくれたし。

 

「コホン。それじゃ最後の質問です。吉乃様と帰蝶様、どっちが好きですか!」

 

 空気が凍りついた気がする。藤吉郎さんが俯いて、猿が私を睨んでくるのが見えた。

 しょうがないじゃん。こういうの聞きたいのが女子なんだし。

 てか藤吉郎さん、なんでそんなに落ち込むの?

 

「真昼よ。……貴様、俺を試してるのか?」

 

 なんか信長様も怖い顔するし!

 あれ? 私、なんか地雷踏んじゃった?

 就職数分後にクビになるの⁉

 

 信長様が立ち上がって歩いてくる。

 やっば! オーラパない。くっ、倒せるか勝負しないと想像できない! まさかのお姉ちゃん級かよ、信長様!

 なんて思ってる私をスルーして横切っていく。

 ほえ?

 

「どっちもに決まってるだろ!」

 

 そう言って、信長様は藤吉郎さんに抱きついたのでした。

 

「三郎様……」

 

「藤吉郎……いや、帰蝶」

 

 見つめ合う2人なんだけど……え? どゆこと?

 

『おい、小娘、最後の質問って儂の存在忘れるでないわい』

 

 そんなボールの声が、私の耳を通り抜けるのだった。

 

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