1944年、夏のある晴れた日、
「ふー、暑いな......」
輸送機から降りた僕はそう独り言を呟きながら自分の荷物が入った背嚢を一時地面に下ろす。
下ろした背嚢の中から整備兵用の帽子を取り出し被った。帽子のつばを掴み整えつつ周囲を見渡す。
広く長い滑走路の先に存在する基地施設。元々は貴族の城だった物を改築に改築を重ねた感のある基地だ。
駐機場には戦闘機や爆撃機と言った航空機の姿は無い。
それもそのはず、此処は世界で初めて結成されたウィッチのみの部隊、第501統合戦闘航空団、通称「ストライクウィッチーズ」と呼ばれる彼女たちの専用基地なのだ。だから、男性の部隊は陸軍の基地防空隊や管制班、ユニット管理隊を除けばいない。
ウィッチは年齢を重ねる事に徐々に魔法力を失い、二十歳を迎える頃には完全に失ってしまう。また、ウィッチは純潔を維持しなければならないと言われ、男性との交流は殆ど無く、禁じられている部隊もあるのだ。
ウィッチの宿命、と呼ばれている。
自分はそんな彼女たち、ウィッチが使用する鋼鉄の箒、ストライカーユニットの管理・整備を行う管理班へと配属となった。
これまでもブリタニアや、一時はアフリカやリベリオン、果ては極東の扶桑まで赴いてユニットの管理を経験していた。今回の異動はその腕を買われての結果だ。ノイエ・カールスラントに戻った際には暫くゆっくり出来ると思っていたんだが、残念だ。
「あの人の命令と聞いたら断れないしな。 ......でも、なんで見送りの時に笑っていたんだ? 不思議だ」
ブリタニアの基地で輸送機に乗り込む際に異動を命じた将校がわざわざ見送りに来てくれた時の事だ。「向こうに着けば離れたくならないだろうね」と言っていた。
頭の中で再生される台詞に首を傾げ悩んでいるのもつかの間、真上からジリジリと照らす太陽の所為で服が汗で湿ってきたのに気づき、荷物を背負い慌ててハンガーへと走った。
◇
日差しから逃れる為に走ったハンガー内はある程度は涼しかった。だが、既に来ている服の背中側は汗が浸透して張り付いて気持ちが悪い。
基地司令に着任挨拶する前にシャワーを浴びさせてもらえないかと、考えていると背後から声を掛けられた。
「お? あんたが今日来るって聞いてた新入りか?」
声の主を確認する為に振り返ると、同じ黒の作業服を着た整備兵が工具箱を片手に立っていた。
「あぁ、本日付けで此処のストライカーユニット管理隊に配属になるクルト・フラッハフェルトだ。階級は伍長」
「よろしく、クルト」
握手を交わすとお互いに今までの仕事や此処に着いた経緯などを話し合っていると、ハンガーの奥の方から会話を聞きつけた整備兵達が続々と現れ、最終的には管理隊の班長が僕の事を紹介して班員との挨拶を済ます。
その後、班員に管理班の隊舎を案内すると言われ、ついて行こうとするが、管理班長に呼び止められた。
「クルト、先に司令に挨拶してこい。荷物は他の奴に運ばせておく。それが済んだら、此処に来てくれ」
「了解です、班長」
そう返事をすると、背嚢を班員に預けて基地司令室のある中央施設へと向かう。
班員からは幾つか注意を受けていた。此処から中央施設に行くルートにはウィッチ達が使う部屋が並んだ区画があるから、少し遠回りして施設に入れと言われた。後はメモに記しておく、と言い男性厳禁の区画がチェックされたメモを手渡された。
(こうも多いと移動がツラいな)
メモ通りに進んでいるが基地の中は思ったよりも広い。うっかりしていると迷うんじゃないかと思うぐらいだ。
しっかりと気をつけておかないと、と思い階段を駆け上がった時だま右の足にズキッと痛みが走った。
「......ッ...、久々にきたな......」
階段の段差に腰を下ろして右足をさする。
数年前の撤退戦で僕は右足を負傷した。負傷して気を失っていた僕をたまたま其処へ通りかかったウィッチが治癒魔法を使ってくれなかったら手遅れだったかもしれない、と後から聞いた時に肝を冷やしたものだ。
半年ほど病院での生活を強いられたが、それを過ぎると普通の人並みに歩けるようになり、軍に復帰した。戦争だから?いや、それは違う。
僕が何故、軍に志願したのか。それは─────。
コツンと、足音が響いた。階段の上の方からだ。
ヤバイと思って慌てて立ち上がり姿勢を整えた。もしかしたらウィッチが下りてきたかもしれないと、そう考えたからだ。
直立不動の態勢で相手がいるであろう階段の上へ向き直り敬礼をしようとして右腕を上げて────止まった。
「─────」
視線の先には一人のウィッチが立っていた。
オリーブグリーン色のカールスラント空軍の将校用服に身を包み、胸元にはウィッチを示す徽章を付け、肩には中佐の階級章が見え、艶やかなセミロングの赤毛は窓から吹く風に靡いていた。
僕は言葉が出せなかった。彼女の美貌に見とれていたわけではなく、違う意味で、だ。彼女の事は誰よりも知っていた。
彼女も驚いたような顔をしてこちらを見ていた。開いた口を手で隠し目を大きく開いている。
すると、驚きから立ち直った彼女が信じられないと言った思いを含めた口調で呟いた。
「─────クルト......?」
「─────ミーナ......!」
あの上官の言った台詞の意味が今、こうして幼なじみとの再開という形で、判明したのだった。
どうも、フェネックです。
今まで考えていたクルトが生きていたなら?というif小説を書いてみたいと思い投稿してみました。後悔はありません。
多分、名前も知らない方もいたんじゃないでしょうか?それぐらいに不憫なキャラでしたしね。なんだか可哀想だったので。
という事で、こんな感じで進めていきたいと思っています!
こんな駄文ですが、見て読んでくれたらうれしいです。
感想、批評お待ちしています。